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しおりを挟む一度目の結婚式から一ヶ月後、今日は二度目の結婚式だ。場所はオーガスト家の庭園だ。ガーデンパーティーである。
私は母のウェディングドレスを着させてもらった。
「このドレスはね私のお母様、ルナちゃんのおばあ様から譲り受けたものなのよ」
「そんな大切なドレスを私が着てもいいの?」
「いいに決まってるじゃない。おばあ様もきっと喜んでいるわよ」
おばあ様は私が生まれる前には亡くなっているので会ったことはないが、こうしてこのドレスを着ることで繋がれるなんてすごく嬉しい。
「きれいだ…」
ウェディングドレス姿をイシス様にお披露目すると一言だけ発して動かなくなってしまった。実はこのやり取りは一度目の結婚式も同じである。
「ふふ、イシス様。ウェディングドレスを着るのは二度目ですよ?イシス様も素敵です」
イシス様の白の婚礼衣装もよく似合っている。
お互いに衣装のお披露目を終えパーティー会場へと向かう。会場には家族の他に屋敷の使用人やオーガスト家の兵士が集まっていた。
一度目の結婚式は厳かな雰囲気の行われたので二度目の結婚式は和やかな雰囲気の中で執り行われた。
実はこのパーティーの一部の料理は私が用意したものだ。家族にも私が作る魔物料理を食べてもらいたいと思い今日に向けて準備をしてきたのだ。なんなら今日の朝ギリギリまで準備をしていたくらいである。
「ルナリアの手料理…」
「すごく美味しいわ!」
「魔物料理を今まで食べなかったのは人生を損していたな」
父は私の手料理というだけで涙ぐんでいたが母と兄からは大いに褒めてもらった。
パーティー会場にいる使用人や兵士達からも「美味しい」との声があちこちから聞こえてくる。みんなの顔も笑顔だ。頑張って用意した甲斐があったというものだ。もちろんイシス様も笑顔で食べてくれている。
たくさんの笑顔に囲まれた二度の結婚式は一生忘れない思い出となった。
私はこれからもみんなの笑顔を見ていたい。だからお店も冒険者も続けていくつもりだ。それに明日からはイシス様も一緒である。一人より二人の方がたくさんの人を笑顔にできるだろう。
「イシス様、これから一緒に頑張りましょうね」
「ああ。ルナと一緒ならどんなことでも乗り越えられそうだ」
「じゃあ早速明日から討伐依頼でも受けようかしら」
「…さすがに明日はゆっくり過ごさないか?」
「ふふっ、もちろん冗談よ。ゆっくり過ごしましょうね、旦那様」
不意打ちで頬に口づけをするとイシス様の顔はみるみる内に真っ赤に染まった。
「ル、ルナ…!」
「ル、ルナリア!」
「あらまぁイシスさんの顔が真っ赤よ」
「イシス殿しっかり!」
こうして私とイシス様は夫婦となったのだった。
国の象徴である職業王妃にはならずに、前世と今世の夢を叶えることができた。でもこの夢はまだまだ続いていく。大好きな人達と共に。
『ルナの気まぐれ食堂』はパワーアップして、これからも気まぐれに営業予定です♪
【完】
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