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二章 異世界ライフ
113話 北レバノン侵攻勃発
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ミサイルとアパッチによる奇襲攻撃を何とか回避できた俺達は帝都北部を離れレベッカの隊舎で過ごしていた。
「さっきのヤバかったな……」
タオルで汗を拭いつつ言う。ロシア兵に追い掛けられた事はあっても攻撃ヘリに追跡されるのは初めての経験だ。
「ええ……セルゲイ君がいたので助かりましたが、あればかりは助からないと思いましたよ」
彼女の表情もすっかりと青ざめている。
「それにしても何が起きてるん――――まただっ!」
会話の途中に轟音が響き部屋の窓から北部の方角を見てみると、そこは火の海へと姿を変えていたのだった。
アラブと帝国の文化が融合し合った麗しい建造物は倒壊し、炎を撒き散らし、あちこちで銃声が雷鳴していた。そんな中一際大きな衝撃波が波及した。恐らく大量の飛翔体を撃ち込んだのだろう。
「私……少し怖いです」
瞳が潤み、震えた状態の彼女が俺の腕に優しくしがみつく。引き離す事無く、頭を撫でる。
「大丈夫さ。俺もお前も色んな修羅場を潜り抜けて来たけど、ピンピンしてるだろ?」
「そ、それもそうですね」
若干の余裕を取り戻し、安心する。
「にしてもマジで何がどうなってんだよ?」
帝都側から北レバノンに砲撃が加えられる光景が視界で延々と続く。
するとその時、個室の玄関から激しいノックが与えられた。
「こんな時間に誰だ?」
玄関に向かって扉を開けると、予想外の人物がそこに息を切らして立っていた。
名は、少尉の階級を冠すアヴァカンだ。ヘルメットを被り、手には新聞が。
「どうしたんだよアヴァカン? そんな格好で」
「ごめんね――――ちょっと時間がないの。入るね」
「お、おう……」
いつもの和やかな彼女ではないと思った俺は制止せず部屋へと招き入れる。
テーブルに備えられた3つの椅子に座ると、かつてない程の真剣な表情でアヴァカンがこの事態について説明を始めた。
「いきなりすぎてよく分からないかもしれないけど、帝国国防軍とその同盟組織――――転移者イスラエル軍が未承認国家『北レバノン独立共和国』に数時間前、地上侵攻を開始したの」
おい、嘘だと言ってくれ。
まさかここでも地上侵攻という単語を耳にするとは予想だにしなかった。侵攻なんて言葉、ニュースでしか聞いた事がない。
「ここだけの話、私もよく分からないけど国防軍とイスラエル軍がいうには『ヒズベラ及びラマスとそれを支持しているテロリスト達を一掃する』って宣言して、こうなったの」
確かにヒズベラもラマスもアスラムの武装組織だから危険なのは分かるし元の世界でもイスラエルが嫌悪していたのも知っている。しかし、何故突然このような出来事に発展したのだろうか。
アヴァカンがずっと握り締めていた新聞を机上に置くと、口を開けた。
「私の見解だけど……多分、中佐殺害が絡んでるんじゃないのかな」
「おい、それってよ……」
中佐と殺害。心当たりしかない。
紛れもなくヒズベラによる報復攻撃だろう。
「何? 知ってるの?」
ここでレベッカが喋り出す。
「知っているも何も、私達、その事件に関与したので……」
「え!? か、関与!? どういうこと!?」
アヴァカンは驚愕し、体をバタバタと揺らす。
「その……俺達は訳あって軍の中佐にいじめられていた聖騎士の女性を助けて、その恋人のヒズベラ指導者と接触して、無理やりというか半ば強制的に報復攻撃に参加させられたんだ」
「そ、そうだったんだね……」
あまり納得していなさそうだが大丈夫だろうか。
「まあそれが嘘か本当か一旦無しにして、帝都が危険になっているのには変わりない。戒厳令も発令されてるしね」
戒厳令……言われてみれば、ここまで逃げて来る時、街を出歩く人間が極端に少なかったと記憶している。市民も承認も冒険者も騎士も誰も居なかった。とても不気味の雰囲気だった。
「それとさっき報復に関与したって言ったよね?」
「そ、そうだけど……」
「本当ならかなりヤバいわ」
「何で?」
「そりゃ、バレたら逮捕どこじゃ済まないからよ。もし正規軍の諜報部に見つかったら、暗殺されるよ」
「あ、暗殺だって!?」
物騒な言葉が耳に流れて来て、思わず机を叩いて立ち上がる。
「だから、そうならないようにセル坊とレベッカは今すぐ帝都を離れる事をオススメするよ」
強く真っすぐにそう促され、レベッカへ振り向く。
「らしいぜ、レベッカ」
「……仕方ありません。ここは軍人の彼女の言う通りにしましょう」
レベッカは少し寂しそうな目で、苦渋の決断といった様子で答えを定めた。
アヴァカンの指示に従いつつ生活に必要なものをかき集めると、帝都の検問所近くに佇む廃墟を訪れていた。ここで別れを行う。
「新聞は持っててね」
「ありがとう」
北レバノンの侵攻情報が記された新聞を受け取る。
「じゃあ、寂しいけどしばらくの間はお別れだね。落ち着いたらまた会いに行くから」
言葉ではなく敢えて敬礼での別れを済ますと、アヴァカンはポンチョのフードを深く被って闇の帝都へと姿をくらました。
「……では、もう行きましょう。秘密警察に目をつけられては流石の私でも対処できません」
「FSBみたいなのはどこにでも居るもんだな」
意味はないと思うが変装用のサングラスを掛け、アヴァカンが逃走のためにと用意してくれた二頭の馬に乗り上がった。
「さっきのヤバかったな……」
タオルで汗を拭いつつ言う。ロシア兵に追い掛けられた事はあっても攻撃ヘリに追跡されるのは初めての経験だ。
「ええ……セルゲイ君がいたので助かりましたが、あればかりは助からないと思いましたよ」
彼女の表情もすっかりと青ざめている。
「それにしても何が起きてるん――――まただっ!」
会話の途中に轟音が響き部屋の窓から北部の方角を見てみると、そこは火の海へと姿を変えていたのだった。
アラブと帝国の文化が融合し合った麗しい建造物は倒壊し、炎を撒き散らし、あちこちで銃声が雷鳴していた。そんな中一際大きな衝撃波が波及した。恐らく大量の飛翔体を撃ち込んだのだろう。
「私……少し怖いです」
瞳が潤み、震えた状態の彼女が俺の腕に優しくしがみつく。引き離す事無く、頭を撫でる。
「大丈夫さ。俺もお前も色んな修羅場を潜り抜けて来たけど、ピンピンしてるだろ?」
「そ、それもそうですね」
若干の余裕を取り戻し、安心する。
「にしてもマジで何がどうなってんだよ?」
帝都側から北レバノンに砲撃が加えられる光景が視界で延々と続く。
するとその時、個室の玄関から激しいノックが与えられた。
「こんな時間に誰だ?」
玄関に向かって扉を開けると、予想外の人物がそこに息を切らして立っていた。
名は、少尉の階級を冠すアヴァカンだ。ヘルメットを被り、手には新聞が。
「どうしたんだよアヴァカン? そんな格好で」
「ごめんね――――ちょっと時間がないの。入るね」
「お、おう……」
いつもの和やかな彼女ではないと思った俺は制止せず部屋へと招き入れる。
テーブルに備えられた3つの椅子に座ると、かつてない程の真剣な表情でアヴァカンがこの事態について説明を始めた。
「いきなりすぎてよく分からないかもしれないけど、帝国国防軍とその同盟組織――――転移者イスラエル軍が未承認国家『北レバノン独立共和国』に数時間前、地上侵攻を開始したの」
おい、嘘だと言ってくれ。
まさかここでも地上侵攻という単語を耳にするとは予想だにしなかった。侵攻なんて言葉、ニュースでしか聞いた事がない。
「ここだけの話、私もよく分からないけど国防軍とイスラエル軍がいうには『ヒズベラ及びラマスとそれを支持しているテロリスト達を一掃する』って宣言して、こうなったの」
確かにヒズベラもラマスもアスラムの武装組織だから危険なのは分かるし元の世界でもイスラエルが嫌悪していたのも知っている。しかし、何故突然このような出来事に発展したのだろうか。
アヴァカンがずっと握り締めていた新聞を机上に置くと、口を開けた。
「私の見解だけど……多分、中佐殺害が絡んでるんじゃないのかな」
「おい、それってよ……」
中佐と殺害。心当たりしかない。
紛れもなくヒズベラによる報復攻撃だろう。
「何? 知ってるの?」
ここでレベッカが喋り出す。
「知っているも何も、私達、その事件に関与したので……」
「え!? か、関与!? どういうこと!?」
アヴァカンは驚愕し、体をバタバタと揺らす。
「その……俺達は訳あって軍の中佐にいじめられていた聖騎士の女性を助けて、その恋人のヒズベラ指導者と接触して、無理やりというか半ば強制的に報復攻撃に参加させられたんだ」
「そ、そうだったんだね……」
あまり納得していなさそうだが大丈夫だろうか。
「まあそれが嘘か本当か一旦無しにして、帝都が危険になっているのには変わりない。戒厳令も発令されてるしね」
戒厳令……言われてみれば、ここまで逃げて来る時、街を出歩く人間が極端に少なかったと記憶している。市民も承認も冒険者も騎士も誰も居なかった。とても不気味の雰囲気だった。
「それとさっき報復に関与したって言ったよね?」
「そ、そうだけど……」
「本当ならかなりヤバいわ」
「何で?」
「そりゃ、バレたら逮捕どこじゃ済まないからよ。もし正規軍の諜報部に見つかったら、暗殺されるよ」
「あ、暗殺だって!?」
物騒な言葉が耳に流れて来て、思わず机を叩いて立ち上がる。
「だから、そうならないようにセル坊とレベッカは今すぐ帝都を離れる事をオススメするよ」
強く真っすぐにそう促され、レベッカへ振り向く。
「らしいぜ、レベッカ」
「……仕方ありません。ここは軍人の彼女の言う通りにしましょう」
レベッカは少し寂しそうな目で、苦渋の決断といった様子で答えを定めた。
アヴァカンの指示に従いつつ生活に必要なものをかき集めると、帝都の検問所近くに佇む廃墟を訪れていた。ここで別れを行う。
「新聞は持っててね」
「ありがとう」
北レバノンの侵攻情報が記された新聞を受け取る。
「じゃあ、寂しいけどしばらくの間はお別れだね。落ち着いたらまた会いに行くから」
言葉ではなく敢えて敬礼での別れを済ますと、アヴァカンはポンチョのフードを深く被って闇の帝都へと姿をくらました。
「……では、もう行きましょう。秘密警察に目をつけられては流石の私でも対処できません」
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