120 / 176
二章 異世界ライフ

113話 北レバノン侵攻勃発

しおりを挟む
 ミサイルとアパッチによる奇襲攻撃を何とか回避できた俺達は帝都北部を離れレベッカの隊舎で過ごしていた。

 「さっきのヤバかったな……」

 タオルで汗を拭いつつ言う。ロシア兵に追い掛けられた事はあっても攻撃ヘリに追跡されるのは初めての経験だ。

 「ええ……セルゲイ君がいたので助かりましたが、あればかりは助からないと思いましたよ」
 彼女の表情もすっかりと青ざめている。
 「それにしても何が起きてるん――――まただっ!」

 会話の途中に轟音が響き部屋の窓から北部の方角を見てみると、そこは火の海へと姿を変えていたのだった。
 アラブと帝国の文化が融合し合った麗しい建造物は倒壊し、炎を撒き散らし、あちこちで銃声が雷鳴していた。そんな中一際大きな衝撃波が波及した。恐らく大量の飛翔体を撃ち込んだのだろう。

 「私……少し怖いです」

 瞳が潤み、震えた状態の彼女が俺の腕に優しくしがみつく。引き離す事無く、頭を撫でる。

 「大丈夫さ。俺もお前も色んな修羅場を潜り抜けて来たけど、ピンピンしてるだろ?」
 「そ、それもそうですね」

 若干の余裕を取り戻し、安心する。

 「にしてもマジで何がどうなってんだよ?」

 帝都側から北レバノンに砲撃が加えられる光景が視界で延々と続く。
 するとその時、個室の玄関から激しいノックが与えられた。

 「こんな時間に誰だ?」

 玄関に向かって扉を開けると、予想外の人物がそこに息を切らして立っていた。
 名は、少尉の階級を冠すアヴァカンだ。ヘルメットを被り、手には新聞が。

 「どうしたんだよアヴァカン? そんな格好で」
 「ごめんね――――ちょっと時間がないの。入るね」
 「お、おう……」

 いつもの和やかな彼女ではないと思った俺は制止せず部屋へと招き入れる。
 テーブルに備えられた3つの椅子に座ると、かつてない程の真剣な表情でアヴァカンがこの事態について説明を始めた。

 「いきなりすぎてよく分からないかもしれないけど、帝国国防軍とその同盟組織――――転移者イスラエル軍が未承認国家『北レバノン独立共和国』に数時間前、地上侵攻を開始したの」

 おい、嘘だと言ってくれ。
 まさかここでも地上侵攻という単語を耳にするとは予想だにしなかった。侵攻なんて言葉、ニュースでしか聞いた事がない。

 「ここだけの話、私もよく分からないけど国防軍とイスラエル軍がいうには『ヒズベラ及びラマスとそれを支持しているテロリスト達を一掃する』って宣言して、こうなったの」

 確かにヒズベラもラマスもアスラムの武装組織だから危険なのは分かるし元の世界でもイスラエルが嫌悪していたのも知っている。しかし、何故突然このような出来事に発展したのだろうか。
 アヴァカンがずっと握り締めていた新聞を机上に置くと、口を開けた。

 「私の見解だけど……多分、中佐殺害が絡んでるんじゃないのかな」
 「おい、それってよ……」

 中佐と殺害。心当たりしかない。
 紛れもなくヒズベラによる報復攻撃だろう。

 「何? 知ってるの?」

 ここでレベッカが喋り出す。

 「知っているも何も、私達、その事件に関与したので……」
 「え!? か、関与!? どういうこと!?」

 アヴァカンは驚愕し、体をバタバタと揺らす。

 「その……俺達は訳あって軍の中佐にいじめられていた聖騎士の女性を助けて、その恋人のヒズベラ指導者と接触して、無理やりというか半ば強制的に報復攻撃に参加させられたんだ」
 「そ、そうだったんだね……」

 あまり納得していなさそうだが大丈夫だろうか。

 「まあそれが嘘か本当か一旦無しにして、帝都が危険になっているのには変わりない。戒厳令も発令されてるしね」

 戒厳令……言われてみれば、ここまで逃げて来る時、街を出歩く人間が極端に少なかったと記憶している。市民も承認も冒険者も騎士も誰も居なかった。とても不気味の雰囲気だった。

 「それとさっき報復に関与したって言ったよね?」
 「そ、そうだけど……」
 「本当ならかなりヤバいわ」
 「何で?」
 「そりゃ、バレたら逮捕どこじゃ済まないからよ。もし正規軍の諜報部に見つかったら、暗殺されるよ」
 「あ、暗殺だって!?」

 物騒な言葉が耳に流れて来て、思わず机を叩いて立ち上がる。

 「だから、そうならないようにセル坊とレベッカは今すぐ帝都を離れる事をオススメするよ」

 強く真っすぐにそう促され、レベッカへ振り向く。

 「らしいぜ、レベッカ」
 「……仕方ありません。ここは軍人の彼女の言う通りにしましょう」

 レベッカは少し寂しそうな目で、苦渋の決断といった様子で答えを定めた。
 アヴァカンの指示に従いつつ生活に必要なものをかき集めると、帝都の検問所近くに佇む廃墟を訪れていた。ここで別れを行う。

 「新聞は持っててね」
 「ありがとう」

 北レバノンの侵攻情報が記された新聞を受け取る。

 「じゃあ、寂しいけどしばらくの間はお別れだね。落ち着いたらまた会いに行くから」

 言葉ではなく敢えて敬礼での別れを済ますと、アヴァカンはポンチョのフードを深く被って闇の帝都へと姿をくらました。

 「……では、もう行きましょう。秘密警察に目をつけられては流石の私でも対処できません」
 「FSBみたいなのはどこにでも居るもんだな」

 意味はないと思うが変装用のサングラスを掛け、アヴァカンが逃走のためにと用意してくれた二頭の馬に乗り上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...