詩集

天草薫

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第五章

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―夏の嵐―
外はタールのような闇だった。
その中土砂降りの雨降りぬ。
夏の嵐と思いつつ夏は終わりかと思いつつ
僕はランタン一つ置いて自分の部屋に
寝そべっている。
こうしていると何だか想い出ばかりが僕の心をたたく。
そういえば、子供の時は雨のたび、母が同じ布団で
寝てくれた。
寝物語が楽しくて、守られていること感じてた。
そういえば、晴れより嵐が好きなのだと、青年の日に
告白した君は、ほかの男と結婚し、
「私もよ」という言葉と紅潮した君の頬ばかり
僕の胸に残されている。
そういえば、この実家に帰ってきたその時に
「お前は夢追い人だ。現実なんて見ちゃいない」と父と母に諭された。
僕はそれでも絶望するかわり、やっぱりいつでも
夢に逃げてしまう。
だから本当にでくのぼう。
それでもここにいるからには生きていかねばならぬのが
世の理なのだ。
けれどこんな嵐の夜のなると、その忘れられた僕の罪を暴くように
そんなとりとめのないことが
座敷童のように僕のもとを訪れるのだ。
嵐が止んだらーと僕は思う。
僕はちゃんと大人になって東京に帰ろう。
そして生きるために仕事をするのだ。
この嵐はきっと僕を立ち直らせるために
僕の心の中にもふくだろう。
涙の雨の後には必ず晴れが来るのだから
この夏最期の嵐を僕は厳粛に受け止めよう。
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