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第十八章
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―冬の朝―
冷たい冬の朝がありました
僕はその時五つでした
僕は毎日幼稚園に通います
一緒にそれを送り迎えしてくれるのは
近所の兄さんでした
ぼくより十も年上の兄さんは綺麗でした
長い髪を一つにまとめ白い肌に黒々とした目をしておりました
僕は兄さんと歩けることが嬉しくて手をつないでもらっては
跳ねるように子供らしく無邪気にふるまいましたが心の中ではいつでも別のことを
考えておりました
そう―五つの僕はひとえにいつかくる死が怖かったのです
それは誰にも言えぬ僕だけの世界でした
そして僕はそれについて人に言えない罪深く辛い悩みを持っていました
けれどとうとうある朝その考えを最も信頼している兄さんにだけは打ち明けました
「ねえ、兄さん。僕はほかの人が死ぬより自分が死ぬ方がずっと辛い。僕は醜い人間でしょうか」と
すると兄さんは黒目がちな目で優しく僕を見つめてこう言いました
「それは大切な考えだから君自身の中に大事にしまっておきなさい」と
それで僕の心はいくらか救われました
そして兄さんと秘密に心を通わせられたことをうれしく思いました
やがて僕は成長しました
十五歳になった僕にとって死は別の形で再び近づいてきました
深いまどろみの中に自分を消せるならーと僕は思いました
死はその時僕にとって恐ろしくそして優しいものになりました
それから何度目かの冬がきてその時兄さんは真っ赤な血を吐いて死にました
そして僕の世界は壊れました
僕はもう死を甘く美しいものだととらえることはできませんでした
僕は一人泣いて泣いて泣きました
そしてその時僕ははじめて自分が死ぬより兄さんが死ぬ方がずっと悲しいと思いました
そして僕がどれだけ兄さんを愛していたか初めて悟りました
それから僕は大人になりました
それでも―と今僕は思います
生きているということは誰かを愛することなのだ
死ぬということもまた誰かを愛することなのだ
この想いはコインの裏と表のように表裏一体出すなわちそれは僕に問ってとわのものであると
そう―これはすべて僕の遠い冬の朝の幻影です
冷たい冬の朝がありました
僕はその時五つでした
僕は毎日幼稚園に通います
一緒にそれを送り迎えしてくれるのは
近所の兄さんでした
ぼくより十も年上の兄さんは綺麗でした
長い髪を一つにまとめ白い肌に黒々とした目をしておりました
僕は兄さんと歩けることが嬉しくて手をつないでもらっては
跳ねるように子供らしく無邪気にふるまいましたが心の中ではいつでも別のことを
考えておりました
そう―五つの僕はひとえにいつかくる死が怖かったのです
それは誰にも言えぬ僕だけの世界でした
そして僕はそれについて人に言えない罪深く辛い悩みを持っていました
けれどとうとうある朝その考えを最も信頼している兄さんにだけは打ち明けました
「ねえ、兄さん。僕はほかの人が死ぬより自分が死ぬ方がずっと辛い。僕は醜い人間でしょうか」と
すると兄さんは黒目がちな目で優しく僕を見つめてこう言いました
「それは大切な考えだから君自身の中に大事にしまっておきなさい」と
それで僕の心はいくらか救われました
そして兄さんと秘密に心を通わせられたことをうれしく思いました
やがて僕は成長しました
十五歳になった僕にとって死は別の形で再び近づいてきました
深いまどろみの中に自分を消せるならーと僕は思いました
死はその時僕にとって恐ろしくそして優しいものになりました
それから何度目かの冬がきてその時兄さんは真っ赤な血を吐いて死にました
そして僕の世界は壊れました
僕はもう死を甘く美しいものだととらえることはできませんでした
僕は一人泣いて泣いて泣きました
そしてその時僕ははじめて自分が死ぬより兄さんが死ぬ方がずっと悲しいと思いました
そして僕がどれだけ兄さんを愛していたか初めて悟りました
それから僕は大人になりました
それでも―と今僕は思います
生きているということは誰かを愛することなのだ
死ぬということもまた誰かを愛することなのだ
この想いはコインの裏と表のように表裏一体出すなわちそれは僕に問ってとわのものであると
そう―これはすべて僕の遠い冬の朝の幻影です
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