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口寄せ口紅、古賀玲奈編
幼馴染の雄二くん
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週末アイドルから勉学に励む学生に戻った明くる日の朝の登校日。
私の不安と反比例するように雲一つない澄んだ空にお天道様が笑顔で微笑んでいらっしゃいました。
「玲奈ー! お弁当持ったー?」
自宅の玄関で靴を履いていると、キッチンの方から聞こえるお母さんの救急車ばりの大声が私の耳を驚かせ、秘め事をした胸がソワソワしてしまいます。
おばあちゃんが住んでいるご家庭あるある話しですが、お年を召した耳の遠い方と同居する場合、自然と声が大きくなると言う都市伝説はまさにこの事なんでしょうか?
「持ったよー! 行ってきますー!」
実は、寮に泊まり込み練習の話しはまだお母さんに話せていません。「駄目!」と言われるのが経験上、分かっているからです。私は逃げるように玄関を開け家を飛び出しました。
「あ、おはよう、玲奈」
扉を開け声の先に目を向けると、お隣の豪邸で幼馴染の中村雄二《なかむらゆうじ》君が我が家の犬、アシベンと戯れておりました。
わざわざアシベンをご自身の豪邸の広いお庭に誘い入れ、楽しそうにはしゃいでおります。お年を召した柴犬アシベンですが、雄二君とはいつも楽しそう。
私が家を出ると、雄二君はアシベンの手綱を握り、我が家の犬小屋に繋ぎ戻してくれました。
「おはようです。いつもアシベンと遊んでくれてありがとです」
同学年の雄二君。大きな黒縁眼鏡のフレームを親指でグイっと上げる、なんとも中二病っぽいキザな仕草は彼の小学生からの癖です。
ですが、雄二君はとても頭が良い方です。なんでも大学は難関な医学部を目指しているとの事で、いつも勉学に励んでおります。私とはお隣通しの幼馴染で、久しい関係ではありますが、彼はクラスの女子達からはあまり良い印象を持たれておりません。あまり友達が居ないようにも見えます。
それは何故かと言うと私が観察した限り、彼の知的な所が仇となり、人を見下したような口癖が際立っているが原因と思われます。何度か言葉遣いを改めた方が良いよとアドバイスをしたつもりでしたが、へそ曲がりでひねくれた性格は天性の才能とでも思える程、理論と理屈っぽい言葉責めで私の意見を払いのけるのです。
今までの経験上、口喧嘩では絶対に雄二君には勝てません。インテリで冷静で知的でスキのない雰囲気はどことなく私の苦手なタイプです。
ですが、決して雄二君は悪い人間ではございません。
こう見えても、いざという時に知恵や力を貸してくれてとても頼りになる存在なのです。
事は一刻を争う由々しき問題です。頼れる物なら猫の手でも借りる予定でございます。
お母さんに作戦を聞かれては全てが台無しになってしまいます。
私は雄二君の腕を掴み、自宅が見えなくなる位置まで連れて行きました。
「おい、一体どうしたんだ? 玲奈」
ここまでくればいいでしょうか?
家から数百メートル離れた事を確認した私は体をUターンさせ、雄二君を通せんぼするように彼の前に立ち、私は雄二君の手を掴みました。
「雄二君! 一生のお願いです! 私の願いを聞いて下さい!」
私は深く頭を下げました。よくよく考えればこの光景、前にも何処かで見たことあったような……。
「……」
雄二君は眼鏡のフレームを親指でグイっと上げるとおもむろに口を開きました。
「玲奈。君の一生のお願いは高校に入ってから三十二回目だ。なんなら小学生からの分を合計すると九十八回目になる。もしこれを入れると九十九回目。改めて聞きたいのだが……玲奈にとって一生とはなんぞや? 一体全体、何回転生する予定でいるのかい? きみは」
雄二君の毒舌フレーズは想定内です。と言うか、私でも忘れていたのに、回数まで数えていたとは、中々の性根の悪さです。皆が嫌ってしまう理由がよく分かります。ですが、私はグッっと我慢して頭を下げ続けました。
「ちなみに最多のお願いは勉強教えてが三十五回。次が欠席の嘘報告の手助けが二十一回、なんなら君の『一生のお願いリスト』をパソコンで表にしてあげてもいいけど?」
おそロシアです。内容まで全部把握してるなんて、まるで地獄の底まで追い掛けてきそうな執着心。恐怖を感じます。ですが、何度も言うように私にはアイドルを続けると言う神明がございます。悪魔には魂を売れませんが、アイドル存続の為なら雄二君に魂を捧げても構いません。
「分かりました。では、もし私が百回目のお願いをする時は雄二の一生のお願いをなんでも一つ聞いてあげます!」
すると雄二君の鋭い縦チョップが私の頭頂部にクリーンヒット。私はアイドルなしからぬ、「ぶげぇ」っと言う声を零し、痛みに悶絶しました。
「どうして玲奈が百個聞けて、俺が一個なんだ? 割に合わんだろ」
「私の座右の銘は一日一生です。一日を一生のように全力で生きている私にとって、一生のお願いは使用制限がないのです!」
すると再び雄二君の鋭い縦チョップが私の頭頂部にクリーンヒット。私はアイドルなしからぬ、「うべぇ」っと言う声を零し、痛みに悶絶しました。
「屁理屈女め。まあいい、後二回で俺の一生のお願いを聞くと言ったな、アイドルに誓って二言は無いな」
雄二君は眼鏡のレンズを光らせ、黒縁のフレームを親指でグイっと上げ、不敵な笑みを浮かべていました。ぬぬぬ。雄二君がどんなお願いをするか、想像するだけで背筋が凍りそうです。ですが、背に腹は代えられません。今回ばかりはどうしても雄二君の助けが必要なんです。
「も、もちろんです」
「よし、それで手を打とう、話を聞こうじゃないか」
〇
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ンとお昼のチャイムが学校に鳴り響き、私は鞄の中に収めているお弁当箱を取り出しました。
「玲奈ー! 一緒にお昼食べよう!」
いつも一緒にお弁当を食べるクラスの真理ちゃんが元気よく声を掛けて下さいました。ですが今日は先客に予約があります。仕方なし私はお断りをいれました。
「ごめんなさい真理ちゃん! 今日は雄二君に相談があるのです」
「えー。どうせまた勉強でしょ? 玲奈バカだもんね~」
フットワークの軽い真理ちゃんの言葉が心にグサっと刺さるのですが、雄二君とつるむ理由イコール勉強だと、長年の理由によりクラスの皆に認知されているようです。変な噂が立たないのを嬉しく思う反面。バカ認定されているのが不快に感じる複雑な気分です。
ですが、今回ばかしは波風立てられない作戦の為、逆にそれが良かったかも知れません。
私は雄二君の座席の前の男子に席を変わって頂き、お昼ご飯のお弁当を二人で食べながら、彼に作戦を説明する所存です。
雄二君は相変わらず売店で販売している既製品のお弁当を机に置いていました。私のはお母さんが用意してくれたお手製のお弁当を机に置き、お互い食べながら作戦を説明しました。
「つまり、結論から言うと嘘の手助けをしろという事か、玲奈の両親、梅婆ちゃんと明子さんには、中間テストがヤバイから、期末試験まで、俺に勉強教えて貰う理由で我が中村家に泊まり込みで勉強する。とう言う口実で、実は玲奈は寮で練習に明け暮れる。そうゆうことかな?」
「そうです! しょうゆうことです!」
私の説明力の無さもありましたが、作戦をやっと雄二君に理解して頂けて嬉しさのあまり、口に入っていた、ご飯粒が雄二君の顔面にニ、三粒飛んでしまいした。
雄二君はなにやら溜息をつきながら、眼鏡を外しハンカチで顔を拭くと、再び眼鏡を掛け、眉間にシワを寄せ、意味深な表情を浮かべながら眼鏡のフレームを親指でグイっと上げました。
「玲奈……残念な事に君の脳みそはピーマンのようにスッカスカなんだ。君から作戦があると聞いた時点で、もう結論は出ている。絶対無理だ」
私は驚きのあまり、持っていた箸を弁当箱の上に落としてしまいました。
「なんで無理って言いきれるのですか? 私は確かに頭は良くないかもしれませんが、ピーマンを舐めてはいけません! これでも昨晩、練りに練った作戦なのです!」
私は当てつけのように自分のお弁当に入っていた野菜炒めのピーマンを雄二君のお弁当に投入しました。
「………」
雄二君は投入された炒めピーマンを箸で一つ一つ掴んでは、何故無理なのか説明し、私のお弁当箱に戻していきました。
「第一、うちのお母さんと明子さんは僕たちが小学生からの付き合いでツーカーの仲なんだ、家に玲奈が居ない事くらいすぐにバレるに決まってる。第二、一日二日ならなんとかなるだろうが、不登校を繰り返せば、自然と学校から直接ご両親に連絡が入る。その時点でバレる。第三、仮に嘘が突き通せたとしても、CDリリースライブの年末までの間、学校を無理やり休めば、出席日数が足りず、留年か、退学は避けられない。玲奈はそれでも良いのか?」
私の考えた作戦がことごとく雄二君に論破され、ショックの余り箸に掴んでいた、竹輪の煮付けを床に落としてしまいました。
「無理なのですか……ではどうすればいいのですか?」
すると、雄二君は私が床に落とした竹輪の煮付けを手で拾い上げました。
「……どうして遠回りをする必要があるんだい?」
「え?」
「なぜ嘘を付く方法を選ぶのかって事」
よくよく考えると何故でしょう? 無意識の内にこの選択をしていた気がします。脳裏に浮かんだのはお母さんの怒った表情でした。
「お母さんが、厳しいからです」
「アイドルで有名になる。それが玲奈の夢なんだろう? その為に今まで玲奈はアイドルを頑張って来たんだろ? 君の夢と言うのはお母さんに相談出来ない程度の物なのかい?」
雄二君に痛い所を付かれ、回答を困惑してしまいました。私はおかずを口に頬張り、言い訳の時間を稼ごうと思ったのですが、箸で掴もうとするミニトマトは逃げ続けていました。悔しながら、まるで今の私のように惨めです。
「ち、違います。でもお母さんは一人親で私をここまで育ててくれました。アイドルは続けたい。でもお母さんの期待も裏切りたくないんです」
「僕は欲張る事は行けない事とは思わない。でも本当に欲しい物があるなら、持っている物を手放す覚悟も必要と思うよ」
雄二君は持っていた箸をおいて、私の弁当箱の中で逃げていたミニトマトを躊躇なく指で摘まむと自身の口に頬張りました。
私は思わず「アッ」と声を漏らしたのですが、雄二君は何気ない顔で答えます。
「モグモグ、休学っていう選択肢もある。その分後期には補修授業とテストの山になるだろうけど。その時は手伝うよ。まずはしっかりお母さんと話さないと」
そう言うと雄二君は立ち上がり、先ほど拾った竹輪を廊下の手洗い場に持って行き軽くすすぎ、再び教室に戻って来ました。
「この竹輪を捨てるかどうかは決めるのは自分のように、無理かどうかを決めるのは玲奈次第だよ」
ちょっとくさいですが美味い事言いますね。雄二君は竹輪の煮付けを私に見せると私の目の前で食べてしまいました。
「モグモグ……やっぱり明子さんのお弁当は美味しい」
美味しそうに笑顔で頬張る姿が憎たらしいです。友達が居ないのも理解出来ます。でも雄二君の意見は正しと思っていた私がそこにいました。
「……分かりました。雄二君の言う通りにしてみます」
「うん。それが正解」
雄二君は頬の筋肉を上げ、笑顔を見せました。普段彼が見せない笑顔を不意打ちで見るとなんだか良く解らない気持ちがこみ上げて来ます。とりあえず、私は子どもの時からお母さんに叩きこまれた、感謝の言葉を口にしようとしましたが、内心、雄二君の性格の悪さ故に言葉を躊躇してしまい、恥ずかしながら音量が極小でした。
「……ありがとです」
「何だって? 大きな声で言わないと相手には伝わない。幼稚園児でも知っている事。感謝の気持ちが足りないんじゃないのかい?」
ちきしょうめです。雄二君は揚げ足取りの天才野郎です。やっぱり嫌いです。
「ありがとうございやしたー!」
「いや、感謝なんて要らないから」
このクソったれです! じゃあ何故言わせたんですか?
雄二君は鞄の中から財布を取り出し、お札を私に差し出しました。
「その替わりに年末の春風サンセットのリリースライブ、僕の一番の推し、和葉ちゃんをベストポジションで見れる席のチケットを用意して欲しいな」
実は雄二君もこう言っちゃなんですが、春風セブンティーンのファンでもあります。ですが、推しは幼馴染の私では無く、一番人気の和葉ちゃん。それを明らかに誇張し見せつけてくる所が雄二君の嫌いな所でもあります。私は皮肉を皮肉で突き返しました。
「なんで私がそこまでしなくちゃいけないんですか?」
「もちろんタダとは言わない。御礼と言っちゃなんだが、中村家の経済力を使って、春風サンセットのCDをクラス全員分購入しよう。ちなみに投票券は誰に入れて欲しいかは玲奈次第だ」
「雄二様! 是非チケット用意させて頂きます!」
悔しいですが即答でした。悪魔に魂は売れませんが、投票券を獲得できるならチケットをご用意する事くらい事務所に頭を下げればなんとかなります。この際です、プライドもクソもありません。有名になってもサインなんて絶対書いてあげません。私は苦汁を呑み込み雄二君が持っていたお札を受け取りました。
雄二君は眼鏡を光らせフレームを親指でグイっと上げ答えました。
「期待してるよ」
雄二君は頭は良くてお金持ち。少しイタい人ではありますが、私なんかと比べると人生を余裕でこなせている感じがして正直羨ましいです。
給食時間の終わりを伝えるチャイムがなり、お弁当箱をしまった私は羨ましさから言葉を漏らしてしまいました。
「でも良いですよね。雄二君はお金持ちの息子で、苦労しないし。自由にお金が使えるんですもの」
それを聞いた雄二君は表情が少し強張っていました。
「そんないい物じゃないよ。お金があっても買えない物は沢山ある。俺には両親と遊んでもらう時間は一度も買えなかったし、進路だって選択肢はない、強制的に医学部だ。例え何浪したって医学部を目指さなければならない。玲奈には分からないかもしれないが、本当にやりたい事はお金じゃ買えないんだよ」
雄二君は空っぽになったプラスチック製のお弁当をぐしゃぐしゃにすると、ビニール袋に入れ、ゴミ箱に投げ捨てました。
「玲奈のご家族を見ていたら……俺はお金なんて必要ないと思うけどね」
「そうですかね? 絶対お金はあった方がいいと思いますけどね」
私の表情をキョトンとみる雄二君はどことなく張り詰めた表情が解けたように見えました。
「玲奈は脳みそピーマンだからね。分からなくていいよ」
「ホント失礼な人です。だから皆に嫌われるんです」
「え……? 僕嫌われてるの?」
ああ! もうそう言うのお腹いっぱいです。知りません!
私はそそくさと自分の机に戻り勉学に励みました。
〇
雄二君が教えてくれたように、この日の夕食後、お母さんとおばぁちゃんと春風セブンティーンの合宿の件を話しました。案の定、いい顔色は見せてくれません。ですが私も好きだからこそ、ここで食い下がれません。反感を覚悟に思いの内を母にぶちまけました。
「今、選抜選挙に勝ち進まなきゃ、アイドルとして成功できないの!」
「駄目! 学校は絶対に卒業してもらう!」
「だから選挙が終わったら雄二君に協力して貰って勉強するって!」
「玲奈の成績見てたら大丈夫って思えないのよ!」
私とお母さんは激しい口論を何度も繰り返しました。ですが一向に埒が明かきません。
その間を冷静にお茶を啜りながら見ていたおばぁちゃんは急に立ち上がり、「せからしかーー!」っと怒鳴り声を上げました。
私とお母さんはおばぁちゃんの十年ぶりであろう大声に深く動揺しました。
「明子。玲奈の好きにさせたり。あんただって、英治さんとの結婚、あれだけ反対さたと、覚えとーと?」
「お母さん……でも!」
「血は争えんばい。玲奈聞きたかか? あんたのとうさんとかーさんの馴れ初め」
あれだけ気が強いお母さんが真っ赤な顔して慌てています。私はお父さんを小さい頃に亡くしてから、お父さんの事を殆ど知りません。好奇心が心の縁にみなぎってきました。
お父さんの事なんて知りえる機会はもう二度と無いかもしれません。私は即答しました。「うん!」
「もう止めて! 母さん! 恥ずかしい! 黙っとって!」
お母さんは私とおばあちゃんの会話を塞ぐように大きな声で上書きします。
おばあちゃんは待ってましたと言うように、私にウインクを見せました。
「玲奈は選挙終わるまでってゆっちょるし、頭よか雄二くんも勉強手伝っちゃるってゆっちょーけん、大丈夫ばい、駄目でももっぺん留年すりゃよか」
「お母さん……でも!」
「年金の蓄えもあるけん、大丈夫ばい! ははは!」
「もう! 勝手にしなさい!」
お母さんは怒鳴り声を投げ捨てると立ち上がり、夕飯の食器を台所で洗い始めました。
「……お母さん」
「あ! そうたい! 玲奈、これお土産」
私はおばぁちゃんに古びた年季が入った口紅を手渡されたました。中の紅は暗い桑の実色。ハロウィンは終わったし、使い道は……もうちょっと女の色気が高まったらあるかな……?
「使うか使わんか自分で決めんしゃい」
「お母さん。おばぁちゃん、ありがとう」
私は、決意を胸に寮生活をスタートさせるのでした。
私の不安と反比例するように雲一つない澄んだ空にお天道様が笑顔で微笑んでいらっしゃいました。
「玲奈ー! お弁当持ったー?」
自宅の玄関で靴を履いていると、キッチンの方から聞こえるお母さんの救急車ばりの大声が私の耳を驚かせ、秘め事をした胸がソワソワしてしまいます。
おばあちゃんが住んでいるご家庭あるある話しですが、お年を召した耳の遠い方と同居する場合、自然と声が大きくなると言う都市伝説はまさにこの事なんでしょうか?
「持ったよー! 行ってきますー!」
実は、寮に泊まり込み練習の話しはまだお母さんに話せていません。「駄目!」と言われるのが経験上、分かっているからです。私は逃げるように玄関を開け家を飛び出しました。
「あ、おはよう、玲奈」
扉を開け声の先に目を向けると、お隣の豪邸で幼馴染の中村雄二《なかむらゆうじ》君が我が家の犬、アシベンと戯れておりました。
わざわざアシベンをご自身の豪邸の広いお庭に誘い入れ、楽しそうにはしゃいでおります。お年を召した柴犬アシベンですが、雄二君とはいつも楽しそう。
私が家を出ると、雄二君はアシベンの手綱を握り、我が家の犬小屋に繋ぎ戻してくれました。
「おはようです。いつもアシベンと遊んでくれてありがとです」
同学年の雄二君。大きな黒縁眼鏡のフレームを親指でグイっと上げる、なんとも中二病っぽいキザな仕草は彼の小学生からの癖です。
ですが、雄二君はとても頭が良い方です。なんでも大学は難関な医学部を目指しているとの事で、いつも勉学に励んでおります。私とはお隣通しの幼馴染で、久しい関係ではありますが、彼はクラスの女子達からはあまり良い印象を持たれておりません。あまり友達が居ないようにも見えます。
それは何故かと言うと私が観察した限り、彼の知的な所が仇となり、人を見下したような口癖が際立っているが原因と思われます。何度か言葉遣いを改めた方が良いよとアドバイスをしたつもりでしたが、へそ曲がりでひねくれた性格は天性の才能とでも思える程、理論と理屈っぽい言葉責めで私の意見を払いのけるのです。
今までの経験上、口喧嘩では絶対に雄二君には勝てません。インテリで冷静で知的でスキのない雰囲気はどことなく私の苦手なタイプです。
ですが、決して雄二君は悪い人間ではございません。
こう見えても、いざという時に知恵や力を貸してくれてとても頼りになる存在なのです。
事は一刻を争う由々しき問題です。頼れる物なら猫の手でも借りる予定でございます。
お母さんに作戦を聞かれては全てが台無しになってしまいます。
私は雄二君の腕を掴み、自宅が見えなくなる位置まで連れて行きました。
「おい、一体どうしたんだ? 玲奈」
ここまでくればいいでしょうか?
家から数百メートル離れた事を確認した私は体をUターンさせ、雄二君を通せんぼするように彼の前に立ち、私は雄二君の手を掴みました。
「雄二君! 一生のお願いです! 私の願いを聞いて下さい!」
私は深く頭を下げました。よくよく考えればこの光景、前にも何処かで見たことあったような……。
「……」
雄二君は眼鏡のフレームを親指でグイっと上げるとおもむろに口を開きました。
「玲奈。君の一生のお願いは高校に入ってから三十二回目だ。なんなら小学生からの分を合計すると九十八回目になる。もしこれを入れると九十九回目。改めて聞きたいのだが……玲奈にとって一生とはなんぞや? 一体全体、何回転生する予定でいるのかい? きみは」
雄二君の毒舌フレーズは想定内です。と言うか、私でも忘れていたのに、回数まで数えていたとは、中々の性根の悪さです。皆が嫌ってしまう理由がよく分かります。ですが、私はグッっと我慢して頭を下げ続けました。
「ちなみに最多のお願いは勉強教えてが三十五回。次が欠席の嘘報告の手助けが二十一回、なんなら君の『一生のお願いリスト』をパソコンで表にしてあげてもいいけど?」
おそロシアです。内容まで全部把握してるなんて、まるで地獄の底まで追い掛けてきそうな執着心。恐怖を感じます。ですが、何度も言うように私にはアイドルを続けると言う神明がございます。悪魔には魂を売れませんが、アイドル存続の為なら雄二君に魂を捧げても構いません。
「分かりました。では、もし私が百回目のお願いをする時は雄二の一生のお願いをなんでも一つ聞いてあげます!」
すると雄二君の鋭い縦チョップが私の頭頂部にクリーンヒット。私はアイドルなしからぬ、「ぶげぇ」っと言う声を零し、痛みに悶絶しました。
「どうして玲奈が百個聞けて、俺が一個なんだ? 割に合わんだろ」
「私の座右の銘は一日一生です。一日を一生のように全力で生きている私にとって、一生のお願いは使用制限がないのです!」
すると再び雄二君の鋭い縦チョップが私の頭頂部にクリーンヒット。私はアイドルなしからぬ、「うべぇ」っと言う声を零し、痛みに悶絶しました。
「屁理屈女め。まあいい、後二回で俺の一生のお願いを聞くと言ったな、アイドルに誓って二言は無いな」
雄二君は眼鏡のレンズを光らせ、黒縁のフレームを親指でグイっと上げ、不敵な笑みを浮かべていました。ぬぬぬ。雄二君がどんなお願いをするか、想像するだけで背筋が凍りそうです。ですが、背に腹は代えられません。今回ばかりはどうしても雄二君の助けが必要なんです。
「も、もちろんです」
「よし、それで手を打とう、話を聞こうじゃないか」
〇
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ンとお昼のチャイムが学校に鳴り響き、私は鞄の中に収めているお弁当箱を取り出しました。
「玲奈ー! 一緒にお昼食べよう!」
いつも一緒にお弁当を食べるクラスの真理ちゃんが元気よく声を掛けて下さいました。ですが今日は先客に予約があります。仕方なし私はお断りをいれました。
「ごめんなさい真理ちゃん! 今日は雄二君に相談があるのです」
「えー。どうせまた勉強でしょ? 玲奈バカだもんね~」
フットワークの軽い真理ちゃんの言葉が心にグサっと刺さるのですが、雄二君とつるむ理由イコール勉強だと、長年の理由によりクラスの皆に認知されているようです。変な噂が立たないのを嬉しく思う反面。バカ認定されているのが不快に感じる複雑な気分です。
ですが、今回ばかしは波風立てられない作戦の為、逆にそれが良かったかも知れません。
私は雄二君の座席の前の男子に席を変わって頂き、お昼ご飯のお弁当を二人で食べながら、彼に作戦を説明する所存です。
雄二君は相変わらず売店で販売している既製品のお弁当を机に置いていました。私のはお母さんが用意してくれたお手製のお弁当を机に置き、お互い食べながら作戦を説明しました。
「つまり、結論から言うと嘘の手助けをしろという事か、玲奈の両親、梅婆ちゃんと明子さんには、中間テストがヤバイから、期末試験まで、俺に勉強教えて貰う理由で我が中村家に泊まり込みで勉強する。とう言う口実で、実は玲奈は寮で練習に明け暮れる。そうゆうことかな?」
「そうです! しょうゆうことです!」
私の説明力の無さもありましたが、作戦をやっと雄二君に理解して頂けて嬉しさのあまり、口に入っていた、ご飯粒が雄二君の顔面にニ、三粒飛んでしまいした。
雄二君はなにやら溜息をつきながら、眼鏡を外しハンカチで顔を拭くと、再び眼鏡を掛け、眉間にシワを寄せ、意味深な表情を浮かべながら眼鏡のフレームを親指でグイっと上げました。
「玲奈……残念な事に君の脳みそはピーマンのようにスッカスカなんだ。君から作戦があると聞いた時点で、もう結論は出ている。絶対無理だ」
私は驚きのあまり、持っていた箸を弁当箱の上に落としてしまいました。
「なんで無理って言いきれるのですか? 私は確かに頭は良くないかもしれませんが、ピーマンを舐めてはいけません! これでも昨晩、練りに練った作戦なのです!」
私は当てつけのように自分のお弁当に入っていた野菜炒めのピーマンを雄二君のお弁当に投入しました。
「………」
雄二君は投入された炒めピーマンを箸で一つ一つ掴んでは、何故無理なのか説明し、私のお弁当箱に戻していきました。
「第一、うちのお母さんと明子さんは僕たちが小学生からの付き合いでツーカーの仲なんだ、家に玲奈が居ない事くらいすぐにバレるに決まってる。第二、一日二日ならなんとかなるだろうが、不登校を繰り返せば、自然と学校から直接ご両親に連絡が入る。その時点でバレる。第三、仮に嘘が突き通せたとしても、CDリリースライブの年末までの間、学校を無理やり休めば、出席日数が足りず、留年か、退学は避けられない。玲奈はそれでも良いのか?」
私の考えた作戦がことごとく雄二君に論破され、ショックの余り箸に掴んでいた、竹輪の煮付けを床に落としてしまいました。
「無理なのですか……ではどうすればいいのですか?」
すると、雄二君は私が床に落とした竹輪の煮付けを手で拾い上げました。
「……どうして遠回りをする必要があるんだい?」
「え?」
「なぜ嘘を付く方法を選ぶのかって事」
よくよく考えると何故でしょう? 無意識の内にこの選択をしていた気がします。脳裏に浮かんだのはお母さんの怒った表情でした。
「お母さんが、厳しいからです」
「アイドルで有名になる。それが玲奈の夢なんだろう? その為に今まで玲奈はアイドルを頑張って来たんだろ? 君の夢と言うのはお母さんに相談出来ない程度の物なのかい?」
雄二君に痛い所を付かれ、回答を困惑してしまいました。私はおかずを口に頬張り、言い訳の時間を稼ごうと思ったのですが、箸で掴もうとするミニトマトは逃げ続けていました。悔しながら、まるで今の私のように惨めです。
「ち、違います。でもお母さんは一人親で私をここまで育ててくれました。アイドルは続けたい。でもお母さんの期待も裏切りたくないんです」
「僕は欲張る事は行けない事とは思わない。でも本当に欲しい物があるなら、持っている物を手放す覚悟も必要と思うよ」
雄二君は持っていた箸をおいて、私の弁当箱の中で逃げていたミニトマトを躊躇なく指で摘まむと自身の口に頬張りました。
私は思わず「アッ」と声を漏らしたのですが、雄二君は何気ない顔で答えます。
「モグモグ、休学っていう選択肢もある。その分後期には補修授業とテストの山になるだろうけど。その時は手伝うよ。まずはしっかりお母さんと話さないと」
そう言うと雄二君は立ち上がり、先ほど拾った竹輪を廊下の手洗い場に持って行き軽くすすぎ、再び教室に戻って来ました。
「この竹輪を捨てるかどうかは決めるのは自分のように、無理かどうかを決めるのは玲奈次第だよ」
ちょっとくさいですが美味い事言いますね。雄二君は竹輪の煮付けを私に見せると私の目の前で食べてしまいました。
「モグモグ……やっぱり明子さんのお弁当は美味しい」
美味しそうに笑顔で頬張る姿が憎たらしいです。友達が居ないのも理解出来ます。でも雄二君の意見は正しと思っていた私がそこにいました。
「……分かりました。雄二君の言う通りにしてみます」
「うん。それが正解」
雄二君は頬の筋肉を上げ、笑顔を見せました。普段彼が見せない笑顔を不意打ちで見るとなんだか良く解らない気持ちがこみ上げて来ます。とりあえず、私は子どもの時からお母さんに叩きこまれた、感謝の言葉を口にしようとしましたが、内心、雄二君の性格の悪さ故に言葉を躊躇してしまい、恥ずかしながら音量が極小でした。
「……ありがとです」
「何だって? 大きな声で言わないと相手には伝わない。幼稚園児でも知っている事。感謝の気持ちが足りないんじゃないのかい?」
ちきしょうめです。雄二君は揚げ足取りの天才野郎です。やっぱり嫌いです。
「ありがとうございやしたー!」
「いや、感謝なんて要らないから」
このクソったれです! じゃあ何故言わせたんですか?
雄二君は鞄の中から財布を取り出し、お札を私に差し出しました。
「その替わりに年末の春風サンセットのリリースライブ、僕の一番の推し、和葉ちゃんをベストポジションで見れる席のチケットを用意して欲しいな」
実は雄二君もこう言っちゃなんですが、春風セブンティーンのファンでもあります。ですが、推しは幼馴染の私では無く、一番人気の和葉ちゃん。それを明らかに誇張し見せつけてくる所が雄二君の嫌いな所でもあります。私は皮肉を皮肉で突き返しました。
「なんで私がそこまでしなくちゃいけないんですか?」
「もちろんタダとは言わない。御礼と言っちゃなんだが、中村家の経済力を使って、春風サンセットのCDをクラス全員分購入しよう。ちなみに投票券は誰に入れて欲しいかは玲奈次第だ」
「雄二様! 是非チケット用意させて頂きます!」
悔しいですが即答でした。悪魔に魂は売れませんが、投票券を獲得できるならチケットをご用意する事くらい事務所に頭を下げればなんとかなります。この際です、プライドもクソもありません。有名になってもサインなんて絶対書いてあげません。私は苦汁を呑み込み雄二君が持っていたお札を受け取りました。
雄二君は眼鏡を光らせフレームを親指でグイっと上げ答えました。
「期待してるよ」
雄二君は頭は良くてお金持ち。少しイタい人ではありますが、私なんかと比べると人生を余裕でこなせている感じがして正直羨ましいです。
給食時間の終わりを伝えるチャイムがなり、お弁当箱をしまった私は羨ましさから言葉を漏らしてしまいました。
「でも良いですよね。雄二君はお金持ちの息子で、苦労しないし。自由にお金が使えるんですもの」
それを聞いた雄二君は表情が少し強張っていました。
「そんないい物じゃないよ。お金があっても買えない物は沢山ある。俺には両親と遊んでもらう時間は一度も買えなかったし、進路だって選択肢はない、強制的に医学部だ。例え何浪したって医学部を目指さなければならない。玲奈には分からないかもしれないが、本当にやりたい事はお金じゃ買えないんだよ」
雄二君は空っぽになったプラスチック製のお弁当をぐしゃぐしゃにすると、ビニール袋に入れ、ゴミ箱に投げ捨てました。
「玲奈のご家族を見ていたら……俺はお金なんて必要ないと思うけどね」
「そうですかね? 絶対お金はあった方がいいと思いますけどね」
私の表情をキョトンとみる雄二君はどことなく張り詰めた表情が解けたように見えました。
「玲奈は脳みそピーマンだからね。分からなくていいよ」
「ホント失礼な人です。だから皆に嫌われるんです」
「え……? 僕嫌われてるの?」
ああ! もうそう言うのお腹いっぱいです。知りません!
私はそそくさと自分の机に戻り勉学に励みました。
〇
雄二君が教えてくれたように、この日の夕食後、お母さんとおばぁちゃんと春風セブンティーンの合宿の件を話しました。案の定、いい顔色は見せてくれません。ですが私も好きだからこそ、ここで食い下がれません。反感を覚悟に思いの内を母にぶちまけました。
「今、選抜選挙に勝ち進まなきゃ、アイドルとして成功できないの!」
「駄目! 学校は絶対に卒業してもらう!」
「だから選挙が終わったら雄二君に協力して貰って勉強するって!」
「玲奈の成績見てたら大丈夫って思えないのよ!」
私とお母さんは激しい口論を何度も繰り返しました。ですが一向に埒が明かきません。
その間を冷静にお茶を啜りながら見ていたおばぁちゃんは急に立ち上がり、「せからしかーー!」っと怒鳴り声を上げました。
私とお母さんはおばぁちゃんの十年ぶりであろう大声に深く動揺しました。
「明子。玲奈の好きにさせたり。あんただって、英治さんとの結婚、あれだけ反対さたと、覚えとーと?」
「お母さん……でも!」
「血は争えんばい。玲奈聞きたかか? あんたのとうさんとかーさんの馴れ初め」
あれだけ気が強いお母さんが真っ赤な顔して慌てています。私はお父さんを小さい頃に亡くしてから、お父さんの事を殆ど知りません。好奇心が心の縁にみなぎってきました。
お父さんの事なんて知りえる機会はもう二度と無いかもしれません。私は即答しました。「うん!」
「もう止めて! 母さん! 恥ずかしい! 黙っとって!」
お母さんは私とおばあちゃんの会話を塞ぐように大きな声で上書きします。
おばあちゃんは待ってましたと言うように、私にウインクを見せました。
「玲奈は選挙終わるまでってゆっちょるし、頭よか雄二くんも勉強手伝っちゃるってゆっちょーけん、大丈夫ばい、駄目でももっぺん留年すりゃよか」
「お母さん……でも!」
「年金の蓄えもあるけん、大丈夫ばい! ははは!」
「もう! 勝手にしなさい!」
お母さんは怒鳴り声を投げ捨てると立ち上がり、夕飯の食器を台所で洗い始めました。
「……お母さん」
「あ! そうたい! 玲奈、これお土産」
私はおばぁちゃんに古びた年季が入った口紅を手渡されたました。中の紅は暗い桑の実色。ハロウィンは終わったし、使い道は……もうちょっと女の色気が高まったらあるかな……?
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