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いざ! 第一村人発見からの信者獲得大作戦!!
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「きた……きたぞ……とうとう、俺はやったんだああああァァァ……!!」
ジャングルを抜けるのは、それはもう大変だった。
そりゃもう、大変だったのだ。
大事なことだから何度でも伝えたい、それほどヨシヤは大変な思いをしたのだ。
襲い来る巨大な虫、よくわからない虫、響いてくる羽音、それを迎撃する蟻たちの攻撃によって聞こえてくるなんか潰れる音。
眠る時は神域に戻って妻の作ってくれたあったかなご飯を食べて、ふかふかにしてくれた寝袋や毛布に包まって眠るのだけれどそりゃあもう、彼はうなされまくったのである。
おかげでハナや蟻たちにはものすごく心配されたものの、ヨシヤは諦めなかった。
それはもう、彼がしていることといえば神域の外に出て蟻たちに守られながら、前に進むことであった。
時折、索敵だけでなく果物や獲物を狩りに行った別働隊が変なモノを拾ってきたら置いていくように説得する役でもあった。
ちなみに今のところヨシヤが見た中で一番持って行くわけにはいかないと思ったのは縄でぐるぐる巻きにされ、お札を貼られたツボだ。
絶対に呪われていると確信したヨシヤは蟻たちに遠くへと捨ててもらった。
それでも、連日の蟻たちとの行軍は彼にとって過酷なものであった。
現代日本の便利な乗り物に慣れた、しかもそろそろ加齢で衰えを感じていた中年男性にとっては厳しい行軍であった。
ヨシヤは何度もめげそうになったが、彼を信頼してくれている蟻たちの姿と、応援してくれる妻の姿に折れそうな心を鼓舞し、前へと進んだのである。
ここまで来たらただの意地であった。
そして、それはきちんと実を結んだのだ。
ジャングルを抜け、神域に似た広い草原を突き進めばそこには道があったのだ。
思わずガッツポーズをしたヨシヤを咎める者はいないだろう。
彼の努力は、報われたのだ!
だが、忘れてはいけない。
「あとは……人里を探さなきゃなあ……」
ジャングルを出るのは、単なる過程だ。
目的は、人類との接触である。
街道に出た段階で、人の手による道に辿り着いたのだからどこかには辿り着けるだろう。
とはいえ、近い方に行きたいしあまり人が多いところは今のところ現地人と接触経験のないヨシヤにはハードルが高すぎる。
護衛で蟻を連れているというのも、警戒させてしまうに違いない。
残念ながらヨシヤの【蟲使い】レベルは上がっていても、蟻たちに対してなにかできるのかと問われると別にないようだ。
わかったことは、【蟲使い】のレベルが上がったことで蟻たちの強さが増しているというところだろうか。
後は契約する枠が増えているようだとハナは教えてくれたが、ヨシヤとしては『これ以上、虫が増えるのはちょっと……』というところである。
蟻たちに対してはすっかり情も湧いた。
さすがに十匹以上に取り囲まれると鳥肌が出るが、十匹くらいまでなら許容範囲になった。ヨシヤ的には大きな進歩である。
神域に戻った際にはその日行軍で一緒に来てくれた蟻たち相手に、彼らの体を布で拭いて汚れを落としてやることができるくらいに進歩しているのである。
なんとなく機械の部品を手入れしているみたいだなあなんて思いながら毎日蟻たちを磨いているヨシヤなわけだが、これが蟻たちに大人気なことを彼は知らない。
「お、なんだ?」
そんな中、蟻たちは人の気配を察知したようだ。
進む方向へとヨシヤを導くために、なにやら身振り手振りで示している。
さあさあと爽やかな風が吹く中で、蟻たちに急かされるようにして彼が丘の上に続く道を登り切ったところでヨシヤは「おお……」と感嘆の声を漏らした。
ジャングルを出た時にすでに傾き始めていた太陽の、茜に染まるその色を受けて輝く草原の、その中で人工物が見える。
それはまだもう少し歩かなければならない程度に距離はあるが、それでも間違いなく人里であるとわかるくらいには近かったのだ。
「おお……」
ヨシヤはもう一度、感嘆の声を漏らした。
何度も目を瞬かせて、その光景を目に焼き付ける。
人里を見つけたらどうしようなんて彼は思いながらジャングルを歩いていたし、現地の人になんて声をかけたら不審者に思われないだろうかとか、信者を獲得するにはどうしたらいいのかとか。
しかしもう、そんなあれこれはヨシヤの頭から吹っ飛んでいた。
誰かと接することもなく、妻と蟻に囲まれている生活に不満なんてなかった。
あの生活を守るために、ただジャングルの外を目指したのが始まりだった。
だが、こうして改めて〝他人〟の存在を目の当たりにして、安堵しとしているのも事実であった。
「人に……会える……ってことは、お酒が飲める……!!」
目的が、別の目的にすり替わった瞬間である。
その瞬間、ヨシヤが斜めがけにしていた道具袋の隙間から『ヨシヤさん……?』という地を這うような声が聞こえて彼が背筋を正した。
彼は、忘れてはいけなかったのだ。
目立たないように、道具袋に神域の出入り口にしたということは、常に妻を持ち歩いているのと変わらないということに。
ジャングルを抜けるのは、それはもう大変だった。
そりゃもう、大変だったのだ。
大事なことだから何度でも伝えたい、それほどヨシヤは大変な思いをしたのだ。
襲い来る巨大な虫、よくわからない虫、響いてくる羽音、それを迎撃する蟻たちの攻撃によって聞こえてくるなんか潰れる音。
眠る時は神域に戻って妻の作ってくれたあったかなご飯を食べて、ふかふかにしてくれた寝袋や毛布に包まって眠るのだけれどそりゃあもう、彼はうなされまくったのである。
おかげでハナや蟻たちにはものすごく心配されたものの、ヨシヤは諦めなかった。
それはもう、彼がしていることといえば神域の外に出て蟻たちに守られながら、前に進むことであった。
時折、索敵だけでなく果物や獲物を狩りに行った別働隊が変なモノを拾ってきたら置いていくように説得する役でもあった。
ちなみに今のところヨシヤが見た中で一番持って行くわけにはいかないと思ったのは縄でぐるぐる巻きにされ、お札を貼られたツボだ。
絶対に呪われていると確信したヨシヤは蟻たちに遠くへと捨ててもらった。
それでも、連日の蟻たちとの行軍は彼にとって過酷なものであった。
現代日本の便利な乗り物に慣れた、しかもそろそろ加齢で衰えを感じていた中年男性にとっては厳しい行軍であった。
ヨシヤは何度もめげそうになったが、彼を信頼してくれている蟻たちの姿と、応援してくれる妻の姿に折れそうな心を鼓舞し、前へと進んだのである。
ここまで来たらただの意地であった。
そして、それはきちんと実を結んだのだ。
ジャングルを抜け、神域に似た広い草原を突き進めばそこには道があったのだ。
思わずガッツポーズをしたヨシヤを咎める者はいないだろう。
彼の努力は、報われたのだ!
だが、忘れてはいけない。
「あとは……人里を探さなきゃなあ……」
ジャングルを出るのは、単なる過程だ。
目的は、人類との接触である。
街道に出た段階で、人の手による道に辿り着いたのだからどこかには辿り着けるだろう。
とはいえ、近い方に行きたいしあまり人が多いところは今のところ現地人と接触経験のないヨシヤにはハードルが高すぎる。
護衛で蟻を連れているというのも、警戒させてしまうに違いない。
残念ながらヨシヤの【蟲使い】レベルは上がっていても、蟻たちに対してなにかできるのかと問われると別にないようだ。
わかったことは、【蟲使い】のレベルが上がったことで蟻たちの強さが増しているというところだろうか。
後は契約する枠が増えているようだとハナは教えてくれたが、ヨシヤとしては『これ以上、虫が増えるのはちょっと……』というところである。
蟻たちに対してはすっかり情も湧いた。
さすがに十匹以上に取り囲まれると鳥肌が出るが、十匹くらいまでなら許容範囲になった。ヨシヤ的には大きな進歩である。
神域に戻った際にはその日行軍で一緒に来てくれた蟻たち相手に、彼らの体を布で拭いて汚れを落としてやることができるくらいに進歩しているのである。
なんとなく機械の部品を手入れしているみたいだなあなんて思いながら毎日蟻たちを磨いているヨシヤなわけだが、これが蟻たちに大人気なことを彼は知らない。
「お、なんだ?」
そんな中、蟻たちは人の気配を察知したようだ。
進む方向へとヨシヤを導くために、なにやら身振り手振りで示している。
さあさあと爽やかな風が吹く中で、蟻たちに急かされるようにして彼が丘の上に続く道を登り切ったところでヨシヤは「おお……」と感嘆の声を漏らした。
ジャングルを出た時にすでに傾き始めていた太陽の、茜に染まるその色を受けて輝く草原の、その中で人工物が見える。
それはまだもう少し歩かなければならない程度に距離はあるが、それでも間違いなく人里であるとわかるくらいには近かったのだ。
「おお……」
ヨシヤはもう一度、感嘆の声を漏らした。
何度も目を瞬かせて、その光景を目に焼き付ける。
人里を見つけたらどうしようなんて彼は思いながらジャングルを歩いていたし、現地の人になんて声をかけたら不審者に思われないだろうかとか、信者を獲得するにはどうしたらいいのかとか。
しかしもう、そんなあれこれはヨシヤの頭から吹っ飛んでいた。
誰かと接することもなく、妻と蟻に囲まれている生活に不満なんてなかった。
あの生活を守るために、ただジャングルの外を目指したのが始まりだった。
だが、こうして改めて〝他人〟の存在を目の当たりにして、安堵しとしているのも事実であった。
「人に……会える……ってことは、お酒が飲める……!!」
目的が、別の目的にすり替わった瞬間である。
その瞬間、ヨシヤが斜めがけにしていた道具袋の隙間から『ヨシヤさん……?』という地を這うような声が聞こえて彼が背筋を正した。
彼は、忘れてはいけなかったのだ。
目立たないように、道具袋に神域の出入り口にしたということは、常に妻を持ち歩いているのと変わらないということに。
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