妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~

玉響なつめ

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おや? 神域の様子が……

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 村に行くと、リチャードとマーサ夫妻は喜んでヨシヤを出迎えてくれた。
 すっかり血色の良くなったマーサはあれ以来、悪阻つわりなどで苦しむこともなくなり、お腹の張りも落ち着いて散歩に出られるだけではなく、家事もこなせるほどに回復したのだそうだ。

「……なるほど、町に。ええ、勿論喜んで紹介状を書かせていただきますよ!」
 
  ヨシヤが町に行って商人ギルドに登録しようと思っていることを相談すると、リチャードは朗らかな笑顔で紹介状の件を請け負ってくれた。
 その上、その町までの道のりを詳しく教えてくれてとてもありがたく、ヨシヤはもうこの村に足を向けて寝られないなあなんて心の中で思ったものだ。

「商人ギルドに行ったら、とりあえず説明があるとは思いますが、会員への登録料、それから1年後になりますが更新料と、利用回数によっての上納金が必要になると思います。こちらは現金が足りない場合、物品でも大丈夫だと思いますよ!」

「物品ですか。……蜂蜜とか、どうですかね」

「蜂蜜ですか! いいですね、喜ばれると思いますよ~」

 にこやかにリチャードがそう言ってくれたことにヨシヤはほっと胸をなで下ろした。
 これで売り物として蜂蜜も流通していることがわかっただけでも、ありがたいことである。

 とはいえ、市場価値が今ひとつわからないのが不安要素ではあるが、それを尋ねては行商人という身の上に不信感を抱かれてしまう危険性があるため、ヨシヤも欲張ることはなかった。

「あの、ヨシヤさん。町でも、必要があれば布教活動はなさるんですよね?」

「え? ええ。話を聞いてくださる方がいらっしゃれば、ですけどね」

 ヨシヤは苦笑する。
 今回、マーサにとって良い方向になったからこそ彼らが信者となってくれたことは大変喜ばしいが、やはりなんだかんだいって知名度がないというのはとても大変なのだ。
 
 女神・ブロッサムの名前を広めるにも、効果を謳うにはまず妊婦に声をかけなければならない。
 唐突に見知らぬおっさんに声をかけられれば妊婦は勿論、その家族だって警戒するのは容易に想像出来るし、それが大きな町ともなれば警官のような存在を呼ばれてしまうところまで想像してヨシヤは首を静かに振るばかりだ。

 勿論、彼だっていくらなんでもこのままでは愛する妻、ハナにとってよろしくないことは理解している。
 ただ、言い訳をするならばヨシヤは『今は地盤を固めるべき』と思ってのことである。

 ある程度、商品になりそうなものを元手に行商人として動き、人脈を築き上げればヨシヤに対する信用度から話を聞いてもらえる確率も上がるし、なにより妊婦を紹介してもらえるかもしれない!
 大変道のりが遠そうではあるが、まず失敗しない方法であった。

「では、あの。もしよろしければ私の友人を訪ねてはいただけないでしょうか」

「……マーサさんの、ご友人ですか?」

「はい、実は私の友人はとある資産家の一人娘で、お婿さんを迎えて幸せに暮らしているのですが……」

 なんでもその資産家の一家はとても人情家な人々で、マーサに関しても娘の友人と言うことでとても仲良くしてくれた人々らしい。
 そしてそのお婿さんというのも元々彼らと親しくしていた貴族の三男とかそういうところの出自で、要はマーサの友人と障害なしで恋愛結婚をしたのだそうだ。

 ところが、子宝に恵まれない。
 そのことで、随分と悩んでいて、マーサの妊娠を知った際は我がことのように喜び、そして具合が良くない彼女のために医者を手配してくれたほどであったという。

「私の状況があまり良くなかったのを知って、彼女もショックを受けてしまって……実は、町を離れたのはそれも理由だったんです」

 空気の良いところで療養すれば胎児も良くなるかもしれない、その期待を持ったのは事実だ。
 だが、妊娠出来ないが故に友人であるマーサの妊娠を自分に重ね、余計に落ち込むようになってしまった友人の姿を見るに見かねて逃げ出した部分もあったのではないかと彼女は語る。

「もし、ブロッサム様に彼女の願いが届くのなら……」

「……わかりました。お手紙か何か、マーサさんからも書いていただければと思います」

「ありがとうございます!」

 ヨシヤはマーサの話を聞いて快く引き受けた。

 なにせ、彼女の友人ということであれば勿論様子を見てマーサ自身を安心させてあげたいという気持ちもあったし、彼女の紹介であるなら話を聞いてもらえる確率だってぐんとあがるだろう。

 その上、資産家だというのだから、きっと蜂蜜だって買ってくれるに違いない!
 そうヨシヤは思いながら、工房で瓶を分けてもらってホクホク顔で神域に戻るのであった。
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