50 / 71
家族(?)が増えました
48
しおりを挟む
どうしようもないので繭玉は持ち帰ることにしたヨシヤであった。
とりあえずあの町には当分行けそうにない。
人どころか牛すら丸呑みにできそうな巨大クモに頭を下げさせたおっさんとして顔が知れてしまったのだ。
まあ、幸いな事に名前はバレていないし、行く用事も思い当たらないのでよしとする。
「ただいまー!」
賞賛する人々から逃れるようにして早々に神域へと戻ったヨシヤは、巨大な繭を蟻たちに運んでもらい自宅へと意気揚々と帰る。
しっかりきっちり大神様のミッションをこなしてみせたのだ、大手を振って帰るに値する。
愛する妻もきっと喜んでくれるに違いない!
「おかえりなさい、ヨシヤさん!」
玄関先で彼の姿を見つけるなり駆けよってハグをしてくるハナにヨシヤはだらしなく鼻の下を伸ばしたが、残念ながらそれに対してヤジを飛ばすようなメンツは震域に存在しない。
精々遠くからアーピス様が「んモーウ」と長閑な声を上げたくらいだろうか。
「ありがとう、また女神レベルが上がったわ!」
「そうかー、よかった! 何ができるようになったんだい?」
「ええと……神域の展開ができるようになって、こことは別に出張所? みたいな形で……限られた場にはなるけど他の人と交流できるようになったわ」
「んん?」
ハナの言葉を理解しかねてヨシヤは首を傾げた。
彼女もまた上手く説明できないらしく困ったように首を傾げているが、そんなハナがカワイイとヨシヤは思っているのだから愛妻家ここに極まれりである。
「そのあたりはお茶でも飲みながら説明を……ねえ、それなに?」
「え?」
茶を用意してあるのだと言うハナはそこでヨシヤの後ろにいる蟻たちの、持っている繭にようやく気付いたようだった。
ヨシヤもそれを見て苦い表情になるが、まあ仕方ない。
「よくわかんないんだ」
「よくわからない」
そんなもの持って帰ってくるなという話ではあるが、あの状況で放置して自分だけ帰宅するなどヨシヤのようなお人好しにできるはずもない。
とはいえ、万が一危険物、危険生物、危険人物……など可能性はあるものの、それでも彼だって別段考えなしに持ち帰ったわけではないのだ。
ここはハナの神域である。
ゆえに、彼女が望まないものであればそれ相応の対処が出来るはずであるし、同時にここはヨシヤにとってもホームなのだ。
物量にものを言わせた蟻と蜂の軍勢、さらにはコカトリスレディーたちと万全の体制である。これに勝てる布陣があるか? とりあえずヨシヤは知らない。
「……蜘蛛の糸で巻かれているだけみたいなら、切ったらいいのかしら」
とりあえず家の中に入れる気はないらしいハナの発言に、蟻たちが顔を見合わせて一匹が顎をシャキシャキ言わせながら繭に近づいた。
不穏な気配を察したのか、或いは目が覚めてパニックに陥ったのか、それまで大人しかった繭がびちびちと動き始めてヨシヤが大きく後ずさる。
「うわぁ」
うわあ。
繰り返すヨシヤを守るように蟻たちが前に出て、繭を囲み――そして、ハサミが入れられる。ハサミではなく、蟻の強固な顎だけれども。
かくして、繭の中から現れたのは人間サイズの何かだ、
蟻たちに囲まれているせいでその姿はヨシヤたちにはすぐに判別できなかったが、それもすぐにわかった。
ゆっくりと、敵意がないと手を挙げるようにして立ち上がったその姿は――頭が山羊で、足も山羊。手と体は人間という、半人半獣なのであった。
とりあえずあの町には当分行けそうにない。
人どころか牛すら丸呑みにできそうな巨大クモに頭を下げさせたおっさんとして顔が知れてしまったのだ。
まあ、幸いな事に名前はバレていないし、行く用事も思い当たらないのでよしとする。
「ただいまー!」
賞賛する人々から逃れるようにして早々に神域へと戻ったヨシヤは、巨大な繭を蟻たちに運んでもらい自宅へと意気揚々と帰る。
しっかりきっちり大神様のミッションをこなしてみせたのだ、大手を振って帰るに値する。
愛する妻もきっと喜んでくれるに違いない!
「おかえりなさい、ヨシヤさん!」
玄関先で彼の姿を見つけるなり駆けよってハグをしてくるハナにヨシヤはだらしなく鼻の下を伸ばしたが、残念ながらそれに対してヤジを飛ばすようなメンツは震域に存在しない。
精々遠くからアーピス様が「んモーウ」と長閑な声を上げたくらいだろうか。
「ありがとう、また女神レベルが上がったわ!」
「そうかー、よかった! 何ができるようになったんだい?」
「ええと……神域の展開ができるようになって、こことは別に出張所? みたいな形で……限られた場にはなるけど他の人と交流できるようになったわ」
「んん?」
ハナの言葉を理解しかねてヨシヤは首を傾げた。
彼女もまた上手く説明できないらしく困ったように首を傾げているが、そんなハナがカワイイとヨシヤは思っているのだから愛妻家ここに極まれりである。
「そのあたりはお茶でも飲みながら説明を……ねえ、それなに?」
「え?」
茶を用意してあるのだと言うハナはそこでヨシヤの後ろにいる蟻たちの、持っている繭にようやく気付いたようだった。
ヨシヤもそれを見て苦い表情になるが、まあ仕方ない。
「よくわかんないんだ」
「よくわからない」
そんなもの持って帰ってくるなという話ではあるが、あの状況で放置して自分だけ帰宅するなどヨシヤのようなお人好しにできるはずもない。
とはいえ、万が一危険物、危険生物、危険人物……など可能性はあるものの、それでも彼だって別段考えなしに持ち帰ったわけではないのだ。
ここはハナの神域である。
ゆえに、彼女が望まないものであればそれ相応の対処が出来るはずであるし、同時にここはヨシヤにとってもホームなのだ。
物量にものを言わせた蟻と蜂の軍勢、さらにはコカトリスレディーたちと万全の体制である。これに勝てる布陣があるか? とりあえずヨシヤは知らない。
「……蜘蛛の糸で巻かれているだけみたいなら、切ったらいいのかしら」
とりあえず家の中に入れる気はないらしいハナの発言に、蟻たちが顔を見合わせて一匹が顎をシャキシャキ言わせながら繭に近づいた。
不穏な気配を察したのか、或いは目が覚めてパニックに陥ったのか、それまで大人しかった繭がびちびちと動き始めてヨシヤが大きく後ずさる。
「うわぁ」
うわあ。
繰り返すヨシヤを守るように蟻たちが前に出て、繭を囲み――そして、ハサミが入れられる。ハサミではなく、蟻の強固な顎だけれども。
かくして、繭の中から現れたのは人間サイズの何かだ、
蟻たちに囲まれているせいでその姿はヨシヤたちにはすぐに判別できなかったが、それもすぐにわかった。
ゆっくりと、敵意がないと手を挙げるようにして立ち上がったその姿は――頭が山羊で、足も山羊。手と体は人間という、半人半獣なのであった。
0
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる