56 / 71
勇者(?)が召喚されたらしい
53
しおりを挟む
さて、信徒ができたからといって布教活動はさぼっていい理由にはならない。
ヨシヤとしてはあまり物騒だから外に出たくはないのだが、愛する妻とペットたち(?)のためにも一家の大黒柱として頑張らねばならない!
そういう意味で彼は非常に責任感のある男であった。
「それじゃあ八木さんとちょっと行ってくるから」
「気をつけてね、二人ともあまり無理はしないでね」
「王都は何度か行ったことがございます。ご安心ください奥様」
そう、王都である。
販路を広げてみてはどうかという八木の発言に触発されたのもあるが、ナタリーと領主からも王都に行ってほしいとお願いされたのである。
ヨシヤにとっては大変ありがたい話なことに、簡単に言えば『神の遣い』に内々で相談したいという高位貴族の女性がいるのだそうだ。
そのため仰々しいことはないしお礼も弾むと確約までいただいている。
まあ、お偉い方々に会わなければならない……という点において、ヨシヤからすればストレスがあっという間に天元突破なのだけれども。
いい加減慣れろと言われてもいくらなんでも慣れるはずがないのだ。
「まあ、仮面つけちゃうと外せなくなっちゃうから先に買い物ね」
「かしこまりました」
「エイトたちの蜂蜜売れるといいんだけどなあ」
「ワタクシの目から見ても品質の良いものですから、高額でいけると思いますよ。ギルドならば買いたたくような真似もいたしますまい」
そう、さすがに王都で商売を……と一口に行ったところで簡単ではないのだ。
ヨシヤには今もシステムがよくわからないこの異世界で商売するには、行商人など許可証がなくても始められるものから商業ギルドに登録することで幅を広げ、町では露店を出す権利から始まる。
露店を出すために時間と場所を予約してその分をギルドに支払うことで安全な商売をする場所の確保と、そして信頼できる露店であるというアピールができるのだ。
ギルドはそのために露店を出せる場所に対して近隣に迷惑料を支払ったり、町の清掃を請け負ったりして成り立っている。
そうして露店から今度は屋台になれば屋台を作る……もしくは借りる、店を構える、とグレードがアップしていくものらしい。
いずれも個人でやろうと思えばできないことはないが、同業者のよしみで……と協力してもらえたり情報や協力をしてもらえるという点では商業ギルドの存在は大変ありがたいものなのだ。
ただし、公平性を重んじるために取られる金銭は一定であり、買い取りなどの価格も基本料金にしかならない。
粗悪品の場合は買い取ってもらえない可能性もある。
その逆に高品質だからと高額を支払ってもらえるということもないのである。
「これだけ高品質の蜂蜜ならば、ギルドで買ってもらうよりは紹介してもらった方がよいかもしれませんねえ」
「そうなんだけどね。でもほら、定期的に納められるかっていうとそこは微妙だからなあ」
「旦那様がお望みでしたら、エイトさんたちは張り切って準備すると思いますけどねえ」
八木の言葉にヨシヤは乾いた笑いを返すだけだ。
正直なところ、彼もその通りだと思っている。
植物を成長させるための魔法を蟻たちと協力して行い、とんでもないサイクルで回して大量生産する蜂たちの姿が容易に想像できるからこそお願いしたくない。
ヨシヤは、自然の摂理は大事にしたい男なのだ。
「ところで、今回は何をお買い求めで?」
「ああ、うん。王都の物件情報とお家賃相場を見ておこうと思ってね」
「物件……ですか?」
「そう。ほら、大きな声じゃ言えないけど俺たちって世間から見たら根無し草だろう?」
「ああ、なるほど……」
便利すぎて忘れているが、神域の家は世間一般に説明できるものではないのだ。
そもそも一般の人は神域では暮らせないのだから仕方ない。
だが、神の遣いだと触れ回って生きているわけではない商人のヨシヤとしてはいつまでも根無し草では色々と不都合であるということはずっと夫婦で考えていたのだ。
今回のように偉い人と会う仲で、いずれはマーサたちのように素顔を晒して接する機会も生じるだろう。
その時に普段は商人をしているが根無し草……ではやはり説得力に欠けるのでは?
やはり営業をかけるのに相手に不信感を抱かせてはいけないのだ、ヨシヤにとって営業は誠意を尽くして行うものなのである。
「住居だけなら地方でもいいんだけど、なんだかんだ便利そうなのは王都だし……それにいつかは王都に住みたいとかそういう発言をしておくってのも世間ウケがいいかなと思ってさ」
「なるほど、理解いたしました」
「あとハナにお土産で王都のお菓子を買っていってあげれたらいいなと思って」
「それはお喜びになるかと」
八木の言葉に、ヨシヤは笑みを浮かべたのだった。
ヨシヤとしてはあまり物騒だから外に出たくはないのだが、愛する妻とペットたち(?)のためにも一家の大黒柱として頑張らねばならない!
そういう意味で彼は非常に責任感のある男であった。
「それじゃあ八木さんとちょっと行ってくるから」
「気をつけてね、二人ともあまり無理はしないでね」
「王都は何度か行ったことがございます。ご安心ください奥様」
そう、王都である。
販路を広げてみてはどうかという八木の発言に触発されたのもあるが、ナタリーと領主からも王都に行ってほしいとお願いされたのである。
ヨシヤにとっては大変ありがたい話なことに、簡単に言えば『神の遣い』に内々で相談したいという高位貴族の女性がいるのだそうだ。
そのため仰々しいことはないしお礼も弾むと確約までいただいている。
まあ、お偉い方々に会わなければならない……という点において、ヨシヤからすればストレスがあっという間に天元突破なのだけれども。
いい加減慣れろと言われてもいくらなんでも慣れるはずがないのだ。
「まあ、仮面つけちゃうと外せなくなっちゃうから先に買い物ね」
「かしこまりました」
「エイトたちの蜂蜜売れるといいんだけどなあ」
「ワタクシの目から見ても品質の良いものですから、高額でいけると思いますよ。ギルドならば買いたたくような真似もいたしますまい」
そう、さすがに王都で商売を……と一口に行ったところで簡単ではないのだ。
ヨシヤには今もシステムがよくわからないこの異世界で商売するには、行商人など許可証がなくても始められるものから商業ギルドに登録することで幅を広げ、町では露店を出す権利から始まる。
露店を出すために時間と場所を予約してその分をギルドに支払うことで安全な商売をする場所の確保と、そして信頼できる露店であるというアピールができるのだ。
ギルドはそのために露店を出せる場所に対して近隣に迷惑料を支払ったり、町の清掃を請け負ったりして成り立っている。
そうして露店から今度は屋台になれば屋台を作る……もしくは借りる、店を構える、とグレードがアップしていくものらしい。
いずれも個人でやろうと思えばできないことはないが、同業者のよしみで……と協力してもらえたり情報や協力をしてもらえるという点では商業ギルドの存在は大変ありがたいものなのだ。
ただし、公平性を重んじるために取られる金銭は一定であり、買い取りなどの価格も基本料金にしかならない。
粗悪品の場合は買い取ってもらえない可能性もある。
その逆に高品質だからと高額を支払ってもらえるということもないのである。
「これだけ高品質の蜂蜜ならば、ギルドで買ってもらうよりは紹介してもらった方がよいかもしれませんねえ」
「そうなんだけどね。でもほら、定期的に納められるかっていうとそこは微妙だからなあ」
「旦那様がお望みでしたら、エイトさんたちは張り切って準備すると思いますけどねえ」
八木の言葉にヨシヤは乾いた笑いを返すだけだ。
正直なところ、彼もその通りだと思っている。
植物を成長させるための魔法を蟻たちと協力して行い、とんでもないサイクルで回して大量生産する蜂たちの姿が容易に想像できるからこそお願いしたくない。
ヨシヤは、自然の摂理は大事にしたい男なのだ。
「ところで、今回は何をお買い求めで?」
「ああ、うん。王都の物件情報とお家賃相場を見ておこうと思ってね」
「物件……ですか?」
「そう。ほら、大きな声じゃ言えないけど俺たちって世間から見たら根無し草だろう?」
「ああ、なるほど……」
便利すぎて忘れているが、神域の家は世間一般に説明できるものではないのだ。
そもそも一般の人は神域では暮らせないのだから仕方ない。
だが、神の遣いだと触れ回って生きているわけではない商人のヨシヤとしてはいつまでも根無し草では色々と不都合であるということはずっと夫婦で考えていたのだ。
今回のように偉い人と会う仲で、いずれはマーサたちのように素顔を晒して接する機会も生じるだろう。
その時に普段は商人をしているが根無し草……ではやはり説得力に欠けるのでは?
やはり営業をかけるのに相手に不信感を抱かせてはいけないのだ、ヨシヤにとって営業は誠意を尽くして行うものなのである。
「住居だけなら地方でもいいんだけど、なんだかんだ便利そうなのは王都だし……それにいつかは王都に住みたいとかそういう発言をしておくってのも世間ウケがいいかなと思ってさ」
「なるほど、理解いたしました」
「あとハナにお土産で王都のお菓子を買っていってあげれたらいいなと思って」
「それはお喜びになるかと」
八木の言葉に、ヨシヤは笑みを浮かべたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる