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勇者(?)が召喚されたらしい
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「申し訳ございませんが、今日の話し合いはなかったことにさせてください」
開口一番、彼にしては厳しい声が出ていた。
ヨシヤは、領主とナタリー、双方の頼みであるやんごとなき御方に会うために王都の外れ、瀟洒な建物に招かれていた。裏口から。
そしてそこにはヨシヤが侵入の際に使った仮面より豪華であるものの、同じように顔全体を覆うような仮面をつけた女性が一段高いところに座っていたのだ。
ちなみに領主にはすでに仮面を外し素顔を見せ、ある程度の事情を話したところで商人としてのヨシヤの生活があるからある程度は秘密にしてほしいとお願いして了承を得ている。
(きっとこの人が今回の依頼主なんだろうなあ)
女性が呼ぶということは妊娠できないことに悩んでいるか、或いは妊娠中の不安か……その辺りだろうかとヨシヤだったが、眉間に皺を寄せてしまった。
なぜなら、商業ギルドで八木に対し失礼な態度を取った男がその女性の傍らに立っていたからだ。
本来ならば話を聞いた上で……とも思うのだが、ヨシヤとしては嫌悪感の方が勝る。
あのような考え方をする人物を傍に置く女性ならば、同じような考えかもしれない。
ならば一緒にいる八木がまた傷つくようなことになるかもしれない。
それならいっそお断りしよう。そうヨシヤは考えたのだ。
「な、なんだと貴様……ッ」
「旦那様!?」
ヨシヤの態度に驚いたのは、依頼主の女性でもなくその男と他にもいた使用人らしき人々、そして八木だった。
「失礼ながらわたしは妊娠の女神ブロッサム様の敬虔な信徒として、全ての種族に対し分け隔てなく接するよう教えを受けております。ですが、一人の人間としてやはり受け入れたくない相手という者が存在いたしまして……」
「なっ、なんだ、貴様……何故こっちを見る!」
「アッ、てめえもしや商業ギルドにいた獣人連れの……!!」
「思い出していただけてもなにも嬉しくないですが、とりあえずそんな言葉遣いをするような低俗な人を側に置くのはお勧めいたしません大切なお役目を担う御方のようですし」
「貴様ア!!」
ヨシヤとしては割と本気で助言したつもりだが、なかなかの煽りになっていることに本人は気づいていない。
本気で彼は心配しているのだ。
少なくとも彼が好き嫌いを持つように、相手が獣人を嫌うことだって彼らの自由である。
とはいえ自分から呼びつけた相手と話をするよりも先にガラの悪い用心棒が発言したり、傍に控えているならそれなりの立場であろう人間が簡単に激昂するようでは交渉の場には少々難があるとヨシヤは思ったのだ。
それ自体は間違いではないものの、傍から見ればただの煽りである。
ヨシヤの隣にいる八木がハラハラしっぱなしだ。
「……お前たち、下がっておれ。話ができぬ」
「し、しかし……このような下賎の者と同じ部屋になるだけでも業腹であるというのに!」
「控えよ。領主とかの商会の奥方より身元を保証されている相手ぞ」
「汚らわしい獣人も連れております!」
「……はあ、まったく。女神の使者殿が仰る通りだな。お前たち」
「かしこまりました」
「な、なにをする!? 離せ、高貴な身に触れるでないわ! ひ、ひめさま! 何卒……!!」
女性の一声にあっさりと彼女の後ろに控えていた兵士が男とその護衛を捕まえて、部屋の外へと去って行く。
その様子に思わずポカンとしてしまったヨシヤを庇うように、今度は八木が前に出た。
「……主人のお言葉に温情を賜りましたこと、感謝いたします。ですがこのような騒ぎになっては話し合いもまともにできかねますので一度我らはお話を聞くだけ聞いて持ち帰らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「従者如きが妾にものを申すか」
「主人の御為とあらば」
ヨシヤはキョトンとする。
一体全体何の話だ。護衛の蜂も首を傾げる中、仮面越しのくぐもった笑い声が部屋中に響いたのだった。
開口一番、彼にしては厳しい声が出ていた。
ヨシヤは、領主とナタリー、双方の頼みであるやんごとなき御方に会うために王都の外れ、瀟洒な建物に招かれていた。裏口から。
そしてそこにはヨシヤが侵入の際に使った仮面より豪華であるものの、同じように顔全体を覆うような仮面をつけた女性が一段高いところに座っていたのだ。
ちなみに領主にはすでに仮面を外し素顔を見せ、ある程度の事情を話したところで商人としてのヨシヤの生活があるからある程度は秘密にしてほしいとお願いして了承を得ている。
(きっとこの人が今回の依頼主なんだろうなあ)
女性が呼ぶということは妊娠できないことに悩んでいるか、或いは妊娠中の不安か……その辺りだろうかとヨシヤだったが、眉間に皺を寄せてしまった。
なぜなら、商業ギルドで八木に対し失礼な態度を取った男がその女性の傍らに立っていたからだ。
本来ならば話を聞いた上で……とも思うのだが、ヨシヤとしては嫌悪感の方が勝る。
あのような考え方をする人物を傍に置く女性ならば、同じような考えかもしれない。
ならば一緒にいる八木がまた傷つくようなことになるかもしれない。
それならいっそお断りしよう。そうヨシヤは考えたのだ。
「な、なんだと貴様……ッ」
「旦那様!?」
ヨシヤの態度に驚いたのは、依頼主の女性でもなくその男と他にもいた使用人らしき人々、そして八木だった。
「失礼ながらわたしは妊娠の女神ブロッサム様の敬虔な信徒として、全ての種族に対し分け隔てなく接するよう教えを受けております。ですが、一人の人間としてやはり受け入れたくない相手という者が存在いたしまして……」
「なっ、なんだ、貴様……何故こっちを見る!」
「アッ、てめえもしや商業ギルドにいた獣人連れの……!!」
「思い出していただけてもなにも嬉しくないですが、とりあえずそんな言葉遣いをするような低俗な人を側に置くのはお勧めいたしません大切なお役目を担う御方のようですし」
「貴様ア!!」
ヨシヤとしては割と本気で助言したつもりだが、なかなかの煽りになっていることに本人は気づいていない。
本気で彼は心配しているのだ。
少なくとも彼が好き嫌いを持つように、相手が獣人を嫌うことだって彼らの自由である。
とはいえ自分から呼びつけた相手と話をするよりも先にガラの悪い用心棒が発言したり、傍に控えているならそれなりの立場であろう人間が簡単に激昂するようでは交渉の場には少々難があるとヨシヤは思ったのだ。
それ自体は間違いではないものの、傍から見ればただの煽りである。
ヨシヤの隣にいる八木がハラハラしっぱなしだ。
「……お前たち、下がっておれ。話ができぬ」
「し、しかし……このような下賎の者と同じ部屋になるだけでも業腹であるというのに!」
「控えよ。領主とかの商会の奥方より身元を保証されている相手ぞ」
「汚らわしい獣人も連れております!」
「……はあ、まったく。女神の使者殿が仰る通りだな。お前たち」
「かしこまりました」
「な、なにをする!? 離せ、高貴な身に触れるでないわ! ひ、ひめさま! 何卒……!!」
女性の一声にあっさりと彼女の後ろに控えていた兵士が男とその護衛を捕まえて、部屋の外へと去って行く。
その様子に思わずポカンとしてしまったヨシヤを庇うように、今度は八木が前に出た。
「……主人のお言葉に温情を賜りましたこと、感謝いたします。ですがこのような騒ぎになっては話し合いもまともにできかねますので一度我らはお話を聞くだけ聞いて持ち帰らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「従者如きが妾にものを申すか」
「主人の御為とあらば」
ヨシヤはキョトンとする。
一体全体何の話だ。護衛の蜂も首を傾げる中、仮面越しのくぐもった笑い声が部屋中に響いたのだった。
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