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最終話 レディ・ルイーズは挫けなかった
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エッカルト様と婚約破棄をして一年が経った。
今日は私の姉、カサブランカが結婚する日。
「お姉様、綺麗ですわ」
「ありがとう、ルイーズ」
この一年、私は頑張った。
お父様は相変わらず使い物にならず、ほぼほぼエルドハバード侯爵家の実務をこなす羽目になったのはなんとも聞くも涙語るも涙であったけれど……。
お義母様による献身のおかげで、お父様は少しだけ〝父親の自覚〟が芽生えたらしいことは進歩だろうか。
進歩と言えばランお姉様の淑女教育だ。
日々あの謎ギャル語に悩まされつつも、朗らかなお姉様と共に過ごした日々は私にとって楽しい日々だった。
「……寂しくなりますね」
「そんなことを言われると、お嫁に行けなくなってしまうわ」
「ふふ、ライルお義兄様に私が恨まれてしまいます」
お姉様は、もう立派な淑女だ。
元々飲み込みの早い人だったけれど、一緒に努力を重ねた結果……今では私よりもずっと素敵な淑女だろう。
もし婚約者がいなかったら引く手あまたは間違いない。
エルドハバード侯爵家なんて名前がなくたって、ランお姉様なら絶対にだ。
……社交で出かけると実際、お姉様がモテるもんだからライルお義兄様の機嫌が悪くなるって苦情がカリル様から来るんだもんなあ……。
「辺境地から単騎駆けをすれば一日で着くんだから安心して!!」
「安心する要素が一ミリもございません、お姉様」
うん、ただ時々淑女らしからぬ行動力を発揮しようとするところは変わらないけどね!!
まあ変わらず妹として私を大事にしてくれるお姉様の旅立ち、本当はもっとおうちにいてくださったら心強いのだけれど……。
「ルイーズたんと離れるとかマジつらたん……」
「お姉様、だめですよ」
「はい」
気を抜くとギャル語も出てしまいますしね……。
薄らぐ気配がないっていうのも本当にすごいので逆にもう突き進んでいただきたい気もしますが、これからはライルお義兄様と幸せになっていただかねば。
もうしばらくして私が家督を継いだ後、お父様とお義母様も辺境地の方へと移り住むことが決まっています。
「花嫁様、そろそろ……」
「お姉様行ってらっしゃいませ。会場でまた」
「ええ!」
私はお姉様の結婚式を待って、来月には女侯爵になる予定だ。
お父様は復調なさらずということで隠居していただくことになった。勿論、穏便な話し合いの結果よ?
ルイーズ・ディララ・エルドハバードは物語の通り婚約破棄となったけれど、結局こちらからしたのだしやってきた義母と義姉は最高にいい人たちだったし、私としてはこれからはもう『物語』の一人ではなく『物語』を紡ぐ側として頑張らなくてはならない。
「さ、我々も早く着席しよう。きみがいなくちゃ彼女も式を挙げないだろうし、そうなったらライルの鬼みたいな顔がより鬼みたいになってしまう」
そして私はあの後、カリル様と婚約した。
軽薄なように見えてあれは傷心の私を気遣うために道化を演じてくださっただけで、実際には結構照れ屋で抱きつくのは平気なくせに手を繋ぐのには緊張するとか……なんで距離感バグってるのかしら。
まあそれはともかく、どこの女性が彼を誘惑しに来てもカリル様は私の可愛いところを語って撃退するので一途だと認めざるを得ない。
でも正直その方法は本当に止めてほしい、こちらが恥ずかしいので。
バイカルト子爵家は破産しない程度になんとか頑張れているらしい。
会ったこともない長男は割とやり手だったのだろうか。いつかは社交界で会うこともあるのだろうけれど、今のところあちらにその余裕はなさそうだ。
エッカルト様は意外と鉱山での仕事が良かったらしく、今では主任を任されていると聞いた。現地で、気立ての良い奥さんをもらったということも。
それらは慰謝料と共に謝罪の手紙が来たので、間違いない。
(……まあ更生できてよかったわ)
正直、ここまで誰も不幸せにならず落ち着いたのだからとても良いことだと思う。
なんだかんだ腹は立ったし、仕返しはきっちりしよう!って決めたとはいえ後味が悪くなれば当然それは私にとっても気分のいい話しではないので。
万感の思いで式を親族席から見る私は、誰もが幸せになったんなら良かったと素直にこの結婚式で感動できるのだ。
誰かの不幸がこの幸せな結婚式に小さな染みを作ったら、いやだもの。
「ルイーズたーぁぁん!!」
「姉様ったら!」
ここまで淑女としての振る舞いを貫いていたランお姉様が、ブーケを振り上げて私を呼んだ。
事前に「ブーケトスはやらないの?」と言われて貴族社会ではそういうことはしないと言っておいたのにどうしてもやりたかったらしい。
でも投げた先は、私。
この結婚を彩るブーケは、キラキラと輝いて見えた。
「可愛いあーしの女神様。次はルイーズたんの番だかんね! あーし、ファンとしてめっちゃ最前列で応援するからそこんとこヨロシク!」
「もう、お姉様ったら」
無敵の悪女、カサブランカお姉様に溺愛されている私が幸せにならないはずがないでしょう?
そんなお姉様の変貌ぶりに周囲は唖然としていたけれど……。
「ええ、ええ、挫けずここまできて良かったですわ!」
私は最高に幸せだと、満面の笑みを浮かべたのでした。
今日は私の姉、カサブランカが結婚する日。
「お姉様、綺麗ですわ」
「ありがとう、ルイーズ」
この一年、私は頑張った。
お父様は相変わらず使い物にならず、ほぼほぼエルドハバード侯爵家の実務をこなす羽目になったのはなんとも聞くも涙語るも涙であったけれど……。
お義母様による献身のおかげで、お父様は少しだけ〝父親の自覚〟が芽生えたらしいことは進歩だろうか。
進歩と言えばランお姉様の淑女教育だ。
日々あの謎ギャル語に悩まされつつも、朗らかなお姉様と共に過ごした日々は私にとって楽しい日々だった。
「……寂しくなりますね」
「そんなことを言われると、お嫁に行けなくなってしまうわ」
「ふふ、ライルお義兄様に私が恨まれてしまいます」
お姉様は、もう立派な淑女だ。
元々飲み込みの早い人だったけれど、一緒に努力を重ねた結果……今では私よりもずっと素敵な淑女だろう。
もし婚約者がいなかったら引く手あまたは間違いない。
エルドハバード侯爵家なんて名前がなくたって、ランお姉様なら絶対にだ。
……社交で出かけると実際、お姉様がモテるもんだからライルお義兄様の機嫌が悪くなるって苦情がカリル様から来るんだもんなあ……。
「辺境地から単騎駆けをすれば一日で着くんだから安心して!!」
「安心する要素が一ミリもございません、お姉様」
うん、ただ時々淑女らしからぬ行動力を発揮しようとするところは変わらないけどね!!
まあ変わらず妹として私を大事にしてくれるお姉様の旅立ち、本当はもっとおうちにいてくださったら心強いのだけれど……。
「ルイーズたんと離れるとかマジつらたん……」
「お姉様、だめですよ」
「はい」
気を抜くとギャル語も出てしまいますしね……。
薄らぐ気配がないっていうのも本当にすごいので逆にもう突き進んでいただきたい気もしますが、これからはライルお義兄様と幸せになっていただかねば。
もうしばらくして私が家督を継いだ後、お父様とお義母様も辺境地の方へと移り住むことが決まっています。
「花嫁様、そろそろ……」
「お姉様行ってらっしゃいませ。会場でまた」
「ええ!」
私はお姉様の結婚式を待って、来月には女侯爵になる予定だ。
お父様は復調なさらずということで隠居していただくことになった。勿論、穏便な話し合いの結果よ?
ルイーズ・ディララ・エルドハバードは物語の通り婚約破棄となったけれど、結局こちらからしたのだしやってきた義母と義姉は最高にいい人たちだったし、私としてはこれからはもう『物語』の一人ではなく『物語』を紡ぐ側として頑張らなくてはならない。
「さ、我々も早く着席しよう。きみがいなくちゃ彼女も式を挙げないだろうし、そうなったらライルの鬼みたいな顔がより鬼みたいになってしまう」
そして私はあの後、カリル様と婚約した。
軽薄なように見えてあれは傷心の私を気遣うために道化を演じてくださっただけで、実際には結構照れ屋で抱きつくのは平気なくせに手を繋ぐのには緊張するとか……なんで距離感バグってるのかしら。
まあそれはともかく、どこの女性が彼を誘惑しに来てもカリル様は私の可愛いところを語って撃退するので一途だと認めざるを得ない。
でも正直その方法は本当に止めてほしい、こちらが恥ずかしいので。
バイカルト子爵家は破産しない程度になんとか頑張れているらしい。
会ったこともない長男は割とやり手だったのだろうか。いつかは社交界で会うこともあるのだろうけれど、今のところあちらにその余裕はなさそうだ。
エッカルト様は意外と鉱山での仕事が良かったらしく、今では主任を任されていると聞いた。現地で、気立ての良い奥さんをもらったということも。
それらは慰謝料と共に謝罪の手紙が来たので、間違いない。
(……まあ更生できてよかったわ)
正直、ここまで誰も不幸せにならず落ち着いたのだからとても良いことだと思う。
なんだかんだ腹は立ったし、仕返しはきっちりしよう!って決めたとはいえ後味が悪くなれば当然それは私にとっても気分のいい話しではないので。
万感の思いで式を親族席から見る私は、誰もが幸せになったんなら良かったと素直にこの結婚式で感動できるのだ。
誰かの不幸がこの幸せな結婚式に小さな染みを作ったら、いやだもの。
「ルイーズたーぁぁん!!」
「姉様ったら!」
ここまで淑女としての振る舞いを貫いていたランお姉様が、ブーケを振り上げて私を呼んだ。
事前に「ブーケトスはやらないの?」と言われて貴族社会ではそういうことはしないと言っておいたのにどうしてもやりたかったらしい。
でも投げた先は、私。
この結婚を彩るブーケは、キラキラと輝いて見えた。
「可愛いあーしの女神様。次はルイーズたんの番だかんね! あーし、ファンとしてめっちゃ最前列で応援するからそこんとこヨロシク!」
「もう、お姉様ったら」
無敵の悪女、カサブランカお姉様に溺愛されている私が幸せにならないはずがないでしょう?
そんなお姉様の変貌ぶりに周囲は唖然としていたけれど……。
「ええ、ええ、挫けずここまできて良かったですわ!」
私は最高に幸せだと、満面の笑みを浮かべたのでした。
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