主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ

文字の大きさ
8 / 75
第一章 モブ暗殺者ですけど、生き残るためにはどうするべきでしょうか?

7

しおりを挟む
 私は公爵に対して、ある程度の情報を明かした。
 
 黒幕が誰かはわからないが、アナベルを狙うのは王子妃の座の問題であること。
 第一、第二王子のどちらを王太子にするかの水面下争いが激しくなってきていること。
 暗殺者界隈でも無理な勧誘などが行われ、場合によっては能力の搾取が危ぶまれていること。

 嘘は一つも言っていない。
 ただこれらは私が前世の記憶から得た情報であり、多少は情報屋たちから買った内容で肉付けして公爵に話しただけだ。

「能力の搾取……か。貴様もその恐れがあると?」

「はい。まあ自分で言うのもなんですが、それなりに名前をいただく程度の暗殺者であることは自負しておりますが……それでもあくまで〝それなり〟です。格上を使われて捕縛されれば、後は搾り取られるだけでしょう」

「……分相応を知る、ということか」

 やや感心したように言う公爵に、私は薄く笑みを浮かべるだけに留めた。
 分相応かどうかって言われたらむしろ名前ばっかり先行している気がするよって思ってます……ええ、思っていますとも。

 暗殺業務も請け負うけど、どっちかってーと私は嫌がらせの方が得意なんだよね!
 性格悪いわけじゃなくて忍び込んで横領の証拠とか跡形もなく盗んで町中にばらまくとかそういうのが得意なんだよ!
 大臣のヅラはたまたまひっかけちゃっただけだよ!! 

 いやまあ、運良くヅラ吹っ飛んだからそれも利用させてもらったから……偶然による無罪、は主張しづらい、かな……へへ。

「話は大体理解した。とはいえ、我が家が貴様を庇護する理由には足りん。確かに新月の夜に襲撃があったことは認めよう。しかし情報の提供がなくとも、我がノクス公爵家で対処できる話だ」

「そうですねえ、後手に回るばかりのご様子ですが」

 にこりと笑みを浮かべて挑発的な発言をしておく。
 そう、ここは交渉の場なのだ。
 後手に回っている……というのも、彼らは貴族社会に通じているし、当然ながら権力者として裏社会ともそれなり・・・・に懇意にしていることは私も知っている。

 だからこの間の新月の夜については、彼らも事前に把握していた可能性はある。
 ある、が、ノクス公爵家は強大な貴族だが、それだけに敵も多いってことだ。
 そして今回の敵は複数いて、彼らが共謀して行えばそれだけ粗も出るけど同時に足取りが複数になって目星をつけるのも大変である。

 相手がただの平民なら処罰して終わりだろうけれど、貴族たちとなればまた証拠だけで一方的に処罰もできず、確固たる証拠なしには処罰にすら至らない。
 そうした両局面で常に相手取ってきている自負があるのだろうけれどね。

「近く、ご息女がどこぞのご令嬢から茶会の誘いをいただくはずです。ご存知でした?」

 今度は愛想よく。努めて明るい声で。
 頑張れ私ィ、女優よ女優!

 カードを惜しまず、けど一気に切るんじゃなくてチラ見せで!
 欲しいと思ってもらわなくっちゃ価値が下がっちゃうんだからね!!

「もし私を庇護下に置いていただけるのであれば、もう少し詳しく調べて参りますよ?」

 こてりと小首を傾げて、無邪気を装った笑みを続ける。
 さあどうだ、知りたいでしょう?

 公爵令嬢が茶会の誘いを受けるのはそう珍しい話じゃないけど、まだ貴族たちの間で〝平民上がり〟と呼ばれ蔑まれている彼女に対しては情報収集をするばかりで社交界に出てくるのを待っている風潮だ。

 そんな中で『誘いが来る』と断言した私に、彼らはどう対応するか。
 ココが勝負!

「……なるほど。クロウ、我々の庇護下に入るならばその素顔を見せる度胸はあるのかな?」

 ふわりと公爵が優しい笑みを浮かべる。
 うーわ、美形イケオジの微笑みはいいねえ。

 私は迷いなく仮面を外し、テーブルの上に置いた。

「何故庇護を求めた? 逃げることも可能だろう、クロウ・・・

「実は最近、引退を考えておりましたところで。追われた生活をするよりは、多少利用されようとも人間らしい・・・扱いをしてくださる雇い主の方がいいかと思ったんですよ」

 悠々自適な未来のためにもね!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

孤児ですが、神獣の声を担当しています~ただし身バレ禁止のため、王子様から逃走中~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
タヌキにそっくりな孤児のマーヤと、お疲れ気味な王子さまとの物語

人生に絶望していたら異世界のデスゲームに巻き込まれました~ヤンデレ悪魔を召還したので、最期まで楽しもうと思います!~

雨宮 叶月
恋愛
「人の「正しさ」が崩れていく瞬間って、美しいと思いません?」 学校でも家でも理不尽な扱いを受ける少女・成瀬伊澄。 ある日、クラスメイト・担任と共に異世界のデスゲームに巻き込まれた。 召喚したのは悪魔・ディオラル。 なんだか様子がおかしいが、嬉しいので気にしない。 『死』は恐怖じゃない。だから最期までデスゲームを楽しむことにする。

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...