主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ

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第三章 死ななきゃいいんですよ!

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 実を言うと、アナベルは茶会に対してとても消極的だったという。
 まあそりゃ私の中では想定内よ。

 いきなり公女になってまだその自分の立ち位置を理解できないまま、能天気にドレス着てキャッキャウフフすればいい……なんてわけあるかい。
 自分がどういう目で周囲に見られているのか、ちょっと考える頭があるなら誰だって怖いはずだ。

(まあ中には『自分は公女になったんだからみんなが頭を下げてくれるに違いない!』とか思う剛の者もいるかもしれんけど)

 さすがに幼い頃に誘拐された身の上で実は国家権力者の娘でしたなんてレアケースはそうあるもんじゃないと思うので、アナベルが思慮深い子でよかったねって話。
 
 ちなみに私と会ったあの日の前も、たくさんの招待状は届いていたけど全部断っていたそうだ。
 その頃はまだ少し前向きだったようだったけど……あの襲撃の夜を境に、その気持ちは一気に萎んでしまっていたらしい。
 
 とはいえ、当然ながら私と会った後もいろいろお誘いは届き続けている。
 そりゃまあノクス公爵家と繋がりが持てるならって大勢が考えているから仕方ないと言えば仕方ない話だ。

 一応、彼女の意向を確認しつつ、ノクス公爵家側では基本的に全てをお断りする姿勢でいたってシリウスは言っていた。
 本当にアナベルに優しい家族だなあと思ったよ。
 
 とはいえ彼女も彼女なりに〝公女〟という立場については思うところがあるらしく、決心したんだそうだ。

 暗殺者によって刻まれた恐怖は拭い去れない。
 当面の間、公女としての教育不十分のためと言って引き籠もってもノクス公爵家のみんなは許してくれるとアナベルも理解している。

 けど、世間はどうだろうか?
 暗殺者の件は表に出ていないが、それでも引き籠もったままの公女に対しその目は好奇に満ちたもので、好き勝手噂するに違いない。

(って言ってもノクス公爵家からしたら羽虫の音にもならないかもだけどねー!)

 本当に鬱陶しい貴族たちの声なんて一睨みするか、実力で黙らせるかの二択でしょ。
 勿論、可愛いアナベルには内緒で処すんですよねわかってますとも。

 まあそれはともかく、決意のヒロインによって茶会参加が決まったので当初の予定通りシリウスと私が護衛につくことになったのだ。

(ストーリー通りなら、アナベルが茶会の中でご令嬢たちに嫌味を言われて席を外したところを狙われ、侍女だかメイドだかが彼女を庇って倒れるのよね)

 護衛によって刺客は倒されて難を逃れるけど、庇った侍女だかメイドは毒に冒され瀕死の状態。
 自分のせいで……って追い込まれたところでアナベルは特殊技能に目覚め、庭に生えていた薬草を使って侍女を救うのだ。

 いや今にして思うとご都合展開もいいところだな。
 お客さんが行くような庭に、暗殺者が使うような毒に対応する薬草が生えているってそんなことある?
 いや実際あるだろ、ここに! って感じではあるんだけども。

 で、だ。
 その展開がわかっているんだから、アナベルの特殊技能はどうせどっかで生えるだろうし、なんだったら公爵令嬢として生えなくてもいいと私は思うので今回はこの暗殺を阻止する方向で!
 私が公爵家に信頼してもらうための糧となってもらおうじゃないの!!
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