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[Village battle Ⅳ(村の攻防戦)]
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「いいかホルツ、お前はここから向こう側の林へ迂回してM4を攻撃しろ」
「はい、でも攻撃のタイミングは?」
「射程内に近付く必要は無い。80でも100でも構わないから、とにかく安全な距離から出来るだけ遠くに飛ばせ。兎に角お前の任務は敵の注意を引くことにある」
「この、ほうきは何に使うのですか?」
「いいか。これは重要なアイテムだ。パンツァーファウスト発射後に敵がお前に気付いたら、この向きで一瞬だけ敵に見える様にしろ」
ほうきを横に向けて説明した。
「分かりましたが、でも、ほうきを何故?」
「俺たちは、これが“ほうき”だと分かるが、敵は、そうは思わないだろうよ」
「それはつまり、敵がコレを見てパンツァーファウストだと見間違えると言うことですか?」
「一瞬見ただけでは分かるまい。それに相手の恐怖心も手伝ってくれるはずだ」
俺は、先をカットしたほうきを横にしてみせた。
「なるほど!だから、ほうきの先を切ったんですね」
「そう言うことだ」
笑ってホルツの肩を叩いて送り出す。
敵も、戦闘中にまさか“ほうき”を最前線に持って来るとは思っても居ないはず。
もし、誰かが「あれは、ほうきだ!」と気付いたとしても、一瞬だけ見せられた物を、他の者達が“ほうき”だと信じるはずもない。
そして気付いた者も、ほうきに見えたのは自分の勘違いだと思うようになる。
5分後、M4の20m向こうに土埃が上がる。
ホルツが発射したパンツァーファウストだ。
村からの攻撃を避けるため、戦車の向こう側面に隠れていた敵の歩兵たちが一斉に戦車の後ろ側に移動して来たところを、コーエンに合図してMG42で一掃するように指示をした。
いま戦車にとっての脅威は、ホルツの方に向いている。
100m以内の林の中に隠れているパンツァーファウスト2門を持った(本当は“ほうき”なのだけど)と、200m離れている村からの機関銃。
しかも随伴していた歩兵は機銃掃射によって散り散りになり身動きが取れない状態。
M4の砲塔が林の方にゆっくり回る。
俺は板に括りつけたパンツァーファウストの紐の片側足に括りつけ、敵に発見されないように用心深く戦車との距離を詰める。
「村の方角から敵歩兵!」
M4戦車のドライバーが俺に気付く。
「人数は!?」
コマンダー(戦車長)が状況の確認をする。
「1名!」
「武器は!?」
「小銃だけのようです」
「ジャック!機関銃で掃討しろ!」
「了解」
装填手がハッチを開けて機関銃を撃ち始めるよりも早く、ルッツのFG42がその姿を捕えた。
負傷して車内に崩れる様に落ちた装填手。
「一旦止めて車体正面を林に向けて威嚇射撃をしろ。接近する歩兵は砲塔の同軸機関銃で倒す」
「了解」
林に隠れているホルツがパンツァーファウストを持っていると勘違いしているので、装甲圧の薄い車体後部を林に向ける事を避けた。
ドライバーが戦車を止め車体正面を林に向け、コマンダーが砲塔を旋回させ、無線手が車体機関銃で林のどこかに隠れているホルツに向けて威嚇射撃をはじめる。
コマンダーはFG42を持って単独で攻撃を仕掛けて来た奴より、2門のパンツァーファウストを持って林に隠れている奴の方が警戒レベルが高いと判断した。
護衛する歩兵が使えなくなったとしても、小銃しか持っていない1名の敵なら何とかなると誰もがそう思っていた。
「奴は!?」
「居ません‼」
「隠れたのか?もっとよく探せ‼」
車内の照準器やペリスコープは視界が限られているから、茂みに隠れながら、ほふく前進で距離を詰めているルッツ軍曹の姿を見失った。
コマンダーは必死になって幾つもあるペリスコープに取りついて辺りを探る。
「居た‼奴は車体後部だ……!、パンツァーファウストを持っている‼」
慌てて砲塔を旋回させるが、砲が真後ろを向くよりも先にパンツァーファウストが火を噴いた。
ドーン。
爆発音と共に車体後部から黒煙が上がり、激しい振動が車内を揺るがす。
爆発の衝撃と成形炸薬弾のエネルギーにより車体に亀裂が入り、漏れ出したガソリンが床に溢れて来る。
「脱出しろ‼」
コマンダーが叫び、ハッチに手を掛けて開くより一瞬早く漏れ出したガソリンが引火して爆発を起こし、高くなった内圧により手で開くより早くハッチが開く。
火だるまになったコマンダーが内圧に押し出される様に、車外に飛び出す。
続いて同じ様に衣服に火のついた通信士。
ドライバーはハッチから上半身を持ち上げたところで力尽き、怪我をしたジャックとハッチから遠い照準手は車内に取り残された。
コマンダーは2.67mもある砲塔上部から転げ落ちたところで力尽き、通信士は火だるまのまま奇声を上げて地面をのたうち回っていたが俺のFG42の銃弾を食らい直ぐに動かなくなった。
あけ放たたれたハッチから火柱が上がり、黒焦げになったドライバーの上半身は何度目かの弾薬の誘爆により体のパーツが砕け落ちて腕のない上半身だけが暫く残っていたが、それも直ぐに見えなくなった。
「はい、でも攻撃のタイミングは?」
「射程内に近付く必要は無い。80でも100でも構わないから、とにかく安全な距離から出来るだけ遠くに飛ばせ。兎に角お前の任務は敵の注意を引くことにある」
「この、ほうきは何に使うのですか?」
「いいか。これは重要なアイテムだ。パンツァーファウスト発射後に敵がお前に気付いたら、この向きで一瞬だけ敵に見える様にしろ」
ほうきを横に向けて説明した。
「分かりましたが、でも、ほうきを何故?」
「俺たちは、これが“ほうき”だと分かるが、敵は、そうは思わないだろうよ」
「それはつまり、敵がコレを見てパンツァーファウストだと見間違えると言うことですか?」
「一瞬見ただけでは分かるまい。それに相手の恐怖心も手伝ってくれるはずだ」
俺は、先をカットしたほうきを横にしてみせた。
「なるほど!だから、ほうきの先を切ったんですね」
「そう言うことだ」
笑ってホルツの肩を叩いて送り出す。
敵も、戦闘中にまさか“ほうき”を最前線に持って来るとは思っても居ないはず。
もし、誰かが「あれは、ほうきだ!」と気付いたとしても、一瞬だけ見せられた物を、他の者達が“ほうき”だと信じるはずもない。
そして気付いた者も、ほうきに見えたのは自分の勘違いだと思うようになる。
5分後、M4の20m向こうに土埃が上がる。
ホルツが発射したパンツァーファウストだ。
村からの攻撃を避けるため、戦車の向こう側面に隠れていた敵の歩兵たちが一斉に戦車の後ろ側に移動して来たところを、コーエンに合図してMG42で一掃するように指示をした。
いま戦車にとっての脅威は、ホルツの方に向いている。
100m以内の林の中に隠れているパンツァーファウスト2門を持った(本当は“ほうき”なのだけど)と、200m離れている村からの機関銃。
しかも随伴していた歩兵は機銃掃射によって散り散りになり身動きが取れない状態。
M4の砲塔が林の方にゆっくり回る。
俺は板に括りつけたパンツァーファウストの紐の片側足に括りつけ、敵に発見されないように用心深く戦車との距離を詰める。
「村の方角から敵歩兵!」
M4戦車のドライバーが俺に気付く。
「人数は!?」
コマンダー(戦車長)が状況の確認をする。
「1名!」
「武器は!?」
「小銃だけのようです」
「ジャック!機関銃で掃討しろ!」
「了解」
装填手がハッチを開けて機関銃を撃ち始めるよりも早く、ルッツのFG42がその姿を捕えた。
負傷して車内に崩れる様に落ちた装填手。
「一旦止めて車体正面を林に向けて威嚇射撃をしろ。接近する歩兵は砲塔の同軸機関銃で倒す」
「了解」
林に隠れているホルツがパンツァーファウストを持っていると勘違いしているので、装甲圧の薄い車体後部を林に向ける事を避けた。
ドライバーが戦車を止め車体正面を林に向け、コマンダーが砲塔を旋回させ、無線手が車体機関銃で林のどこかに隠れているホルツに向けて威嚇射撃をはじめる。
コマンダーはFG42を持って単独で攻撃を仕掛けて来た奴より、2門のパンツァーファウストを持って林に隠れている奴の方が警戒レベルが高いと判断した。
護衛する歩兵が使えなくなったとしても、小銃しか持っていない1名の敵なら何とかなると誰もがそう思っていた。
「奴は!?」
「居ません‼」
「隠れたのか?もっとよく探せ‼」
車内の照準器やペリスコープは視界が限られているから、茂みに隠れながら、ほふく前進で距離を詰めているルッツ軍曹の姿を見失った。
コマンダーは必死になって幾つもあるペリスコープに取りついて辺りを探る。
「居た‼奴は車体後部だ……!、パンツァーファウストを持っている‼」
慌てて砲塔を旋回させるが、砲が真後ろを向くよりも先にパンツァーファウストが火を噴いた。
ドーン。
爆発音と共に車体後部から黒煙が上がり、激しい振動が車内を揺るがす。
爆発の衝撃と成形炸薬弾のエネルギーにより車体に亀裂が入り、漏れ出したガソリンが床に溢れて来る。
「脱出しろ‼」
コマンダーが叫び、ハッチに手を掛けて開くより一瞬早く漏れ出したガソリンが引火して爆発を起こし、高くなった内圧により手で開くより早くハッチが開く。
火だるまになったコマンダーが内圧に押し出される様に、車外に飛び出す。
続いて同じ様に衣服に火のついた通信士。
ドライバーはハッチから上半身を持ち上げたところで力尽き、怪我をしたジャックとハッチから遠い照準手は車内に取り残された。
コマンダーは2.67mもある砲塔上部から転げ落ちたところで力尽き、通信士は火だるまのまま奇声を上げて地面をのたうち回っていたが俺のFG42の銃弾を食らい直ぐに動かなくなった。
あけ放たたれたハッチから火柱が上がり、黒焦げになったドライバーの上半身は何度目かの弾薬の誘爆により体のパーツが砕け落ちて腕のない上半身だけが暫く残っていたが、それも直ぐに見えなくなった。
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