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3章
仁の家
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「そろそろ帰ろうかな」
「おっ、了解」
賢の部屋で夜までだらけ倒し、いよいよ夕食も食べ終わった頃、解散の空気になった。
明日も大学だが、用意もなければ着替えもない。一旦は家に帰らないと明日の何も準備が出来ない。少しずつ暗くなっていく空を見ながら家に帰る準備をする。
名残惜しいと思いつつも、持ってきた荷物を固めて賢の部屋を出る。玄関で見送ってくれた賢に挨拶をして、駅へと向かう。電車に乗れば15分で最寄り駅。そこから少し歩いて家に着く。
1日帰らないだけでとても久しぶりに感じた。しかし、めんどくさいとは思わなかった。
「ただいま」
「おかえり」
「ご飯ある?」
「あるよー」
母は何事もなかったかのように返答をしてくれる。既に用意されていた2度目の夕食を食べ、一通り昨日と今日の話をする。賢が恋人になった話はまだしない。晩ご飯を食べて、布団に転がる。
今ある幸せを最後まで享受できるのか、それが気になっていた。自分がみんなと違うことには少しずつ気づいていた。小学校でも中学校でも悩んでいた。でも、高校生ぐらいで吹っ切れた。異文化交流を授業でやった時に、周りの評判など気にせずに自分の好きなように生きればいいやと思えたことがきっかけだった。そう思えることはおそらくとても幸せなことだろう。しかし、そう思えるのなら素直になった方が自分にとっても幸せであることは分かっていた。
「恋人、か」
ふと、ポツリと溢れる一言。他の人とは違うことには自覚があり、恋人は今までいたことがなかった。仲のいい男友達はいたが、恋愛感情に発展することはなく、女性も好きにならなかった。完璧な同性愛の自覚をしたのは中学生の頃だったが、言い出せなかった。今でも知っているのは一部の大学の友達と賢だけだ。打ち明ける勇気は、まだない。
「お疲れ、明日は大学行こうな」
唐突にメッセージが飛んでくる。賢からだった。気疲れも何もないまま寝転がって寝そうになっていた。眠気と格闘しながら返信する。
「ありがと、頑張る」
この疲れ具合から察するに明日は寝坊する気がしていた。明日は2限。その後4限と5限だ。寝るとしようかな。今日は楽しい1日だった。
明日も切り替えて頑張ろう。授業とかレポートも多い。前期も大詰め。もうすぐ期末試験があって、その後夏休み。
賢の経験を聞けたら、年上の恋人ができた途端に大学生活がめんどくさくなっていた。しかし賢と同じ研究室に入って、いろんな話を賢とできれば、見えてくるものも変わってくる。そのために頑張れることは成し遂げたい。その想いは揺らがなかった。
時刻は夜9時を回ったところでエネルギー切れが来た。布団に寝転がっていたが、気がつけば夢の中にいた。
「おっ、了解」
賢の部屋で夜までだらけ倒し、いよいよ夕食も食べ終わった頃、解散の空気になった。
明日も大学だが、用意もなければ着替えもない。一旦は家に帰らないと明日の何も準備が出来ない。少しずつ暗くなっていく空を見ながら家に帰る準備をする。
名残惜しいと思いつつも、持ってきた荷物を固めて賢の部屋を出る。玄関で見送ってくれた賢に挨拶をして、駅へと向かう。電車に乗れば15分で最寄り駅。そこから少し歩いて家に着く。
1日帰らないだけでとても久しぶりに感じた。しかし、めんどくさいとは思わなかった。
「ただいま」
「おかえり」
「ご飯ある?」
「あるよー」
母は何事もなかったかのように返答をしてくれる。既に用意されていた2度目の夕食を食べ、一通り昨日と今日の話をする。賢が恋人になった話はまだしない。晩ご飯を食べて、布団に転がる。
今ある幸せを最後まで享受できるのか、それが気になっていた。自分がみんなと違うことには少しずつ気づいていた。小学校でも中学校でも悩んでいた。でも、高校生ぐらいで吹っ切れた。異文化交流を授業でやった時に、周りの評判など気にせずに自分の好きなように生きればいいやと思えたことがきっかけだった。そう思えることはおそらくとても幸せなことだろう。しかし、そう思えるのなら素直になった方が自分にとっても幸せであることは分かっていた。
「恋人、か」
ふと、ポツリと溢れる一言。他の人とは違うことには自覚があり、恋人は今までいたことがなかった。仲のいい男友達はいたが、恋愛感情に発展することはなく、女性も好きにならなかった。完璧な同性愛の自覚をしたのは中学生の頃だったが、言い出せなかった。今でも知っているのは一部の大学の友達と賢だけだ。打ち明ける勇気は、まだない。
「お疲れ、明日は大学行こうな」
唐突にメッセージが飛んでくる。賢からだった。気疲れも何もないまま寝転がって寝そうになっていた。眠気と格闘しながら返信する。
「ありがと、頑張る」
この疲れ具合から察するに明日は寝坊する気がしていた。明日は2限。その後4限と5限だ。寝るとしようかな。今日は楽しい1日だった。
明日も切り替えて頑張ろう。授業とかレポートも多い。前期も大詰め。もうすぐ期末試験があって、その後夏休み。
賢の経験を聞けたら、年上の恋人ができた途端に大学生活がめんどくさくなっていた。しかし賢と同じ研究室に入って、いろんな話を賢とできれば、見えてくるものも変わってくる。そのために頑張れることは成し遂げたい。その想いは揺らがなかった。
時刻は夜9時を回ったところでエネルギー切れが来た。布団に寝転がっていたが、気がつけば夢の中にいた。
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