軌跡 Rev.1

ぽよ

文字の大きさ
上 下
36 / 107
3章

到着

しおりを挟む
 新幹線に乗って50分。目的地に到着。旅行の話や大学の話をしながら乗っていればすぐだった。そしてホテルはなんとか取ることができた。主要都市から電車に乗って30分ほどの街だが、取れただけありがたいと思うしか無いだろう。
 新幹線の改札を抜けて街に出る。朝8時とはいえ真夏の日差しは容赦なく降り注いできた。2人は日傘なんておしゃれなものは持ち合わせていなかった。猛暑の中、タオルで汗を拭きながら街を歩いていく。

「とりあえず科学館に行くか」
「ほーい」

    前から話をしていた科学館に行くことにした。そこは科学技術の進歩や、普段から使っているようなものの原理などがあるらしい。
 駅からそんなに遠くはないと思われる。2人でのんびり歩けば、まぁ着くだろう。2人でのんびりと歩く。
 思っていたより遠かったが、それでもなんとか想定していたくらいの時間で着く。
 そんなことよりも暑さの方が想定外だった。地元の夏はここまで暑いことはなかなかなかった。
 目的の科学館に着いてからは、入館料を支払い中に入る。ここには、科学技術の歴史が展示されていた。目を引いたのは電灯の歴史だった。

「昔は白熱電灯、今はLEDライト」
「うん」
「LEDは太陽光に近いらしくて睡眠障害とかになりやすくなるらしい」
「へぇ」
「よく知らないけど」
「へ、へぇ」

    いつどこで仕入れるのかわからない知識を持っている。それが賢だった。音に関する展示があったり、自動車に関する展示があったりした。仁にとっては、ワクワクドキドキする展示だった。
 その様子が賢には分かっていたらしい。いろんな話をしながら、何か返事をすると必ず笑顔になってくれた。嬉しかった。自分を受け入れてくれる存在がいることが、とても嬉しかったのだ。
 一通りうろうろと見て回った後には、もう10時を過ぎていた。随分のんびりと回った自覚はあったが、1時間以上も科学館で色々と見ていたようだ。もう見て回るものがないという話になった。
 科学館を後にして、名古屋の街にもう一度出る。

「この辺に有名な公園があるらしい」
「そうなのか」
「よく知らないけど噴水が出るんだって」
「おー!」

    噴水なんて普段見ない。自分が住んでる街ではまずないし、大学の近くにもないものだった。異郷の地に来れば、今までとは全然違う体験ができる。それを見に染みて感じることができた。デートはまだまだ始まったばかり。途中で体力が尽きないことを祈りながら、2人は公園を歩く。
しおりを挟む

処理中です...