完全に疲弊しきった官公庁勤務の女の子と同居するだけの話

ぽよ

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60話

 冬子さんとゲームセンターを巡ること1時間と30分。音楽ゲームも無事終わり、クレーンゲームを楽しんで、メダルゲームは素通りして、ゲームセンターを出たところだった。

「今から、何しましょうか」
「そろそろお昼なんで、食べに行きましょうか」
「この辺だと、何があるんですか?」
「うーん……。パスタ、牛丼、ラーメン、くらいしか行ったことないですね」
「ラーメン、いいですね」
「ラーメン行きますか。家系ラーメンと呼ばれるものですけど」
「食べたことないやつです。楽しみです」
「じゃあ、行きましょうか」

 ゲームセンターを出て、商店街の中を歩いていく。夏真っ盛りで尋常ではない気温だが、夏休みということもあり、往来は流石に人が多かった。
 日除になっているような、なっていないようなアーケードを抜けて、そこから駅へと抜けていく。さらに駅を抜けた先にラーメン屋がある。
 都会特有のやけに大きな駅舎を抜けて左に抜けると、それが見つかった。

「ここですね」
「都内にはあるとは知ってたんですけどね。仕事が忙しくて」
「冬子さんの場合は忙しいとかそういう次元じゃないですよ」
「まぁ、そうですね」
「何はともあれ、行きましょう」
「楽しみです」

 ラーメン屋の扉を開いて、中に入る。ここのラーメン屋は久しぶりだった。

「食券を買うんですよ」
「なるほど、便利ですね。どれがいいですか?」
「基本のラーメンがいいと思います。無難にハズレはないと思うので」
「分かりました」

 自分も冬子さんと同じものを券売機で押して、席に着く。荷物を置いて、店員を待つ。

「お待たせしました。こだわりはありますか」
「二人とも普通で」
「分かりました」

 いつも通りの会話をしてから、食券が回収されるのを見届ける。その後、冬子さんが話しかけてきた。

「こだわりって、なんですか」
「背脂とか、麺の硬さとか選べるんですよ」
「斬新なシステムですね」
「脂系はこってりするというよりラーメン全体が重たくなるので、人を選ぶんですよね。それと、麺の硬さは柔らかめと硬めが選べるんですけど、普通が一番安定して美味しい気がするので、ひとまずそれを選びました」
「助かります」

 一丁前に解説して見せるが、そんなに詳しいわけでもない。なんとなく一通り食べてみて、安定感があるのがこれだった。
 そんなことを考えている間にラーメンが届く。

「きましたね」
「きました。楽しみです」
「食べましょうか」
「いただきます」
「いただきます」

 手を合わせてから、一口食べる。遺伝子に刻まれ、中毒性の高い塩分の高いスープが口の中に広がる。美味しい。
 隣の冬子さんを見てみると、着々と食べ進めていた。

「どうですか。美味しいですか」
「抜群の味です。毎日は、ちょっとしんどいですけど」
「これを毎日食べるのは、なかなかの強者じゃないと無理ですね」
「でも、美味しいです。体に沁みる味って感じです」
「それは大変よく分かります」
「いいものを知りました。ありがとうございます」
「いえいえ。僕も幸せを共有できて良かったです」

 若い女性の身体にはダメージが残るのではないかと今更ながらに心配になるが、何をどうしても時間は巻き戻らない。今はひたすら、目の前の麺を啜ることにした。
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