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61話
二人ともラーメンを食べ終わってから店を出る。
「今から、何します?」
「予定は特にないですかね。散歩か服屋くらいですかね」
「じゃあ、そこの公園散歩したいです」
「いいですね。僕も2回くらいしか歩いたことないです」
「行きましょう」
珍しく押しが強い冬子さんと一緒に、公園へと歩いていく。住んでいる町からかなり都会に寄っているこの街は、昼下がりになればすごい人集りになっていた。
車道を渡って、碁盤の目のような道をひたすらまっすぐ歩くこと5分。公園にたどり着いた。
「今日もすごい人ですね」
「こんなに暑くても散歩には人気なんですね」
「我々と同じ感じかもしれません」
「それだと納得です」
公園の入り口ですでに三股になっていた。なんとなく二人とも右側に動いていった。
左側には大きな池が見える。それには一切目もくれず、しかしのんびりと歩く。
「散歩と言いながら、聞きたいことがあったんです」
「何かありましたっけ?」
「秋吉さんの昔の話を」
「あれ、それ話しませんでしたっけ」
「聞いたような気はするんですけど、こういうところの方が聞ける気がするので」
「なるほど。昔の話ですか」
自分が社会人になった頃の話。少しだけ話をしたような気もするけれど、全部は話していないような気もする。どこからどう話そうか悩みながら歩く。
そこから1分ほど歩いてから、いよいよ話し始める。
「まぁ、そんな大層な話でもないんですよ」
「そう言わずに」
冬子さんの押しがやけに強かった。ずっと聞きたかったのかもしれない。
「まぁ、なんというか、僕も実家を出たくて、遠くの会社に就職したんですよ」
「ほうほう」
「まぁでも、全然仕事がうまくいかなくて」
「ほうほう」
「まぁその、冬子さんほどの環境ではなかったんですけれど」
「はは、まぁ、そうじゃなきゃいけないんですよ。本当に」
冬子さんは苦笑してみせるが、その環境が壮絶だったことは間違いない。自分の環境なんかは屁でもないような環境だったことは想像に難くない。それでも、今は話すしかなかった。
「まぁ、なんやかんやがありまして、一回実家に帰ったんですよね」
「私みたいにはならなかったんですね」
「まぁ、そうですねえ」
「私もいつか、実家に戻ることになるんですかね」
「それはまぁ、冬子さん次第ですけれど」
「なるほど」
冬子さんは頷きと相槌をずっと繰り返していた。彼女にも思うところがあるのだろう。
「でまぁ、色々あって、今は一人暮らししてるって感じです」
「なるほど」
「まぁ、そんな感じですね」
「いい話が聞けました」
「これ、いい話ですかね」
「私にとっては、ですけどね」
ふふふ、と笑ってみせる冬子さん。そんな笑顔は初めて見た気がした。しかし、彼女が笑顔になるのなら問題なかった。そのあともぽつりぽつりと話をしながら公園を散歩する。すべてを話し終わる頃には、公園の池をほぼ回り終えていた。
「今から、何します?」
「予定は特にないですかね。散歩か服屋くらいですかね」
「じゃあ、そこの公園散歩したいです」
「いいですね。僕も2回くらいしか歩いたことないです」
「行きましょう」
珍しく押しが強い冬子さんと一緒に、公園へと歩いていく。住んでいる町からかなり都会に寄っているこの街は、昼下がりになればすごい人集りになっていた。
車道を渡って、碁盤の目のような道をひたすらまっすぐ歩くこと5分。公園にたどり着いた。
「今日もすごい人ですね」
「こんなに暑くても散歩には人気なんですね」
「我々と同じ感じかもしれません」
「それだと納得です」
公園の入り口ですでに三股になっていた。なんとなく二人とも右側に動いていった。
左側には大きな池が見える。それには一切目もくれず、しかしのんびりと歩く。
「散歩と言いながら、聞きたいことがあったんです」
「何かありましたっけ?」
「秋吉さんの昔の話を」
「あれ、それ話しませんでしたっけ」
「聞いたような気はするんですけど、こういうところの方が聞ける気がするので」
「なるほど。昔の話ですか」
自分が社会人になった頃の話。少しだけ話をしたような気もするけれど、全部は話していないような気もする。どこからどう話そうか悩みながら歩く。
そこから1分ほど歩いてから、いよいよ話し始める。
「まぁ、そんな大層な話でもないんですよ」
「そう言わずに」
冬子さんの押しがやけに強かった。ずっと聞きたかったのかもしれない。
「まぁ、なんというか、僕も実家を出たくて、遠くの会社に就職したんですよ」
「ほうほう」
「まぁでも、全然仕事がうまくいかなくて」
「ほうほう」
「まぁその、冬子さんほどの環境ではなかったんですけれど」
「はは、まぁ、そうじゃなきゃいけないんですよ。本当に」
冬子さんは苦笑してみせるが、その環境が壮絶だったことは間違いない。自分の環境なんかは屁でもないような環境だったことは想像に難くない。それでも、今は話すしかなかった。
「まぁ、なんやかんやがありまして、一回実家に帰ったんですよね」
「私みたいにはならなかったんですね」
「まぁ、そうですねえ」
「私もいつか、実家に戻ることになるんですかね」
「それはまぁ、冬子さん次第ですけれど」
「なるほど」
冬子さんは頷きと相槌をずっと繰り返していた。彼女にも思うところがあるのだろう。
「でまぁ、色々あって、今は一人暮らししてるって感じです」
「なるほど」
「まぁ、そんな感じですね」
「いい話が聞けました」
「これ、いい話ですかね」
「私にとっては、ですけどね」
ふふふ、と笑ってみせる冬子さん。そんな笑顔は初めて見た気がした。しかし、彼女が笑顔になるのなら問題なかった。そのあともぽつりぽつりと話をしながら公園を散歩する。すべてを話し終わる頃には、公園の池をほぼ回り終えていた。
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