完全に疲弊しきった官公庁勤務の女の子と同居するだけの話

ぽよ

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79話

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 冬子さんとしばし平穏な時間を過ごし、スマートフォンの時計が13時を示した頃、冬子さんが言葉を溢した。

「ご飯、食べに行きましょう」
「行きましょうか」
「駅前にご飯屋さんはあった気がするので」
「偵察も兼ねて行きますか」
「行きましょう」

 決まればそこからの冬子さんは早かった。準備をして、立ち上がって玄関へと向かう。自分もそれについていく。
 冬子さんが鍵を閉めて、確認してからはっと気づく。

「すいません気が焦って。準備、大丈夫でしたか」
「間に合いましたよ」
「何か忘れ物があったら連絡しますね」
「よろしくお願いします」

 ふふ、と笑ってみせる冬子さんの笑顔が眩しかった。
 アパートの前まで出て、駅まで歩いていく。逆方向の道というのは慣れるまで全く違う道のように見える。冬子さんもマップを見ながら歩いていた。
 アパートから10分ほど歩くと駅がある。その駅前には飲食店が並んでいた。どれにするかと少し話して、定食屋に入る事に決めた。

「すいません。一番安全に食べれそうなのがここだったので」
「大丈夫ですよ。ここは安定した味なので安心して食べられます」
「ありがとうございます」

 定食屋に入るとラッシュは回避できたようで、空席がちょっとだけあった。店員に通され、ボックス席に座る。
 メニューに目を通して、二人とも鯖の味噌煮定食を頼む事にした。

「安定して美味しいものが一番ですよ」
「そうですよね」

 そんな会話をしながら待つと、10分ほどで運ばれてきた。一般的な鯖の味噌煮定食のそのままのビジュアルが出てくる。
 一口食べてみると、予想通りの味が口の中に広がる。

「美味しいですね」
「ここ、良い店ですね」
「仕事終わりに食べて帰れそうです」
「大事な事です」

 食べ勧めながらそんな他愛のない会話をする。何もかもを捨てていたあの頃の冬子さんからは見違えるほど良い笑顔だった。
 昼食を食べ終え、会計を済ませて店を出る。昼食代は自分が出した。最後の最後で見栄を張った。

「すいません。最後の最後まで」
「いえいえ、これが最後なので」
「寂しくなります」
「また何かあれば呼んでください」
「その時は、よろしくお願いします」
「お任せください」

 定食屋を出て、駅へと向かう。目の前に見える駅舎は大きくはないが、小さくはなかった。商業施設一体型ではないが、コンビニ程度なら駅の中に埋め込まれていた。
 二人で改札の前まで行く。そこで立ち止まる。

「行っちゃうんですね」
「そうですね」
「大変お世話になりました」
「元気になられて何よりです」
「また連絡すると思います」
「お待ちしております」

 その会話を最後にお互いにお辞儀をして、自分は改札を抜ける。ホームに降りる階段の手前で振り向くと、冬子さんがまだ改札の前にいた。手を振られたので振り返し、駅のホームへと抜けていく。
 ホームに到着した電車に乗り込む。これで本当に最後だ。冬子さんを送り出せて嬉しい気持ちと、寂しい気持ちがそこにはあった。
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