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特訓
しおりを挟む高島さんと2人で数学をやる毎日も1週間が過ぎた。計算以外がほとんど何もできない僕と一緒に数学をやる高島さん。日を重ねるごとに、どうすれば数学ができるようになるのかと考えるようになり、それはもはや勉強会というより特訓に近かった。高島さんの説明を聞いて、分からないところは質問して、問題を解いてみて、解けたり解けなかったりした。やっぱり数学をあきらめる方がいいんじゃないかという話になったけれど、なんとかなるの一点張りで特訓は続いた。
「中学校の数学はなんとなくわかるの?」
「なんとなく記憶にあるぐらいだけど」
「それの続きだよ!」
「それがもう分からないんだけど」
「難しいな」
「数学が難しいから仕方ないよ」
「うん」
「うん」
会話が続くことなく萎んでいく。難しいものは難しい。それは揺るぎない。しかし、話をしていて思うことは、高島さんも並の努力で数学が得意になったわけではないのかもしれないということだった。月曜日の放課後、2人で教科書を見ながら数学をする。数学自体はまだまだ分からないことが多いけれど、なぜか少しずつ楽しいという気持ちが芽生えてきているというのも正直なところだった。高島さんとやる数学には、今までの勉強にはない何かがそこにはあった。
「山口くんが数学をできるようになるにはどうすればいいのかなぁ」
「中学校くらいの勉強からやり直さないと、もはや何も分からない気がする」
「やる?やっちゃう?」
「やってもいいけど、果てしないよ」
「いいよ!楽しくなるじゃん!」
「楽しくなるのかな」
「多分!」
「多分なのか」
「山口くんとならきっと楽しい!」
「根拠がない」
「ないよ!でもきっと大丈夫!」
もはや堂々としすぎて僕が間違っているかと思うほどだった。そこに正しさというものを持ってくることが良いことなのかもよくわからないけれど。中学校の頃からずっと苦手だった数学。それでもできるようになれるだろうか。そんな疑問すら吹き飛ばすほどの自信なのか。それとも楽しみという気持ちだけなのか分からない高島さんと共に、今日も特訓は続いていく。
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