世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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居場所

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 分からないことばかりの仕事の中で、2人はそれでも仕事を頑張った。ゴールデンウィークの休みも終わり、梅雨が来て、いよいよ夏本番というところまで来ていた。ようやく仕事にも慣れ始めてきた。毎日同じように書類の束を処理していく。そんな日々になっていた。そして、今日という日もまた例に漏れず書類の束を抱えていた。新人ということもあってなのか、残業はまだしたことがない。17時までに仕事が終わらなくても帰る形になっているからだ。
 今日も17時で仕事が終わり、帰路に着いていた夏の夕方。高杉も定時に仕事が終わったらしく、今帰り道だと連絡が来た。そして不思議な連絡も来た。どうやら駅で待っていて欲しいらしい。家の最寄駅に着いてから、高杉に連絡する。高杉も後15分ほどで着くということなので、駅の中にあるコンビニに寄ることにした。特に買うものがあるわけでもないコンビニでの物色が好きだった。特に買うわけではないのだが、新商品のスナック菓子や酒を見るのが趣味だった。
 物色し始めて10分が経過し、飽きてきたところでスマートフォンが振動した。どうやら駅に着いたらしい。コンビニから出て改札に向かおうとしたところで高杉の影を発見した。

「おつかれさま。ごめんね待たせちゃって」
「おつかれ。大丈夫だよ。今日、なんかあるんだっけ」
「今日は花火大会がある」
「そういえばもうそんな季節か」
「今日が晴れてよかった」

 気がつけば夏本番。社会人になってからの忙しさの毎日で梨咲の中から季節というものが消えかけていた。気温の変化などで意識はしているつもりだったが、意外とそうはいかないらしい。そろそろ始まるということらしく急いで駅から出る。駅構内から抜け出し外の空気を吸い込んだ瞬間に、大きな音が鳴る。心臓を芯から振るわせる大太鼓のような音。あたり一面が少しだけ明るくなり、身の回りでも大きな声がわっと上がる。

「花火だ!」
「ここでも見えたんだ。良かった」

 駅前で立ち止まり、しばらく止まない花火を見る。大学生の頃も見た記憶がある。ここからこれだけ見えるということは大学からもおそらく見えていたのだろうけれど、ちょうどその時間は忙しかったかもしれない。高杉の家は駅から徒歩10分。高杉は毎年花火を見ていたのかもしれない。

「高杉くんはこの花火前から知ってたの?」
「これ、去年からなんだよ。でも、去年のこの頃の俺らって就活とか卒論でめちゃくちゃ忙しかったから来れてないんだよね」
「なるほどね。そういうことかぁ」
「俺が把握したのが遅かったのもあって誘えなかったのもあるんだけど」
「そんな時もあるよ。去年からかぁ」
「大掛かりな花火だからいろいろあるのかもね。予算とか」
「なるほど。確かに」
「見事に夢のない話だ」
「まぁね」

 二人で苦笑しながらそれでも花火を見ることはやめない。花火大会はその後もしばらく続き、煙避けも挟みながら1時間をもって終了した。さっきまでは綺麗な花火が上がっていた空には星が戻り、上を見上げていた人たちは前を向いて歩き始めていた。梨咲と高杉もその中のうちの一人だった。

「今日の晩御飯、何にしよっか」
「豚キムチでどう?」
「なんか難しそう」
「意外と簡単なんだよ」
「そうなんだ」

 いつものように夕食の話をしながら帰路に着く。恋人という関係から婚約者という関係に変わった。それでも変わらず今まで通りの二人でいられることが嬉しかった。
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