世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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一歩先の未来

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 デートは何事もなく進み、時刻は16時になっていた。服や靴を見て、雑貨屋を回って、一人暮らしで必要な物や欲しい物をある程度買った。今日の買い物はここまでにしようと話をして、駅まで歩いていく。今回はデートというよりは普通の買い物だったけど、それにしては十分すぎるほど楽しめた気がする。高杉といる時は気を張らなくていいから楽だということに最近気がついた。混んでいる駅を抜けて電車を待つ。そんな時に、高杉が話しかけてくる。

「急に誘ってごめんね」
「いや、大丈夫だよ。こういうデート、久しぶりだった気もするし」
「そうかな。それなら良かった」

 ここ最近は何かと遠出をすることが多かった。県境を跨ぐことを考えると旅行という表現の方が正しいかもしれない。遠出は確かに楽しむことができてとてもいいのだけれど、疲れがどうしても出てしまう。どういうデートが二人にとって一番いいのかはまだ分からない。今日のようなデートもまた、一つの選択肢として悪くないと思えた。会話の続きで、高杉に気になっていることを聞いてみた。

「高杉くんは、結婚とか気にしてる?」
「え?うーん、結婚かぁ」
「私はこのままこの関係が続くならそういうのも考えるのかなってちょっと思ったんだけど」
「考えてなかったかなぁ。でも、この関係が本当にこのままいくのであれば最終地点は結婚になってくるよね」

 結婚。梨咲が考える、日本の恋愛の形における最終到達地点。夫婦となれば恋人とは違う。法的な書面で契約を交わした関係になる。ぼんやりと考えていたが、具体的なことは何一つ浮かんでいない。そんな状態であっても、高杉が梨咲とどういう関係でありたいのかについては知っておきたかった。
 気がつけば電車は梨咲の家の最寄り駅に到着した。電車から降りて、閉まっていく扉に手を振る。扉が閉まって発車する。見えなくなるところまで見送ってから、家路へと歩いて行く。去年までは一人で帰るのに抵抗も寂しさも無かったのに、最近は1人で帰路につくと途端に寂しくなる。それも、梨咲に起きた変化の一つだった。しかし、休みが明ければまた大学で会えると思い直し、家へと歩いた。
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