世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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変化する日常

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 午後6時。梨咲は仕事から帰ってきた。高杉はまだ帰ってきていなかった。部屋に帰ってきてからまずやることは着替えだった。肝心の仕事はまだ新入社員研修の途中だが、既に色々とめんどくさい部分が見え始めていた。意味のない精神論と残業自慢、昇進合戦に上司への気に入られ方。そんなものは望んでいなかった。そんなつまらない話を聞き続けるだけの8時間だった。実務的な研修の日もあるが、身になっているかと言われると、それも正直かなり怪しい。まだ仕事が始まって2ヶ月目だが、会社選びを失敗してしまった気がする。
 部屋に寝転がってしばしの休憩。何もすることなく30分が経過し、消耗していた体力的に回復してきたところで、高杉が帰ってきた。高杉も同様に新人研修を受けている。どうやら営業の新人研修も大変らしい。

「おつかれさま」
「ありがとう、梨咲もお疲れ様」
「うん、ありがとう」
「大変そうだね」
「なんか、私の求めてたのはこれじゃないって感じ」
「はは、まぁ気持ちは分からなくはない。俺もそんなことを思う時があるよ」

 苦笑いしながらスーツを脱ぐ高杉。そして梨咲と一緒に寝転ぶ。金曜日の夜。明日は土曜日で仕事がない。いくらダラダラしても問題ないという安心感が2人にはあった。そしてそんな時間も過ぎ、いよいよ晩御飯を食べようという段階になった。週末のご飯はいつもパスタと決まっていた。疲れて何もやる気が起きないということもあるが、土曜日と日曜日に手の込んだ料理をするのだ。そのための体力温存として、金曜日はパスタになっている。休憩が終わってから、2人でキッチンへと向かう。カルボナーラとペペロンチーノのレトルトソースを取り出す。
 料理は2人ですることが多くなった。梨咲はこの時間が好きだった。2人で料理しながら味付けをしたり料理そのものを楽しんでる時間が幸せだった。パスタを茹でてからソースと絡めて皿に盛り付ける。2人分の夕食が完成してからリビングへと持っていく。社会人になる前に2人で買った少し大きめのテーブルに皿を置いて、手を合わせてから食べ始める。

「ペペロンチーノ美味しい」
「俺は鷹の爪が苦手だからなー」
「鷹の爪は辛いからね」
「カルボナーラにも入ってたりするけど、無いやつを選んでるから」
「余念がないね」
「野菜とか魚ならまだしも鷹の爪は食べなくても死なないから」
「それは間違いないね」

 2人で笑いながら夕食を食べる。大学時代に1人で食べていた時とは圧倒的に違うものがある。2人で食べる夕食がこんなに美味しいなんて知らなかった。大学生の頃は、高杉と食べるご飯は特別なものが多かった。だから味覚的に錯覚しているのかと思っていたが、そうではないということに最近気付いた。梨咲の中のいろんな部分が、少しずつ変わり始めていた。
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