短編集

ぽよ

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「はぁ……」

 一人暮らしの部屋の中で溜息をつく。することもなく家事をこなす。それが終われば、一人で部屋に寝転がる。
 スマートフォンの時計は午後7時を表示していた。夕食も食べ終わり、明日までの時間が過ぎていくのを待つだけ。
 一年前に別れた恋人の記憶が抜けないまま時間だけが過ぎていく。街を歩いても店に入ってもその記憶が抜けないまま繰り返されていく。自分の記憶力の良さにはびっくりだが、ここまで抜けないものかということにも驚いている。
 人間の記憶というのは声から消えていくらしい。インターネットで聞いただけの知識だが、もしそれが正しいとするなら、この記憶はまだまだ消えそうにない。

「さて、何しようかな」

 落ち込んでばかりいられないのもまた人生。少しずつでも前に進んでいくことが何よりも大事だ。風呂に入るか、家事をするか。何にせよ、ここからの一歩を歩まなければ時間だけが過ぎ去っていく。
 結局風呂に入って出てきてから洗い物をこなす。いつもと変わらぬ日常がそこにある。この記憶が消える頃、自分は何をしているのか。辿り着いたその先にあるのは、幸せな世界なのか。それは、まだ分からなかった。
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