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❄️冬は つとめて

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【三つ巴の戦い・後編】姉編

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婚約者バータとの顔合わせ、二回目のお茶会であったが歪な空気が流れていた。この場に関係ない、義理の妹マーカリンが自分の婚約者の隣に陣取り居座っている。

婚約者のバータも、妹マーカリンが絡める腕を引き剥がしていたが諦めたのか隣に座るのを許している。

(まあ、その気持は分かるわ。)
妹のひつこさに、自分もよく諦めているからだ。

「マーカリン。一度口に入れたものを、飲み込みなさい。」
栗鼠のように頬をパンパンに膨らませた妹に、姉シャームは優しく声をかけた。

だが心の中は、だった。

(これって、あれ、あれよね。)
すました顔でお茶を飲むシャーム。爽やかな風が、彼女の銀の髪を揺らす。

(間違いない、あれよね!! )
静かに目の前の二人を見る。

(義理の妹に、私の婚約者。寄り添う二人。間違いないわ!! )
シャームは落ち着くように、もう一度お茶を飲む。

(ノベルを読み込んでいた私には、!! コレは『逆ざまぁ』の小説の中に違いないわ!! )

彼女は目の前の二人をカップの上から覗き見る。そう、彼女シャーム唐突に前世の自分を思い出していたのであった。しかもノベルをこよなく読んでいた女子である。

ノベルの定番、なんでも欲しがる義理の妹、妹に思いを寄せる姉の婚約者。

継母お母様と仲がいいけど、それはよね。)

ちらちらと目の前の二人、マーカリンとバータは目を合わせ、逸らしている。

(お母様と妹に虐げられてはいないけど、それはよね。既に『クレクレタコラ義理妹』は、私の婚約者を『ロックオン』してるし。)

※クレクレタコラとは、昭和時代のなんでも欲しがるタコのキャラクターである。

ずずずっ、とお茶を音をたてずに飲み干す。淑女としての常識。

(間違いないわ!! )
シャームは、カップをテーブルに置いて落ち着くように一息はいた。

(そのうち私は『ざまぁ』をされるのね。そして、そして、 )
にゃける顔をシャームは手で押さえ隠した。

(『逆ざまぁ』で、バータより素敵な旦那様が!!! )
シャームは歓喜の悲鳴を上げそうになるのを、必死でこらえた。

(素敵な旦那様て、誰かしら? 王子様? 公爵家の嫡男? )
彼女の心は『取らぬ狸の皮算用』『望みは高く果てしなく』であった。

(おかしいと思ったのよ、だって普通王子殿下とか公爵の嫡男に婚約者がなんて。)

しかし、王太子殿下には婚姻者がいる。お家騒動を起こさないため、王太子に子供ができるまで、王位継承者に近い者に婚約者を持たせないのが王家の方針だとは彼女は知らない。

(これは、布石ふせき。私が高位貴族と幸せになる、布石だったのね!! )
シャームはその場で踊りだしたい思いをぐっと堪える。

ふっと、気づくと目の前の二人が距離を取った。

(ふふっ、馬鹿ね。今更距離をとっても2人の気持ちは分かっているわ。『真実の愛』だもんね。)
自分に引け目を持って距離をとったのと彼女は勘違いをした。

(大丈夫よ2人とも。だって、私にはできるんだもの。)
シャームはすっくと椅子から立ち上がった。マーカリンとバータは急に立ち上がったシャームに目を向ける。

(私の2人にはもっともっと、親密な関係になってもらわなきゃ!! )

「わたくし、お花摘みに行ってまいりますわ!! 」
満面の笑みを残して、マーカリンとバータを二人っきりにする為に後ろを振り向く。うきうきとする気持ちがスキップとして現れ、シャームは茶の席を後にする。

「えっ、シャーム嬢。」
「待って、お姉さま!! 」

((いやーーー!! 二人っきりに、しないでーー!! ))

バータとマーカリンは心の中で叫んだ。

呆然とする二人。

しかしマーカリンは直ぐに思い立った。席を立ち上がると、バータに向かい。

「私も、お花摘みに行ってまいりますわ~~ 」
「あ、うん。」
そそくさと姉の後を追うマーカリン。

「連れション、連れション、ですわ、お姉さま~~ 」
ひょこひょこと跳ねながら、茶の席を後にする。

「はーー 」
バータは息をひとつ吐く。
二人っきりにされたら、あの妹に襲われるかも知れないと恐怖でしかなかった。妹までトイレに行ってくれて安堵のため息だ。

(その時は、バッキンバッキに叩き潰すけどな!! )
良縁を自分から潰してなるものかと、バータは再び心に刻み込む。

(マスオさん、マスオさん!! 目指せ、◯ザエさんのマスオさんだーー!! )

バータはシャームを中庭のテーブルで帰って来るのを待っていた。

(妹は戻って来なくていいから。)

しかし、待てど暮らせど二人が戻って来ることはなかった。



「ふふっ、今頃2人は親密な関係に…… 」
シャームは自分の部屋で、ダンスを踊っていた。嬉しすぎてじっとしていられなかったのだ。

「うふふふっ、ざまぁよ、ざまぁよ、逆ざまぁ!! 待ってて、素敵な旦那様!! 」


同じ頃マーカリンも自分の部屋に、戻っていた。

「ざまぁはいや、ざまぁはいや、逆ざまぁはいやよ~~ 」
マーカリンは布団の中に潜って震えていた。

「きっと今頃、2人は親密な関係に…… 」
(だって、私が邪魔をしてないんだもの。だから、逆ざまぁはないよね? )
マーカリンは、神に祈った。


「クシュン!! 」
その頃、置いてけぼりにされたバータは、一人寂しく待っていた。



【完】

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