【完結】猛反した王子は、婚約破棄を頑張りたい。

❄️冬は つとめて

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氷の王子、クラウス。女の戦い。

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大きな聖堂の開かれた扉の前で、アンジェリカはクラウスを待っていた。
正式にエスコートをするとは、言われてなかったが クラウスは細かい決まり事は婚約者として必ずやってくれていた。何時もなら、何日か前に言葉を掛けてくれるのだが 今回は忙しそうに走り回っていた。
だけど、クラウスは必ず来てくれる。アンジェリカは信じて、待っていた。

「あら、アンジェリカ様。こんな処で、どうなさったの 壁の華ならず、庭の花かしら。」
ウエーブのついた濃い茶色の髪を、腰まで流し。レースで、できた美しい扇子で口元を隠しながら彼女はアンジェリカの前に立つ。後に何人かの取り巻きが、続く。彼女達は、制服ではなくイブニングドレスを着ていた。変に目立っていた。
「アフロディ様。」
アンジェリカは、静かに頭を下げた。
三候と呼ばれるベクトル侯爵よりは落ちるが、彼女もまた王都に住む侯爵家の者であった。
「アフロディ様、田舎者のアンジェリカ様には。お庭の花など、勿体ないですわ。」
「田舎者には、雑草がお似合いかしら。」
蔑む目で笑いながら、令嬢達がアンジェリカを見る。
アンジェリカは、黙って目を反らした。
「貴方みたいな田舎者、クラウス様には相応しくないわ。」
「そうですとも、クラウス様のお隣にはアフロディ様がお似合いですわ。」
「田舎者より、宣伝された王都に住むアフロディ様がお似合いですわ。」
取り巻き達に、褒められ益々図に乗るアフロディ。
「いくら制服で と、言われてもクラウス様のお手を取るには其れなりの格好をなさってはいかがかしら。」
「アフロディ様、田舎のドレスなど。」
「制服より、劣るのでは? 」
「まあ、だから制服なのですね。」
令嬢達は、アンジェリカを蔑んで高らかに笑った。

「其処までしたら、アフロディ様。」
「シルビア。」
シルビアの声に、取り巻きの一人の令嬢が声を上げる。
「貴方達、浮きまくっている事に 気が付かないの? 」
「本当、馬鹿みたい。」
姉の言葉に、妹のシルフィが応える。
「貴方達、アフロディ様に対して 不敬よ。」
シルビアは、鼻で笑った。
「其れなら、貴方達。アンジェリカ様に対して 不敬よ。」
取り巻きの令嬢達は、アフロディの後に隠れる。
「シルビア様、いいのよ。」
アンジェリカは、目を閉じた。何時もの事で、慣れていた。
「アンジェリカ様も、言い返せはいいのに。こんな、狐達に。」
「人が、良いですわ。」
シルビアは、腰に手をあてて笑った。
「まあ、相手にする価値はないですけど。」
「ええ、おねぇ様。ゴミですわ。」
ネピネメイト伯爵家の令嬢は、敵に対して辛辣であった。侯爵家であろうと、その態度は変わらない。
「貴方が、王都の貴族達が辺境貴族を差別するから。アンジェリカ様が、クラウス様の婚約者に選ばれたのよ。」
「そうですわ、馬鹿みたい。」
「もし、差別がなければ。貴方が、婚約者に選ばれていたかも知れないのに。」
アフロディは目を見張り、アンジェリカは目を閉じた。
(そう、これは政略結婚。其れでも、私は。)
アンジェリカは、唇を噛み締める。

「さあ、もう行ったら。其れとも、貴方達は庭の花になりたいの? 」
シルビアが言うと、取り巻きの一人が食って掛かった。
「シルビア、貴方とは私は違うのよ。」
令嬢は、笑って
「貴方、今回エスコートの相手が いないんでしょう。知ってるわよ。」
「心配して頂いて、有難う。相手は、いますわ。」
シルビアは、不適に笑った。
「あっ、来たようですわ。おねぇ様。」

「待たせたかな? シルフィ。」
「いいえ、アルファ様。グッドタイミングですわ。」
シルフィは驚いている、令嬢達を見る。
「じゃ、行こっか。」
アルファは笑顔で、手を差し出す。シルフィはその手に、そっ と手を置く。
「クラウス様達は、どうしました? 」
「うん。もう直ぐ、来るよ。」
「そうですか。」
シルフィは、姉を見る。シルビアは、頷いた。
「では、ごきげんよう。」
シルフィは、令嬢達に笑顔を振りまいて 聖堂の開かれた扉を括る。

「嘘、何故。アルファ様が。」
令嬢達が、呟いた。

「ごめんあそばせ。お優しいアルファ様は、シルフィが相手がいないことに心を痛め。恥を欠かせないように、誘って下さったのですわ。」
シルビアの微笑みながら
「勿論、クラウス様の承諾は得ていますわ。」
シルビアは、令嬢達を上から目線で見下げる。
「ええ、私の相手も。私に、相手がいないのならと。アルバート様が、可哀想だと誘って下されたのですわ。」
悔しそうに、唇を噛む令嬢達に。
「本当に、お優しいアルファ様にアルバート様。」
シルビアは、アンジェリカに近付く。
「其れを、容認して下さるクラウス様も素敵ですわ。ね、アンジェリカ様。」
「ええ、クラウス様は素敵ですわ。」
アンジェリカは、少し頰を染める。そして、木が生えている垣根を見る。
「ああ、早くお越しにならないかしら。待ち遠しいわ。」
チラリ と、シルビアは令嬢達を見る。扇子を折る程に力を込める、アフロディ。後の令嬢達も、シルビアの天敵も悔しそうに その場を離れていった。
「勝った。」
シルビアは、高笑いをしたくなったが 其れは我慢した。だが、満面の笑みをしてエスコートの相手を 待つのであった。
アンジェリカは じっ と、垣根を見ていた。
「どうなされたのかしら? クラウス様。」
垣根の向こう側に クラウスが居ることに、アンジェリカは気付いていた。

垣根の向こう側で、クラウスは最後の足掻きで木に抱き付いていた。其れをアルバートに、引っ張られている処だった。
「いい加減、手を放せ クラウス。」
「いや、やはり ここは。エスコートをドタキャンする最低な男として、アンジェリカにも周りの者にも認識をさせて、」
「そうならないのが、貴族社会だ。いい加減、頭に入れろ。」
「しかし、やはり。」
「だーー!! 面倒臭え。アンジェリカ嬢が、泣くぞ。」
「うっ!! 」
クラウスは、木から手を離した。

暫くして、聖堂の中でクラウスとアンジェリカのダンスが見られた。其れは、周りの者にため息を付かせる程、美しい一枚の絵の様であった。


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