【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて

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悪役令嬢は、誰。

其れは、愛する二人の物語。

「君を、愛している。」
「貴方を、愛しています。」
愛する二人は、愛を語り合う。二人は、幸せであった。
あの時までは。
男の父の事業の失敗、莫大な借金。男は、途方に暮れる。愛する女は、何も出来ない。

『貴方が、私と結婚してくれるなら。私が、貴方を助けてあげる。』
とある令嬢が、男に手を差し延べた。男の父は、喜び。息子に縋り付く。
「どうか、使用人達を助けておくれ。」
男は、泣く泣く愛する女と別れた。女は、泣く泣く身を引いた。
男は、自分をお金で買った令嬢を愛することは出来なかった。男は、愛のない結婚に後悔する。

そんにな中、街の片隅で働く愛する人と出会う。
恥ずかしげに、荒れた手を隠す愛する人。男の心に、愛しさが溢れ出す。
「君を護りたい、愛する人よ。」
「愛する人は、貴方だけ。」
愛し合う二人は、愛を語り合う。愛は、再び燃え上がる。

『そんな事は、許さない。』
二人の前に、愛を引き裂く者が現れる。男の妻。

「お許し下さい、奥様。」
『いいえ、許さないわ。』
妻は、女を罵倒する。
『誰か、この泥棒猫を何処か遠くの街に 放り捨ててきてちょうだい。』
「はい、奥様。」

「お許し下さい、奥様。私は、ただ あの人の近くにいたいだけ。」
女は、地に頭を付けてお願いをする。馬車に乗せられ連れて行かれる、途中で。
「あの人と離れ離れになるのは、もういや。」
女は、断崖から飛び降りる。

「ああ、なんて事だ。」
男は、愛する人を失い絶望する。男は女の飛び降りた断崖で、
『あなた、止めて!! 』
「愛する人のいない、この世界。なんの未練があることか。」
男は女の後を追って、断崖の下へ飛び降りる。愛する二人は、死して永遠に結ばれる。

「う、うっ、うっ。可哀想です~ぅ。お嬢様!! 」
サシャは、パンフレットを握り締めて思い出し泣きを始める。引き離された、二人を思って涙ぐむ。
(私は、愛する二人を引き裂く悪役令嬢? )
ナンシーは、愛する二人。あの美しい人とウイリアムを引き裂く酷い悪役令嬢なのかとおもい出す。
(借金。そう、借金よ。あの美しい人が言っていた。侯爵家の存亡の危機。)
ナンシーは、父の書斎へ駆け込んだ。
「お父様。ウイリアム様に、お金を貸しているのですか? 」
突然の問い掛けに、父は書類を落とした。
「急に何を言っている ナンシー。」
「応えて、お父様。ウイリアム様に、お金を貸しているのですか? 」
ナンシーは、涙目で訴える。
「だから、ウイリアム様はこんな地味な私を。」
ナンシーは、ドレスを握り締める。言葉が、続かない。
「ウイリアム様に、お金なんて貸してない。侯爵家は、イケイケどんどんの順風満帆だ。私がお金を借りても、貸すことはない。因みに、借りてもないからな。」
「うそ!! こんな、地味な私を婚約者にするなんて。何か理由が、あるはずよ。」
自分を卑下する娘に、
「ナンシーは、地味では無い。ナンシーは、清楚と言うんだ。そこに、ウイリアム様は一目惚れをしたそうだ。」
「うそ、うそよ。」
(だって、あの人は、華やかで美しい。)
ナンシーは、顔を覆って泣き出した。父は、オロオロと戸惑う。
「シンシア、シンシア!! 助けておくれ!! 」
父は母に、助けを求める。
(あの美しい人は、ウイリアム様の為に身を引こうとしているの。私より、ウイリアム様を愛しているの。)

「マリッジブルーかしら。」
父と母は、泣きじゃくる娘になすすべはなかった。



「わたくし、悪役令嬢が可哀想だと思うのですわ。」
次の日も訪れた美しい人は、突然劇の話しをする。
「悪役令嬢は、きっとあの男性が好きだったのですわ。で、なければ 借金の肩代わりをする筈なんてないでしょう。」
美しい人は、愛し合う二人より悪役令嬢を可哀想だと言う。
「愛し合う二人を別れさせた? 違うでしょう、男性が令嬢を選んだのですわ。」
美しい人は、お茶を一口飲む。
「男性が別れを選んで、女性がそれを受け入れた。そうでしょう。」
美しい人は、ナンシーを見据える。ナンシーは、俯いた。
「ウィル兄様も、言ってたわ。『愛を貫きたかったら、自分で稼げ。』と。身も蓋もない事を仰るのよ。」
クスクスと、笑う。

(えっ? )
ナンシーは、顔を上げた。
「ウイリアム様が。」

「ええ、昨日。ウィル兄様と、見に行きましたの。」
美しく、微笑む。
「あの、執事さんは。」
「ロレンス? 彼は、忙しいからいなくてよ。」
「二人きりで? 」
「ええ、そうですわ。」
美しい笑顔を、称える。
ナンシーは、呆然とした。

「二人して、共感しましたわ。やはり、悲恋物は詰まらないと。」
美しい人は、笑う。
「ヒロインも悪役令嬢の様に、相手から奪い返すほどの度量を見せて欲しいですわ。そう、想いませんこと? 」
美しく人は、ナンシーに問い掛ける。
(奪い返す? ウイリアム様を。)
「それに、男性も後悔なさるのでしたら。倍のお金を稼いで、正式に令嬢に離縁を申し込むのが筋だと思いますの。ウィル兄様も、その様に思ってますわ。」
「ウイリアム様が。」
(ウイリアム様が、後悔なさっている。)
ナンシーは、涙を流した。

「ウィル兄様が、理想と違うからと泣かないで。」
美しい人は、ナンシーを慰める。優しい微笑みを向ける。
「ウィル兄様は、ああ見えても酷い人ですのよ。」
美しい人は、ナンシーに微笑みかける。
「貴方の気持ちを考えない、酷いウィル兄様。」
美しい人は、ナンシーの手を取った。
「無理矢理な婚姻は嫌なのでしょう。そうよね、恋をしたいわよね 女の子ですもの。」
美しい人は解ってるわと、頷いた。
「そうだわ。何時でも、仰って。ウィル兄様と、婚約を解消したいのなら。」

呆然と涙を流すナンシーに、
「力に、成りますわ。わたくし、貴方の味方ですもの。」
美しい人は、美しい笑顔をナンシーに向けた。




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