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婚約解消。
「近頃、お嬢様の様子がおかしいのです。」
メイドのサシャは、考えた。
「昨日も泣いて、ウイリアム様の屋敷から帰って来たのです。」
サシャは、両手で茶器を持っと一口のお茶を飲んだ。
『ほうっ』と、息を吐く。
「その前の日も、泣いていました。」
解らないサシャは、先輩メイドに聞いてみた。
先輩メイド曰わく。
『それは、マリッジブルーよ。』と、言われた。
結婚が近づくと不安になって、当たり散らしたり、泣き出したりするらしいのです。
「サシャは、まだ結婚する相手がいないので 良く解りません。」
サシャは、厠に行っている間にお嬢様が柱の陰で声を殺して泣いている姿に驚いていた。
「いったい何が、有ったの? 」
直ぐさま馬車を呼んで、お嬢様を屋敷に連れ帰った。
「昨日の晩も今朝方も、とても嬉しそうだったのに。」
今は部屋に引き籠もって、出て来ない。サシャは、首を傾げるしかなかった。
「これが、マリッジブルーなのね。」
暫くすると、玄関ホールの方が騒がしくなって来た。
「わたくし、5分も待ちましたのよ。来ないから、迎えに来ましたわ。」
勝手知ったる家の様に ずかずかと、ナンシーの部屋の前まで現れる美しい人。
『トントン』と、扉を叩く。
「カミーユですわ。お開けになって。」
返事がない。
『トントン』と、叩く。
「『来ないと、酷いわよ。』と、言いましたでしょう。」
返事がない。
「ふふっ。」
美しい人は、微笑んだ。
『ドカッ!!』『バキッ!! 』
「「「「えっ!? 」」」」
メイド達や使用人は、目を疑った。美しい人が、扉を蹴り破壊したのに。
「酷いと、言いましたでしょう。」
美しい人は、振り向いて微笑んだ。
「わたくし、護身術をやっておりましてよ。」
コロコロと、笑った。
美しい人は、部屋に入るとベッドの上で泣いているナンシーの近づく。
「お茶の準備をして下さる。此処まで、歩いて来たのよ。手みあげですわ。」
振り向きバスケットをメイドに、差し出す。
「お茶菓子にして下さる。」
美しい人は、有無を言わさぬ圧力で微笑む。
「あら、あら。こんな、お昼まで布団に潜っているのは頂けませんわ。お起きあそばせ。」
『バッ』と、布団を剥ぎ取る。朝方出た服装のまま、ナンシーは布団の中に潜っていた。可愛らしいクリーム色のワンピースが皺になっている。
「あら、あら。変わった、寝姿ですこと。」
クスクスと、笑う。
「お目々も、ウサギさんみたいですわ。」
美しい人は、首を傾げる。
「酷い顔、ですこと。」
布団を剥ぎ取られたまま、呆然とベッドの上に座っていたナンシーは。
「酷い、顔。」
美しい人の言葉に心を痛め、再び涙を流した。
『いや、可愛くはない。』
『カミーユの方が、可愛いよ。』
『全然、好みじゃない。』
『カミーユは、誰よりも美しい。カミーユより美しい女性は、いない。』
ウイリアムの言葉が、蘇る。
嬉しそうに、美しい人を抱き締めるウイリアム。
「もういい!! もういいの!! 私、婚約を解消する!! だから、だから!! 」
(ほおって、置いて!! )
最後の言葉は、声にはならなかった。ナンシーは、泣きながら叫んだ。
美しい人は、驚いていた。驚いた顔も、美しかった。
「まあ。やはり、好きな人がいたのね。」
美しい人は、頰に手をあてて言った。
「酷い、ウィル兄様。やはり、無理矢理でしたのね。」
美しい人は、優しく微笑んだ。
「大丈夫よ。わたくし、貴方の味方ですもの。」
美しい人は、ナンシーの手を取った。
「ウィル兄様に、婚約を解消をして。『ぎゃふん』と、言わしましょう。」
優しく微笑む。
「貴方は、好きな方と幸せになってね。」
女神の如く、微笑んだ。
(ウイリアム様が、好き。)
ナンシーは、泣きながら思った。
(政略結婚でも、偽の結婚でもいい。傍にいられるのなら。でも、)
ナンシーの目に、止め処なく涙が溢れる。
(でも、二人の愛し合う姿は見たくはない。)
ウイリアム様の優しい笑顔も、恥ずかしそうな顔も、総てこの美しい人に注がれる。
(近くで、見ているなんて耐えられない。だから、)
「私、婚約を解消します。」
弱々しく、ナンシーは消え入りそうな声に出した。
直ぐにでも、撤回したい思いのまま。
「解ったわ。」
美しい人はナンシーから手を放して、
「ウィル兄様が、駄々をこねたら。わたくし、力になりますわ。」
美しい人の口元が、綻んでいる。
「可哀想な、ウィル兄様。」
目が、細まる。
「振られて、しまったのね。わたくし、慰めてあげなくては。」
美しい笑顔を、ナンシーに見せる。
「婚約解消は、早い方がいいわ。今日にでも書類をしたため、明日の朝一番にでも屋敷に届けさせて。」
美しい人は、頷いた。
「朝なら、ウィル兄様。屋敷に、必ずいますから。」
美しい人は、足取り軽く歩いて去って行った。
ナンシーは、事情を夕方近くに帰って来た両親に話して婚約解消をお願いした。
両親は驚いたが、ウイリアムに娘の他に好きな人がいると聞いて頷いた。
「好青年だと、思ったのに。」
「ええ、騙されましたわ。」
両親は憤慨して、婚約解消の書類をしためる。
次の朝一番に、ウイリアムの屋敷に書類を届けさせた。
暫くして、書類を届けた使用人の襟首を掴まえたまま。鬼の形相で、ウイリアムが屋敷を訪れて来た。
メイドのサシャは、考えた。
「昨日も泣いて、ウイリアム様の屋敷から帰って来たのです。」
サシャは、両手で茶器を持っと一口のお茶を飲んだ。
『ほうっ』と、息を吐く。
「その前の日も、泣いていました。」
解らないサシャは、先輩メイドに聞いてみた。
先輩メイド曰わく。
『それは、マリッジブルーよ。』と、言われた。
結婚が近づくと不安になって、当たり散らしたり、泣き出したりするらしいのです。
「サシャは、まだ結婚する相手がいないので 良く解りません。」
サシャは、厠に行っている間にお嬢様が柱の陰で声を殺して泣いている姿に驚いていた。
「いったい何が、有ったの? 」
直ぐさま馬車を呼んで、お嬢様を屋敷に連れ帰った。
「昨日の晩も今朝方も、とても嬉しそうだったのに。」
今は部屋に引き籠もって、出て来ない。サシャは、首を傾げるしかなかった。
「これが、マリッジブルーなのね。」
暫くすると、玄関ホールの方が騒がしくなって来た。
「わたくし、5分も待ちましたのよ。来ないから、迎えに来ましたわ。」
勝手知ったる家の様に ずかずかと、ナンシーの部屋の前まで現れる美しい人。
『トントン』と、扉を叩く。
「カミーユですわ。お開けになって。」
返事がない。
『トントン』と、叩く。
「『来ないと、酷いわよ。』と、言いましたでしょう。」
返事がない。
「ふふっ。」
美しい人は、微笑んだ。
『ドカッ!!』『バキッ!! 』
「「「「えっ!? 」」」」
メイド達や使用人は、目を疑った。美しい人が、扉を蹴り破壊したのに。
「酷いと、言いましたでしょう。」
美しい人は、振り向いて微笑んだ。
「わたくし、護身術をやっておりましてよ。」
コロコロと、笑った。
美しい人は、部屋に入るとベッドの上で泣いているナンシーの近づく。
「お茶の準備をして下さる。此処まで、歩いて来たのよ。手みあげですわ。」
振り向きバスケットをメイドに、差し出す。
「お茶菓子にして下さる。」
美しい人は、有無を言わさぬ圧力で微笑む。
「あら、あら。こんな、お昼まで布団に潜っているのは頂けませんわ。お起きあそばせ。」
『バッ』と、布団を剥ぎ取る。朝方出た服装のまま、ナンシーは布団の中に潜っていた。可愛らしいクリーム色のワンピースが皺になっている。
「あら、あら。変わった、寝姿ですこと。」
クスクスと、笑う。
「お目々も、ウサギさんみたいですわ。」
美しい人は、首を傾げる。
「酷い顔、ですこと。」
布団を剥ぎ取られたまま、呆然とベッドの上に座っていたナンシーは。
「酷い、顔。」
美しい人の言葉に心を痛め、再び涙を流した。
『いや、可愛くはない。』
『カミーユの方が、可愛いよ。』
『全然、好みじゃない。』
『カミーユは、誰よりも美しい。カミーユより美しい女性は、いない。』
ウイリアムの言葉が、蘇る。
嬉しそうに、美しい人を抱き締めるウイリアム。
「もういい!! もういいの!! 私、婚約を解消する!! だから、だから!! 」
(ほおって、置いて!! )
最後の言葉は、声にはならなかった。ナンシーは、泣きながら叫んだ。
美しい人は、驚いていた。驚いた顔も、美しかった。
「まあ。やはり、好きな人がいたのね。」
美しい人は、頰に手をあてて言った。
「酷い、ウィル兄様。やはり、無理矢理でしたのね。」
美しい人は、優しく微笑んだ。
「大丈夫よ。わたくし、貴方の味方ですもの。」
美しい人は、ナンシーの手を取った。
「ウィル兄様に、婚約を解消をして。『ぎゃふん』と、言わしましょう。」
優しく微笑む。
「貴方は、好きな方と幸せになってね。」
女神の如く、微笑んだ。
(ウイリアム様が、好き。)
ナンシーは、泣きながら思った。
(政略結婚でも、偽の結婚でもいい。傍にいられるのなら。でも、)
ナンシーの目に、止め処なく涙が溢れる。
(でも、二人の愛し合う姿は見たくはない。)
ウイリアム様の優しい笑顔も、恥ずかしそうな顔も、総てこの美しい人に注がれる。
(近くで、見ているなんて耐えられない。だから、)
「私、婚約を解消します。」
弱々しく、ナンシーは消え入りそうな声に出した。
直ぐにでも、撤回したい思いのまま。
「解ったわ。」
美しい人はナンシーから手を放して、
「ウィル兄様が、駄々をこねたら。わたくし、力になりますわ。」
美しい人の口元が、綻んでいる。
「可哀想な、ウィル兄様。」
目が、細まる。
「振られて、しまったのね。わたくし、慰めてあげなくては。」
美しい笑顔を、ナンシーに見せる。
「婚約解消は、早い方がいいわ。今日にでも書類をしたため、明日の朝一番にでも屋敷に届けさせて。」
美しい人は、頷いた。
「朝なら、ウィル兄様。屋敷に、必ずいますから。」
美しい人は、足取り軽く歩いて去って行った。
ナンシーは、事情を夕方近くに帰って来た両親に話して婚約解消をお願いした。
両親は驚いたが、ウイリアムに娘の他に好きな人がいると聞いて頷いた。
「好青年だと、思ったのに。」
「ええ、騙されましたわ。」
両親は憤慨して、婚約解消の書類をしためる。
次の朝一番に、ウイリアムの屋敷に書類を届けさせた。
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