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「貴方はこれから王女として過ごしなさい」
想像していなかった言葉に、汚れた瓶底眼鏡の奥でカメリアの瞳がこれ以上ないくらいに見開かれる。
王妃は聡い。もう三年の月日、ルートアとして向き合ってきたが、母の偉業はその身を持って感じてきた。気をつけているが、ふとした仕草などで勘付かれる可能性はあった。
そもそも第一騎士団という最も王族に近い位置にいるのだ。ルートアを眼にする機会は多い。その上、密命を受ける仲である。他の騎士よりは目を向けられているだろう。
どこまでの意図が踏み込まれた言葉なのかをまずは明確にしなければならない。
「私が、ですか?」
極めて怪訝そうに問う。
「そう。適役でしょ?」
なるほど。ルートアは魔術に長けているため、魔術による変装は不可能ではない。しかし——
「ご存知かと思いますが、魔術での変装は自身に近しい容姿ほど消費魔力が減ります。いくら私が背格好が男らしくないとはいえ、女性に変装するとなると魔力が漏れ、他者に感知されてしまうでしょう。それにルーティア王女にお会いしたことがありません。変装できるのは見たことのある人物のみです。」
ルートアは誰よりも魔法に長けている。だから、魔法のことに関して頼られているのだと、仮定して返事をした。
実際、本人であるルートアがルーティアの変装をしても消費魔力は微量で、魔力が漏れるほどではない。せいぜい茶色に染めている髪をピンクブロンドに変えればあとはメガネを外し、身なりを整えれば、ルーティア王女本人の登場だ。
しかし、そのことをセレスローレン王妃は知らない。知らないはずなのだ。
「魔術でなら、ね。」
言外に、それ以外の方法があるでしょうと訴えかけてくる。
——王妃は勘づいているのか。
ごくりと、唾を飲む。
「一体、魔術だけが取り柄の私めから魔術を取り上げて何をさせようというので?」
言葉を重ねてボロを出す前に、相手から言葉を聞き出すことにした。セレスはクスリと微笑んだ。
何枚も上手な母に勝てる術はない。ルートアとしての日々が終わりを告げるのか。
ピリピリとした緊張感が走る。
想像していなかった言葉に、汚れた瓶底眼鏡の奥でカメリアの瞳がこれ以上ないくらいに見開かれる。
王妃は聡い。もう三年の月日、ルートアとして向き合ってきたが、母の偉業はその身を持って感じてきた。気をつけているが、ふとした仕草などで勘付かれる可能性はあった。
そもそも第一騎士団という最も王族に近い位置にいるのだ。ルートアを眼にする機会は多い。その上、密命を受ける仲である。他の騎士よりは目を向けられているだろう。
どこまでの意図が踏み込まれた言葉なのかをまずは明確にしなければならない。
「私が、ですか?」
極めて怪訝そうに問う。
「そう。適役でしょ?」
なるほど。ルートアは魔術に長けているため、魔術による変装は不可能ではない。しかし——
「ご存知かと思いますが、魔術での変装は自身に近しい容姿ほど消費魔力が減ります。いくら私が背格好が男らしくないとはいえ、女性に変装するとなると魔力が漏れ、他者に感知されてしまうでしょう。それにルーティア王女にお会いしたことがありません。変装できるのは見たことのある人物のみです。」
ルートアは誰よりも魔法に長けている。だから、魔法のことに関して頼られているのだと、仮定して返事をした。
実際、本人であるルートアがルーティアの変装をしても消費魔力は微量で、魔力が漏れるほどではない。せいぜい茶色に染めている髪をピンクブロンドに変えればあとはメガネを外し、身なりを整えれば、ルーティア王女本人の登場だ。
しかし、そのことをセレスローレン王妃は知らない。知らないはずなのだ。
「魔術でなら、ね。」
言外に、それ以外の方法があるでしょうと訴えかけてくる。
——王妃は勘づいているのか。
ごくりと、唾を飲む。
「一体、魔術だけが取り柄の私めから魔術を取り上げて何をさせようというので?」
言葉を重ねてボロを出す前に、相手から言葉を聞き出すことにした。セレスはクスリと微笑んだ。
何枚も上手な母に勝てる術はない。ルートアとしての日々が終わりを告げるのか。
ピリピリとした緊張感が走る。
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