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終始の章
阿修羅は守護に行く
「へぇ~?幾ら君でもいただけないなぁ」
百舌鳥が一斉に泰司を睨む
「依夜ちゃんを守る為に悪魔全体を敵にするの?」
「悪いかよ」
泰司は真っ向から睨み返していた
それが依夜により起こされた自体だと知っておきながらそれを推進する存在に泰司は拳を向けていた
「君、立場分かってる?内部争いで出てきた負け組の神を我ら悪魔は拾ってあげたんだよ」
「現に今まで生きてこれたじゃないか その命、幾ら潰せたと思う?」
カイムは手を伸ばし手を開いた
コイツにかかれば誰かを殺すことなど容易なのだろう
それも神との争いに負けた負け組なら尚更
幾らでも泰司は奪えたのだ
言葉が泰司の中で反芻する
泰司もこれが正しいのかどうか迷いかねている
しかし――――しかし、コイツに従うのも癪だ 癪なのだ
「その手を引っ込めるなら見逃すけど殺るなら君、追放だよ?」
「あ゛?阿修羅様にとって追放が恐怖であるかよ!!」
でもやっぱり泰司に知略など似合わない
それに一度追放された身にとって二度目の追放が恐怖である理由があるか
「俺はただ!!抗い続けるわ!!!」
泰司に似合うのはやはり傲慢に生きること
脳筋に筋肉に任せ感情のまま生きること
迷いなんて泰司はいらない!
「それもそうだね 馬鹿な君にはこの事態の重さが分かんないか」
対照的にカイムは冷めたような声で呆れていた
泰司に説得が通じないことにやや諦めかけていたようにも見える
「やっぱり神とは分かり合えないんだね!」
呟きカイムはただ拳を握る
《有声掌握》を発動した手を
泰司に突き出したその掌を
「おらぁっ!!!」
――――その筈なのに音がしない 感触がない
「!?」
泰司はすんなり動き出しカイムの肉体を乱打した
慢心していた顔に一撃拳が走る!
「なァ?経験ってのは強さになるんだってよ?」
「―――ッ!!」
右拳、左拳、右上拳、左下拳、左上拳、右下拳
六拳の乱打が逃れる隙を生ませない
(知っている 知っているのに!!)
(知っている以上に強い!!??)
普段ならここで心臓を握り潰し殺せていたはずなのに
「ラプラスも俺の殴り方はわからなかったようだなぁ!!」
ただサンドバッグを殴り続けているかのようにカイムは殴り続けられていた
「ぶっ飛べやぁ!!」
最期に腹を足蹴り
衝撃でカイムは窟の壁に大穴を開けた
阿修羅とはいえその乱打は思ったほど体力が消える
カイムの肉が貫けなかったのを惜しみながら泰司はカイムとの距離を離した
何事もないように泰司は次の為の呼吸をする
「いやぁ~、ここまでなんて思わなかったよねぇ」
後ろから声がした
「―――はッ?」
振り向きざまにサーベルが一本腕を持っていく
素早い速度で切り返しもう一本も切断された
「アレ?勝ったと思った?思っちゃった?」
泰司の背後には血濡れたサーベルを降ろした百舌鳥の姿があった――――――
「嘘だろ……?飛ばしたよな?」
「ああ飛ばされたね」
何事もなかったかのようにカイムは答える
「でも君はソロモン72の53百説の百舌鳥カイム その数説しか知らない」
「弁舌に並ぶ者なしの僕に速度だけで敵うと本当に思ってるなら君は相当頭が悪いよ 僕の百舌を持ってしても君にはなれないだろうなぁ 馬鹿すぎてすぐ僕の演じる偽物だってバレそうだ」
多くの鳴き声を持つ百舌鳥の様にカイムは多くの声を持ち、模倣する
誰かになりすまし情報を盗むスパイになることもあれば隙を生む工作員にまで活躍は広い
姿も声も多様で百説も姿があると言われている
そんなカイムにただ殴る蹴るしかできないような脳筋が敵うだろうか?
「土俵が違うんだよ 君と僕の」
素早く剣が流れ3本目を落とす
泰司はまたもやその剣に反応出来ない
「チッ!オラオラオラオラァ!!!」
舌打ち しかし依然として諦めない
三本でも泰司の拳は鋭く振られた
しかし3本程度じゃあ隙がありすぎる
「1」
左の腕がスッと握られ
「2」
サーベルがその下の腕を薙ぐ
「3ッ!!」
残りの1本の殴りを蹴り返し泰司の肉体を飛ばした
「君が得意なのはハメ殺し 隙さえ出来れば僕のモノだ」
泰司の戦術はとにかく乱打して衝撃を生む
それで敵の動く隙を狩って狩って無くす
相手を完全にハメ殺し動けないまま殴り潰す
そんな技巧さもない勢いに任せられた戦術なんてすぐ壊せてしまう
「……うっせぇ…!!」
「格だかなんだか知らねぇよ!!最終的に殺るのはこの肉体だろうが!!!」
肉体で殴り勝つ泰司に
脳筋な泰司に
知略などはない
故、泰司は分からなかった
格が何たるかを
どうせ拳でねじ伏せるものだと思っていたのだろう
「キレんな それが集中下げる原因だ」
「気取ってんじゃねぇ!!!鳴くんじゃねぇ!!!」
拳を構え泰司は叫んだ
「殴れよ!!!スポーツマンシップすら知らない奴が上から目線で語れると思うな!!」
泰司は必死に主張する
ここは格闘技の土俵であるから剣術を持ち出せばそりゃあ土俵が異なるだろうと
「スポーツマンシップって……土俵に立つのに手頃な得物も持たないから悪いんだよ」
カイムは“ココは剣術の土俵だよ”とそう回答を返した
相手の殺すのに有用なのはいつだって得物を持った戦い
拳を振るうより武器が強いから人は武器を握る
異能に任せて力を振るっているようじゃまだ三流だ
「君はさ、六本あるのに六本分頭動いてないでしょ?」
カイムは問うた
「殴って殴ってスタンさせればいいと思ってる だから弱いんだよ」
同じ動きしかできない泰司は対策に弱い 隙に弱い
乱打しか出来ない頭だから出来ない可能性すら失念してそれでお山の大将やれてた頭はどれだけおめでたい頭だったんだろうか
「腕落とされた時、相手に隙が生まれたとき それに対応する型が出来てない 再生能力あるんだからいくらでもそのケース磨けたでしょ」
「だから“負け組”なんだよ君は」
「だからド三流なんだよお前は」
「だから帝釈天に負けて悪魔の下に就く事になるんだよお前は」
泰司は反論する言葉をなくしていた
ただ自身の弱さを受け入れるほかなかったのだ
「もういいね?ラプラスだのの予言なくても君は死ぬんだよ 白紙だと思ってたみたいだけど僕の中では君が死ぬ未来で彩られてたみたいだ」
「……コレでもか?」
泰司が後ろを蹴り凄い勢いで接近する
「はぁ……接近して殴るだけじゃあ駄目だって言っただろ?」
片手を突き出し泰司向けて掌を閉じた
―――のはずなのにまた空を切る
「また逃れたっ!?」
泰司が何事もなく歩を進める
そんな泰司を驚きつつ再度認識してみた
「……あれ?腕」
ドスッ
後ろから首元に衝撃が響く
気づいた瞬間にはもう遅かった
いやもっと早く気づけたはずだ
泰司には一本も腕がついてない!!
透かした時点で考えるべきだった!!
「オラァァァァッ!!!」
首を殴った泰司の一本の腕が後ろから首を強く掴む
そして肉体はそのままのスピードを持ってタックル姿勢を構えた
全身でカイムへ駆けていく
「……今さら窒息狙いか?」
左手で首を絞める手の親指をつかみ思いっきり引いた
支えが無いとはいえ流石阿修羅か
筋力が凄まじく普通では外せん
とはいえ親指なら関節の可動から力を出せば曲がる筈だと
「腕ごと断つ」
少し浮いたような気がした親指にサーベルの刃をねじ込み刃先で肉を突く
(今だっ!!)
泰司はタックルの勢いのまま体を反らし
「……っ!?」
全体重を右寄りにかけて肘を突き出した
首元のサーベルの刃が衝撃でズレる
「バッカ 首元に刃を持ってったら!!」
泰司が嗤う
空間に一閃の鮮血が噴き出した
「俺に押し込まれても無理ねぇぜ!!」
泰司の顔も身体も紅く染められ血の勢いが視界を包んだ
刃が肉を裂き中へ中へ沈んでいく
―――――グシャッ!
そう、それはそのまま行けばの話だが
「……百説あれば死説もあるよ ざーんねん」
ただ、そこに立つのはカイム本人だった
「……!?さっき首が!」
「舐め過ぎなんだよ君 つっかえない頭で考えな」
「百の能力を持つとかそんな事言わねぇよな?」
「そうだね流石に百はないよ ただそれなりに沢山は持ってるつもりさ」
「そうだね……600の声と60のスキル、6の魔血特有の能力」
「つまり、」
正面にいたはずの身体が消え失せ泰司の周囲を数羽の百舌鳥で隠した
「“彼らが僕を作る”」
深い男性の声が聞こえた
百舌鳥と百舌鳥の間に僅かな隙間に映るカイムは何故かミステリアス感を感じる
「“彼等が私の力であり”」
次は女声のような高めの声がした
再度合間から見えたカイムは女性のような所作をしているように見える
「“我の百説が生まれし所以である”」
最後に支配者のような威圧的な声が響いた
合間から見えるカイムからはまさにラスボス感あり得るオーラを感じる
「アレ……?」
目がおかしくなったのか泰司は目を擦った
どれも同じカイムの肉体から放たれた声――――
なのに、そのどれもが違うカイムを演じどれもが真のカイムらしい音としてその姿に追従する
どうして今まで勘違いしてたんだろう?
ここまでカイムという男は真が分かり得ないものだったか?
ここまでミステリアスで謎の多い容姿をしていたか?
何故、カイムの姿はこんなにも適合して見えたのだ?
「まさか……能力?」
泰司はそう尋ねる
混乱を解決するにはそれしかないと
「技術だ馬鹿」
「演じの末路は完全な模倣だ 声のみではなく行動も似せることで認識上に幻影を乗せれる」
人の視覚は情報の約80%以上を担う
視覚が百舌鳥により狭まれば頼れる情報は音声
そしてその端々に見える情報がそれを象徴する行動であれば
―――――脳は簡単に間違ってくれる
「は?つまり俺は勝手に考えた幻影に騙されたって言いたいのかよ」
「そうだよ?たとえ姿が異なろうが人の脳は誤認する可能性がある 世界なんて自分の脳が作り上げた世界に過ぎないからね」
「君はさっき、確実に姿という視覚情報を聴覚と行動で上書きしただろう “それが答えだよ”」
カイムの声が途中で騎士の声に変わる
何もない虚空を掴む姿なのに――――
―――――なぜか剣を幻視してしまう
「……ッ!」
「混乱しているね 剣でも見えたかな?サーベルはそっちが握ってたじゃあないか」
カイムはおちょくるように笑った
「君が何を見ているかなんて絶対なんかじゃあない もしかしたら既に残っているのは脳だけかもしれない」
「そう……だから」
泰司の視界が揺らいた
横にスライドして空間がひっくり返る
地面と近づいたり離されたり
まるで跳ねているかのような視界の末、自分の肉体が胸以上ない状態で直立する様を見るのだった――――
「こうなるんだよ」
百舌鳥が一斉に泰司を睨む
「依夜ちゃんを守る為に悪魔全体を敵にするの?」
「悪いかよ」
泰司は真っ向から睨み返していた
それが依夜により起こされた自体だと知っておきながらそれを推進する存在に泰司は拳を向けていた
「君、立場分かってる?内部争いで出てきた負け組の神を我ら悪魔は拾ってあげたんだよ」
「現に今まで生きてこれたじゃないか その命、幾ら潰せたと思う?」
カイムは手を伸ばし手を開いた
コイツにかかれば誰かを殺すことなど容易なのだろう
それも神との争いに負けた負け組なら尚更
幾らでも泰司は奪えたのだ
言葉が泰司の中で反芻する
泰司もこれが正しいのかどうか迷いかねている
しかし――――しかし、コイツに従うのも癪だ 癪なのだ
「その手を引っ込めるなら見逃すけど殺るなら君、追放だよ?」
「あ゛?阿修羅様にとって追放が恐怖であるかよ!!」
でもやっぱり泰司に知略など似合わない
それに一度追放された身にとって二度目の追放が恐怖である理由があるか
「俺はただ!!抗い続けるわ!!!」
泰司に似合うのはやはり傲慢に生きること
脳筋に筋肉に任せ感情のまま生きること
迷いなんて泰司はいらない!
「それもそうだね 馬鹿な君にはこの事態の重さが分かんないか」
対照的にカイムは冷めたような声で呆れていた
泰司に説得が通じないことにやや諦めかけていたようにも見える
「やっぱり神とは分かり合えないんだね!」
呟きカイムはただ拳を握る
《有声掌握》を発動した手を
泰司に突き出したその掌を
「おらぁっ!!!」
――――その筈なのに音がしない 感触がない
「!?」
泰司はすんなり動き出しカイムの肉体を乱打した
慢心していた顔に一撃拳が走る!
「なァ?経験ってのは強さになるんだってよ?」
「―――ッ!!」
右拳、左拳、右上拳、左下拳、左上拳、右下拳
六拳の乱打が逃れる隙を生ませない
(知っている 知っているのに!!)
(知っている以上に強い!!??)
普段ならここで心臓を握り潰し殺せていたはずなのに
「ラプラスも俺の殴り方はわからなかったようだなぁ!!」
ただサンドバッグを殴り続けているかのようにカイムは殴り続けられていた
「ぶっ飛べやぁ!!」
最期に腹を足蹴り
衝撃でカイムは窟の壁に大穴を開けた
阿修羅とはいえその乱打は思ったほど体力が消える
カイムの肉が貫けなかったのを惜しみながら泰司はカイムとの距離を離した
何事もないように泰司は次の為の呼吸をする
「いやぁ~、ここまでなんて思わなかったよねぇ」
後ろから声がした
「―――はッ?」
振り向きざまにサーベルが一本腕を持っていく
素早い速度で切り返しもう一本も切断された
「アレ?勝ったと思った?思っちゃった?」
泰司の背後には血濡れたサーベルを降ろした百舌鳥の姿があった――――――
「嘘だろ……?飛ばしたよな?」
「ああ飛ばされたね」
何事もなかったかのようにカイムは答える
「でも君はソロモン72の53百説の百舌鳥カイム その数説しか知らない」
「弁舌に並ぶ者なしの僕に速度だけで敵うと本当に思ってるなら君は相当頭が悪いよ 僕の百舌を持ってしても君にはなれないだろうなぁ 馬鹿すぎてすぐ僕の演じる偽物だってバレそうだ」
多くの鳴き声を持つ百舌鳥の様にカイムは多くの声を持ち、模倣する
誰かになりすまし情報を盗むスパイになることもあれば隙を生む工作員にまで活躍は広い
姿も声も多様で百説も姿があると言われている
そんなカイムにただ殴る蹴るしかできないような脳筋が敵うだろうか?
「土俵が違うんだよ 君と僕の」
素早く剣が流れ3本目を落とす
泰司はまたもやその剣に反応出来ない
「チッ!オラオラオラオラァ!!!」
舌打ち しかし依然として諦めない
三本でも泰司の拳は鋭く振られた
しかし3本程度じゃあ隙がありすぎる
「1」
左の腕がスッと握られ
「2」
サーベルがその下の腕を薙ぐ
「3ッ!!」
残りの1本の殴りを蹴り返し泰司の肉体を飛ばした
「君が得意なのはハメ殺し 隙さえ出来れば僕のモノだ」
泰司の戦術はとにかく乱打して衝撃を生む
それで敵の動く隙を狩って狩って無くす
相手を完全にハメ殺し動けないまま殴り潰す
そんな技巧さもない勢いに任せられた戦術なんてすぐ壊せてしまう
「……うっせぇ…!!」
「格だかなんだか知らねぇよ!!最終的に殺るのはこの肉体だろうが!!!」
肉体で殴り勝つ泰司に
脳筋な泰司に
知略などはない
故、泰司は分からなかった
格が何たるかを
どうせ拳でねじ伏せるものだと思っていたのだろう
「キレんな それが集中下げる原因だ」
「気取ってんじゃねぇ!!!鳴くんじゃねぇ!!!」
拳を構え泰司は叫んだ
「殴れよ!!!スポーツマンシップすら知らない奴が上から目線で語れると思うな!!」
泰司は必死に主張する
ここは格闘技の土俵であるから剣術を持ち出せばそりゃあ土俵が異なるだろうと
「スポーツマンシップって……土俵に立つのに手頃な得物も持たないから悪いんだよ」
カイムは“ココは剣術の土俵だよ”とそう回答を返した
相手の殺すのに有用なのはいつだって得物を持った戦い
拳を振るうより武器が強いから人は武器を握る
異能に任せて力を振るっているようじゃまだ三流だ
「君はさ、六本あるのに六本分頭動いてないでしょ?」
カイムは問うた
「殴って殴ってスタンさせればいいと思ってる だから弱いんだよ」
同じ動きしかできない泰司は対策に弱い 隙に弱い
乱打しか出来ない頭だから出来ない可能性すら失念してそれでお山の大将やれてた頭はどれだけおめでたい頭だったんだろうか
「腕落とされた時、相手に隙が生まれたとき それに対応する型が出来てない 再生能力あるんだからいくらでもそのケース磨けたでしょ」
「だから“負け組”なんだよ君は」
「だからド三流なんだよお前は」
「だから帝釈天に負けて悪魔の下に就く事になるんだよお前は」
泰司は反論する言葉をなくしていた
ただ自身の弱さを受け入れるほかなかったのだ
「もういいね?ラプラスだのの予言なくても君は死ぬんだよ 白紙だと思ってたみたいだけど僕の中では君が死ぬ未来で彩られてたみたいだ」
「……コレでもか?」
泰司が後ろを蹴り凄い勢いで接近する
「はぁ……接近して殴るだけじゃあ駄目だって言っただろ?」
片手を突き出し泰司向けて掌を閉じた
―――のはずなのにまた空を切る
「また逃れたっ!?」
泰司が何事もなく歩を進める
そんな泰司を驚きつつ再度認識してみた
「……あれ?腕」
ドスッ
後ろから首元に衝撃が響く
気づいた瞬間にはもう遅かった
いやもっと早く気づけたはずだ
泰司には一本も腕がついてない!!
透かした時点で考えるべきだった!!
「オラァァァァッ!!!」
首を殴った泰司の一本の腕が後ろから首を強く掴む
そして肉体はそのままのスピードを持ってタックル姿勢を構えた
全身でカイムへ駆けていく
「……今さら窒息狙いか?」
左手で首を絞める手の親指をつかみ思いっきり引いた
支えが無いとはいえ流石阿修羅か
筋力が凄まじく普通では外せん
とはいえ親指なら関節の可動から力を出せば曲がる筈だと
「腕ごと断つ」
少し浮いたような気がした親指にサーベルの刃をねじ込み刃先で肉を突く
(今だっ!!)
泰司はタックルの勢いのまま体を反らし
「……っ!?」
全体重を右寄りにかけて肘を突き出した
首元のサーベルの刃が衝撃でズレる
「バッカ 首元に刃を持ってったら!!」
泰司が嗤う
空間に一閃の鮮血が噴き出した
「俺に押し込まれても無理ねぇぜ!!」
泰司の顔も身体も紅く染められ血の勢いが視界を包んだ
刃が肉を裂き中へ中へ沈んでいく
―――――グシャッ!
そう、それはそのまま行けばの話だが
「……百説あれば死説もあるよ ざーんねん」
ただ、そこに立つのはカイム本人だった
「……!?さっき首が!」
「舐め過ぎなんだよ君 つっかえない頭で考えな」
「百の能力を持つとかそんな事言わねぇよな?」
「そうだね流石に百はないよ ただそれなりに沢山は持ってるつもりさ」
「そうだね……600の声と60のスキル、6の魔血特有の能力」
「つまり、」
正面にいたはずの身体が消え失せ泰司の周囲を数羽の百舌鳥で隠した
「“彼らが僕を作る”」
深い男性の声が聞こえた
百舌鳥と百舌鳥の間に僅かな隙間に映るカイムは何故かミステリアス感を感じる
「“彼等が私の力であり”」
次は女声のような高めの声がした
再度合間から見えたカイムは女性のような所作をしているように見える
「“我の百説が生まれし所以である”」
最後に支配者のような威圧的な声が響いた
合間から見えるカイムからはまさにラスボス感あり得るオーラを感じる
「アレ……?」
目がおかしくなったのか泰司は目を擦った
どれも同じカイムの肉体から放たれた声――――
なのに、そのどれもが違うカイムを演じどれもが真のカイムらしい音としてその姿に追従する
どうして今まで勘違いしてたんだろう?
ここまでカイムという男は真が分かり得ないものだったか?
ここまでミステリアスで謎の多い容姿をしていたか?
何故、カイムの姿はこんなにも適合して見えたのだ?
「まさか……能力?」
泰司はそう尋ねる
混乱を解決するにはそれしかないと
「技術だ馬鹿」
「演じの末路は完全な模倣だ 声のみではなく行動も似せることで認識上に幻影を乗せれる」
人の視覚は情報の約80%以上を担う
視覚が百舌鳥により狭まれば頼れる情報は音声
そしてその端々に見える情報がそれを象徴する行動であれば
―――――脳は簡単に間違ってくれる
「は?つまり俺は勝手に考えた幻影に騙されたって言いたいのかよ」
「そうだよ?たとえ姿が異なろうが人の脳は誤認する可能性がある 世界なんて自分の脳が作り上げた世界に過ぎないからね」
「君はさっき、確実に姿という視覚情報を聴覚と行動で上書きしただろう “それが答えだよ”」
カイムの声が途中で騎士の声に変わる
何もない虚空を掴む姿なのに――――
―――――なぜか剣を幻視してしまう
「……ッ!」
「混乱しているね 剣でも見えたかな?サーベルはそっちが握ってたじゃあないか」
カイムはおちょくるように笑った
「君が何を見ているかなんて絶対なんかじゃあない もしかしたら既に残っているのは脳だけかもしれない」
「そう……だから」
泰司の視界が揺らいた
横にスライドして空間がひっくり返る
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目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。