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11.七不思議編
52才媛サイエンス ⑥
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***
夜の学校といえば、怪談の主役たちが闊歩するような不気味さを想像するが、校門前のひとけのない夜道では、むしろ怖いのは生身の脅威のように思えた。街灯はおぼつかず、近くにあるのはシャッターのしまった花屋と小さな薬局、あとはいかにもお金持ちが住んでいそうな瓦屋根の日本家屋。痴漢や誘拐を敢行したとて、見咎めるものはいない状況だ。
そんな田舎道と言われても違和感のない、暗く静かな光丘中前に、雷奈たちは集合していた。今さらながら、アワでも引っ張ってこればよかったかと思ったが、彼も水術を使わなければ、ただのなよっとした少年だ。非力が一人増えるだけである。
「さて、午後七時を回りました。我々は光丘中学校に来とるわけですが、実況の氷架璃さん、校庭の様子はどうですか」
「ご覧の通り、何の変哲もありません。お化けの一匹もいない状態です。解説の芽華実さん、どう思われますか」
「お、お化けはいない方がいいわよっ」
校門近くのフェンスからグラウンドを垣間見ながら、三人はそんな会話を交わしていた。由実と美由の話だと、この時間でも光は目撃されたというのだが、今のところ、その気配はない。
「氷架璃は蛍の可能性を考えとったけど、蛍はこんなとこにはおらんっちゃろ」
「そうだな。いくらのどかっていっても、都会っちゃ都会だもんな」
「蛍は水のきれいな川辺にいるものね」
だとしたら、いよいよ生徒たちが見た光とは何なのだろうか。最もありえそうなのは――そして最も厄介なのは、正体がこのあたりに一番多く生息している生き物だった場合。
すなわち、人間だ。
部活動も終わっているだろうこの時刻、生徒が残っていれば問題だ。学校には最終下校時刻というものがある。皇学園中等部では、土曜日のそれが午後四時ということを参考にすると、生徒たちはすべからく帰宅しているはずだ。
教師という可能性はあるだろうか。否、授業のない土曜日、部活動でしか顔を出さないはずの教員が、こんな時間に懐中電灯片手にうろうろするというのも考え難い。
では、関係のない一般人が入り込んでいたらどうか。問答無用の不法侵入である。
「ん……もしかして、今日が土曜日やけん、現れないとか?」
「生徒か教師を疑ってるってことか?」
「逆に言えば、平日にしか目撃されんかったら、その可能性が高かね」
「目撃された日を二人に聞いとけばよかったな」
「でも、まだわからないわ。もう少し様子を見てみないと」
言いながら、芽華実はしきりに辺りをきょろきょろと見まわしている。不審者を警戒しているのが、二人には容易に分かった。
「大丈夫だって、芽華実。変なヤツが来たら私が守ってやる。スライディングで体勢を崩したところで、みぞおちにこの石頭をグサッとやったる」
「そこへ私が超高電圧でバリバリッと」
「いや、死んでしまう」
相変わらずこの二人が口を開くと茶番になってしまうが、ともかく自分を守ってくれる気概は十分なのだと、芽華実は苦々しくも笑った。
その笑顔が、突如、凍り付いた。
「氷架璃、雷奈! あれッ!」
フェンスの向こうを指さして声をこわばらせた芽華実に、二人もハッとそちらを振り返る。さっきまで向こうの端も見えないほどの暗闇に落ちていた校庭に、いくつも、いくつも浮遊するものを見て、頭も体も臨戦態勢に切り替わる。
怪談の主役が闊歩する夜の学校に、今宵のメインキャスト、真夜中フェアリーテイルがお出ましだ。
「氷架璃、芽華実!」
「おう!」
「ええ!」
三人は猫力を開放すると、猫の跳躍力に任せて一息にフェンスを飛び越えた。
自分たちが不法侵入者に、などと考えている場合ではない。これは自分たちの領域だと、彼女らの勘が告げていた。
人づてに聞いただけでは、正体の見立てもつきにくかったが、百聞は一見に如かずだ。
すぐに分かった。あれは、人間のなす動きではない。
グラウンドに侵入した雷奈たちは、近づいて見て、目を見開いた。
「なんね、これは……!」
最初から可能性は低いと踏んでいたが、蛍ではない。三人とも、実物を見たことはないものの、虫でないことは疑わなかった。一つ一つが、なにせ、子供の頭の大きさほどもあるのだ。その数、十ほどだろうか。正確な数は、数えようにも絶えず動き回っているせいでわからない。
光の玉達は、まるで遊んでいるかのように不規則に漂った後、休み時間を終えた児童らのごとく、一斉に校舎のほうへ飛んでいった。滑るようになめらかに、下足ホールへと吸い込まれていく。
雷奈たちは、念のため、通行人に見られていないか辺りをうかがった。人っ子一人いない夜道を確認すると、下足ホールへと駆ける。
明かりの消えたそこは、真の暗闇だった。昼間の景色の面影もない。まるで別世界だ。奥へ進むことにさえ危うさを感じる。何かにぶつかるか足を引っかけるかしそうという現実的な危険性より、まるで行ったが最後こちらにはもう戻ってこられないような、根拠のない不安が勝るのだ。
光の玉は、一つ残らず消えていた。向こう側へ通り抜けていったのだろうか。それにしては、光が遠ざかっていく様子がなかった。本当に、この場所で消えてしまったかのように見えた。
だが、なぜここで光が潰えたのかは全くわからない。猫の血を引く雷奈でさえ、この夜闇の中では周囲の状況を把握することは難しいのだ。当然、氷架璃と芽華実の目をもってしても叶わない。
そんな暗闇の中でも――何かがそばを通り過ぎて校庭へと走り去っていったのは、疑いようもなくわかった。
「今……!」
「ああ、何か小さいのが……」
「私達の来た道を戻っていったわね」
すかさず踵を返す三人。
再び校庭へ出ると、普段は気にも留めない、頼りない街灯のありがたみを思い知らされた。下足ホールでの暗がりに目が順応したのもあって、さっきまでの夜目の利かなさが嘘だったかのように、視界がクリアになる。
階段を駆け下り、靴の裏でじゃりじゃりとした音を蹴り上げながらグラウンドに出た彼女らを、あの光の玉が出迎えた。
一つ、二つ、四つ、八つ――いつかバラエティ番組で見た、UFOと思しき空飛ぶ光体が増えていく様が、今、目の前で繰り広げられていた。
あっという間に、光の玉は視界を超えるほどの数に分裂し、雷奈たちの前に立ちはだかるようにふよふよと浮いていた。まるでこちらを見ているかのように。
だが、雷奈たちの視線は、地面にほど近い、低い位置に浮き上がる六つの丸い光だけに注がれていた。それらは、ふわふわと動いたりはしなかった。大きさも、極めて小さかった。
ただ、じっとして――確かにこちらを見ていた。
「……なして」
雷奈の口から、うわ言のように震え声がこぼれた。
二つずつ、間を空けて三か所に浮き上がった小さな光たち。そのうちの真ん中の二つが、雷奈の言葉に応えた。目が慣れていなければ見えなかったであろう、赤い口から白い牙を見せて、一言で返した。
――ケケケ、と。
***
――同時刻。
フィライン・エデンの中心都市、飛壇に位置する希兵隊本部にて。
「作戦コードかぁ、カッコいいね!」
「はい、私も何か作ってみたいです……!」
二人の執行部隊長が、食堂のテーブルを挟んで向かいに座る先輩の話に興奮気味な声をあげていた。片方は、ちょうど主体なら三角耳があるだろう位置で髪をちょこんと二つくくりにした少女。まだ幼さの残る表情と声で、先輩への憧れをあらわにする。
もう片方は、葉の髪飾りをした、幾分か年上の少女だ。夕食後の甘味の小さなよもぎ団子を、真ん中に置いた皿から一粒つまんで口にする。もぐもぐと咀嚼しながら、自分ならどんな作戦コードを設けるか、常盤色の目を宙に向けて考えていると、相対する二番隊隊長が苦い顔をした。
「よせ、取り決めたところで成功しなければカッコよくなんかない。現に、『東の三』はガオンに破られた」
口元に手のひらを押し付けて頬杖を突き、ふてくされたようによそを向く先輩・河道ルシルに、六番隊隊長・凪原弥智音と八番隊隊長・崎村蘭華は、うまい言葉を返せず「あー……」と気の抜けた声を出した。
三番隊以降の隊員は、飛壇を中心とした東西南北へ遠征に行くことが多く、直接顔を合わせるのは久しぶり、ということが少なくない。弥智音と蘭華も、もうじきまた本部を離れなければならないのだ。
けれど、物理的な距離では千切れないのが希兵隊員の絆だ。先の侵攻後、正式に執行部員として入隊試験を受けることになった弥智音と、その後まもなく新入隊員としてやってきた蘭華の、共通の世話係であるルシルとは、こうして静かな夜に談話するくらいには仲がいい。
「どうしてガオンはルシル先輩が水猫だと知っていたのでしょうか」
「おそらく、ホムラというチエアリだ。北海道で私が屈辱的にも取り逃したあいつが……ガオンのところへ戻って、私について告げ口をしたのだろう」
忌々しい、と吐き捨てるルシルの目つきは不穏だ。彼女の凛々しい目力は、一見して冷たそうに見える。だが、実際に厳しい一面もありながら、それ以上に面倒見がよくて優しいことは、二人とも熟知している。
しかし、今のルシルの青い瞳には、手負いの獣のような一触即発のプライドがのたくっていたので、尻込みした蘭華は少し話を逸らす。
「そ、そういえば、どうして『東の三』で『水術は使うな』って意味になるんですか?」
「ああ……先の侵攻でな」
言われてみれば蘭華には話していなかったな、とルシルはことの経緯を簡潔に語った。決戦の舞台となった塔の東部屋三階で対峙した、見た猫術を自分のものにするチエアリ。その手札を増やさないために水術を使わず戦ったこと。おそらくその甲斐あって、あのチエアリは炎術による捨て身の爆破に屈したと思われること――。
「確か、その相打ちになったという方が……」
「当時の副隊長、竈戸火槌さんだ。……大変世話になったのに、お礼も言えないまま……遺体も残らず……」
ルシルはそれ以上を言えず、ただ目を伏せた。「大事なことはいつも二の次」な彼が、最後に二の次にしたのは、自身の尊い命だった。
彼の殉職を聞いたとき、にわかには受け入れられなかった。けれども、それ以上に深く傷ついたのは、より彼との付き合いが長かった隊長・宇奈川羽留であることを知っていたから、泣き言はぐっと飲み込んだのをよく覚えている。最も身近な先輩であり、青龍隊を共に率いるパートナーだったカヅチを失ったうとめは、しばらく見ていられないほどのやつれようだったのだ。
ひとあたりのよかったカヅチは、居候だった弥智音にも会うたびに声をかけていたようで、彼女も「カヅチにい……」とうつむく。一人、彼の死後に入隊した蘭華だけが、所在なくそわそわとしていた。
こんなしんみりとした女子会にするつもりはなかった蘭華は、再び話題を変えた。
「あ、あの、隊長だった宇奈川うとめさんという方は、今は……?」
その問いに、幾分かその瞳に光を取り戻したルシルは、少し気まずそうに答えた。
「実は、連絡をとっていないのでわからないんだ。連絡先を教えてもらってはいるんだが、今どこで何をしていらっしゃるかわからないのもあって、連絡しづらくてな……」
「あたしも、久しぶりにうとめねえと話したいのにぃ」
「そうだな……私もそうなんだが……うーん……」
ルシルは部屋着のズボンのポケットからスマホを取り出した。だが、取り出しただけで、連絡先を開くこともせず、あてもなく画面をつけたり消したりしたりしている。
スリープ、起動、スリープ、起動、着信。
「うわあっと!?」
いつも泰然としている少女の口から、年相応の悲鳴が上がった。一瞬、宙に放り出されたスマホを、両手でキャッチすると、発信者の名前に目をしばたたかせた。
「雷奈……?」
こんな時間にかけてくるとは珍しい。
ルシルは弥智音と蘭華に断ってから、電話に出た。
「雷奈か? どうした? ……、……何?」
ルシルの目が剣呑に細められる。穏やかでない雰囲気に固唾を呑む後輩二人の前で、ルシルは集中して聞き入っているのか相槌だけをうっていた。
やがて、「わかった、とりあえず、美雷さんに伝えておく」とだけ言うと、「気をつけて帰れよ、おやすみ」と電話を切った。
「どうしたの、ルシルねえ」
「夜の光丘に……クロが現れたそうだ」
それを聞いた二人は、わずかに上体をのけぞらせた。猫姿だったなら、しっぽをぴんと伸ばしていたことだろう。
「うそっ」
「それで……!?」
「しばらく交戦していたようだが、突然散り散りになってどこかへ行ってしまったと。見失ったそうだ」
ため息をつき、再び頬杖の姿勢に戻ったルシル。
蘭華が愁嘆とともにうなだれた。
「そんな……ガオンがまだ生きているということなのでしょうか……」
人間界で生まれるはずのないクロが発生していたのは、人間界でガオンがクロを生み出していたためだ。ガオンを倒したことでクロの発生が止まったと思っていたのに、再発したとあっては、前提が覆される。
蘭華はやるせなさに胸元をぎゅっと握りしめた。
先日の一件において、結果的にガオンを退けることができたとはいえ、希兵隊へのダメージは小さくなかった。目の前に座っているルシルも、皮肉にも自らの猫種と同じ水術で倒され、しばらく肺炎で臥せっていたのだ。ルシルだけでなく、皆が死の淵を臨むほどの損害を被り、引き換えに何とか打倒が叶ったと思ったのに。
しかし、ルシルは蘭華に首を振った。
「それもそうだが、それ以前の問題だ」
「え?」
「うん」
細い眉をきゅっと寄せて、弥智音が茶の入った湯呑を両手で強くつかむ。
「クロが出てるのに、出動要請がなかった」
「あっ……」
たとえやることがいたずら程度のクロでも、発生が確認されれば舎内放送が流れる。いたずらといっても、山林に放火した、など冗談では済まされないものもあるのだ。
そして、その発生の確認を担うのが、フィライン・エデンおよび光丘に張り巡らされた、クロ類検出センサーだ。従来、人間界への設置は行われてこなかったが、この度の人間界開放と同時にクロやダークが出現してから、せっせと完備したのである。いまや、どこでクロやダークがわいてもセンサーに引っかかるように配備されており、その出現が知らされるようになっているはずなのだ。
年下の、いつも無邪気な弥智音に及ばなかったように感じて、蘭華は委縮した。だが、弥智音はもともと、非公式ながら総司令部での仕事経験があるので、その辺りの勘はいいのである。
「チエアリはセンサーに引っかからないようだが、雷奈たちが遭遇したのはクロだ。まさかセンサーに反応しない、新しいタイプのクロだとでもいうのか……?」
「センサーが壊れてるっていうのは?」
「なきにしもあらずだ……だが、索敵機能がきちんと働いているかどうかは、総司令部室で把握しているはず。ついさっき壊れたのか?」
「情報管理局はなんて言うだろ?」
「そ、そうですよっ」
弥智音が小首をかしげて言った言葉に、蘭華が身を乗り出した。さすがに、この基礎知識は蘭華も知っている。彼女は名誉を挽回するようにまくしたてた。
「クロ類検出センサーは、出動要請発令のため希兵隊にクロ類の発生を知らせますが、同時に、統計データ収集のために、情報管理局にも情報が行きます。もしセンサーに反応しないクロが生まれてしまったのなら、情報管理局も把握できていないはずですが、把握できていたなら……」
「希兵隊との通信障害、ということになるな」
やれやれ、とかぶりを振って、ルシルは腰を上げた。
「この旨、美雷さんに報告してくるよ。今日はお開きだな。弥智音、蘭華、また話そう」
「うん、おやすみー」
「お手数をおかけします、お願いします」
こうして解散となった三人は、各々の寮室がある隊舎へと帰っていった。
歩きながら、あとでピッチで美雷になんと報告しようか、話の流れを組み立てながら、ルシルはふと気になった。
(そういえば、なぜクロたちは急に散り散りに逃げて行ったんだ? その辺りの話は淡泊だったが……クロの気まぐれか……?)
あの小さな化け物の行動は、幼子のように予測不能だ。遊び半分に逃げていった可能性もある。だが、直前まで好戦的だったという三体が突然、というのはどうも引っかかる。
それも含めて報告しておこう、と決めて、ルシルは寮の隊舎の扉に手をかけた。
***
画面をタップしてルシルとの通話を終えた雷奈に、氷架璃が問いかける。
「ルシルのヤツ、なんて?」
「美雷に報告してくれるって」
「もうお仕事も終わってる時間だったでしょうに、申し訳ないことをしちゃったわね」
芽華実が心を痛めている横で、氷架璃が「ワーカホリックのエサは仕事だぜ、芽華実」といささか酷なことを言う。またそんなことを、と諫める芽華実の言葉も耳に入らない様子で、雷奈は顎に手を当てて考え込んでいた。
「……何だったんだろ」
ぽつり、つぶやいた疑問形に二人が振り向く。そして、同じように腑に落ちない面持ちで黙り込む。
あれは、何だったのだろうか。
クロの出現のことではない。クロの出現は、クロの出現。以前と何ら変わらず、久しぶりだっただけで、慣れたものだ。今さらその機序やら意味やらを問いただす気にはならない。問題は、ちょこまかとすばしっこいクロを追い回し、飛んでくる光の玉から何とか逃げ切り、これ以上周りをはばからずにクロを滅するのは無理だぞと諦めかけた、その直後の出来事だ。
それは一瞬のことで、不確かで、だからこそルシルには伝えなかった。
けれど、雷奈だけでなく、氷架璃、芽華実も同じ証言をしている以上、「気のせい」で片づけるわけにはいかなかった。
息を切らせて動きを止めた雷奈たちに、三体のクロが大量の光の玉を集め、何か大技を仕掛けようとした、その時。
校舎のほうからだった。まるでグラウンドを一掃するかのように、一陣の冷たい風が吹き抜けていったのだ。
ぞく、と身を震わせた雷奈たちの前で、クロたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。光の玉もシャボン玉が弾けるように消え、何もかもが幻だったかのように、夜の静謐にたたずむ三人だけが残された。
あれが何だったのか、いまだにわからない。ただ、クロたちがあの冷気に怯えて逃げて行ったおかげで、雷奈たちは助かったのだろうということは確かだった。
夜の学校。怪談の主役たちの時間。
残されている怪談は、真夜中フェアリーテイルだけではない。
学校を後にした雷奈は、何食わぬ顔でしんとする校舎をフェンス越しに振り返り、頭をよぎった一つの言葉をつぶやいた。
「――氷結、ウィッチクラフト」
夜の学校といえば、怪談の主役たちが闊歩するような不気味さを想像するが、校門前のひとけのない夜道では、むしろ怖いのは生身の脅威のように思えた。街灯はおぼつかず、近くにあるのはシャッターのしまった花屋と小さな薬局、あとはいかにもお金持ちが住んでいそうな瓦屋根の日本家屋。痴漢や誘拐を敢行したとて、見咎めるものはいない状況だ。
そんな田舎道と言われても違和感のない、暗く静かな光丘中前に、雷奈たちは集合していた。今さらながら、アワでも引っ張ってこればよかったかと思ったが、彼も水術を使わなければ、ただのなよっとした少年だ。非力が一人増えるだけである。
「さて、午後七時を回りました。我々は光丘中学校に来とるわけですが、実況の氷架璃さん、校庭の様子はどうですか」
「ご覧の通り、何の変哲もありません。お化けの一匹もいない状態です。解説の芽華実さん、どう思われますか」
「お、お化けはいない方がいいわよっ」
校門近くのフェンスからグラウンドを垣間見ながら、三人はそんな会話を交わしていた。由実と美由の話だと、この時間でも光は目撃されたというのだが、今のところ、その気配はない。
「氷架璃は蛍の可能性を考えとったけど、蛍はこんなとこにはおらんっちゃろ」
「そうだな。いくらのどかっていっても、都会っちゃ都会だもんな」
「蛍は水のきれいな川辺にいるものね」
だとしたら、いよいよ生徒たちが見た光とは何なのだろうか。最もありえそうなのは――そして最も厄介なのは、正体がこのあたりに一番多く生息している生き物だった場合。
すなわち、人間だ。
部活動も終わっているだろうこの時刻、生徒が残っていれば問題だ。学校には最終下校時刻というものがある。皇学園中等部では、土曜日のそれが午後四時ということを参考にすると、生徒たちはすべからく帰宅しているはずだ。
教師という可能性はあるだろうか。否、授業のない土曜日、部活動でしか顔を出さないはずの教員が、こんな時間に懐中電灯片手にうろうろするというのも考え難い。
では、関係のない一般人が入り込んでいたらどうか。問答無用の不法侵入である。
「ん……もしかして、今日が土曜日やけん、現れないとか?」
「生徒か教師を疑ってるってことか?」
「逆に言えば、平日にしか目撃されんかったら、その可能性が高かね」
「目撃された日を二人に聞いとけばよかったな」
「でも、まだわからないわ。もう少し様子を見てみないと」
言いながら、芽華実はしきりに辺りをきょろきょろと見まわしている。不審者を警戒しているのが、二人には容易に分かった。
「大丈夫だって、芽華実。変なヤツが来たら私が守ってやる。スライディングで体勢を崩したところで、みぞおちにこの石頭をグサッとやったる」
「そこへ私が超高電圧でバリバリッと」
「いや、死んでしまう」
相変わらずこの二人が口を開くと茶番になってしまうが、ともかく自分を守ってくれる気概は十分なのだと、芽華実は苦々しくも笑った。
その笑顔が、突如、凍り付いた。
「氷架璃、雷奈! あれッ!」
フェンスの向こうを指さして声をこわばらせた芽華実に、二人もハッとそちらを振り返る。さっきまで向こうの端も見えないほどの暗闇に落ちていた校庭に、いくつも、いくつも浮遊するものを見て、頭も体も臨戦態勢に切り替わる。
怪談の主役が闊歩する夜の学校に、今宵のメインキャスト、真夜中フェアリーテイルがお出ましだ。
「氷架璃、芽華実!」
「おう!」
「ええ!」
三人は猫力を開放すると、猫の跳躍力に任せて一息にフェンスを飛び越えた。
自分たちが不法侵入者に、などと考えている場合ではない。これは自分たちの領域だと、彼女らの勘が告げていた。
人づてに聞いただけでは、正体の見立てもつきにくかったが、百聞は一見に如かずだ。
すぐに分かった。あれは、人間のなす動きではない。
グラウンドに侵入した雷奈たちは、近づいて見て、目を見開いた。
「なんね、これは……!」
最初から可能性は低いと踏んでいたが、蛍ではない。三人とも、実物を見たことはないものの、虫でないことは疑わなかった。一つ一つが、なにせ、子供の頭の大きさほどもあるのだ。その数、十ほどだろうか。正確な数は、数えようにも絶えず動き回っているせいでわからない。
光の玉達は、まるで遊んでいるかのように不規則に漂った後、休み時間を終えた児童らのごとく、一斉に校舎のほうへ飛んでいった。滑るようになめらかに、下足ホールへと吸い込まれていく。
雷奈たちは、念のため、通行人に見られていないか辺りをうかがった。人っ子一人いない夜道を確認すると、下足ホールへと駆ける。
明かりの消えたそこは、真の暗闇だった。昼間の景色の面影もない。まるで別世界だ。奥へ進むことにさえ危うさを感じる。何かにぶつかるか足を引っかけるかしそうという現実的な危険性より、まるで行ったが最後こちらにはもう戻ってこられないような、根拠のない不安が勝るのだ。
光の玉は、一つ残らず消えていた。向こう側へ通り抜けていったのだろうか。それにしては、光が遠ざかっていく様子がなかった。本当に、この場所で消えてしまったかのように見えた。
だが、なぜここで光が潰えたのかは全くわからない。猫の血を引く雷奈でさえ、この夜闇の中では周囲の状況を把握することは難しいのだ。当然、氷架璃と芽華実の目をもってしても叶わない。
そんな暗闇の中でも――何かがそばを通り過ぎて校庭へと走り去っていったのは、疑いようもなくわかった。
「今……!」
「ああ、何か小さいのが……」
「私達の来た道を戻っていったわね」
すかさず踵を返す三人。
再び校庭へ出ると、普段は気にも留めない、頼りない街灯のありがたみを思い知らされた。下足ホールでの暗がりに目が順応したのもあって、さっきまでの夜目の利かなさが嘘だったかのように、視界がクリアになる。
階段を駆け下り、靴の裏でじゃりじゃりとした音を蹴り上げながらグラウンドに出た彼女らを、あの光の玉が出迎えた。
一つ、二つ、四つ、八つ――いつかバラエティ番組で見た、UFOと思しき空飛ぶ光体が増えていく様が、今、目の前で繰り広げられていた。
あっという間に、光の玉は視界を超えるほどの数に分裂し、雷奈たちの前に立ちはだかるようにふよふよと浮いていた。まるでこちらを見ているかのように。
だが、雷奈たちの視線は、地面にほど近い、低い位置に浮き上がる六つの丸い光だけに注がれていた。それらは、ふわふわと動いたりはしなかった。大きさも、極めて小さかった。
ただ、じっとして――確かにこちらを見ていた。
「……なして」
雷奈の口から、うわ言のように震え声がこぼれた。
二つずつ、間を空けて三か所に浮き上がった小さな光たち。そのうちの真ん中の二つが、雷奈の言葉に応えた。目が慣れていなければ見えなかったであろう、赤い口から白い牙を見せて、一言で返した。
――ケケケ、と。
***
――同時刻。
フィライン・エデンの中心都市、飛壇に位置する希兵隊本部にて。
「作戦コードかぁ、カッコいいね!」
「はい、私も何か作ってみたいです……!」
二人の執行部隊長が、食堂のテーブルを挟んで向かいに座る先輩の話に興奮気味な声をあげていた。片方は、ちょうど主体なら三角耳があるだろう位置で髪をちょこんと二つくくりにした少女。まだ幼さの残る表情と声で、先輩への憧れをあらわにする。
もう片方は、葉の髪飾りをした、幾分か年上の少女だ。夕食後の甘味の小さなよもぎ団子を、真ん中に置いた皿から一粒つまんで口にする。もぐもぐと咀嚼しながら、自分ならどんな作戦コードを設けるか、常盤色の目を宙に向けて考えていると、相対する二番隊隊長が苦い顔をした。
「よせ、取り決めたところで成功しなければカッコよくなんかない。現に、『東の三』はガオンに破られた」
口元に手のひらを押し付けて頬杖を突き、ふてくされたようによそを向く先輩・河道ルシルに、六番隊隊長・凪原弥智音と八番隊隊長・崎村蘭華は、うまい言葉を返せず「あー……」と気の抜けた声を出した。
三番隊以降の隊員は、飛壇を中心とした東西南北へ遠征に行くことが多く、直接顔を合わせるのは久しぶり、ということが少なくない。弥智音と蘭華も、もうじきまた本部を離れなければならないのだ。
けれど、物理的な距離では千切れないのが希兵隊員の絆だ。先の侵攻後、正式に執行部員として入隊試験を受けることになった弥智音と、その後まもなく新入隊員としてやってきた蘭華の、共通の世話係であるルシルとは、こうして静かな夜に談話するくらいには仲がいい。
「どうしてガオンはルシル先輩が水猫だと知っていたのでしょうか」
「おそらく、ホムラというチエアリだ。北海道で私が屈辱的にも取り逃したあいつが……ガオンのところへ戻って、私について告げ口をしたのだろう」
忌々しい、と吐き捨てるルシルの目つきは不穏だ。彼女の凛々しい目力は、一見して冷たそうに見える。だが、実際に厳しい一面もありながら、それ以上に面倒見がよくて優しいことは、二人とも熟知している。
しかし、今のルシルの青い瞳には、手負いの獣のような一触即発のプライドがのたくっていたので、尻込みした蘭華は少し話を逸らす。
「そ、そういえば、どうして『東の三』で『水術は使うな』って意味になるんですか?」
「ああ……先の侵攻でな」
言われてみれば蘭華には話していなかったな、とルシルはことの経緯を簡潔に語った。決戦の舞台となった塔の東部屋三階で対峙した、見た猫術を自分のものにするチエアリ。その手札を増やさないために水術を使わず戦ったこと。おそらくその甲斐あって、あのチエアリは炎術による捨て身の爆破に屈したと思われること――。
「確か、その相打ちになったという方が……」
「当時の副隊長、竈戸火槌さんだ。……大変世話になったのに、お礼も言えないまま……遺体も残らず……」
ルシルはそれ以上を言えず、ただ目を伏せた。「大事なことはいつも二の次」な彼が、最後に二の次にしたのは、自身の尊い命だった。
彼の殉職を聞いたとき、にわかには受け入れられなかった。けれども、それ以上に深く傷ついたのは、より彼との付き合いが長かった隊長・宇奈川羽留であることを知っていたから、泣き言はぐっと飲み込んだのをよく覚えている。最も身近な先輩であり、青龍隊を共に率いるパートナーだったカヅチを失ったうとめは、しばらく見ていられないほどのやつれようだったのだ。
ひとあたりのよかったカヅチは、居候だった弥智音にも会うたびに声をかけていたようで、彼女も「カヅチにい……」とうつむく。一人、彼の死後に入隊した蘭華だけが、所在なくそわそわとしていた。
こんなしんみりとした女子会にするつもりはなかった蘭華は、再び話題を変えた。
「あ、あの、隊長だった宇奈川うとめさんという方は、今は……?」
その問いに、幾分かその瞳に光を取り戻したルシルは、少し気まずそうに答えた。
「実は、連絡をとっていないのでわからないんだ。連絡先を教えてもらってはいるんだが、今どこで何をしていらっしゃるかわからないのもあって、連絡しづらくてな……」
「あたしも、久しぶりにうとめねえと話したいのにぃ」
「そうだな……私もそうなんだが……うーん……」
ルシルは部屋着のズボンのポケットからスマホを取り出した。だが、取り出しただけで、連絡先を開くこともせず、あてもなく画面をつけたり消したりしたりしている。
スリープ、起動、スリープ、起動、着信。
「うわあっと!?」
いつも泰然としている少女の口から、年相応の悲鳴が上がった。一瞬、宙に放り出されたスマホを、両手でキャッチすると、発信者の名前に目をしばたたかせた。
「雷奈……?」
こんな時間にかけてくるとは珍しい。
ルシルは弥智音と蘭華に断ってから、電話に出た。
「雷奈か? どうした? ……、……何?」
ルシルの目が剣呑に細められる。穏やかでない雰囲気に固唾を呑む後輩二人の前で、ルシルは集中して聞き入っているのか相槌だけをうっていた。
やがて、「わかった、とりあえず、美雷さんに伝えておく」とだけ言うと、「気をつけて帰れよ、おやすみ」と電話を切った。
「どうしたの、ルシルねえ」
「夜の光丘に……クロが現れたそうだ」
それを聞いた二人は、わずかに上体をのけぞらせた。猫姿だったなら、しっぽをぴんと伸ばしていたことだろう。
「うそっ」
「それで……!?」
「しばらく交戦していたようだが、突然散り散りになってどこかへ行ってしまったと。見失ったそうだ」
ため息をつき、再び頬杖の姿勢に戻ったルシル。
蘭華が愁嘆とともにうなだれた。
「そんな……ガオンがまだ生きているということなのでしょうか……」
人間界で生まれるはずのないクロが発生していたのは、人間界でガオンがクロを生み出していたためだ。ガオンを倒したことでクロの発生が止まったと思っていたのに、再発したとあっては、前提が覆される。
蘭華はやるせなさに胸元をぎゅっと握りしめた。
先日の一件において、結果的にガオンを退けることができたとはいえ、希兵隊へのダメージは小さくなかった。目の前に座っているルシルも、皮肉にも自らの猫種と同じ水術で倒され、しばらく肺炎で臥せっていたのだ。ルシルだけでなく、皆が死の淵を臨むほどの損害を被り、引き換えに何とか打倒が叶ったと思ったのに。
しかし、ルシルは蘭華に首を振った。
「それもそうだが、それ以前の問題だ」
「え?」
「うん」
細い眉をきゅっと寄せて、弥智音が茶の入った湯呑を両手で強くつかむ。
「クロが出てるのに、出動要請がなかった」
「あっ……」
たとえやることがいたずら程度のクロでも、発生が確認されれば舎内放送が流れる。いたずらといっても、山林に放火した、など冗談では済まされないものもあるのだ。
そして、その発生の確認を担うのが、フィライン・エデンおよび光丘に張り巡らされた、クロ類検出センサーだ。従来、人間界への設置は行われてこなかったが、この度の人間界開放と同時にクロやダークが出現してから、せっせと完備したのである。いまや、どこでクロやダークがわいてもセンサーに引っかかるように配備されており、その出現が知らされるようになっているはずなのだ。
年下の、いつも無邪気な弥智音に及ばなかったように感じて、蘭華は委縮した。だが、弥智音はもともと、非公式ながら総司令部での仕事経験があるので、その辺りの勘はいいのである。
「チエアリはセンサーに引っかからないようだが、雷奈たちが遭遇したのはクロだ。まさかセンサーに反応しない、新しいタイプのクロだとでもいうのか……?」
「センサーが壊れてるっていうのは?」
「なきにしもあらずだ……だが、索敵機能がきちんと働いているかどうかは、総司令部室で把握しているはず。ついさっき壊れたのか?」
「情報管理局はなんて言うだろ?」
「そ、そうですよっ」
弥智音が小首をかしげて言った言葉に、蘭華が身を乗り出した。さすがに、この基礎知識は蘭華も知っている。彼女は名誉を挽回するようにまくしたてた。
「クロ類検出センサーは、出動要請発令のため希兵隊にクロ類の発生を知らせますが、同時に、統計データ収集のために、情報管理局にも情報が行きます。もしセンサーに反応しないクロが生まれてしまったのなら、情報管理局も把握できていないはずですが、把握できていたなら……」
「希兵隊との通信障害、ということになるな」
やれやれ、とかぶりを振って、ルシルは腰を上げた。
「この旨、美雷さんに報告してくるよ。今日はお開きだな。弥智音、蘭華、また話そう」
「うん、おやすみー」
「お手数をおかけします、お願いします」
こうして解散となった三人は、各々の寮室がある隊舎へと帰っていった。
歩きながら、あとでピッチで美雷になんと報告しようか、話の流れを組み立てながら、ルシルはふと気になった。
(そういえば、なぜクロたちは急に散り散りに逃げて行ったんだ? その辺りの話は淡泊だったが……クロの気まぐれか……?)
あの小さな化け物の行動は、幼子のように予測不能だ。遊び半分に逃げていった可能性もある。だが、直前まで好戦的だったという三体が突然、というのはどうも引っかかる。
それも含めて報告しておこう、と決めて、ルシルは寮の隊舎の扉に手をかけた。
***
画面をタップしてルシルとの通話を終えた雷奈に、氷架璃が問いかける。
「ルシルのヤツ、なんて?」
「美雷に報告してくれるって」
「もうお仕事も終わってる時間だったでしょうに、申し訳ないことをしちゃったわね」
芽華実が心を痛めている横で、氷架璃が「ワーカホリックのエサは仕事だぜ、芽華実」といささか酷なことを言う。またそんなことを、と諫める芽華実の言葉も耳に入らない様子で、雷奈は顎に手を当てて考え込んでいた。
「……何だったんだろ」
ぽつり、つぶやいた疑問形に二人が振り向く。そして、同じように腑に落ちない面持ちで黙り込む。
あれは、何だったのだろうか。
クロの出現のことではない。クロの出現は、クロの出現。以前と何ら変わらず、久しぶりだっただけで、慣れたものだ。今さらその機序やら意味やらを問いただす気にはならない。問題は、ちょこまかとすばしっこいクロを追い回し、飛んでくる光の玉から何とか逃げ切り、これ以上周りをはばからずにクロを滅するのは無理だぞと諦めかけた、その直後の出来事だ。
それは一瞬のことで、不確かで、だからこそルシルには伝えなかった。
けれど、雷奈だけでなく、氷架璃、芽華実も同じ証言をしている以上、「気のせい」で片づけるわけにはいかなかった。
息を切らせて動きを止めた雷奈たちに、三体のクロが大量の光の玉を集め、何か大技を仕掛けようとした、その時。
校舎のほうからだった。まるでグラウンドを一掃するかのように、一陣の冷たい風が吹き抜けていったのだ。
ぞく、と身を震わせた雷奈たちの前で、クロたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。光の玉もシャボン玉が弾けるように消え、何もかもが幻だったかのように、夜の静謐にたたずむ三人だけが残された。
あれが何だったのか、いまだにわからない。ただ、クロたちがあの冷気に怯えて逃げて行ったおかげで、雷奈たちは助かったのだろうということは確かだった。
夜の学校。怪談の主役たちの時間。
残されている怪談は、真夜中フェアリーテイルだけではない。
学校を後にした雷奈は、何食わぬ顔でしんとする校舎をフェンス越しに振り返り、頭をよぎった一つの言葉をつぶやいた。
「――氷結、ウィッチクラフト」
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