黒猫ちゃんは愛される

抹茶もち

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体育祭はお祭り騒ぎでした

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 side:1-S 学級委員長 田中くん

 俺は1-Sの学級委員長。中等部の時もそつなくこなしていたから、高等部でも学級委員長になってくれないかと柊先生に指名された。正直最初はまたか、ってげんなりしてたけど、内申点上がるし桜華学園の学級委員長を中高共にやっていたと言えばそれなりに箔が付くしまぁいいか、と引き受けた。

 けど俺、体育祭の種目決めの時に初めて学級委員長をやっててよかったって心の底から思ったんだよね。なにせあの氷姫と一言だけでも話すことが出来たうえ、借り物競争と障害物競走と騎馬戦に推薦することが出来たんだから・・・・・・!

 高等部から編入してきた氷姫は、お人形さんのように凄く綺麗で近寄りがたい雰囲気を持ってる。だけどひとたび仲良くなった人たちには、途端に花が綻ぶような、暖かい春が訪れたような、そんな可憐な笑みを見せてくれるのがたまらないともっぱらの噂だ。

 かくいう俺も初めて見た氷姫の雪解けの笑顔にやられた口なんだけど。

 そう、俺は入学当初から氷姫の隠れファンなんだ。この事を知ってるのは麦野君だけ。表には出してないはずなのに何故かバレた。麦野君曰く、腐レーダーが反応したのだよ、らしい。

 いつか氷姫のお役に立ちたい。他愛もないお話しをしてみたい。そんなことをずっとぼんやり考えてるけど、なかなかそのタイミングが無いんだよね。1年生は体育祭が終わった後からじゃないと親衛隊の申請が出来ないから、今の1年にはまだ誰にも親衛隊が付いていない。だから親衛隊設立の時が狙い目かなって思ってるんだけどね。

 実は俺、ひっそりと水瀬遥様親衛隊隊長を目指してるんだ。きっと凄い競争率だと思うけど、絶対負けない。絶対俺が1番氷姫の役に立てるもん。

 まずはS組を優勝に導いて氷姫に喜んでもらうんだと闘志を燃やしながら昼休憩を過ごした俺は、昼休み後すぐ始まる応援合戦に思いを馳せる。衣装や応援の内容は当日まで情報規制がされていて、まったく情報が出てこない。

 普通だったら、ね。俺にかかればちょちょいだ。

 ・・・・・・ちょちょいはちょっと盛ったかもしれないけど。俺が仕入れた情報曰く、氷姫は学ランにサラシを巻くらしい。けしからん早く拝みたい。

 ソワソワしていたら、麦野君がそっと隣に来た。

「委員長、ソワソワしてんね。遥の応援合戦楽しみだな」

「そういう麦野君もソワソワしてるじゃないか。楽しみに決まっている。絶対に可憐だ」

「なるほど素直だ」

 そんなことを話していたらプログラム開始の校内放送が流れた。心の臓が飛び出そうだ。
 順番は毎年決まっている。Fから始まり、トリがS組。

「えー、皆様楽しい昼休憩を過ごされましたでしょうか!只今より桜華学園体育祭目玉種目の1つ!!応援合戦を始めようと思います!!!」

 そんな放送を皮切りにF組から思い思いの応援合戦を全力で披露している。

 ・・・・・・まぁ、今年もどちらかというと演武の内容より仮装大会だな。この仮装大会の中、流れに乗らずに学ランサラシのような正統派をぶち込んでくるんだから、今年の生徒会はやっぱりやり手だよね。

 ウンウン、と1人で納得していると、先ほどまでと熱量の違う放送に、俺の意識も自ずとそちらに向かった。

「さてさてさてさて!!!来ました!ついに!来ました!!!応援合戦の大トリだー!!今年のS組は超豪華!!お前ら心の準備は良いか?!心臓発作に注意しろー!S組の入場です!!!」

 放送後、地鳴りのような歓声が響き渡った。その最中さなか、会長様を筆頭に入場してくる皆様を視界に居れた人から1人、また1人、と口を噤んでいく。

 それもそのはず、生徒会メンバー勢揃いなうえ、悪そうな所も堪らないと人気な大神くん、入学当初から人気をかっさらっている柳くんと我らが氷姫、可愛いとひそかに人気な親衛隊総隊長の國澤先輩まで居るんだから。圧倒されるのも無理はない。かくいう俺もポカンと口を開けたまま氷姫の綺麗なおへそから目が離せない。普段きっちりと制服を着こなし、肌を見せる事のない氷姫の白い肌に自然とコクリと喉が動く。本当に同じ男なんだろうか?なんて可愛らしいおへそ・・・・・・。

 ・・・・・・ハッ!!違う違う!俺は純粋に氷姫のお役に立ちたいだけなんだから!!健全な思春期男子の悪い所が出てしまう所だった。危ない危ない。

 毎年相当な事がない限り応援合戦はS組が必ず勝つ。今年も余裕だろう。

 そう思いながら不自然にシンとしている校庭で応援合戦を一生懸命頑張っている氷姫を目線で追う。細くしなやかな身体を精一杯大きく使っていてとても凛々しい。普段は儚げな印象の氷姫が凛々しく舞っている所を見るだけで何故か胸がぎゅーってなって涙が出そうだ。普段大きな声とは無縁な氷姫が必死で声出しをしてる・・・・・・。一生懸命頑張ったんだな、きっと。努力家なところも素敵だ。

 達成感に満ちた顔で演技を終わらせた氷姫は、こちらに目線を向け(多分俺の隣で真っ赤な顔で惚けている麦野君を見つけたのだろう)弾けんばかりの笑顔を浮かべて、小さく手を振ってから退場していった。なんだあの可愛い生き物。

 正直生徒会も大神君も柳君も全く記憶にない。

 彼は可憐だ。一挙手一投足全て可憐だ。本当に同じ人間なんだろうか?彼は天使なのでは?
 入学してから何度もそう思ったが、今日が過去1でそう思ったと思う。

 俺は必ず彼の親衛隊隊長をぶんどるぞ、さてどの情報を使おうか、と頭を働かせつつも、未来の親衛隊隊長としてまずは体育祭で優勝して氷姫に笑顔になってもらおうと気合を入れなおした。

 ちなみに麦野君は今だ顔を真っ赤にして惚けている。君の気持ちはよくわかるがそろそろ復活しないと氷姫が帰ってきてしまうぞ、と背中をバンッと叩いた。

 演技を終えたS組が控室へ戻った後、思い出したように戻ってきた喧騒に混じり、いってぇよ馬鹿力!!と麦野君に抗議を受けてしまった。

「氷姫にあんな笑顔を向けられて正直羨ましかったんだ。すまないとは思っている」


 ・・・・・・一瞬きょとんとした麦野君に、素直かよって笑われてしまった。解せぬ。


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