黒猫ちゃんは愛される

抹茶もち

文字の大きさ
163 / 222
実家に帰省しました

13

ダニエル・サンチェス⋯?


それってイギリスの富豪じゃん⋯!僕でも知ってるくらい有名なやり手の実業家で、色んな業種の事業を手広く経営してる凄い人なはず。

日本で1番有名なのは高級層をターゲットにしたチョコレート専門店だったよね?秘書の勉強してる時に見たうちの取引先一覧にも入ってた。


無類の女好きって噂話を聞いた事あるけど、まさかこんなに近くに息子さんが居るとは⋯。


驚きに目を見開いた僕を見て少し苦笑した雪兎は淡々と続きを話し始めた。


「水瀬家とも取引があるはずだから知ってるよね。噂の方は知ってるかな?父はその噂通りの人でね。仕事で色んな地に飛び回るその先々で気に入った女性を引っ掛けてるんだよ。その中の1人が俺の母親。割り切った関係か、立場を弁えた人だったなら問題はなかったんだろうね。でも母さんはまさに夢見る乙女、みたいな人でね、見た目だけは綺麗な父親に夢を見てしまったんだよ。きっと奥方よりも自分の方を愛してくれている、真実の愛を見つけたんだ、ってね。一ノ瀬は桜華学園だとBクラスに届くか届かないかくらいの家格だし、何より母さんがそんな性格なんだよ?例え奥方が居なかったとしてもうちの母さんに彼の正妻なんて重荷が過ぎる」


選ばれるはず無いのにね、と呟く雪兎は呆れたような、少し切ないような、複雑な表情をしていた。


「そんな風にね、自分が1番愛されていると無条件で信じ込んでいた母さんが、彼の日本滞在中ずっと避妊もせずに関係を持ち続けた結果、俺が出来たんだ。妊娠が分かってすぐ、嬉々として彼に言ったらしいんだよ。あなたとの愛の結晶が出来たのよ!って。そしたら彼はね、喜んでくれたらしいんだよ。でもそれからすぐ彼は、イギリスに帰国することになった。子供は男の子だったら嬉しいな、産まれたら教えてくれ、って言い残して母さんの前から姿を消した。母さんはね、そんな言葉で俺が産まれたら彼は自分を娶ってくれると勘違いしたんだ。それはそれは大事にお腹の中で育てて俺を産み落としてくれたらしいよ」



ふ、と雪兎が視線を床に落とす。



「産まれた子は彼が嬉しいと言っていた男の子だった。しかも容姿は彼ソックリ。母さんはね、すぐに彼に連絡したんだよ。そしたら彼、心底嬉しそうに、楽しそうに言ったんだってさ」



ーーーお疲れ様。男の子を産んでくれてありがとう。後継のストックはいくら居ても良いからね。競い合わせて1番優秀な者に継がせるのも良いかと最近は思っているんだよ。認知や手続きはちゃんとこちらの手のものがしておくからね、後継に相応しい男にしっかり育ててくれよ。



「母さんはね、心が弱い人だからそれで少しおかしくなってしまったんだろうね。お前は愛しい彼の後継に選ばれる人間なんだ、常に相応しくあれ、って口癖のように言いながらいつも笑ってない目で、顔だけ微笑んでいたんだ。特に彼と話せるようにって英語は本当に幼い頃から先生がついていたし、彼とそっくりな俺の外見は母さんのお気に入りで、手入れをサボると凄く怒られたし、友達も顔が整っている子じゃないと話すことすら禁止された。・・・物心つく前から息つく間もなく常に習い事や勉強続きでさ、母さんの言う通りにしないと、どうして分かってくれないの?貴方のためにしてるのよ、って泣かれるんだ。俺、母さんに悲しい思いをさせたくなくて頑張ったんだけどね、中学3年生の頃かな、プッツリと来ちゃったんだ、限界が。もう全部・・・本当にぜーんぶ、どうでも良くなっちゃた」




そう自嘲する雪兎は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。




「そこからはもうね、酷いものだよ。今までと真逆の人間になってやろうと思ったんだ。勉強も最低限しかしなくなって、街の悪い人達と混ざって喧嘩三昧。言葉遣いもその時出来た悪友達の言葉を意識的に真似てみたりしてね。必要以上に大きい声で話しだしたのも、そうした方が母さんが望んだ俺じゃなくなるんじゃないかって思ったからなんだ。進学先は有名な不良校を勝手に選んで勝手に受けたんだ。まぁ当たり前のようにバレるよね。案内は全て家に届くし、学費を払うのは一ノ瀬の家だからね。でもその頃には進学校は全て入試が終わっていたし、何より中3に入ってからマトモに勉強していなかった俺が受かるわけが無いんだよ。だからね、4月いっぱいはその高校に通っていたんだよ。悪友もそこに通っていたからそれなりに楽しいと思っていたよ。でもね、5月に入って急に家に黒塗りの車が現れてね、明日から桜華学園に通ってもらうからそのつもりで。って言われたんだよ。急に意味分からないよね。彼がコネでココに俺を捩じ込んだんだ。それが分かった時、なんだかヤケクソな気持ちになってしまってね。とにかく嫌われ者になってやろうって思ったんだよ。そんなヤツ、後継になんてふさわしく無いだろう?すぐにバライティーショップに行って、以前悪友に貸してもらった漫画に居た嫌われ者の男の子を真似してカツラと瓶底眼鏡を買ったんだ。自己紹介でも俺、嫌われようと思ってずっと俺じゃない俺を演じてた」




「・・・・・・でもね、俺は桜華学園で遥に出逢えた。遥に出逢って、俺はまた頑張ってみようかなって、思えるようになったんだ」




伏せていた視線を上げ、僕を真っ直ぐと見つめる雪兎は、全て吹っ切れたように、綺麗に笑った。




感想 62

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

鳥籠の外を夢見ていた

やっこ
BL
次期当主になることを定められた少年真志喜は、幼い頃から屋敷に閉じ込められていた。 そして15の歳、当主になる運命を受け入れることと引き換えに、一つの条件を持ちかける。 タイムリミットが訪れるその時まで、せめてその間だけは、鳥籠の外で──。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?