【R18】″推し″に幸せになってほしいだけなのに。(最強の推し×死に戻りモブ)

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【2周目】嫌われ者のモブ、実は最強の“推し”から溺愛執着されてました。

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6年の月日は、残酷だった。


「あんたがフレックス隊長直々の教え子っていう女か。当然魔術の腕はあるんだろ?よろしくな」
「…私のことは構わないでいいから。死なないようにしてね」
「…は?俺があんたの足を引っ張るとでも?」

特務部隊の結成時、以前とかけ離れたピリついた空気が漂っていた。初対面で上から目線で挨拶をしたロイドにも非はあったが、にこりともせず差し出された手も取らず視線を一蹴した彼女を前に他のメンバーも気後れしてしまう。
結成から数ヶ月が過ぎ、リセと他メンバーとの確執は埋まらないものになっていった。

上層部は幼いながら魔術を高度に扱えるリセを天才と持て囃したが、俺からいえば彼女は″早熟″なだけだ。
いくら操作が上手くても、そもそもの魔力量が彼女は人並み。
それは努力して埋まるような差でなく、生まれ持っての素質で決まるどうしようもない問題だった。

そんなリセと特に相性が悪かったのは、魔術センスの高い″ロイド″だ。炎を扱う魔術に関しては群を抜いた能力を持っていて、魔力量も多く、質もいい。
結成初期はリセの方が実戦で活躍していたが、その順位が入れ替わるまでに日は掛からなかった。


才能を見込んでいた女の能力は、彼にとって納得のいくものではなく見込み違いだった。
それでも同じ特務部隊で働く仲間として彼女が足並みを揃えていたなら彼もそれほど攻撃的にはならなかっただろうが、
同期としての干渉を拒絶し、周りから距離を置く彼女に、一番最初に苦言を呈したのは彼だった。



「お前、才能ねぇから下がってろよ」
「………」
「いちいち戦闘で最前線に立ちやがって、防護壁と魔術演唱も同時にこなせねぇやつが魔獣の前に立つんじゃねぇよ」
「………」
「なんで隊長はお前みてぇなんをまだ隊に入れてんだろうな。身内の甘さかしらねぇけど、才能ねぇやつを戦場に立たせるなんて、身内なら尚更止めてやれよと俺なら思うけどな」



反論しない彼女の顔色を窺うように、同期達の視線が集まる。
ロイドの言いたいことも分かるが、それでも言い方というか、手心をもう少し加えられただろうと彼のフォローに回ることが多いセーニャは内心ハラハラとしていた。
しかし、リセの反応は周囲の予想とはかけ離れたものだった。


「…才能ないこと、知ってます。ですが、その才能ない人間に庇われてるような人に、そんなことを言われる筋合いはありません」


今日、ロイドはいつもより魔術回路の調子がよかった。
自分のイメージする魔術がそのまま手元に現れるように、普段と同じ演唱なのに質のいい魔術が組み上がる感覚。
魔獣を一撃で焼き尽くすこの炎、このままあの群れにぶち撒ければどれほどの″効果″が確認できるだろう。

自分の実力を確認しようとした、
観測者の目が、戦場での判断を遅らせた。

自分の魔術はこれまでに作ったどんな炎よりも熱かった。
魔獣から魔獣へ燃え移り、核が魔獣の身体の何処にあるかなんて関係なく核ごと身体が燃え尽きるまで炎の火力は上がっていく。ごうごうと燃える群れを前に、浮かれていた。
燃え焦げ苦しみながらなお、自分をそうした人間に一矢報いようと魔獣が投げ飛ばした拳大の岩。
それがロイドの頭に当たるその瞬間、彼の身体をリセが突き飛ばした。


「話がそれだけなら、さようなら。私のやり方にどうこう言う前に、前にも言いましたが″死なないように″身の守りも備えてくださいね」


ロイドがリセに苦言を言ったのは、彼女が同期の輪から外れ自分を削るような戦い方をするから。
魔物の群れを引きつけ一人で討伐したり、
今回のように魔獣の群れを前にわざと最前線に出て周りの人間まで囲う防護壁を作ったり、
魔力量が少ない彼女が毎回魔力が枯渇するスレスレの荒業で任務をこなすのを、誰も口を出せないだけでヨシとはしていない。
ロイドの言うことは、正しかった。
それでも、信頼のない人間関係を前に、
言葉が心まで届くことは、ありえない。


立ち去る気丈な彼女を前に、
もう誰も声はかけられなかった。




それから、確執は埋まることはなく。
むしろ以前よりもあからさまに、リセは同期メンバーと関わることを避けるようになった。
流石にそこまで拒絶されていい気でいられるお人好しではない。自分から″関わりたくない″というのだから、こちらからも願い下げだと誰からともなく彼女から離れていった。

ただ、セーニャだけは、
リセという問題児を前に結束していく特務部隊のメンバーに、
どうにかならないのかと眉を顰め、悲しそうにした。









「………なあ、おたく毎日こんな練習しよんの?」

いつも一人だけの修練場、声をかけて来た男に驚く。
襟足の長い癖のある黒髪がゆらゆらと風に揺れて、胡散臭い釣り上がったツリ目が狐のように鋭く細められていた。


「……セグエス」
「お、俺の名前は知っててくれはったんや。なんや嬉しいなぁ、おたくはリセさん、やったっけ?」
「…呼び捨てでいい、同い年なのにさん付けなんて、気持ち悪い」
「あー、そういう価値観もっとったんや?なんやえらい誰とも話せぇへんから距離感測られへん子なんかおもたわ」

…こいつ、わざわざ罵倒するためにこんな場所まで来たの?
にまにまと腹の内が分からない顔をして口軽く笑う男を睨むと、『おーこわ、そんな怒らんでや』と恐怖なんて一ミリもしてないくせに余裕綽々と男は両手を挙げた。


「何のよう。」
「うん?初めに言うたやん。″こんな練習毎日してんの?″って。…魔術師なんか生まれ持った魔力量がものいうやろ?おたくやって、子どもんときは早うから魔術使えたからお偉い方の目に止まったかも知らんけど、俺らぁと隊組んでから魔術自体は全く進歩しとらんやん。それやのに、馬鹿真面目に毎日修練場行って、遊びもせぇへん、他の誰ともつるまんなんて、おかしいやん。
おたく、何がしたいん?」

悪気なく言われる率直な疑問は、思っていたより深く胸に抉り込んだ。
そう、私は1周目で6年魔術を磨き、魔術師として魔力量自体は少ないながらもそれなりに動き、成果を残せるようになった。
魔力が少なくても扱い方次第でまだやれることはある。
そう信じてこの6年、馬鹿正直にひたすら修練をしてきたけれど、能力の上限値というのか、私の魔術師としての能力は子どものときから成長しないままだった。


「なんとか言うたらどうなん?ロイドには、中々火力強うもの言うてたやん」
「……わざわざ、当てつけにきたの?」
「まさか。あいつにああまで強う言う女おると思わんかったわ。結構痺れたで?」
「……そう」

セグエスは、1周目のときも腹の底が知れない男だった。
それなりに仲良くなってみんなといる時はぎゃあぎゃあ馬鹿騒ぎもしたけれど、彼の本心なんて聞いたことはなくて
こうして二人で話すことさえ、思えば初めてだ。


「質問の答えを言うなら、″意味がなくても私は練習を続ける″よ。」
「………ほお?そりゃ、なんで?」
「いつか意味を持つかもしれないから」

魔力の少ない私でも、フレックスやロイドのように高火力な光球を一つだけなら作り出せたように、
魔力が少ない分、出来ることは少ない。チャンスの数は限られる。そのチャンスを無駄にしないよう、一度の魔術で確実に致命的な痛手を負わせられるように。


「……変な女やなぁ、あんた。」

納得のいく答えではなかったらしいセグエスは眉を顰めて、怪訝な表情でこちらを見ていた。


「話が終わったなら、出ていって。邪魔だから」
「そんなこと一人でしよるより、周りの奴らと協力したほうが効率的って思わへん?」
「関わりたくないって最初に言ったでしょ?ねえ、もう早く出ていってよ」
「…………頑固やなぁ」





「……リセさんがなんでそんな魔術に固執しとるんかは知らへんけど、俺らがおるんは″特務部隊″や。チームワークを乱す人間が続けられるほど隊は甘くあらへんで」






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