【R18】″推し″に幸せになってほしいだけなのに。(最強の推し×死に戻りモブ)

Y(ワイ)

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【2周目】嫌われ者のモブ、実は最強の“推し”から溺愛執着されてました。

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同期のメンバーと関わらないように過ごして、前回と違う変化があった。

まず一つ目は、任務中に誰かが魔獣に襲われたり戦線離脱をする″事故″が圧倒的に減ったこと。
それは自分が率先して魔獣の囮になっているからかもしれないけど、自分が死んで巻き戻ることはあっても誰かが死んでわざと死に戻りを使うことは前回と違って一度もなかった。

二つ目は、メンバーの中に私という″問題児″がいたら残ったメンバーの結束力が強くなったこと。
物語でも悪役がいた方がヒロインと主人公の距離が近くなるのが早いように、輪を乱す人間が身近にいるとどうすれば残った人間でカバーを出来るかおのずと信頼関係が積み上がるんだろう。
私以外の女子はセーニャしかいないから、攻略候補たちの関心がゲーム本編通りセーニャに集まったのも都合が良かった。

三つ目は、完全な予想外だった。
攻略候補である同期の男性陣、セーニャとの好感度や友好度の差で前回″事故″が起きて戦線離脱する場面があったように、
彼らはセーニャとの関係によって能力値がプラスされるらしい。
明らかに前回と違い強化されたのは、ロイドだった。
彼とセーニャが一緒にいるのは確かによく見かける。
セーニャは誰とでも仲がいいから、特別誰かを好きになっているような様子はなかったけど。
でも、1周目のセーニャも誰とは教えてくれなかったけど、確かに恋をしていた。
もしかしたらその相手は、ロイドだったのかな。


ロイドは、魔獣に家族を殺された可哀想な人。
セーニャが寄り添って彼がまた心から笑えるようになるなら、それで救われるんだろう。



「……リセ!まだ続けてたのか?」

思考を割くようにひとりぼっちの空間に安心感がある声が響いて、顔を上げる。
仕事を終えたらしいフレックスはぱたぱたと長いコートを揺らしてこちらへ駆けてきていた。


「こんな遅くまで、身体が冷えるだろう?……もう帰ろう」

彼のコートの中に身体を押し込まれ、子どもの時から変わらない距離感でぎゅっと抱きしめられる。
そのまま手を繋いで心配そうにこちらを見るフレックスの姿は、どこからどう見ても″保護者″の顔だった。


「…………うん」


私ももう18歳、子ども扱いされる歳ではないのに。
いったいいつまでこの過保護は続くんだろう。
私の倍以上ある大きな彼の手はあったかくて、手を繋ぐと私の手が彼の手に覆われて見えなくなってしまう。
大人と子供ほどある手のサイズ感に、なんとも言えない気持ちになった。


「今日は少し遅くなったから、店で夕ご飯を食べて帰ろうか。何がいい?」
「別に…、なんでも……」
「なんでもというのが一番困るんだよ?そうだなぁ、リセは今日任務もあって疲れてるはずだし、スタミナがつくステーキがいいかな?」
「じゃ、それで……」

本当に、なんでもいいのに。
フレックスが側にいてくれたら、私はそれで………。


いや、


いやいやいやいや、


何考えてるの、だめだよ。しっかりしないと。

彼から離れるためにやり直した人生でしょ?

今度こと彼を幸せにすると誓ったじゃん。

セーニャの気持ちは今回はロイドに向いてるかもしれないけどさ、でもだからってフレックスがセーニャに″救われない″訳ではないでしょ?



何のために私を愛してくれた彼をこの世界から消してまで、
全てをやり直しているのか。
全ては貴方に生きて、幸せになってもらうため。
みんなが彼女に救われて、本当のハッピーエンドを迎えてほしいから。


「リセ?元気がないね、何かあったかな?」
「…………ううん、なんでもない。」
「そう?何か心配事があるなら、私に言うんだよ」
「………………うん」






——————





「フレックス隊長、少しよろしいでしょうか」

凛と張り詰めた声で私を呼び止めたのは、特務部隊の中で常に好成績を収めているロイドだった。

「いいよ。話をするなら場所を変えようか、後で執務室で。」
「…ありがとうございます」

彼に会うたびに、魔獣を恨む赤い目の炎がごうごうと燃やすように大きくなる。数年前まで魔力なんて発現もしていなかった、一般の学校に通っていた普通の子だ。
それが家族を魔獣に惨殺されて、たった数年でこれほど魔術師として能力をつけているのだから、恨みの力とは恐ろしい。

長く成果を収めてきたリセの成績を奪うように、
任務で第一位の成果を挙げる彼を、褒めてやりたくても言葉が出なかった。

(今日の任務は、成果以上に″成長″があったようだ)

魔獣への恨みを糧に強くなる彼への褒め言葉は、何の慰めにもなりはしないけれど。それでも上司として彼の能力を認めることくらいは、一時でも心の平穏になるのではないだろうか。



コンコン、
ドアがノックされ、声をかけてすぐ彼が入室した。


「よく来たね。どうぞ、ソファーに座って。」
「……はい」
「今日の任務、記録玉で確認したよ。凄かったね、あれだけの規模の魔術、高位魔術師でもなかなか扱えるものじゃない」
「……ありがとう、ございます…」

沸かしていたお湯を適温にするため少し冷水を混ぜてティーポットに注ぐ。彼を労るためお茶は気が安らぐようジャスミンティーにした。
任務で疲れた回路と精神の癒しになればと、思った。


「それで、話とは?」
「……単刀直入に言いますが、リセのことです。」


そんな彼から、俺の愛しいひとの名前が呼び捨てで吐かれた瞬間、ぴりっと舌の先が痺れる感覚がした。

「…あの子が、どうかしたかな」
「隊長もお気づきのはずです。…あいつは、特務部隊で実戦に出るには能力が不足してます。戦場に出るのは、危なっかしいんです」
「……うん、よく分かっているね。その通りだよ」

俺がすぐ認めると思っていなかったのか、ロイドは口を開けたままこちらを凝視して数秒固まった。口端が震え口角が上がるのは、笑いを堪えてるのか、それとも怒りを抑えているのか。
眉間に皺を寄せ、本来なら感情のままに『だったらどうして!』と叫びたかっただろうに。
相手が私だからと言葉を飲み込み、選び直して話をする彼は、あれほど仲間として干渉を拒むリセ相手でも、仲間として認めているのだろう。

「能力が足りない訳ではない。実際、彼女の成果は君に次いで二番目だし、大量の魔獣の囮になっておきながらなんてことなくそれを討伐しつくして帰ってくるだけの実力もある」
「…でも、あいつは魔力が少ないです」
「魔力は人並みだよ。彼女より少ない子なんて討伐魔術隊にはごまんといる。」
「そういうことを、言ってるんじゃなくて…っ!」



「大量の魔獣を相手にしたり、わざわざ囮になって危険をおかしたり、そんなこと出来るスペックじゃないんです。それなのに毎回こっちの言うこと無視して無茶ばかりしやがって、…魔力枯渇寸前の青い顔で、成果を上げたと言われても、俺は納得できません。」


ああ、本当に、この子は″よく見ている″。
そうだよ。リセの厄介な点はそこなんだ。
能力はある。だから上部は彼女を使いたがる。
それは彼女の能力の範疇を超えて、
そして彼女もまた、自分の能力の範疇以上を求める。

今は偶然死んでいないだけ?
いいや、そんなことはない。

死なない人生になるまでやり直しているだけだ。

早死にする戦い方でも成果を上げているうちは評価は覆らないし、居場所がなくとも平気な彼女は俺には分からない魔術への″目的″のため、今のやり方を変えようとはしないだろう。
本当に、厄介だよね。


「なぜ隊長は、あいつを除名しないんですか。家族だからというならむしろ甘やかさずに除名してやった方が、よっぽどあいつのためだと思います」


真っ直ぐこちらを見る瞳は、真っ昼間の太陽のように眩しい。

俺だって、出来るならそうしたかったよ。
でも彼女は確かに成果を上げていて、俺が特務部隊から除名したところでいつかの宣言通り、今度は討伐魔術隊に所属するだけだ。
そうなると今より上部は都合勝手に彼女を利用しようとするだろうし、俺と言う監視者がいなくなった彼女は今以上に好き勝手無茶をするだろう。
それなら特務部隊として手元においておいた方が、まだ彼女を確実に繋いでいられる。


「………ままならないんだよ、こればっかりはね」


そう困ったように笑う、最強の男の見たことのない顔にロイドは目を一瞬見開いて、視線を逸らした。


「隊長のお考えが、俺は分かりません。″家族″ならもっとちゃんと向き合ってやるべきじゃないですか」
「……そうだね、その通りだよ」


ロイドが自分に報告をあげてくれて、一つ動きやすくなったことがある。
ふと窓の外に目をやると、執務室から見える修練場ではいつものように彼女が魔術をこなしていて、そこに珍しい人物がいるのが見えた。

…セグエスか。
みな、思うところがあるのだろう。


確執があるチームメンバーで行く遠征は、普段よりも事の動きが把握しづらい。
俺は彼女のため、かわいい部下達のため、安全確保のために選定をする必要があるだろう。
それがあの子の望まない結果だとしても。











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