エデン~鳥籠編~

不知火美月

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第3章

第19話 収束2

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ギャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

「なななな、何だよ今の音!!!」

「耳が痛かぁぁ…足も腰も震えが止まらんべぇ」

「きっと天龍だ。どうやらまた空へ飛び出した見たいだな。今のうちに登りきるんだ!さ、タロ。ヤムも立って!もうひと踏ん張りだ頑張れ!」

「「はい!シュガー殿!」」


 ※  ※  ※


「おい、どうしたんだ!?すまない、もう少しなんだ頑張ってくれ!」

ワイバーンはさっきの加速に最後の力を込めてくれていたのか口に泡をため、羽ばたきももう殆ど動かしていない状態だ。

「コイツはもうダメだな。」

「そんな事言っている場合か!このままじゃ落ちるぞ!それに天龍が向かって」

「わぁってる、喚くなうるせぇ…ヤツめいいタイミングで気付きやがったな」

この状況でも上機嫌に大声で笑いたてる男に狂気と共に何故か安堵を感じている自分に無性に腹が立ち、両頬を強く叩いた。じんわりと伝わる痛みと熱が頭を冷やしてくれる。

「分かった。アンタに任せるよ。」

「へぇ…ならこっちもそろそろ本気出してやろーじゃねぇか!!」

男が叫んだ瞬間にワイバーンの上昇スピードが少し上がったきがした。

それに比例して、今までよりも揺れが激しくなっている気がする。男は手網を操りグランドツリーと平行に飛行していたワイバーンを90度傾け、グランドツリーと丁度垂直になるような向きに変えた。

するともう動いていないワイバーンの翼や体全体に強い上昇気流がぶつかり、ワイバーンの体を持ち上げ始めた。
飛んでいるというより、ふわふわと浮かび上がっている感覚に気分が悪くなる。

「一体この上昇気流は何なんだ!?こんな風さっきまで吹いて無かったろ?」

「なら逆に聞くが、お前鳥籠の中で風が吹くのは何でだと思ってたんだ?」

確かに、前から疑問だった。周囲全てを囲われているこの鳥籠。そこに風が入る隙間などある筈もない。しかし風は確かに吹いていた。

そういえば、南の森でトトと飛行した際途中から完全に無風になっていた。逆に風をよく感じたのは中央の森に入った時だ。ならば必然と風は鳥籠の中央に寄れば寄るほど強く吹いているという事になる。

「そうか!天龍だ!天龍が風の正体って訳だな!!」

「そうだ。奴の周りには風が渦巻いてやがる。なら根本的な話、奴はどうやって飛んでんだ?」

「はぁ?そんなの龍だから何かの力でとか何とかじゃないのかよ!!」

「降参か?」

「誰が降参なんて言った!ん~、ヒントは無いのかよ!」

「ブー、時間切れ。GAME OVER。お前今死んだ。」

「ガキかよ…いいから答え教えろよな」

バギッ!!

そうだ、馬鹿な事を言い合っている場合では無かった。

大口を開けて下から迫り来る死の存在を完全に忘れていた。

「あっぶねー、喰われるかと思ったぜ。本当呆れる程間の悪い奴だなテメェわよ!!さっさとくたばりやがれってんだ。」

「クソ!食われる前にさっきの答え教えろよな!!」

「あぁ、そうだったな。羽だ。」

「はぁ!?何処に羽なんて着いてるんだよ!嘘つくな!どう見たって白い大蛇だ!」

ギャーーーーーーーー!!!!!

「うるっせぇ!!どいつもこいつも喚き散らしやがって刻むぞゴラァ!!」

「暴れてる場合か!そんな事してないで、何か策考えないとこのままじゃ、まとめて奴の胃袋行きになるぞ!」

「ッチ、んな事ガキに教わらなくたって分かってんだよ。いいか、情報は命だ!いや、命よりも大事だと思え。それぐらいそのちっこい頭に刻み込んどけ。羽だって言ってるだろ!見えねぇが確かに着いてやがる、等間隔に何翼か。見えねぇから正確な数や材質は分からんが、どうやら羽ばたいた時の風圧が風を生み出していやがるみたいだ。」

そういえば、最初に天龍と向かい合い掠めるようにすれ違った時、前方には何も無いのに不自然に大回りして避けていたな。あれは翼に当たらないようにしていたのか。

『生きたいなら、死ぬことだ。』

「アンタ、それを――。」

「何か言ったか!?」

「いや。行こう!頂上へ!」

「はッ!いい面しやがって」

一体、どれだけ繰り返してきたんだ――。


 ※  ※  ※


――胸くそ悪い。

『ちょっと!いい加減しっかりしてよ!朝からお酒ばっかり飲んで、少しは次の仕事探してよ!』

『子供達ほったらかして、久しぶりに返ったと思ったら何!?そんなに血だらけで…どうせ酔っ払って喧嘩でもしたんでしょ!何処の誰よ、謝らないと…警察沙汰にでもなってたら離婚するからね!』

『私は働いてるんだから、家事くらいしてくれてもいいんじゃないの!?』

『もう…無理よ。この子達で手一杯なの!アナタの面倒まで私、見れる余裕なんてないわ。離婚しましょう。』

『ねぇ、アナタって何か最後まで貫き通せる様なモノってないの?』

またか――。

「おい!もうワイバーンは動かない。天龍もすぐそこだ!今まで何とかかわしていたが距離を詰められたらどうしようもないぞ!次の攻撃はどうかわすんだ!?」

あれからどれだけ経ったかも覚えてないのによ。

「おい!聞いてるのか!!何か有るんだろ?なぁ、俺が思いつかない様な奇策がさ。なぁ、そうだろ?」

ここに来て、天龍ヤツと鼻突合せていると胸くそ悪い事ばかり過ぎりやがる。

「喚くな。うるせぇ――」

ただ騒いで慌てふためくだけ、その癖して威勢だけはいいときやがる。本当馬鹿だ、馬鹿としか言いようがねぇな。

「お前、兄弟はいるのか?」

「!?なんだよこんな時に、関係ないだろ!」

「いいから教えろ」

「・・・妹が1人いるみたいだ」

「フッ、そうか」

「アンタ今笑っただろ!!人に聞いといて最低だな!」

「笑ってねぇよ。ま、俺が言うのもなんだが・・・家族は大事にしろよ。おめぇは男なんだしっかり守って絶対離すな。」

「何くさいこと言っ」

振り向くと、鬱陶しくて憎くてたまらない俺が死ぬ間際瞼に焼き付けた復讐相手は最初から居なかったかのように消えていた。

「おい!オッサン!!」

下を見下ろそうと身を乗り出した瞬間、もう動けない筈のワイバーンが暴れ始め俺は宙を舞っていた。

このまま死ぬのか・・・

『俺は、ここを出ていく』

そうだ、もう少しなんだもう少しで出られる。諦めたら今までが全て無駄になってしまう。それだけは絶対に嫌だ!!

ドン!!

背中に衝撃が走る。あまりの衝撃に海老反りになり、声が漏れた。そして重力に引かれ、肩と腰から地面に落ちた。

薄れかかる意識をなんとか保ち、立ち上がるとそこはグランドツリーにできた溝の中であった。

助かったのか・・・いや、まだだ登らなければ、天龍が来る前に。

どうやら足に問題は無いらしい。1歩進める事に激痛を発する腰などお構い無しに俺は走った。上へ上へ有るとも分からない出口を求めて止まることを忘れた鮪のようにただ足を前へ伸ばし続けた。


 ※  ※  ※


「あーあ、全く。何やってるんだ?俺は」

ギャーーーーーーーーー!!!!!

落ちる体は真っ直ぐに下で大口を開けて待っている地獄へ向かう。相手を見据えて自慢のナイフを腰から引き出し構える。

この状況なら考える必要もねぇ、死んだ。

瞳を閉ざすと後方からの異音が耳へ届けられた。そいつは吉報と男はニッカリと口を歪ませ、血走った瞳をこれ以上ない程に開かせた。

天龍とまみえるその一瞬。

口の中へ落ちる男の起動が天龍の頭部の方向へ急にそれた。驚く天龍は男をしっかりと両眼で捉える。男の背からある筈のない大きな両翼が広げられ、その姿は悪魔そのものであった。

「よう。元気そうだな、テメェの驚く面は何度見ても飽きねぇぜクソ蛇!だが悪いな」

男はナイフに目一杯力を込めると、天龍の金色に光る両眼の間を通り抜けざまに切り裂いた。

「両眼だけ頂いてくぜ」

吹き出す鮮やかな赤を全身に浴びながら男は地面に向かい落ちて行く。

「お前のお陰で最後に面白いもん見させてもらったぜ」

同じ色に染まったワイバーンはもう殆ど意識が無い様子で共に落下していた。男の言葉を聞いてか聞かずか、ワイバーンの頭上には星印が浮かび上がった。

「は、モノ好き同士一緒に堕ちるのも悪かないかもな」

暴れ回る天龍に足を向け、悪魔は地獄へと帰って行った。


 ※  ※  ※


上へ、上へ1歩でも多く、早く。

痛む腰や上がる呼吸の事なんかすっかり忘れて、急な坂道は四つん這いになって這い上がった。只前を上を見続けていると次第に視界は狭まり、天龍が吹き出す強風や周囲の音、色さえも気付かぬうちに感じ無くなっていく。

あと少し・・・もう少しの筈だ・・・

すると向かう先に小さく動く物が見えた。

それは徐々に大きくなり、輪郭が鮮明になってくる。丸い塊から長い物が2本出ていて飛び跳ねる物体が3つ。そう思った時、その塊は動きを止めて此方を振り返った。

2足で立ち上がり、ふわふわで長い耳・・・

「シュガー・・・なのか?」

そう声をかけると2羽のラビットが物凄い勢いで駆け出し、こちらへ襲い掛かってきた。

「な、何をするんだ!?」

慌てふためいていると鮮やかな手さばきであっという間に地面に押し倒され、取り押さえられてしまった。

「いたッ!痛い痛い!やめてくれ」

「うるさい!プレイヤーがこんな所まで追ってきて何をするつもりだ!」

「何にもするつもりなんてない!」

「嘘だ!!」

より一層強くおさえられ、俺は痛みで何も言えず只我慢するしかなかった。すると前から聞き覚えのある声が近づいてきた。

「おい!ヤム、タロそんな事をしている場合じゃないだろ!」

「で・・・でもコイツは」

ラビット達の手が緩んだこの隙を俺は逃さなかった。何とか拘束を振り払うと、目の前の親友に駆け寄った。

「シュガー!俺だコウジだ。覚えてないかもしれないけど、シュガーは俺の恩人なんだ。シュガーが居なかったら俺は生きられなかった。生きる事を教えてくれてありがとう。それだけ」

俺が話し終わると、ラビット達は大きな瞳を丸くさせていた。

「それだけって、そんな事を言う為にオイラ達を追いかけてきたのか?」

3羽のとても驚いた様子に俺は何かやらかしてしまったのかと、無性に恥ずかしくなった。

「いや、ここへ来たのは鳥籠から出るためで・・・そしたら丁度シュガー達が見えたから・・・。でも、ずっと伝えたかったのは本当なんだ!用は済んだから俺はシュガー達には二度と関わらないよ。だから離して貰ってもいいかな?」

話終わると数秒の間の後、3羽は一斉に大爆死を始めた。俺は穴があったら入りたい気持ちになった、きっと顔どころか耳までも赤くなっているに違いない。一通り笑い終わると、シュガーが口を開いた。

「お前、変な奴だな」

「それ前にも言われたよ」

そう返すと今度は他の奴らが話始めた。

「本当、こんな馬鹿なプレイヤー初めて見たぞ!」

「他の奴らもこんなやと助かるっべさぁ」

「それな!オレはタロ、こっちがヤムってんだ。」

「んだ」

「俺はコウジ。よろしくな」

そういうと、またどっと大爆笑が起こる。

「挨拶はそれくらいにして、早く登らないと天龍がくるかもしれない」

確かにシュガーの言う通りだ。オッサンが居ない今、天龍がいつ襲ってきてもおかしくない。

その時、今までに聞いた事の無いような轟音が轟いた。慌てて空を見下ろすと天龍が悶え苦しんでいる。オッサンがやったのか・・・

「くそ!急がないとこっちに来るぞ」

「よし、先を急ごう。」

先へ走り出したシュガーを追いかけるように走り出す。何だか此処へ来たばかりの時を思い出す。シュガーの背中ってこんなに小さかったんだな・・・

不意に後ろを振り返ると後ろについて走っている筈のタロとヤムの姿が見当たらない。

「シュガー!タロとヤムが居ない!どこかで怪我でもしたのかもしれない。俺、引き返してみる」

するとシュガーは足を止めず、振り返る事もせずにこう言った。

「やめるんだ。アイツらが決めた事だ仕方がない。」

「でも!」

「ラビットをなめるな!自分で決めたんだ、本望だろう。オイラ達は上へ登る絶対に、例え手足が無くなっても登りきるんだ!」

俺達は夢中で走った。ほんの一時だったけど、きっといい奴らだった。ありがとう。

前を走るシュガーの顔は見えなかったが、肩が少し震えている気がした。


 ※  ※  ※


「シュガー殿は大丈夫だべか・・・」

「あのシュガー殿だぞ?大丈夫に決まってる。それにあのヘンテコは無害だってオレのここが言ってるぜ」

「んだな」

駆け上がる1人と1羽に背を向けて、グランドツリーを下り始める2羽。

「それにしてもいいのかヤム。オレ1羽で大丈夫だぞ?」

そう言いつつ長い耳を手に取り毛繕いをするタロにヤムは笑いかけた。

「こっから先はオラにはとても荷が重か。それに本当はとっくに足腰きてるべ。」

「嘘つくなよ、あんなでっかな畑維持しておいてさ」

「歳には勝てないっぺな!」

ケラケラと笑い会い、共に笑い疲れるとどちらからともなく固い握手を交わした。

その時、痛みに悶え苦しむ天龍は怒りに身を任せてコウジ達の方向へ飛び始めた。

「来たぞ!」

「「こっちだーーー!!!」」

タロとヤムは大声で叫びながら飛び跳ねた。すると完全に視界を奪われた天龍は音のする方向へ頭を向ける。

「くそ!寄って来ない、もう少しなんだけど」

「大丈夫だ、オラに任せろ」

そういうとヤムは懐からマッチを取り出すと自分の衣服を棒に巻き付け着火した。

「オレにもくれ!」

タロの同じようにたいまつを作るとヤムから火を分けて貰う。

2羽は一斉にたいまつを振り回して騒ぎ立てた、すると天龍は叫び声をあげてタロとヤムのいる方向へグランドツリーに絡まりながら向かってくる。

「よし、走るぞヤム!」

「んだ!」

駆け下りる2羽との距離を直ぐにうめた天龍は2つの熱を捉えると大口を開けて迫った。

「すまねえなシュガー殿、時間さそんなに稼げなかった。後は頼みます」

「シュガー殿最後にオレらの夢を叶えてくれてありがとう。こんな大冒険聞いたらポテト達驚いてひっくり返るぞ、楽しみだな!」

2本のたいまつは転がり、お互いに重なり合って止まると赤く灯った炎は灰色の薄煙を立てて消えた。


 ※  ※  ※


「見えた!頂上だ!」

シュガーの声に顔を上げると丁度デジタル掲示板の下辺りに差し掛かっていた。ここを超えれば無数の枝が集まる幹の天辺に着くはずだ。

しかし問題は、

「道が止まってる・・・」

デジタル掲示板の隣辺りで天龍が付けたであろう溝が消えていた。

「仕方ない、登るぞ」

そう言ってシュガーは木肌の僅かな凹凸に手足をかけて登り始めた。

俺も後に続こうとするが、命綱無しのこの状況で落ちれば終わりという現実が嫌でも頭を過ぎる。

「手が震えて登れない」

「お前、それでもプレイヤーか!?大丈夫だ、オイラの通った道を登れば問題ない。急げ!」

その時だった。

怒り狂う天龍が此方を血だらけの両眼で見つめてきた。俺は恐怖で足がすくんだ。

もうダメだ、喰われる。そう思った時、下の方から声が聞こえてきた。天龍はそちらへ頭を向ける。

「タロとヤムだ。彼等の勇姿を無駄にするな、登るんだ!」

そうだ、俺は一人で此処へ来たんじゃない。皆で上へ、此処を出るんだ!

「すまないシュガー、急ごう!」

小さな凹凸に全てをかけて、希望へと手を伸ばした。

「大丈夫か・・・?」

「あぁ、何とか」

何とか掲示板の上まで登りきる事ができた俺は、上がる呼吸を整えていた。上に上がるとそこは太い枝が何本も柱のようにそびえ立っていた。柱と柱の間を進む事は出来そうだが、見通しが全くきかず中はまるで迷路のようになっている。

突然、シュガーはピンと両耳を立てると慌てて柱の奥に進み始めた。俺も置いて行かれないように後を追って迷路の中へ入り込んだ。

「どうしたんだシュガー!?」

「タロとヤムが殺られた。最後まで諦めずたいまつで立ち向かった彼等の思い、オイラが必ず故郷へ届けてみせる。天龍は直ぐにこっちへ向かってくるはずだ。」

「そうか・・・彼等が作ってくれたチャンスを無駄なくいかさないとな」

「少しでも中へ進んでおきたい。ここまで調査出来たラビットはいないが、周囲から見た時に出口らしきものは発見されなかった。高さのせいだと思っていたんだが、この密集した枝達が隠していたのかもしれない。」

「てことは、ここの中心に出口があるって事か・・・」

枝を超えても超えても次の枝の姿が見えるだけ、変わらない景色に全く進んで居ない様な錯覚に陥る。方向は変えていない筈だが360度全く同じ景色に囲まれていると方向感覚さえも怪しく思えてくる。

「シュガー、こっちで大丈夫なのかな?」

シュガーは振り返る事無く返事を返してきた。

「迷っている暇はないぞ。オイラは方向音痴じゃないし、あっちこっち向くから余計に迷うんだ」

まぁ、確かに一理ある。

急いでいるつもりだが、込み合った枝の隙間を縫うように進むしかない為中々スムーズには進めない。

「いてッ、どうしたんだシュガー?」

突然シュガーが足を止めたので、俺はシュガーの背にぶつかる形で止まった。

「天龍だ・・・来るぞ」

後ろを向いてシュガーが呟くと、後方から木の軋む様な音と、上で細かい枝葉が揺れ擦れ合う音が迫ってきている。

「やばい急げ!!」

慌てて前へ前へ進むが一向に何も見えては来ない。

音がどんどん大きくなっている。きっと天龍が俺達に気づいたんだ。向こうからもこちらが見えない筈なのにどうして位置が分かるんだ!?

シュガーは音で敵を感知している。トトは匂いに敏感だったな・・・そういえばオッサンが前に4とか3とか言っていた。数が多い方に引き寄せられるのか。でも、タロとヤムと別れた時は同じ数だった筈・・・そうか、火だ!天龍は温度を感知して追ってくるんだ!だからたいまつを持った彼等を狙ったんだ。

「すぐ後ろまで来てるぞ!急げ!」

背後に迫る恐怖が背筋を冷やし固める。振り向きたい衝動を抑え1つまた1つと柱をすり抜ける。いつになったら出口が見えるんだ・・・もしかしてこれがずっと続くんじゃ・・・出口なんて本当に

「穴だ!!穴があるぞプレイヤー!!」

前方から聞こえるシュガーの声に等々幻聴かと歯を食いしばって隙間から這い出すと、そこには無数の柱から伸びる木の皮がシワのように重なり合って渦を書くように中央に集まっていた。全てが集まる中心には真っ暗な大穴が口を開けている。上を見上げると、大穴の上には不思議と木の枝葉が避けるようにして茂っており、長い円柱状の空間は明かり窓のように青空が見えた。その窓の中心には鳥籠を包み込む無数の鉄組が集まり、まるで黒い太陽が此方を覗いているようだった。

俺達は夢中でその穴へ向かって走った。その時、

「わぁ!!」

シュガーが声を上げて倒れ込んだ。慌てて引き返そうとすると、シュガーの後ろの柱が大きな軋み音と共に倒れ、しゅるしゅると長細い真っ赤な舌と純白の鱗が姿を現した。

「来るな!行け!!」

木の皮の隙間に挟まった足を引っ張りながら叫ぶシュガーを、俺はとても見捨てる事など出来なかった。

「あの時シュガーは見捨てずに俺を助けてくれたんだ!」

考えるよりも先に走り出した足が誇らしかった。

「シュガー!ツタを投げろ!」

それを聞いたシュガーは懐から固く編まれたツタの端を此方へ投げた。

ギャーーーーーーーーーー!!!!!!

天龍は美しい瞳が収められている筈の2つの穴から赤黒い涙を流しながら激昂し、俺達にその鋭い牙を剥き出して襲い掛かってくる。

俺は投げられたツタを力いっぱい引くと飛び出したシュガーに右手を差し出す。

俺はシュガーが伸ばした手を掴むと、思いっきり穴に向かって走り出した。

大穴を覗き込むと、中はどこまでも闇が広がるばかりで深ささえも分からない。

これ、飛び込んでも大丈夫なのか・・・

一瞬そんなためらいが頭を掠める。

「コウジ!後ろ!!」

シュガーの叫び声に振り向くと天龍の口腔がすぐ側まで迫っていた。

答えは決まっている。

大穴の中へ1人と1羽で飛び込んだ。

バキッと牙がぶつかり合う音を耳に残して、俺達は真っ暗な闇の中へ落ちていった――。



  Coming soon......
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