the colors of Love

不知火美月

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エロス2

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ゆっくりと意識が戻る感覚・・・あれ?俺寝てた?
頭痛い・・・
こめかみを押さえながらゆっくり目を開けるとまた天上あれが見える。変な夢だったなぁ。あれ?賃貸ボロ屋じゃないな・・・
何処だここ?
周りを見るとどうやらホテルのようだ。

「一体何が・・・考えようとすると頭がズキズキする」

家を出て、歩道橋に上がって、そうだ男!夢じゃなかった!!

「あっ!財布!無いっ!!」

って、家に置いて来たんだった。
人間残高120円でもまず金の心配をするんだな・・・嫌な生き物だ。

服は着たままか・・・俺が言うのも何だが変な男だな。別に体でも内蔵でも欲しけりゃくれてやったのに。

「ん!?」

しかし、驚いたのはそれだけでは無かった。フロントに繋がる電話が置いてある小さな机を見て俺は驚きのあまり二度見した!
そこには日本で一番高価な札が数十枚重ねられて置いてあったからだ。
その余りの威圧的な様に俺は嬉しさでは無く恐ろしさで固まっていた。
すると隣にメモが残されている事に気がついた。

『おはようございます。本当は直接お話しした方が良いのでしょうが、お酒で眠られてしまった為此方に残す事にします。まず、食事代と宿泊代は支払い済みですのでお気になさらないで下さい。それと、少ないですが生活費です。これで1ヶ月程は暮らせると思います。ご自由にお使い下さい。最後に、お節介かとは思いますが最後についてもし、お悩みがあるのでしたら此方で学んでみるのも宜しいかと思いますよ。』

メモの下には名刺が置かれていた。

さかき蒼介そうすけ

とりあえず風呂に入ろう。そうだ、頭を冷やせば少しはマシな考えも思い付く筈だ。

髪や体は綺麗になったが、状況は一向に改正へと進まない。俺は、やっとの思いで机の上の物に触る事ができた。特に変な事は無い。これが本当にメモ通りならこんなおかしな話はない。
見知らぬ自殺願望者に飯を奢って宿を貸して、その上金をやるだなんてそんなのおとぎ話でも聞いた事無いぞ!

俺は酔っ払って何か話したのだろうか・・・

今生きているって事は大丈夫なんだろうけど・・・って俺死のうとしてるのに何を悩んでいるんだ!あれもこれもどうでもいいじゃないか!どうせ死ぬんだし・・・

意志とは関係なく人は腹が空くと音が鳴る。

昨日の土手、美味かったなぁ・・・

どうせ死ぬならこのお金返してから死のう。
死に方はその後に考えればいい。
とりあえずここが何処か確認しよう。

窓から外を見ると、予想に反して物凄く高い場所に自分が居ることに気が付いた。
え・・・この部屋いくらするの?
どうしよう・・・払えない。
お金を返しに行った時に催促されたら・・・

「どうすればいいんだーーー!!!」




   ※     ※     ※




「はッ!」

「あ、颯月おはよう」

「榊さん!すみません、寝てました・・・」

「いいよいいよ、今寝とかないとこれから忙しいからね」

「すみません、ありがとうございます」

今更あんな昔の夢を見るなんて・・・
あの時の俺はまさか6年先も自分に人生があるだなんて思ってもいなかっただろうな・・・
しかもあの時の男と同じ会社に就職し、お金も全額返せて、彼が運転するワゴンの助手席に座ってる未来って漫画でもそう無いんじゃないか?書いたら売れるかもしれない・・・な訳ないか、ハッピーエンドじゃあるまいし。

「どうすればいいんだってうなされてたけど、嫌な夢でも見たの?」

「えっ!?いや、夢で夢見てた夢?みたいなので」

「うわぁ、それは難しそうだね・・・」

「物語なら最低ですよ」

「相変わらず痛烈だなぁ」

今が幸せならそれでいい。どうせ未来なんて分からないんだ。だから、今だけは甘えてもいいですか?

「榊さん、キスしてほしい・・・です」
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