17世紀ドイツで特殊部隊に勧誘されてます

コダーマ

文字の大きさ
68 / 98
【第3章 楽園の行方】燃える都市

あれから起こったこと

しおりを挟む
「──殺されたのかもな」


 リガが小さく呟いた。ヴェルツは顔を上げる。殺された? まさか、彼女が?


「血の臭いがしたんだ。あんたが倒れていたより上の階だ。あと、硝煙の臭い……」


 リガの後ろから姉が顔を出す。


「リガが出て行って直ぐ、私達も聖騎士団に襲撃されたの。お坊さんがパニック起こしてね。モリガンちゃんと一緒に連れて逃げるの大変だったんだ」


「それは申し訳ありませんでしたね」

 マナーワンが声を荒げる。

「幸いモリガンさんが色々な所のお得意様でいらっしゃるから、すぐにこちらの娼館に逃げ込むことが出来ましたが」


 モリガンは新しいチョコレートを齧っている。マナーワンの言葉の棘には気付かない様子だ。モリガンちゃん、頂戴と言ってはキルスティンもその欠片を貰っている。


「……モリガンちゃんじゃないだろ。」


 ヴェルツは脱力した。こいつ等には危機感というものがないのか。


「とにかく縄コレをほどいてく……」

 言いかけた時、何かに気付いた。

「自分と一緒に黒騎士……ゴーチェ・フォーレも居ませんでしたか。あと、ロック……自分の友人もどこかに……?」


 ああ、それなら……。答えたのはリガだ。不機嫌に顔を顰めている。


「暗殺屋ならあそこ。何があっても起きやしない」


 見ると部屋の隅にゴーチェが転がっている。見たところ、ヴェルツより雑に扱われたらしい。縄でぐるぐる巻きにされ、無造作に床に転がされている。火災の中、二往復して図体のでかい男二人を救出した弾丸小僧の腕は火傷で赤く腫れていた。すみません、と縛られたまま頭を下げる。すみません。自分が悪いんです。分かってます。だからどうかこの縄を……。


「それで、何? あんたの友人? それは知らないな。あそこに居たのか?」


「それは分からないけど……」

 首を横に振る。オリンピアが言うにはその可能性が高いということだったが。

「もしかしたら、彼女と一緒に逃げたとか?」


 小さな独り言に、マナーワンが再びヴェルツの頬を叩く。


「ありえません。《死天使》《シュテルベン・エンゲル》がそんな男と逃げるなど……」


「でも、デキてたら? 二人、知り合いなんだろ? 可能性は……うっ!」


 今度はリガが叩かれた。何すんだよッ、と途端険悪になった空気。マナーワンが激しく噛み付く。


「下品なこと言わないで下さい。例え……もしも、例えば恋人同士だとしてもそんな曖昧な理由で行動するような女性ではありません! 失礼でしょう」


「……すみません」

 条件反射でヴェルツが謝る。

「自分もそう思います。それで、あの……できたら縄を……」


 このままじゃサンドバッグだ。リガに、マナーワンに、果ては姉にまで好き放題に嬲られる。それに何かあった時に動けないじゃないか。心なしか、床が小刻みに揺れているように感じられる。まさか地震か? 声をあげかけた時だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...