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【第3章 楽園の行方】燃える都市
あれから起こったこと
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「──殺されたのかもな」
リガが小さく呟いた。ヴェルツは顔を上げる。殺された? まさか、彼女が?
「血の臭いがしたんだ。あんたが倒れていたより上の階だ。あと、硝煙の臭い……」
リガの後ろから姉が顔を出す。
「リガが出て行って直ぐ、私達も聖騎士団に襲撃されたの。お坊さんがパニック起こしてね。モリガンちゃんと一緒に連れて逃げるの大変だったんだ」
「それは申し訳ありませんでしたね」
マナーワンが声を荒げる。
「幸いモリガンさんが色々な所のお得意様でいらっしゃるから、すぐにこちらの娼館に逃げ込むことが出来ましたが」
モリガンは新しいチョコレートを齧っている。マナーワンの言葉の棘には気付かない様子だ。モリガンちゃん、頂戴と言ってはキルスティンもその欠片を貰っている。
「……モリガンちゃんじゃないだろ。」
ヴェルツは脱力した。こいつ等には危機感というものがないのか。
「とにかく縄コレをほどいてく……」
言いかけた時、何かに気付いた。
「自分と一緒に黒騎士……ゴーチェ・フォーレも居ませんでしたか。あと、ロック……自分の友人もどこかに……?」
ああ、それなら……。答えたのはリガだ。不機嫌に顔を顰めている。
「暗殺屋ならあそこ。何があっても起きやしない」
見ると部屋の隅にゴーチェが転がっている。見たところ、ヴェルツより雑に扱われたらしい。縄でぐるぐる巻きにされ、無造作に床に転がされている。火災の中、二往復して図体のでかい男二人を救出した弾丸小僧の腕は火傷で赤く腫れていた。すみません、と縛られたまま頭を下げる。すみません。自分が悪いんです。分かってます。だからどうかこの縄を……。
「それで、何? あんたの友人? それは知らないな。あそこに居たのか?」
「それは分からないけど……」
首を横に振る。オリンピアが言うにはその可能性が高いということだったが。
「もしかしたら、彼女と一緒に逃げたとか?」
小さな独り言に、マナーワンが再びヴェルツの頬を叩く。
「ありえません。《死天使》《シュテルベン・エンゲル》がそんな男と逃げるなど……」
「でも、デキてたら? 二人、知り合いなんだろ? 可能性は……うっ!」
今度はリガが叩かれた。何すんだよッ、と途端険悪になった空気。マナーワンが激しく噛み付く。
「下品なこと言わないで下さい。例え……もしも、例えば恋人同士だとしてもそんな曖昧な理由で行動するような女性ではありません! 失礼でしょう」
「……すみません」
条件反射でヴェルツが謝る。
「自分もそう思います。それで、あの……できたら縄を……」
このままじゃサンドバッグだ。リガに、マナーワンに、果ては姉にまで好き放題に嬲られる。それに何かあった時に動けないじゃないか。心なしか、床が小刻みに揺れているように感じられる。まさか地震か? 声をあげかけた時だ。
リガが小さく呟いた。ヴェルツは顔を上げる。殺された? まさか、彼女が?
「血の臭いがしたんだ。あんたが倒れていたより上の階だ。あと、硝煙の臭い……」
リガの後ろから姉が顔を出す。
「リガが出て行って直ぐ、私達も聖騎士団に襲撃されたの。お坊さんがパニック起こしてね。モリガンちゃんと一緒に連れて逃げるの大変だったんだ」
「それは申し訳ありませんでしたね」
マナーワンが声を荒げる。
「幸いモリガンさんが色々な所のお得意様でいらっしゃるから、すぐにこちらの娼館に逃げ込むことが出来ましたが」
モリガンは新しいチョコレートを齧っている。マナーワンの言葉の棘には気付かない様子だ。モリガンちゃん、頂戴と言ってはキルスティンもその欠片を貰っている。
「……モリガンちゃんじゃないだろ。」
ヴェルツは脱力した。こいつ等には危機感というものがないのか。
「とにかく縄コレをほどいてく……」
言いかけた時、何かに気付いた。
「自分と一緒に黒騎士……ゴーチェ・フォーレも居ませんでしたか。あと、ロック……自分の友人もどこかに……?」
ああ、それなら……。答えたのはリガだ。不機嫌に顔を顰めている。
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「それで、何? あんたの友人? それは知らないな。あそこに居たのか?」
「それは分からないけど……」
首を横に振る。オリンピアが言うにはその可能性が高いということだったが。
「もしかしたら、彼女と一緒に逃げたとか?」
小さな独り言に、マナーワンが再びヴェルツの頬を叩く。
「ありえません。《死天使》《シュテルベン・エンゲル》がそんな男と逃げるなど……」
「でも、デキてたら? 二人、知り合いなんだろ? 可能性は……うっ!」
今度はリガが叩かれた。何すんだよッ、と途端険悪になった空気。マナーワンが激しく噛み付く。
「下品なこと言わないで下さい。例え……もしも、例えば恋人同士だとしてもそんな曖昧な理由で行動するような女性ではありません! 失礼でしょう」
「……すみません」
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「自分もそう思います。それで、あの……できたら縄を……」
このままじゃサンドバッグだ。リガに、マナーワンに、果ては姉にまで好き放題に嬲られる。それに何かあった時に動けないじゃないか。心なしか、床が小刻みに揺れているように感じられる。まさか地震か? 声をあげかけた時だ。
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