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【第3章 楽園の行方】燃える都市
居場所
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「な、何?」
ようやく異変に気付き、ヴェルツは体を起こした。彼の上に伸し掛かっていた黒鎧が横に滑り落ちる。どうやらどこも斬られていないようだ。説明を求めるように姉を見上げた瞬間、彼女の後ろで剣を構えていた黒鎧が倒れた。
たちまちのうちに四人が倒され、ヴェルツを含めた残りの全員が周囲を見回す。
「丸腰ってのはどうかと思うな」
その声にキルスティンが喚声をあげる。民家の屋根の上に、銀髪の少年の姿があったのだ。
「このメンバーじゃ、どうせこんなことだろうと思ったよ」
言いながら銃を放る。それは空中に銀の軌跡を描いてヴェルツの手元に落ちてきた。銀色のハンドガンだ。これもオリンピアが造った物だろう。
形勢を逆転された黒鎧が焦りのためか、マナーワンに向かって剣を振り上げた。咄嗟にヴェルツはそいつに向かって引金を引く。火薬の破裂音と、それに伴う反動で体が後方に倒れ込むが、敵の動きは止まらない。どうやら弾丸は空の彼方へ飛んで行ったようだ。
「その距離で外しますかっ!」
マナーワンが悲鳴をあげる。今しも襲い掛からんとする黒鎧の兜に、リガの放った銃弾が弾く。騎士は倒れる。続いて最後の一人を倒してから、弾丸小僧は屋根から飛び降りた。
「その距離で外すか」
同じことを言われてヴェルツは顔を赤らめる。そう言えばオリンピアにも似たようなことを言われたっけ。仕方ないだろ、銃なんて撃ち慣れてないんだから。
「死んだの?」
キルステインが黒鎧を爪先でつつく。
「いや、この弾丸でこのアーマーは破れない。兜に当てて脳震盪を起こさせただけだ」
早々にその場を離れながら、彼は銃の弾倉を取り替えた。
「恩着せがましく言ったところで、どうせ銃を撃って暴れたいだけでしょう。リガさん、大聖堂はどうなりました?」
マナーワンの辛辣な言葉に、リガは銃身を叩いて答える。
「暴れる? そう行きたいところだけど、弾切れでね。モリガンがまたどこからか調達してくることになってるんだ。半刻後に大聖堂近くで落ち合う」
「弾切れって……確か《死天使》《シュテルヴェン・エンゲル》が大量に造って……」
2,000発なんて4分でなくなる。そう言い切ってからリガは、金ならあるんだけどと顔を顰めた。
「弾丸は彼女が一つ一つ造っているわけですからね。どこにも売ってはいません」
「造り方を教えてくれりゃいいのに」
マナーワンは首を振った。
「駄目ですよ。あなたは不器用です。それに彼女は、技術が人に渡って自分が用なしになるのを恐れているんですよ。居場所がなくなると……」
居場所か……。ヴェルツは呟いた。あれ程腕も立つ彼女が、何故そんなことを考えなくてはならない……。やり切れない。早く彼女の居所を突き止めて、出来るだけ早く助けてやらなければ。自分なんかが行っても慰めにもならないかもしれないが、それでもあなたは大切な人だと言ってやらねば。
それなのに、自分はこんな所で無駄な時間を過ごしている。オリンピアは無事なのだろうか。たまらなく嫌な予感がした。同時にどうしようもない無力感を覚える。
ようやく異変に気付き、ヴェルツは体を起こした。彼の上に伸し掛かっていた黒鎧が横に滑り落ちる。どうやらどこも斬られていないようだ。説明を求めるように姉を見上げた瞬間、彼女の後ろで剣を構えていた黒鎧が倒れた。
たちまちのうちに四人が倒され、ヴェルツを含めた残りの全員が周囲を見回す。
「丸腰ってのはどうかと思うな」
その声にキルスティンが喚声をあげる。民家の屋根の上に、銀髪の少年の姿があったのだ。
「このメンバーじゃ、どうせこんなことだろうと思ったよ」
言いながら銃を放る。それは空中に銀の軌跡を描いてヴェルツの手元に落ちてきた。銀色のハンドガンだ。これもオリンピアが造った物だろう。
形勢を逆転された黒鎧が焦りのためか、マナーワンに向かって剣を振り上げた。咄嗟にヴェルツはそいつに向かって引金を引く。火薬の破裂音と、それに伴う反動で体が後方に倒れ込むが、敵の動きは止まらない。どうやら弾丸は空の彼方へ飛んで行ったようだ。
「その距離で外しますかっ!」
マナーワンが悲鳴をあげる。今しも襲い掛からんとする黒鎧の兜に、リガの放った銃弾が弾く。騎士は倒れる。続いて最後の一人を倒してから、弾丸小僧は屋根から飛び降りた。
「その距離で外すか」
同じことを言われてヴェルツは顔を赤らめる。そう言えばオリンピアにも似たようなことを言われたっけ。仕方ないだろ、銃なんて撃ち慣れてないんだから。
「死んだの?」
キルステインが黒鎧を爪先でつつく。
「いや、この弾丸でこのアーマーは破れない。兜に当てて脳震盪を起こさせただけだ」
早々にその場を離れながら、彼は銃の弾倉を取り替えた。
「恩着せがましく言ったところで、どうせ銃を撃って暴れたいだけでしょう。リガさん、大聖堂はどうなりました?」
マナーワンの辛辣な言葉に、リガは銃身を叩いて答える。
「暴れる? そう行きたいところだけど、弾切れでね。モリガンがまたどこからか調達してくることになってるんだ。半刻後に大聖堂近くで落ち合う」
「弾切れって……確か《死天使》《シュテルヴェン・エンゲル》が大量に造って……」
2,000発なんて4分でなくなる。そう言い切ってからリガは、金ならあるんだけどと顔を顰めた。
「弾丸は彼女が一つ一つ造っているわけですからね。どこにも売ってはいません」
「造り方を教えてくれりゃいいのに」
マナーワンは首を振った。
「駄目ですよ。あなたは不器用です。それに彼女は、技術が人に渡って自分が用なしになるのを恐れているんですよ。居場所がなくなると……」
居場所か……。ヴェルツは呟いた。あれ程腕も立つ彼女が、何故そんなことを考えなくてはならない……。やり切れない。早く彼女の居所を突き止めて、出来るだけ早く助けてやらなければ。自分なんかが行っても慰めにもならないかもしれないが、それでもあなたは大切な人だと言ってやらねば。
それなのに、自分はこんな所で無駄な時間を過ごしている。オリンピアは無事なのだろうか。たまらなく嫌な予感がした。同時にどうしようもない無力感を覚える。
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