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【第3章 楽園の行方】大聖堂へ
思惑・命令・脅し
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「EDE.は……」
叔父の不意の言葉に、オリンピアはうろたえた。
「EDE.は使い物になりません。あくまで街に縛り付けられている。個人の自我が強すぎて騎士団とも軋轢を生じて、実に使いにくい」
「叔父様……?」
自らが作った部隊に対して突き放した言い方に、オリンピアは違和感を覚える。
「マナーワンにEDE.を仕切らせたのは身寄りがなく、野心はあるが小心だからです。リガには目新しい武器さえ与えておけばおとなしい。モリガンにも生活の糧として仕事を与えれば動く。しかし彼らには最大の欠点があります」
そこで大司祭は言葉を切った。最大の欠点──彼等には一切の忠誠心がない。
「そんなこと……マナーワンは真面目な聖職者ですわ。叔父様の事も尊敬して……。他の二人だって」
言いながらオリンピアは、自らの言葉が空しく響くのを感じていた。確かにあの人達に忠誠心は皆無だ。自らが納得しなければ決して動かない。しかし、とも思う。独立した組織にとって大切なのは服従ではなくて自我ではないのかと。
「余が撃たれた時、あの者達はよりにもよってこの余を放って逃げ出したではありませんか。聖騎士団長も、我が姪である貴女も」
「それは……」
言葉に詰まる。確かにそうだ。だがあの時は……。
「お、叔父様こそあの時……。だ、だって、撃たれて……」
大司祭ダイ・カーン・シュールディッヒの視線は冷たかった。
「余は大司祭なのですよ。僧衣の下には常にボディアーマーを装着しています。一般的な弾丸なら軽く弾いてしまえますよ」
ただ、さすがに撃たれた時はその衝撃で昏倒してしまいましたがね。一時的に呼吸も止まったようです。気が付いたのは地下の安置所したね。何があったか分からず、一人で逃げましたよ。こうなった以上、誰が敵かすら分からない。
だから人気のない街外れの塔に逃げ込んだのだと言う。そこで拘束されたロックを見付けたのだろう。撃ち殺した筈の大司祭その人が突然目の前に現れ、ロックとて驚いたろう。
死者である大司祭が彼に囁いた言葉が「オリンピアを連れて来い」だった。
「わたくしを……?」
塔で──あの場所で再会したのは彼の意志ではなく、大司祭の命だったのだと? オリンピアの全身から力が抜けた。その一瞬を、ダイ・カーンは見逃さない。滑るような動きで近付き、彼女の銃口に自らの指を突っ込む。
「な、何を……」
「撃てないでしょう。撃ったら弾丸が詰まって銃は暴発しますよ」
「あ……」
弾丸の唯一の発射口を塞がれては、確かに行き場を失った弾は銃内部で爆発する
「そ、そうすれば叔父様だってただではすみませんわよ」
叔父の不意の言葉に、オリンピアはうろたえた。
「EDE.は使い物になりません。あくまで街に縛り付けられている。個人の自我が強すぎて騎士団とも軋轢を生じて、実に使いにくい」
「叔父様……?」
自らが作った部隊に対して突き放した言い方に、オリンピアは違和感を覚える。
「マナーワンにEDE.を仕切らせたのは身寄りがなく、野心はあるが小心だからです。リガには目新しい武器さえ与えておけばおとなしい。モリガンにも生活の糧として仕事を与えれば動く。しかし彼らには最大の欠点があります」
そこで大司祭は言葉を切った。最大の欠点──彼等には一切の忠誠心がない。
「そんなこと……マナーワンは真面目な聖職者ですわ。叔父様の事も尊敬して……。他の二人だって」
言いながらオリンピアは、自らの言葉が空しく響くのを感じていた。確かにあの人達に忠誠心は皆無だ。自らが納得しなければ決して動かない。しかし、とも思う。独立した組織にとって大切なのは服従ではなくて自我ではないのかと。
「余が撃たれた時、あの者達はよりにもよってこの余を放って逃げ出したではありませんか。聖騎士団長も、我が姪である貴女も」
「それは……」
言葉に詰まる。確かにそうだ。だがあの時は……。
「お、叔父様こそあの時……。だ、だって、撃たれて……」
大司祭ダイ・カーン・シュールディッヒの視線は冷たかった。
「余は大司祭なのですよ。僧衣の下には常にボディアーマーを装着しています。一般的な弾丸なら軽く弾いてしまえますよ」
ただ、さすがに撃たれた時はその衝撃で昏倒してしまいましたがね。一時的に呼吸も止まったようです。気が付いたのは地下の安置所したね。何があったか分からず、一人で逃げましたよ。こうなった以上、誰が敵かすら分からない。
だから人気のない街外れの塔に逃げ込んだのだと言う。そこで拘束されたロックを見付けたのだろう。撃ち殺した筈の大司祭その人が突然目の前に現れ、ロックとて驚いたろう。
死者である大司祭が彼に囁いた言葉が「オリンピアを連れて来い」だった。
「わたくしを……?」
塔で──あの場所で再会したのは彼の意志ではなく、大司祭の命だったのだと? オリンピアの全身から力が抜けた。その一瞬を、ダイ・カーンは見逃さない。滑るような動きで近付き、彼女の銃口に自らの指を突っ込む。
「な、何を……」
「撃てないでしょう。撃ったら弾丸が詰まって銃は暴発しますよ」
「あ……」
弾丸の唯一の発射口を塞がれては、確かに行き場を失った弾は銃内部で爆発する
「そ、そうすれば叔父様だってただではすみませんわよ」
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