死神ジョンの憂鬱な日常

rococo

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死神ジョンとミラ婆さん

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俺の名前はジョン。仕事は死神をしている。このバークレン王国の王都であるバークレン担当だ。そんな俺の1日は早くない。決して遅くもない。みんなが仕事を始める頃、俺は起きる。ベランダで太陽の光を浴びながら飲むコーヒーはうまい。格別だ。コーヒーを飲みながら死神協会から送られてきた依頼書に目を通す。ターゲットは、バークレンの西区に住むミラ。年は63歳。性別は女。命日は1週間後。死因は老衰。どうやら今回の依頼は楽そうだ。死因が老衰というところがいい。老衰は楽だ。特別な準備とかいらないしな。死神の中には、命日にいきなり魂を取る奴もいるらしいが俺は違う。いきなり魂を取っちまうと遺産処理とかで遺族が揉める。みんなもそんな話を聞いたことがあるだろう。それは良くない。だから俺は、必ず1週間前にはターゲットに死ぬことを伝えてあげる。「1週間後に死ぬから遺書とか書いて準備しておけ」と。まぁ、大抵のやつは信じずに何の準備もしないけどな。おっと、コーヒーが無くなっちまった。それじゃあ、仕方ない。仕事の時間だ。ミラ婆さんに死ぬことを伝えにいこう。黒いローブを身にまとい、フードを深く被る。そして、胸元にあるペンダントのスイッチを入れる。スイッチを入れている間は姿を消すこともできるし、壁をすり抜けることもできる死神協会からの支給品。これがないと仕事にならない。死神特有の大きな鎌は持っていかないのかって?あんな邪魔なもの持っていくわけないだろ。いい加減にしろ。

さて、ミラ婆さんの家に着いたわけだが。まぁ、普通って感じの家だな。可もなく不可もなし、それ以上でもなけなばそれ以下でもない。そんなことはどうでもいい。ターゲットは2階にいるらしい。お邪魔します。姿は見えないとはいえ礼儀は大事だ。家の中に、ミラ婆さん以外がいないことを確認してからお目当ての部屋に行く。ミラ婆さん、ベットで寝ていた。ペンダントのスイッチを切る。そして、ミラ婆さんを起こし、自分が死神であること。1週間後に死ぬことを伝える。
「そうかい。教えてくれてありがとう。それなら遺書でも準備しておこうかねぇ。」
ミラ婆さんは悲しむでも怒るでもなくそう言った。そして、「ご苦労様。」とお茶を淹れてくれた。できればコーヒーがよかったがそんな文句は言わない。お茶を飲みながらミラ婆さんに遺書のアドバイスをする。ミラ婆さんの遺書が完成した後も話し相手になってあげる。ミラ婆さんと楽しく話をしていると家のドアが開く音がした。誰か帰ってきたようだ。ミラ婆さんに別れの挨拶を告げ、家を後にした。それから1週間が経ち、再びミラ婆さんの元を訪ねた。もちろん今回は魂を取るためだ。部屋に入るとミラ婆さんは起きていた。
「1つだけ聞きたいことがあるの。私はこの後、天国に行くのかい?それとも地獄かい?」
ミラ婆さんの質問に、「それは管轄外だからわからない。」と告げる。それなら最後に神に祈らせてくれというので祈らせてあげた。故人になる人の最後の願いだ。それくらいは聞いてあげよう。祈りを終えたミラ婆さんをベットに寝かせる。そして、胸に手を当て魂を引っ張り出す。あとは、このミラ婆さんの魂を死神協会に連れていくだけだ。
道中、特に何も起きないまま死神協会にたどり着いた。死神協会死後審判課の連中にミラ婆さんを引き渡し、帰路に着いた。

翌朝、ベランダで太陽の光を浴びながらコーヒーを飲む。ミラ婆さんが死ぬ前にくれたクッキーを食べながら次の依頼書に目を通す。
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