異世界で生産技術コンサルタント始めました!~魔術と現代技術で目指す勝ち組人生~

輝き続けるんだ定時まで

文字の大きさ
12 / 25
王立魔術学園編

12話 クラスマッチ・トランジスタ(後編)

しおりを挟む
 「この魔術師高等教導学園の誉れ高きクラス対抗戦決勝の時間が、遂にやってまいりましたあ! 実況は学園広報科のセブン・G・ドーナが勤めさせていただきます。解説には学園教導科長のファミマ・クリニーク様にお越しいただいております! おっと? どうやら選手入場の準備が整ったようです。それでは・・・選手の入場です!!! まずは第三学年Aクラスから、リーダーのエドモア・ハーネスっ! 続いて、・・・


 グラウンドに一夜でできた特設観客席の最前列から、セブン女史は大仰な魔術道具を通して、3学年Aクラスのメンバーの紹介を会場に届ける。

 選手達は、紹介された順にグラウンドをとり囲む観客席の前を練り歩く。選手の進行に合わせて観客が立ち上がり、観客席には大きな人の波が幾つもうねっていた。

 「・・・続きまして、最後の選手の入場です。より景気良い拍手でお迎えください! ケイ・トーマスオ!」

 ローム、イブ、エーコに続き、ケイが入場門をくぐりグラウンドに降り注ぐ陽の光を浴びる。すると会場がざわつき出した。

 「既に満身創痍じゃないか、、、
 「平民だから服持ってないのかしら?
 「一体何があったんだ彼に?!

 入場行進するケイの態度は毅然としていたが、制服のジャケット、中に着ているシャツの袖がなかった。観客席のケイの両親も「準決勝の時はそんなに負傷したようには見えなかったのに、、」と首をかしげている。だかそれでも憮然とした彼の堂に入った態度のおかげか、入場は止まることはなく進みグラウンド中央に選手がでそろった。

 「それでは両者、互いに礼!」

 「「お願いします!!!」」

 「それでは各陣に散開した後に笛がなったら開始とする。制限時間は30分、胸の判定紋が反応した者は直ぐに退場するように。では散開!」

 各チーム凸凹と障害物が立ち並ぶ自陣へと消えていく。グラウンドをいっぱいに使ったフィールドはまるで戦場の様に仕立て上げられている。ケイ達は自陣の最奥で円陣を組んでいる。

 「さあここが正念場だ、色々と不幸な事故はあったが今は忘れよう。相手は言わずもがなこの学園の最強、作戦は通じないと思う。だから個人の判断を最優先させたいと思う。きっとそれが最適解だと信じてる。」

 「そうね、想定してたより相手はかなり強そうだものね。足を止めずに数的優位を作ることを心がけましょ。ケイは反省してるなら、イブちゃんに攻撃が来ないよう必死で駆けずり回りなさい、、、ね?」

 「了解いたしましたっ、エーコ様!」

 「え、どうしたのケイ君?! 何かエーコちゃんにしたの?」

 「いえ、なんでもありません! あと危険ですので半径2メートル圏内には入らないで下さい!」

 「おい始まるぞ、気合いれろ!俺達の絆を信じよう、ふああああいとおおおお!」

 「「「おおおおおお!」」」

 円陣から上がる声に被さるように戦いの始まりの笛が鳴り響いた。



 「さあ始まりました、決勝戦。最初に動いたのは、、、、3年生チームだあ!自陣中央から境界線まで一気に詰め寄り、お得意の高密度魔術爆撃だあ!!」 

 エドモア率いる3年生チームは、試合開始とともに敵陣に迫ると、魔術攻撃を障害物目掛けて放ち始めた。炎と氷の槍を四人が一定のリズムで放つ。その連射速度は1秒間に4回と恐るべき速さで、炎と氷でできた壁が続々と敵陣の障害物を爆砕していく。成人男性の背丈程の岩は、ゴリゴリと削られ、ケイ達の陣地に空白地帯が徐々に生まれていく。


 「何なのよ、障害物ごと蹴散らそうなんて馬鹿にしてるわ! イブちゃんハンマー出して貰えない?」

 「え? いいけど、多分あそこまでは届かないよ?!」

 「大丈夫、風の柱で打ち上げてみせるから!」

 「そっか! タイミングは任せるね、ストーンハンマー」

 イブが近くの岩に触れると、トゲトゲが成長して3年生チームの方向へと弾け出た。更にハンマー射出の瞬間にエーコがそのすぐ後ろで杖を振り、突風を生み出すと空気が割れるような速度でハンマーが飛んでいく。
 迫撃砲の様に相手に飛んでいったハンマーはエドモア達の動きを止めた。


 「おおっとこれは、一年生チーム巨大なトゲ付きハンマーが宙を舞う!! これにはさすがの三年生チームも回避に徹するようだあ! だがこの瞬く間に敵陣の五分の一を空白地帯に変えてしまった三年生の攻撃力たるや圧倒的だあ!」

 エドモア達の攻撃で出来た空白地帯は一年生チーム自陣の約五分の一に達していた。攻撃をやめた三年生チームは早くも、その見通しの良くなった空白地帯を駆け出し始めた。

 エーコ達が遠距離戦を仕掛けてる間、ケイとロームは前線近くまで進み、岩の影に潜んでいた。

 「敵は遠距離殲滅戦は辞めたらしい、全員突っ込んでくるぞ! どうするケイ?」

 「僕が三人引きつける。合図したら左側の二人に全力で攻撃を叩き込んでくれ。多分右側から一人抜けてくから、そしたらイブ達の所まで下がって早めに片付けて戻ってくれ。」

 「了解だ、ただ無茶はするなよ! すぐ戻ってくるからな!」
 
 「ああ任せろよ。3、2、1 セイっ!」

 横並びで迫りくる四人に向けて、ケイとロームは限界速度で攻撃を連射した。ロームは上位魔術である極太の炎柱"ファイアランス"をミサイルの様に9本連続で飛ばす。短杖が熱に耐えうる限界まで連射されたその攻撃は、巨大な爆炎を空白地帯に巻き起こした。ケイはエアコントロールを連発する。1発の威力は低いが、精密にコントロールされた連弾は、相手の呼吸を乱して足を止める。だが三年生も的確に攻撃をさばき、攻撃の密度が低かった右端から一人が抜けた。

 「イブ、エーコ、敵が一人そっち行くからそれまで攻撃は緩めるなよ! ロームは全速力で三対一を作ってくれ、こっちは持って3分だ」

 「「「わかってる(よ)」」」

 ロームは逆サイドを抜けた敵を一人全速力で追いかけ始める。相手も信頼があるのか、それともケイでは足止めにならないと判断したのか一人を先行させた。ケイはロームを見送ると、岩陰から立ち上がり魔術抄本と杖を両手に三年生3人と対峙する。


 「お相手よろしくお願い致します」

 恭しく行われたケイの決闘礼に、リーダーのエドモアが一歩前に出た。

 「時間稼ぎのつもりか知らないが、そんなに甘くはないぞ? 多少遅れたところでヌジャが一年生三人に負けることはないからな。ただ優秀な一年がいると聞いてな、せっかくだから手合わせしておきたいと思っていたんだ。ハンデ付きでどうだ?」

 「先輩方には小細工は通じないと思っておりますが、その上で僕は三人を信じております。先輩方にはここに後3分はいてもらいます。ハンデはくれるならほしいです」
 
 「ふ、フフっ、ははは! 不遜だなあ、お前! でも嫌いじゃないな、いい不遜な気がする! じゃあ、やるかっ!!」

 そういうと先輩達は左手に持った本をすっと突き出し、右手で指揮でもするように短杖を振り始めた。美しく伸びた背筋に、熱く優雅な手元の杖さばきは、まるでオーケストラの指揮者のようであった。そして三方向から押し寄せる怒涛の攻撃に、ケイは同じく待機させていた魔術を発動する。

 「"磁界生成"」

 ケイを飲み込まんと魔術の津波が押し寄せてきた瞬間、無数の黒い棒が壁となってケイの目の前に現れる。そして魔術同士が衝突した瞬間、会場を揺るがす程の爆発が起こり、土煙が辺りの視界を遮った。

 
 「おっと、なんという攻撃だあ!いくら非致死性加工されているとは言え、これじゃ無事か怪しいぞお!! 生きてるかケイくーん!」

 実況の声に、会場中が息を飲んでグラウンド中央を見つめる。


 「磁界生成」

 土煙の中からケイの声とともに、30本を超える黒い棒が飛び出し、三年生を急襲する。まだ視界が確保できないなか、飛んでくる黒棒を最小限で躱すエドモア達は笑っていた。

 「おい、凄いじゃないか!! こんな魔術見たことないぞ! これは何なんだケイ?」

 エドモアが土煙の中心に向かって叫ぶと、ゴホゴホとした声がかえってきた。

 「鉄は国家なりですよ、先輩。ゴホッ」

 「おお、あれは鉄かあ。 これはやばいかもしれんな。多少手荒でもいいか?」 

 「ゴホっ、お手柔らかに頼みますよ、ゲホっ」
 
 未だ互いの姿が見えない状態だというのに、エドモア達は杖を発動待機状態にして走り始めた。爆心地を取り囲む様に散開した三年生チームは、一矢乱れぬタイミングで杖を振るった。

 「「「アースウォール」」」

 墓石のような重厚感あふれる石がケイを押しつぶさんと勢い良く迫る。そしてそれらはケイがいるであろう爆心地を囲むように折重なりあい、堅牢な牢獄を作り上げた。さらにいつの間にか石材の上に登っている先輩たちが、その淵から石牢の中に無慈悲にも杖を振るった。さきほどよりも優雅で苛烈で、どこか楽しげなタクトの動きに合わせ、炎と雷と氷が一定のリズムで穴の底に注がれる。

 「あああっと、さきほどより苛烈かつ美しいまでに恐ろしい攻撃がケイ君を襲うううう! 大丈夫かケイ君、生きているかケイ君、早く姿を見せてくれ!」

 先輩たちが魔術で作り上げた巨大な石牢獄の外側に、小さな穴が一つ空いていた。その穴はまるで何か棒状のものを型抜きしたかのように、ぽっかりと空いている。そう人一人がなんとか通れるほどの穴の中にはボロボロになったケイがいた。そして呼吸は荒く、何か焦ったような表情をしてマイクに話しかけている。

 「やばい、やばい、やばい、あの魔術は非致死性加工されていない。さっきの炎がかすっただけで皮膚は焦げたし、雷槍のせいで左手が痺れて動かねえ。さっきからノイズがひどくてイブたちと連絡取れねえし、くそどうしたらいいんだ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月28日より、第五章の連載を再開いたします。毎週金・土・日の20時に更新予定です。 また、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...