異世界で生産技術コンサルタント始めました!~魔術と現代技術で目指す勝ち組人生~

輝き続けるんだ定時まで

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王立魔術学園編

22話 クロックロックアップ(前編)

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 ケイが黒狼と戦闘を行なっている間、ザ・フラワー頂上では砂漠鳥ズーとデザートタイガーの亜人ヨーが死闘を繰り広げていた。空中という圧倒的に有利な立ち位置を利用し、怪鳥はヨーへと濃密な魔力を込めたカマイタチを雨の様に降り注ぐ。蕾も巻き込まんとする攻撃にヨーは体を張って、ただひたすら耐えた。風が身体をなぞるたびにピシッという音と共に血飛沫が飛ぶ。辺りは真っ赤に染まっていた。

 上空では超高速の弾丸が怪鳥へと飛来するが、怪鳥の背にいる黒ずくめの魔術師が唱えるアクアウォールとサンドウォールの二重防壁によりその軌道は逸らされていた。レミはそれでも表情を変えず淡々と撃ち込んでいく。


 カマイタチの刃に無惨に切り刻まれ続けるヨーは耐えた、反撃のチャンスが来ることを信じて。そしてヨーの腰辺りに結びつけられたトランシーバーから声が聞こえる。

 「今から壁を抜いて怪鳥を怯ませます。ヨー様がその隙に魔術師を殺してください」

 淡々としたレミの声にヨーは苦笑しながら、暴風の中牙を剥いて小さく笑った。

 「時間くれっていったけどよ、かかり過ぎなんじゃないですかねぇ。死にそうなんですが」

 「英雄なんだから文句言わないでください。いきます」
 レミは深く息を吐くと、続けざまにトリガーを3回引き絞った。レールガンから打ち出された弾丸は、一筋の光となって怪鳥へと飛んでいく。弾丸は水と砂の壁に阻まれ、パン、パンと破裂してしまうが極小さな空隙を一瞬作りだした。その一瞬の空隙を一発の弾丸が抜けて、怪鳥の巨大な翼を撃ち抜く。そして想定外の凶弾に驚いた怪鳥はヨーへの攻撃を一瞬やめてしまった。

 喉元とこめかみに青筋を浮べて口をギゅッと結んでいたヨーは、その瞬間を逃さず口をカッと開いた。

 「ガアアアアアアああああああ」
 
 ヨーの絶叫とともに喉元に凝縮されていた高密度の魔力は、極大の光の柱となって怪鳥を飲み込んだ。一瞬して光の柱はなくなるが、その後にはボロボロになった怪鳥とぐったりした様子で背にしがみつく魔術師の姿があった。魔術の壁はいつの間にかサラサラと霧散している。フラフラと飛ぶ怪鳥を容赦ない三本の赤い光の線が貫き、怪鳥は地面へと落ちて行った。

 ザ・フラワーの頂上では、再びヨーの咆哮が街の夜に轟き、巨体なモンスターの落下と合せて住民を騒がせた。

 それから程なくしてケイと黒狼の戦いにも決着が着く。レミはその一部始終を見守っていた。

 「あの黒狼は速すぎる、狙えない」

 そうつぶやくと、悔しそうに檻に手をかけて決着の時がくるのを静かに待った。そして黒狼がトドメに魔力を爆発させた時、威力を受け切れず崖下へと吹き飛ばされたケイを懸命に追った。崖から命綱なしで飛び降り、空中で抱き抱えると、崖に指をめり込ませ二人の命を繋ぎ止めた。









~~~~


 ケイとレミ、そして血だらけのヨーが救出された翌日の昼、アンダールート最奥にある砂漠のビーチに全員の姿があった。
 ヨーとレミ以外は水着と薄手のシャツを着て、波打ち際で水に浸かっていた。ただケイ達の集団は圧倒的に周りから注目を集めていた。

 ケイたちがいる波打ち際から海にかけて、石柱が大きく円を描くように大きな海溜まりを作り、あろうことか湯気まで立てていた。
 波打ち際に寝そべって肩まで海に浸かるケイは目を閉じながら、息を吐いた。

 「はあー、文字通り生き返るわぁー」

  隣に寝転がるロームとイブが眉をしかめる。

 「おいケイ、お前朝方一回心肺停止してるんだから笑えないぞ」

 「ローム君の言うとおりだよ、まったく! こっちがどれだけ心配したことか!」

 「アハハハ、ケイ死ニカケタノニ怒ラレテラ。ア、心肺停止デ心配サレルッテノハドウ?」

 「いやどうと言われましてもね、お見事としか……」

 水深が深いところで一人プカプカういているギギギは満足そうにチャプチャプと波を立てた。

 「で、ケイ海に着くなりいきなりこんなもの作って、どういうつもりなんだ? まあ気持ちいいから、今は文句はないんだけどな」

 「よくぞ聞いてくれたローム! 死の淵を彷徨ったときにな“死ぬ前に一度温泉に入りてえ”と思ったんだよ。という訳でこうして塩湯を作ってみたわけなんですが、これが思ったより効くんです。傷の治りもいいみたいだし、なんか樹のいい匂いもしてリラックスできるな」

 「イブさんまた心配性を発動して夜通しつきっきりで看病してたというのにお前は。ほら言ったそばからイブさん寝てるじゃないか。ところで、この湯を沸かせている魔術道具についてそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか? レミさんがケイがそれをかざして守ってくれてたっていったけど、どういうことなんだ?」

 ロームの言葉にケイはふと隣でうたた寝しているイブを見た。温泉につかる時にエーコが湯浴み着を着ろとうるさかったので全員シャツを着用したのだが、水につかると見事に透けて体に張り付き逆にセクシー度を上げていた。ケイは幼馴染の発展途上の肢体をチラ見した。少し大きめの白シャツが白い水着を隠してしまいシャツ一枚で水に浮かんでいるようにも見えて、ケイの動悸は荒くなった。

 「また死にたいか、貴様」

 足や胸や顔をチラ見していた視線を少しだけあげると、声の主がデーモンのような顔をしてケイを見ていた。

 「……滅相もありません。もし宜しければ、この塩湯を温めております魔術道具について説明をさせて頂きたいと思います……」

 「エーコもケイがむっつりなのは知ってるじゃないか。チキンなんだから手は出さないだろうし許してやれよ、さあそれより説明だっ!」

 エーコはおよそ友達に向けてはいけない顔をケイから逸らし、視線を天に戻した。ロームはケイがさっき投げ入れた金属の円盤について興味津々といった様子だった。

 「それでは説明させて頂きます、今回ご紹介しますのは“クロック回路付き魔術盤”です。皆様の魔術盤についてはご存知と思います。あらかじめ表面の紋章に魔力を流しておき、触媒付きのピンを押し込むことで魔術を発動する画期的商品です。文字が読めなくても、紋章が読めなくても魔力を能動的に流してもらっていれば、誰でも魔術を発動できる、そんな素晴らしい技術です。ではなぜ普及しないのか、それは製造コストと使い勝手の悪さでしょう。」

 「ああ確かに家にあったけど、あんまり長い時間おいておくと魔力が消えるんだよな。あと、たまに暴発して危なかったし」

 「うちにあった奴は肝心なところで発動しなくて、それ以来アクエリウス家とはつながりがなくなって、その内店も見なくなったわね」

 「え、粗悪品出したら生きてけなくなるの?! …あ、ウチは大丈夫ですよ多分、まだ売りませんシ。で話を戻しますと、そんな問題を解決しつつ定められた周期で自動で魔術を発動するのが “クロック回路付き魔術盤”でございます。」
 


 水晶には不思議な特性がある。電気を加えると一定の周波数で振動し、水晶に圧力を加えると電気を発生させる。ケイの前世の世界では、この水晶を用いた水晶発振機がいたるところで使用されていた、水晶無しでは生きていけないというほどに。わかりやすいところで時計を始め、コンピューター、家電、通信アンテナ、潜水艦から航空機、人工衛生まで、その制御を行うのに水晶デバイスが埋め込まれていた。正確な時間、正確な電子製品の制御を小さな小さな水晶が担っていたのだ。
 ケイは幼少の頃、この世界に水晶振動子がないと知るとすぐに開発に着手した。水晶を細かく精密にカットし、電極を導電性樹脂で取り付けて、……そこでやめてしまった。なぜなら安定した特性をだすためには水晶を真空で包まなければならなかったからだ。だがそれもトランジスタ製作の際に習得した真空を作り出す魔術で一気にブレイクスルーが発生し、親指ほどの水晶発振機がトランジスタに続き、この世界に爆誕していた。


 

 ケイはクロック機能と水晶発振器について説明をするも、ロームとエーコは頭の上にはてなを浮かべた。そんな様子に少し頭をかかえると、ケイは立ち上がりザバンと塩湯の海の中に潜っていく。水深の深いところに消えたケイは、少しすると水に濡れた髪をかき上げながら短い棒に取り付けられた銀色の魔術盤を持ってロームの足元辺りへと戻って来た。表面の金属には精密な魔術紋章が刻まれ、側面にはダイアルのようなものが無数に取り付けてあり、今も30秒に一回炎の玉を発現させている。ケイはそれをフライパンの様に持って、指折で5カウントし終えると炎を吹き上がらせた。

 「このように時間を自分で正確に刻み、自動で触媒を動かして魔術を発現させるのです。内部に貯められる魔力の量は従来比の6倍、減衰期間も従来比の3倍、一発の消費魔力は触媒を電子制御したことで従来比20分の1を実現しました。下級魔術であれば一回のチャージで最大120発自動で撃ち出しつづけるというのもこの様に出来ます!」

 「おおおおおお! それは凄いぜひ我が家にも一台! それにしても、また隠れて作ってたんだな。前世は過労で死んだっぽいとか言ってなかったか、ちゃんと寝てんのか?」

 「たしかにこれは革新的だわ、値段によっては首都の魔術盤屋が軒並み廃業になるわね。あと不本意だけど、食事と睡眠はちゃんとるのよ。イブちゃんを悲しませることになるんだからね」

 「いや、それについては面目ないとしか。思いつくとどうしても作りたくなっちゃうんだよね。」

 頭を掻きながら魔術盤を円盤投げの様にもとの所に投げ沈めると、ケイは先ほどから足元で水死体の真似をしてうつ伏せで浮いているギギギを沖の方に押し流し、ロームと寝ているイブの間に戻った。

 背後の砂浜で座っていた給仕長のレミから声がかかった。

 「あのケイ様、昨晩の戦いで黒狼の覇声から守ってくださった時にも先ほどの魔術盤を掲げてらっしゃいましたが、それはなぜですか? 特に火の玉などは出ていなかったのですが、なにか意味がお有りなのですよね?」

 ケイは塩湯に再び浸かりながら、伸びきった顔で答えた。
 
 「ああ、あれは磁界生成を超高速で目の前の黒鉄棒に向けて撃ち込んでたんだよ。人間だと限界があるけれど、磁界生成なんかは魔術盤を使えば1秒間に10万回以上発動するなんて余裕さ。本来であれば超振動でどんな攻撃も防げる予定だったんだけど、あのバカみたいな魔力量と衝撃波の波の振動数に負けたんだろうと思う。ほんとにレミさんには頭があがりません、ありがとうございます、ありがとうございます、あり……

 いつの間にか体をその場で反転させ土下座していたケイは、レミに改めてお礼をし始めた。


 
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