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13.穴
しおりを挟む殴られる。
そう思った瞬間、遠くの方から、ばんっとドアが開く音が聞こえた。
「サクラっ!!」
お兄さんの声だ。
僕もユウくんも、一緒に声の方をみた。
大きく開いたお兄さんのお部屋のドア。
タオルでおちんちんのところだけを隠して、裸のお兄さんが立っていた。
ぽた、ぽた、ぽた。
お兄さんの髪から水の粒が落ちている。
お風呂に入ってたのかな?
お兄さんは全部びしょびしょだった。
「何してんだてめぇ?」
お兄さんがすごく怖い声で言って、タオルを腰に巻き付けながら僕のほうに歩いてくる。
ユウ君も「あ? てめぇこそなんだ?」と低い声で言って立ち上がった。
嘘みたいだ。
お兄さんに、また会えた。
ユウ君が僕を離してくれたから、僕も急いで立ち上がって、ユウ君より先にお兄さんの方に走った。
……心臓が、潰れちゃいそうに苦しかった。
僕はお兄さんの腰のところに抱き着いた。タオルが落ちそうになって、お兄さんはタオルを押さえて、反対の手で僕の頭を押して、僕を背中のほうに隠した。
それで立ち止まってユウ君を待った。
ユウ君が来た。
お兄さんに顔をすごく近づけて、睨みながらお兄さんに言った。
「てめぇ人んちのガキに何の用だ? 関係ねーヤツはすっこんでろやコラ」
お兄さんは何も言わなかった。
ただ僕を背中のほうに隠して、ユウくんが怖い顔で顔を近づけていろんな角度から睨んでくるのに、黙ってユウくんを睨み返していた。
お兄さんの髪からぽたぽた水が落ちてくる。お兄さんのお尻のところを隠しているタオルも湿っている。
ユウ君はしばらくお兄さんと睨み合っていたけど、急に「あー」と言ってから笑った。
「お前誰かと思えば前に声かけてきた変態だろ? コイツの処女買いたいとかなんとか言ってた。何? やっぱ知らないとか言ってたの嘘だったんじゃねえか」
最後のほうは僕を怒っているみたいだった。
僕が怖くてお兄さんにしがみついていたら、お兄さんは大丈夫って言うみたいに、僕の頭をぽんっと撫でてくれた。
「あんな動画ちまちま売ったってリスクの割に金になんねえだろ。今に捕まるぞお前」
「はぁ? 動画? 何言ってんだテメェ」
「俺がコイツごと買ってやるっつってんだよ。二千万でどうだ?」
二千万、と繰り返して、ユウくんがぶはっとふき出すみたいに笑って手を叩いた。
「マジかよウケる。こんなボロに住んでるヤツが二千万? しかもコイツに? 金の計算も出来ねーバカかよ。一回小学校から出直してこいや」
「信じらんねえなら見せてやるよ、通帳。その代わり見せたら二度とコイツに手ぇ出すなよ」
ユウくんが笑うのをやめた。怪しんでいるみたいな目でお兄さんを睨む。
お兄さんは僕の肩を掴んで、僕を押しながらお部屋のほうに歩き出した。ユウくんも後ろからついてくる。
お兄さんがお部屋のドアを開ける。僕の背中を押して――僕は先に玄関に入って靴を脱いだ。
僕が玄関から廊下に行くと、お兄さんも玄関に入ってきて、ユウくんが素早くドアを掴んで開けたままにした。
お兄さんがサンダルを脱いで廊下にくる。ユウくんも玄関に入ってきて、ドアを閉めた。
「お前さー嘘だったらマジ――」
ユウくんが言いかけている途中だった。
お兄さんが腰に巻いていたタオルがボトっと床に落ちた。
僕はそれを目で追っかけていた。だからそのとき何が起きたのかはわからなった。
ただ、ドゴンってすごい音がお兄さんとユウくんの方からした。
びくってして、音がした方を見た。
タオルもなくなって全部裸になったお兄さん。
玄関の壁に顔をぴったりくっつけているユウくん。
ユウくんの頭はお兄さんが大きな手でがっしり掴んでいて、お兄さんがユウくんの頭を後ろの方に引っ張った。
そうしたらユウくんの顔は壁から離れて――真っ赤な血。
へこんだ白い壁についた真っ赤な血。
ユウくんの鼻からドバーッてふき出す血。
ユウくんが血まみれの口を開けて、そうしたら、ころころって何かが転がり落ちた。
目で追っかけたら、白い小さな石みたいなのがころころって靴のところに落ちていた。それが歯だってわかったときにはもう、お兄さんは繰り返し、ユウくんの顔を壁に叩きつけていた。
「ばめっ!! ばあっ、あっ……んごっ!!」
ユウくんが手足をバタバタして暴れている。でもお兄さんはユウくんに叩かれてもひっかかれても表情を変えないで、真顔でユウくんを壁に叩きつけていた。
鼻が変な方向に曲がって、ぐちゃぐちゃになっていくユウくんの顔と、お兄さんの裸の背中。
僕はただぼーっと見上げていた。
ぐちゃ、と、ドン、めきっ、みたいな変な音ばっかりする。それと何を言ってるかわからない声。
そこにユウくんの泣き声みたいなのも混ざってきて、そうしたら、急にお兄さんがユウくんを壁に叩きつける手を止めた。
ぐったりして暴れることもしなくなったユウくんの頭を掴んで、お兄さんは僕のほうを振り返る。
お兄さんが僕を見る目が、なんだかすごく悲しそうに見えた。
「サクラ、足の裏見せてみろ」
僕は嫌だったから首を横に振った。
「いいから。分かってるから、全部」
「……汚いよ」
「いいよ」
「……病気みたいって思っちゃうよ」
「誰かにそんなこと言われたのか? このクソか?」
お兄さんがユウくんの顔を僕のほうに向ける。
まるでユウくんじゃないみたいなパンパンで真っ赤なお化けみたいな顔の中で、白目まで赤くなった変な目が、ぎょろっと動いて助けを求めるみたいに僕を見てきた。
「……学校のみんな」
「そーいうの言われていじめられたから学校行ってねえのか?」
僕は頷かなくて、でも首を横に振るのも嘘になっちゃうからできなくて、お兄さんの声が聞こえなかったふりをした。だって、お兄さんにそう思われちゃうのが、なんだかすごく恥ずかしくて嫌なことに感じたから。
「大丈夫だから」
お兄さんは僕に言った。
「全部見せてくれよ。俺にも」
それでも聞こえないふりをしている僕に、お兄さんは「頼む」と言った。その声が僕の知らないお兄さんの声みたいで、僕は怖くなった。
お兄さんを見て、お兄さんの目が悲しそうで、どうしたらいいかわからなくて、僕はただお兄さんを見ていた。
お兄さんも僕を見ていたけど、一回、ぎゅっと眉に皺を寄せる感じで目を閉じて、開いて、そうしたらもう悲しそうな目をしていなくて、ユウくんを引きずって廊下のほうに来た。
「どいてろ」
お兄さんに言われて、僕は廊下の端っこで体を小さくした。
お兄さんはユウくんを引きずって僕の前を通っていく。洗面所のドアを開けて、お風呂の中に入った。僕も洗面所までついて行って、お風呂の中を覗き込んだ。
まだ水が残っているお風呂の床に、お兄さんはユウくんをどさっと投げた。ユウくんは何か唸って体をもぞもぞさせたけど、お兄さんが上からユウくんを踏んづけて、それで、ユウくんのズボンのポッケをあさって煙草とライターを取り出した。
お兄さんが煙草の箱から煙草を一本取る。
僕はお兄さんが煙草を吸っているところを見たことがなかったから、びっくりして、「たばこ吸うの?」と聞いた。
「吸わねえよ。こんなマズいもん」
そう言ったけど、お兄さんは煙草を一本出して咥えた。それで吸いながらライターの火を付けた。
煙草の先から煙が出る。
そうしたらお兄さんは煙草から口を離して、ケホケホせきをした。
「まっず」
そう言いながら、おえーっと吐く真似をする。お兄さんは本当に煙草が嫌いみたいで、しばらくケホケホしていた。
「サクラ。持ってろ」
お兄さんに言われて、僕はお兄さんが火をつけた煙草を持った。手が空いたお兄さんは、ユウくんの服を脱がし始めた。
煙草の嫌な臭いがする。大好きなお兄さんのお部屋を、嫌いな煙草の臭いがいっぱいにしていく。
お兄さんはユウくんの服を全部脱がせた。パンツまで脱がせていた。全部裸になったユウくんはダンゴムシみたいに小さく丸まって震えていて、その横に立っていた全部裸のお兄さんは、僕から火のついた煙草を取り返した。
「さて、と」
お兄さんはユウくんの横にゆっくりしゃがんだ。僕の家よりもずっと狭いお兄さんのお部屋のお風呂は、お兄さんとユウくんの二人でぎゅーぎゅーになっていた。
「食べるの?」
僕が聞くと、お兄さんは困ったように笑った。
「食わねえよこんなゴミ。俺はな」
お兄さんはちょっとだけ笑った顔のまま、たばこの先をユウくんの腰に押し付けた。
ぎゃあっ、とユウくんが変な叫び声をあげた。
「情けねぇなぁ。あんなちっちぇガキだって耐えてきたんだぞ」
「ごめ……さい……。も、しない、から……ゆるして……」
ユウくんは体だけじゃなくて声も震えていた。カタカタカタカタ、おんなじ動きをくりかえすおもちゃみたいだった。
お兄さんはふんっと馬鹿にしたみたいに笑って、濡れた長い髪を顔に貼りつかせたまま、僕のほうに顔を向けた。
「見てくか?」
怖かったから、僕はブンブンと首を横に振った。お兄さんは「じゃああっちで待ってろ。耳塞いで歌でも歌ってりゃすぐだ」と言った。
僕はお風呂場から出ていつものお部屋に向かった。歩いている間にも、お風呂のほうからはユウくんの変な叫び声みたいなのが聞こえてきていた。
お兄さんのベッドにあがって、僕は言われた通り、耳を塞いで歌をうたった。アニメの歌を三個歌って、それからカニエビダンスの歌をうたった。いなびかりピカピカの歌も歌っていたら、お兄さんの喋り声が近づいてくるのが、耳を塞いでいても分かった。
僕は歌うのをやめて耳から手を離した。
「っせーな。ちょっと遊んでやったら勝手にくたばったんだからしゃーねーだろ。新鮮な肉なんだし文句言ってねーでさっさと取りにこいよ――あ? だから若い男だっつってんだろ。それ以外知らねーよ」
お兄さんは電話中だった。いつの間にか黒いパンツだけ履いていたけど、相変わらずそれ以外服は着ていなかった。ただ首にタオルだけかけてあった。
お兄さんは僕と目が合うと、「とにかく人よこせ」と電話に向かって怒鳴るように言って、それからすぐに電話をきった。
「悪い。待たせたな」
「ユウくんは?」
「帰った」
お兄さんはタオルで髪を拭きながら答えて、僕から離れてベッドに座った。
どすっとベッドが揺れた。
いつもお兄さんはベッドにくると僕の服を脱がせたり体を触るけど、今日は触らなかった。何もしないで、困ったような顔で僕を見た。
「……久しぶりだな」
「うん」
「ずっと何してた? なんか細くなってねえか? お前メシは?」
急にいっぱい聞かれたから、何から答えたらいいか分からなくて僕は首をかしげた。
「……わるい」
「んーん」
首を横に振る僕に、お兄さんは聞いてきた。
「何があった?」
「なに?」
「あのクソ――ユウくんに追いかけられてたんだろ、お前」
「……二人でお出かけしようって。ユウくんが」
「嫌だったのか?」
僕は「うん」とも「ううん」とも答えなかった。首も振らなかった。お兄さんはそれ以上聞いては来なくて、ドライヤーで髪を乾かし始めた。
お兄さんの長い髪が温かい風でぶわーって流れる。髪の隙間から見えるお兄さんの顔は、いつもよりずっと怖かった。それと、お髭が今までで一番伸びていた。
僕はお兄さんの横顔を見ながら考えた。
お兄さんは僕のピンポンに気づいて、僕のことを助けてくれた。お部屋にも入れてくれた。あんなに怒っていたけど、もう僕のことを許してくれたのかな?
考えてもわからなかった。
お兄さんのことは、いつだって分からない。
僕はお兄さんの横顔を見ながら、ちょっとだけお尻をずらしてお兄さんのほうに近づいた。
お兄さんは僕が近づいたのに気づかないみたいにドライヤーを続けている。
もう少しだけ近づいて……またもう少し。
お兄さんの右脚と僕の左脚がぴったりくっついた。だけどお兄さんはダメとかあっち行けとか言わないで頭を乾かしていた。
ブワーって大きなドライヤーの音だけがする。僕はずっと、お兄さんと脚をくっつけていた。
しばらくすると、お兄さんはドライヤーを置いて髪を軽く手でとかした。まだ少し濡れているように見えたけど、手首にあったゴムで髪をぎゅーっとしばってから、僕に横顔を見せたままで言った。
「悪い。近いうちにまた引っ越すことになると思う」
「どこに行くの?」
「まだ分かんねえけど、ここからはそれなりに離れると思う」
「僕が嫌いだから?」
「んなわけねえだろ!!」
お兄さんのお顔がようやく僕の方を見た。怒っているからすごく怖い顔をしているけど、僕は怖いよりも悲しい気持ちになった。
「お前がどうとかそういうんじゃなくて、俺にもいろいろ事情があんだよ。だからもうここにはいてやれねえから――」
最後まで、お兄さんの言葉は聞かなかった。
僕はお兄さんの右手を両手でぎゅっと握った。
「会えない?」
聞くとき、悲しくて泣きそうになった。
お兄さんが困ったような顔をする。
「……いや、それは……」
「ずっといて」
僕はお兄さんの手を引っ張って、僕の太ももの間にぎゅっと挟んだ。それで、お兄さんの腕にほっぺをくっつけてすりすりした。……そうすれば、お兄さんがどうなるか知ってるから。
だけど今日は、そうじゃなかった。
お兄さんは一瞬だけいつも僕におちんちんを入れるときみたいな顔になったけど、すぐにぐーっと怖い顔を作って、僕の脚の間からそっと手を引っ張って抜いた。
「そういうのももういいんだよ」
どういうの?
わかんない。
「もう、お前を傷つけるような酷ぇこと言ったり、物みたいに扱ったりとかしたくねえんだよ。……つーかちゃんと――正しくお前を大事にしたいって……俺なりに。……だから……もう誰にもお前のこと傷つけさせたりしねえし、二度と嫌なこと我慢させたりとかしねえし、これからお前がやりてえことなんだってやらせてやるし、欲しいもん全部買ってやるし……だからさ……俺」
いつだって強くてカッコよくて自信いっぱいみたいなお兄さんの声が、だんだん小さくなっていく。ちょっとだけど、震えているみたいに聞こえる。
お兄さんが泣いちゃわないように、僕は、お兄さんの手をまたぎゅっとした。今度は脚の間にいれるんじゃなくて、両手で、ぎゅっと。
そうしたらお兄さんは眉毛を下げて僕を見て、逃げるみたいに下を向いて、でももう一度僕の方を見て……何もなかったみたいに、いつもみたいに笑った。
「そーいやさ、この前お前の母ちゃんに会ったわ」
お母さん? と僕は首をかしげた。お兄さんは頷いて言った。
「なんか金に困ってるみてえだな。ユウくんと二人で金払いのいい出稼ぎの仕事も見つけたみてえなんだけど、お前を連れて行くわけにはいかなくて困ってるって言ってたんだよ。少しの間お前の面倒をみてくれる人間を探してるってさ。そんで俺が引き受けるって言ったらすげえ喜んでもうすぐにでも行きたいみたいなこと言ってたけど、お前はどう思う? しばらくの間俺と一緒じゃダメか?」
お兄さんに聞かれて、僕はちょっと困ってしまった。だってお母さんはそんな話全然してなかったし、僕も何も知らなかったから。
だけどすぐに、あれ? と不思議になった。
「赤ちゃんは?」
「赤ちゃん? 猫でも拾ったのか?」
お兄さんも何も知らないみたいに不思議そうだった。だから僕はすぐに「んーん」と首を横に振って、それから言った。
「お兄さんと引っ越す」
「マジか!?」
お兄さんは飛び上がっちゃいそうな勢いだった。僕は「うん」と頷いた。
「お前マジでいいのか!? しばらく俺と二人きりなんだぞ、マジで」
「うん。今日からいっしょ?」
「あ……ああ、そうだな。今日から……。嫌か?」
「ううん。今日からお兄さんと二人でいる」
「マジか……。うわ、マジかよ……」
お兄さんの顔がちょっと赤い。
もう、お兄さんの顔には悲しいのも不安そうなのもなくなっていた。
お兄さんは何度も「マジか」を繰り返して、しばらくしたら、急に僕を引っ張って膝にのせて、ぎゅーっと強くぎゅーしてくれた。
「絶対ぇ大事にするからな。俺が一生守ってやるから」
「うん」
お兄さんとくっついてる。お兄さんはパンツしか履いてないけど、お部屋はクーラーで涼しいけど、お兄さんの体はすっごく熱かった。
お兄さんはいつまでもずっと僕をぎゅっとし続けていた。
くっついた体の、僕のお尻のところがだんだん熱くなってくる。ぎゅーって硬いのがくっついてる。だけどやっぱりいつまでもお兄さんは僕をぎゅっとしたまま動かないから、僕は聞いた。
「おちんちん硬いのなってるよ?」
お兄さんはびくってした。だけど何も言わないで、ちょっとだけもぞもぞして僕の肩に顔を隠して、僕からおちんちんを離そうとしてるみたいだった。
「お尻に入れるのしないの?」
「……言ったろ。お前を大事にするって」
「大事だとお尻におちんちん入れないの?」
「……本当はよくないことなんだよ。お前みたいなガキにそーゆーことすんの。ただでさえお前、いろいろ酷ぇことされてきたんだし……。これ以上お前を傷つけたくねえんだよ」
「お兄さんが僕におちんちん入れるのは酷くないでしょ?」
僕が言うと、お兄さんは僕の肩に顔をギューッとくっつけたまま、僕の腰を強く掴んた。
ちょっと痛かったけど、平気。
お兄さんはちっちゃな声で、「酷ぇんだよ」と言った。
「でも僕、お尻の中になんか入れるの、お兄さんだけいいよ。お兄さんだと酷くないよ」
「いや、片付け呼んだし……片付けっつーか、引っ越す前にちょっと掃除っつーか、なんつーか……」
「お片付けがくるとだめなの?」
「見られんだろ。俺にヤられてるとこ」
「僕平気だよ。だって僕お兄さんの穴でしょ? 穴って、おちんちん入れる穴でしょ?」
「それは――!!」
お兄さんが僕の肩からガバッて顔を上げた。僕はお兄さんが喋るのを待たないで、勝手にしゃべった。
「僕恥ずかしくないよ。他の人に見られるのも、お兄さんの穴って思われるのも全部平気だよ。お兄さんの穴なら、お兄さんだけおちんちん入れてくれるでしょ? 穴とかおなほなら、お兄さんと一緒にいてもいいでしょ? お兄さんだったら、僕、汚くないし気持ち悪くないでしょ? お兄さんだったら恥ずかしくないでしょ?」
お兄さんは、喋ろうとするのをやめて僕を見ていた。
僕の腰を掴んでいた手の力が、だんだん弱くなっていく。
お兄さんの手が僕の腰から離れたら、僕はズボンを脱いでパンツも脱いだ。お兄さんは止めなくて、僕のことをずっと見ていた。
上の服も脱いだ。シャツも脱いで……僕が着ているのは靴下だけになった。
靴下も脱いだ。お兄さんが深く息を吸い込む音が聞こえた。
これまでで一番、僕は全部裸になった。それで、お兄さんに見られているのを感じながら、ベッドに背中をつけて寝転がった。
おちんちんを入れるための穴がお兄さんにみえるように、僕は脚を持ち上げて広げた。
「いっぱい穴にしてね」
お願いする。
僕を見つめるお兄さんの目に、もう悲しそうなのも不安そうなのもない。
お兄さんはいつものお兄さんに戻って、僕を見つめていた。
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