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1章

14. ***

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 三時になると酒場からは喧騒が消え、四時にはもう悠人の他に客はいなくなった。店員たちは悠人が見えていないかのように店内の掃除や買い出しに出かけ、五時過ぎ。入口のドアがギイっと大きな音を立てながら開き、薄っすらとオレンジ色に染まり始めた光と共に大剣を背負ったガスパルが店に入ってきた。

「いらっしゃいませ~」

 店の奥に引っ込んでいた店員たちが慌てた様子で飛び出してくる。しかしそんな店員には目もくれず、ガスパルは重い足音を立てながら真っすぐ悠人のほうにやってきた。

「やはりここにいたか」
「……まあ、一応」
「何をしていた?」

 悠人が隠すように抱えた紙の束とテーブルの端に置かれた泡の消えたビールとの間をガスパルの視線が行き来する。「いろいろ」と答えながら、悠人は紙の束をまとめて二つ折りにして、体の横に置いた。

「……早かったんだな」
「お前が退屈しているかもしれないから早めに切り上げた」
「…………」
「土産をいろいろ買ってきた。一度部屋に戻るぞ」






 ガスパルの土産は木でできたパズルと、文字を書くための練習帳のようなものだった。日中悠人が退屈しないためにということらしい。
 それだけ見せ終わると、ガスパルは大剣を壁に立てかけて鎧を脱ぎ始めた。

(後からバレて隠してたと思われるよりは自分から言った方がマシだよな)

 恐る恐る、悠人はガスパルの背中に声をかけた。

「ガスパル、あのさ……」
「なんだ」
「昼間……酒場にいたら知らないやつに声をかけられちゃって……」

 ドンっと大きな音がして、悠人の肩がびくりとはねた。ガスパルが胴鎧を床に置いた音だった。
 ガスパルは悠人のほうを見ようともせず、抑揚のない冷たい声で「それで」と促してくる。

「あ……えっと、なんか勝手に座ってきてグイグイ話しかけてきたから流されて、少しだけど答えたっていうか……名前教えたくらいで、あとはずっと相手が勝手にしゃべってたんだけど」
「ビールもその男に奢られたのか?」
「まあ……うん。断ったけど勝手に相手が頼んでたから。でも届いてすぐに店員がそいつのこと連れてってくれたから、そっからは一人で紙とペン貰って落書きとかしてたけど」
「…………」

 機嫌を損ねたのだろうか。ガスパルは無言でブーツを脱ぎ、鎧と一緒にまとめた。それから上着とズボンを脱いで下着一枚の姿になり、荷物の入ったズタ袋を漁り始めた。
 ガスパルの体は凄い。もう何度も見ているはずなのに、こうして服を着ずに部屋をうろうろされるとつい目を奪われてしまう。
 太い首、盛り上がった胸、広い肩と大木のような腕。腰は引き締まり、腹は綺麗に割れ、太ももはパンパンに太く膨らんでいる。今日酒場で見たどの男よりも立派な、もはやそれ自体が鎧か凶器と呼ぶしかないほどに立派な体。それと―ー平常時でも下着の中からしっかりと存在を示す巨大な塊。

(っ……! やばっ……)

 悠人は赤くなった顔を慌てて逸らした。
 ついさっきまではガスパルの機嫌を損ねたかもしれないとビクビクしていたはずなのに、いつの間にか悠人の心臓は激しく脈打ち、下腹部へ血を送り始めていた。それを少しでも隠そうと、服の裾を引っ張る。ズタ袋から着替えを取り出しているガスパルは悠人の変化には全く気付いていなかった。

「俺がなぜほかの人間を警戒するように言ったのか理解はできているな?」
「そ、それは……まあ。一応」
「分かっているならいい。見知らぬ男たちの慰み者になりたくなければ気を付けろ」

 着替えを出し終えがガスパルがようやく悠人のほうに顔を戻す。その瞬間、ガスパルは露骨に顔を顰めた。

「体の調子でも悪いのか?」
「は? なんで……」

 ガスパルは頭をガシガシと掻き、言いづらそうに言った。

「……発情しているだろ、お前」

 違うと否定してやりたかった。……できればよかった。だけどできない。
 ガスパルに快楽を教え込まれた後ろの場所が熱を求めるように疼く。
 決してガスパルに抱かれたいわけじゃないのに、もうそれしか考えられないくらい、体がガスパルの熱で犯されることを望んでしまうのだ。

(なんだよこれ。昨日だってヤられたんだから溜まってるはずねえのに……淫魔の体ってこんなんなのかよ。これなら昼間のうちに一人で処理しときゃよかった)

 なんだか無性に悔しくて、唇をかみしめて俯く。
 下着姿のガスパルが近づいてきて、悠人の前で立ち止まると、そっと頬に触れてきた。

「魔力が足りないから発情するんだろ? 一日一回のセックスじゃ足りないか? どこか調子悪いところがあるんじゃないのか?」
「……ねーよ、別に」
「まだ風呂に入っていないから汚れているぞ。いいのか?」

 首を縦に振る。
 頬に触れていた手ががしっと顎を掴んできて、無理矢理上を向かせられる。

 目が合う。
 ガスパルは思いっきり顔を顰めて蔑むように見下ろしてくるが、日に焼けた褐色の肌は薄っすら赤く染まっている。いい加減その真意がわからないほど鈍くはない。

 鋭さが欠け、代わりに困惑にも似た色が混じる瞳が近づいてくる。鼻先がぶつかるほどのすぐ傍までガスパルの顔が下りてきて、そして、悠人は反射的に目を閉じた。

 唇にガサガサとした、それでいてやわらかいものが重なってくる。

 キスされている。
 男から。ガスパルから。

 最初は恐る恐る触れるように、表面同士が擦れ合い、ガスパルが鼻から深く息を吐きだした。
 慣れていないような、子供のようなキスだった。

(……んだよコイツ。人のことガン掘りしてくるくせに気色悪ぃ)

 そう思うのに、体はどこか物足りないと言うように疼く。
 服の裾を引っ張ったまま、悠人もガスパルの唇に唇を押し付けた。そして唇を開き、きつく閉ざされたガスパルの唇に舌を押し付ける。
 ガスパルの鼻からもう一度、深く、熱い息が漏れた。

 ガスパルの唇も開く。悠人の舌が滑り込むよりも先に、ガスパルの舌が強引すぎる強さで悠人の口の中に入ってきた。

 動く。
 ぬるぬると、熱く、悠人の口の中を隅から隅まで探るように。

 思わず頭を引きそうになった。すると、逃げられないように後ろ頭を押さえられた。さらに背中にも腕がまわってきて、強く抱きしめられる。

「んっ……」

 思わず甘い吐息が漏れた。
 体が密着したせいで、ガスパルのペニスがへその上のあたりにぶつかってくる。
 硬い。いつの間にそんなにも硬く膨らんでいたのか。しかも濡れている。
 先走りの湿り気が下着を越え悠人のシャツも越え、肌を直接濡らしてくる。
 ガスパルは悠人の口内を舌で犯しながら、硬く反り返ったペニスをぐりぐりと押し付けて来た。今からコレでお前を犯すのだと教え込むように、じっくりと。

(やべぇ、これ……)

 悠人の体がビクビクと震える。
 太く硬く、ゴリゴリとしたガスパルの感触。
 それで好き放題に犯される喜びを、悠人の体はもう覚えてしまっている。

(早く、挿れて……)

 汚れていてもいい。汚くても、汗臭くてもいい。なんでもいいから、早く。

 我慢できずにガスパルの厚い胸に触れ、指の腹でひっかく。そしてガスパルの舌と唇に吸い付きながら、無意識に股を開きそうになる。立ったままだというのに、もうどうしようもなく股を開きたくて仕方がない。

「んっ、ふっ……」

 ガクッと脚の力が抜け、その場に倒れこみそうになった。ガスパルが支える力を強くしてくれたから倒れることはなかった。
 ガスパルの唇が悠人の唇から離れていく。

「――ベッドに行くぞ」

 荒く言って、ガスパルは悠人を抱えてベッドに向かった。





 なかば放り投げるようにしてベッドに下ろされる。
 悠人はすぐに上着を脱ぎ、ガスパルも乱暴に下着を脱いでベッドにあがってきた。
 ガスパルのペニスからは先走りの汁が漏れてダラダラと糸を引いている。それを見ながら悠人がズボンを脱ごうとすると、横から延びてきた手が下着ごと引きちぎらんばかりの勢いで脱がせてくる。
 ズボンと下着が足首から抜けていく瞬間、悠人は転がるようにしてガスパルに背を向け、脚を大きく開いて尻だけを突き上げた。

「ガスパル、挿れ――」

 最後まで言い終わらなかった。
 ひくひくと震える穴に、ガスパルのペニスが一気に突き立てられた。

「ふあぁあああああああっ……!!」

 悠人の性器から勢いよく白いものが噴き出し、胸や顔に飛び散る。
 ビクン、ビクン。悠人の体は痙攣するように激しく震えた。

(やべぇ……。俺、ガスパルのチンコ挿れられただけでイっちゃった……)

 恥ずかしいはずなのに、その事実にさえなぜか興奮してしまう。
 荒く息をしている悠人の背中に、低く熱っぽい声が落ちて来た。

「そんなに俺に抱かれたかったのか」
「……淫売、だからぁ……」

 ははっと笑いながら振り返り、悠人はだらしなく上気した顔でガスパルを見上げる。

「俺、淫売なんだよ……。アンタが、言う、ように……」
「違う」

 食い気味に否定するガスパルの顔がなぜか傷ついたように歪んだ気がして、少しだけ気分がよくなった。

「違わねえ、よ……」

 嘲るように笑い、悠人はもう一度言った。

「俺は、アンタ見ただけで、ケツ穴疼くような……淫売――」
「違うと言っただろ!」

 ガスパルが珍しく声を荒げた。驚き、悠人は目を丸くする。
 ガスパルが感情的になったのはほんのそのときだけで、すぐにまたいつもの調子に戻る。

「お前は淫売なんかじゃない。ただ……俺と共に生きるのに都合のいい体をしているだけだ」
「……んだよそれ」

 なぜか無性に泣きたくなって、逃げるようにガスパルから顔を背けた。

「早く……イけよ、アンタも」
「俺にも呼び名を教えろ」
「…………」

 どうして今更そんなことを聞いてくるのか。
 こらえきれずに漏れた涙がシーツにしみ込んだ。

「俺はお前をなんと呼べばいい? 淫売ではなく」
「……うっせぇ」
「言え。言ったらお前の中に出してやる」

 何を偉そうに。自分の精液を褒美だとでも勘違いしているのか?
 ムカつく。
 腹が立つのに、それなのに、目の奥からあふれてくる涙と一緒に、言葉が勝手に口から出て来た。

「はると」
「ハルト?」

 シーツに顔を押し付けたまま頷く。
 ハルト、ハルト、ハルト。
 覚えたての名前を呪文のように何度か唱えた後で、ガスパルは何か大切なものでも撫でるような手つきで悠人の尻を撫で、「ハルト」とこれまで聞いたこともないくらい優しい声を出した。

「動くぞ、ハルト」

 大きな手が悠人の腰をしっかりと掴みなおす。
 悠人の内側を、巨大な杭のような塊が激しく擦り始めた。

「あぅっ……! ん……ふっ……んあっ……!!」

 一度吐精して落ち着いたはずの悠人のペニスが、再び勃ちあがった。
 気持ちいい。
 悔しいけれど認めざるを得ない。
 驚くほど熱くて、体内で受け入れるにはあまりにも巨大すぎる肉の塊。
 その圧倒的な存在感に体を強引に押し開かれ、内側をゴリゴリと蹂躙される。
 自分が自分ではなくなっていくようでどうしようもなく怖いのに、同時に、ペニスを擦るだけでは絶対に得られないような激しいものが体の内側からゾクゾクと湧き上がってくる。

(ヤべっ……。こんなん、ガチで飛ぶ……!!)

 涎を垂らしながら、必死でシーツをかきむしる。
 ガスパルは逃がさないとでも言うように後ろから伸し掛かってきて悠人の体を押しつぶし、交尾する犬のように腰を振って悠人の最奥に先端を叩きつけてくる。

「んぁあああああっ!!」
「気持ちいいか、ハルト?」
「……わっかん、ね……。んっ……!」
「素直に認めろ。お前の体は、こうして俺に犯されるためにできている。嫌でも気持ちよくなるのが当然だ」

 そうだろうか。
 そうかもしれない。

(俺……人間じゃない……。淫魔、だから……)

 パン、パン。肌がぶつかり合う音が激しく鳴る。その音が一層、ガスパルに犯されているという事実を悠人に突き付けてくる。
 男から犯されているなんて気持ち悪くて萎えてもおかしくないはずなのに、今の悠人はもう、その事実にさえ体が震えるほどに興奮するしかできなかった。
 気づいたときにはもう、悠人は叫ぶように訴えていた。

「ガス……っ! いいっ! きもちい! あんたのちんこ……! すげえ! きもちい!!」 
「……好きか? 俺のコレが」

 そう言って、最奥を太いカリ首でえぐるように突き上げられる。
 その瞬間、比喩なんかではなく本当に、頭の中が真っ白になった。

「すき!! だいすき!! ガスのチンコすき!! すき!! ……あっ……だめっ、まって……! いぐ、ぐぅううううう!!」

 悠人の体がビクンと跳ねる。ガスパルは鼻息荒くその体を押さえつけ、悠人の奥に勢いよく精を吐き出した。

「あついっ……!! ガス、腹んなか、あついぃいいいっ!!」
「…………」

 ガスパルがふーふーと荒く息を吐いている音が聞こえてくる。
 ガスパルのペニスは悠人の中でしばらくの間ビクビクと精を吐き続け、ようやく鎮まった。
 ズルズルっとペニスが抜けていく。その刺激にさえ、悠人の体はビクビクと反応した。

「んっ、ふぅっ……!」

 ズポン、とガスパルの性器が抜けきって、悠人の下半身はシーツの上に崩れ落ちた。それでもまだ馬鹿みたいな大きさに広げられた後ろの穴はぽっかりと開いたまま閉じ切らず、ヒクヒクと震え続けている。

(やべぇ……。中出し、マジ癖になる……)

 涙も涎も垂れ流したままぐったりと倒れこんでいると、突然、強引な力で体をひっくり返された。

「あっ……」

 ガスパルだ。もう自分の体を動かす気力もない悠人を見下ろしながら、ガスパルの目からはまだ情欲の色が消えてはいない。それどころか、視線を下半身のほうに下ろしていくと、ガスパルの性器は再び硬さを取り戻していた。

「……も、いちど?」
「いいか?」

 こくりと頷き、悠人は再びガスパルに背中を向けようとする。その体を、ガスパルは上から押さえつけて来た。

「え……ちょっと……」
「お前の体は俺の好きに使っていいと言ったな?」

 確かに言った。昨日のことだ。
 だけどそれは好きなだけ抱いてもいいという意味で、こんなふうに望まない体位で抱かれることは想定していなかった。

「……こっちは、やだって……」
「なぜだ?」
「……顔、見られたくない」
「男に犯されて感じている顔ってことか? それならもう見ている」

 ガスパルは悠人の脚を無理矢理開くと、白いものを垂らしながらぽっかりと開いている場所に硬くなった性器をぬるぬるとこすりつけて来た。

「むしろ俺はお前が俺のペニスで感じている顔が見たい。ダメか?」

 ダメじゃない。だからそんなふうに焦らさずに、早く穴を埋めてほしい。
 だけどその気持ちを必死に押しとどめ、悠人はガスパルの分厚い胸板を押し返した。

「ダメ……だ」
「なぜだ。これだけ痴態を晒しておいて何をそんなに嫌がる?」
「後ろからじゃ、なきゃ……」

 嫌だ。言いたくない。知られたくない。
 そんな気持ちに反して、ガスパルの熱を求める体が勝手に言葉を押し出してしまう。

「……俺、アンタに……しがみつく」

 ついに言ってしまった。涙で歪む視界に、ガスパルの怪訝そうな顔が映る。

「好きなだけしがみつけばいい」
「いやだ……」

 俯く悠人の頬をガスパルの指がなでる。その指は唇、顎、喉、鎖骨、胸へと順番に下りてきて、そしてそこで、薄く平らな胸を揉むように撫でまわす。

「や、だ……」

 赤い顔で項垂れる悠人の目から、一筋涙が落ちた。
 ガスパルはそれを舐めると、悠人の膝を折るようにして上からペニスを押し付けて来た。

「あ、うあっ……!」

 ずぶずぶっと体内が巨大な塊を飲み込んでいく。
 唇を震わせながら目を見開く悠人の涙を舐め、ガスパルは囁くように言った。

「俺の体に腕をまわせ」
「や……」

 首を横に振ってガスパルの舌を振り払う。
 後ろ手にシーツを掻きむしるように握り、悠人は痛いくらい限界まで脚を開いた。

「いやだっ……」
「そうやって簡単に股は開くくせにな。何がそんなに嫌だ?」

 また深く、焦らすようにじっくりと、ペニスが入り込んでくる。

「んぅっ……!!」
「なにが、嫌だ?」

 喉ぼとけが震えているのが分かるほどに低い声が、ぐずる子供をあやすように問いかけてくる。「ハルト」と促されれば、もう抗うことはできなかった。

「……怖い、からぁ」
「俺に抱き着くのがか?」
「……たよっ、たり、縋ったり……したく、ない。おれ、ひとりが、いい」
「俺なしではまともに生きられもしないくせに?」

 そうだ。
 どんなに強がったって、既にもうガスパルなしでは生きられない。

「こんな体をしておきながら、口だけは随分と立派だな」
「言う、なぁ……!」

 涙に濡れた悠人の瞳を正面から見つめたまま、ガスパルはゆっくりと腰を引く。

「うあ、あっ……」

 巨大な熱の塊が外に向かって内側を擦っていく感覚。
 ガチガチに固まったその熱がこの後悠人の体に何をするつもりなのか、簡単に想像ができる。
 悔しさに歪んでいたはずの悠人の口元に笑みが浮かぶ。それを見て、ガスパルの口元も微かに緩んだ。

 ズン、と激しく突き上げられる。

「んあああああああっ……!」
「縋りつきたくなったら、いくらでも俺に縋りつけ、ハルト」

 そう言って、奥のほうをカリ首でゴリゴリと抉られる。悠人の体がビクビクと震えた。

「んあっ……! あ、そこっ!! そこぉっ……!」
「お前は俺のものであり、俺もお前の――くっ」

 ガスパルがつらそうな顔をする。悠人の体がガスパルのものを強く締め付けたせいだ。
 自分でも自覚できてしまうくらい、中がうねってガスパルをぎゅうぎゅうと締め付けている。
 もっと奥に。
 もっともっと深い場所に。
 ガスパルの精を注ぎ込まれたいと体が勝手に訴える。

 ガスパルはふーっと肺の底から絞り出すように息を吐き出すと、睨むような目で悠人を見た。
 そして悠人の腰を掴みなおし、パン、パン、と激しく腰を叩きつけてくる。

「ひあっ、あ、やだっ……! やめろ!! イっちゃう……!! ケツで、イっちゃう、からぁっ……!」

 そう叫んだ瞬間、ガスパルは噛みつくように悠人の唇に吸い付いてきた。
 舌で強引に唇を開き、その舌をねじ込み、歯の裏や口蓋、すべてを犯すように舐めてくる。
 そうしながらパンパンと悠人の尻に肌をぶつけてくる。 

「んんっ……!! んっ、ふ、んんっ……!!」

 悠人は目を見開き、指の色が変わるほどの強さでシーツを握って身を捩る。

 ガスパルの高い鼻から吐き出される息が、犯されている口内が、体の内側が、異様なまでに熱い。
 目の前がチカチカする。
 後ろの穴がガスパルを締め付ける。

 限界だ。

 腹の奥からマグマのように激しいものがせり上がってくる。
 足の先をピンと伸ばし、悠人の体が大きくのけぞった。

「んふぅううううっ……!! んぶっ、んんんんっ……!」

 ビクビクと痙攣する悠人の体を力づくで上から押さえつけ、腰を押し付け、ガスパルも二度目の精を悠人の中で吐き出した。

(出てるっ……!! 俺のなか、ガスパルの精子めちゃくちゃ出されまくってる……!!)

 メスにされている。
 種付けされている。
 ガスパルの女にされている。
 アダルトビデオやエロ漫画でしか聞かないような言葉がどんどん頭の中に溢れてくる。
 嫌だとか気持ち悪いだとか、そんな気持ちはもう一切なかった。
 むしろ嬉しかった。

 もっと、もっと。
 ねだるように、縋るように。
 ガスパルのペニスを内側の肉でぎゅうぎゅうに締め付けながら、必死でガスパルの舌に吸い付く。

 いつの間にかガスパルが腰も舌も動かすのをやめていたのに、それにも気づかずに、目じりから涙をこぼしながら、必死で吸い続けていた。

「んっ、ん……ふっ……」
「…………」

 深く息を吐いた後にガスパルがそっと口を離していく。
 抜け出ていく舌を咄嗟に追いかけて舌を伸ばした悠人は、思わずガスパルの腕を掴んでしまっていたことには気づいていなかった。

「あっ……、ガス……、ん」
「俺のものだ」

 口の中にガスパルの親指がぐいっと突っ込まれる。

「んぶっ……、ふっ……」

 無意識のうちにしゃぶりついてしまう。
 それを見てガスパルは目を細めた。
 悠人の中にまだ残っていたガスパルの熱が、また硬さを取り戻した。

「ハルト」

 気のせいだろうか。悠人を呼ぶその声が、体が震えてしまいそうなくらいに優しい。

 口から指が抜かれ、その手がそのまま頬のほうに滑り降りて、そっと撫でてくる。
 その手も優しくて、悠人を見下ろしてくるこげ茶色の瞳も優しくて、なぜか心臓の奥が締め付けられるように苦しくなった。

 爪をたてないよう、悠人は指の腹でガスパルの腕にしがみつく。
 悠人の中で、またガスパルの熱が動き始めた。
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