童話を元ネタにしたお話

那田野狐

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アリエル姫

第4話 嵐の夜

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「団長」
ドアの外から声を掛けられ、アリエルは急速に意識を覚醒させる。
騎士として常時戦場を叩き込まれていたアリエルにとって、この程度のことはできる。
厚手の綿のアンダーアーマーに身を包み、アリエルは部屋のドアを開けた。

「どっちだ?」
「海です。ドットが救難の光源を確認しました」
出迎えてくれたのは団の使い走りナンバー5。青髪青瞳のシーエルフの青年リシュ・カーラ。
ドットとはドット・テンパス。緑髪翠瞳のヒルエルフで団の使い走りナンバー4だ。

「雨の気配は少ないが、海は荒れているのか?」
「風が強いですね。大型の低気圧は台風崩れかもしれません」
リシュの推論にふむとアリエルは考える。
いまは長雨月ながうつき(6月)。時期的に台風崩れの到来という線は低いはずだ。

「バーンとジェリルに海上探索の指示をわたしも出る。リシュはドットとともに遭難者の収容指揮を」
バーンと団のナンバー3である紅髪赤瞳のダークエルフ女性の名を出し指示を出す。
「海岸でかがり火を焚くのを忘れるな」
「はっ」
リシュは小さく頭を下げて走っていく。

「マリ」
「はい」
側にいたメイド姿のシーエルフの女性マリが、アリエルを見上げながら首を傾げる。

「食事と大量の湯を準備して遭難者に備えよ」
「承りました」
マリは静かに頭を下げて走り出す。
アリエルはヒッポカンポスのいる馬房に向かった。


ザアザアという海面を叩く音にビュービューと横殴る風の音にアリエルは顔を歪める。
沖に出た途端、雨と風が強くなる。台風の特徴だ。
どうやら勢力が衰えた台風崩れではなく台風だと確信する。

光よライト
アリエルは何度目かの光魔法を発動させ海上を照らす。
破砕された木の板。何かを詰めた樽。漂流物から船が沈没したのは確実。
海面に突っ伏し生命活動を止めた遺体は曳航している船に引き上げる。
生存者がいない・・・
「うん?」
ふと、アリエルの目が魔法光の端にある人影を捕らえる。
{!!!」
木の板に載せられ漂っていたのは、昨日目撃した、金色のおかっぱ頭にハーフエルフ特有のエルフより短い耳の少年だった。

ワ国の貿易船「胡丸号」遭難事故は、停泊中の胡丸号が強風を受けてアリエル騎士伯領の沖まで漂流し、そこで高波を受け沈没。
乗組員53人中48人が死亡または行方不明。一人の人間の船長と一人のハーフエルフと三人の犬人ワードック船員が救出。
被害総額白金貨五枚(青銅貨にして約5000万)という結果となった。

「ありがとう。『拙者、ワ国マツマエ領の年寄で万寺・ジョン・兼徳と申します』」
「ありがとう。わたしは・・・」
救助者を代表して、黒い短髪黒眼の人間の船長ジョン・万寺が頭を下げ、隣りにいた金色のおかっぱ頭のハーフエルフの通訳ルリウスを通訳する。
ルリウスの通訳で、万寺がワ国マツマエ領の交易部門のナンバー2というお偉いさんだということが判る。

万寺は、救出に尽力してくれたお礼をしたいので、自分たちの無事を本国連絡して欲しいという要請が出される。
アリエルは快く承諾し、連絡が付くまでの歓待を保証する。

半月後、ワ国マツマエ領の交易部門のナンバー1猿辰瑠布衣のサンゴ王国の表敬訪問が決まった。
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