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挿話⑦. 自分勝手な男
シエル・トリトン、13歳、Ω。
その存在を知ったのは偶然…ではなく、シエルの父親がシエルの嫁入り先を探して、未婚の子供がいる貴族家に片っ端から売り込みしていると噂で聞いたからだ。20代半ばと歳が行き過ぎているせいか、カイラスの所には打診はなかったが、婚約者ではなく嫁入り先を探しているという事が気に掛かり、人を遣ってトリトン伯爵家を探ったところ…。
シエルは養子であり、3歳下の伯爵夫妻の実子がαと診断されたからか、10歳の頃から別邸に追いやられ、少人数の使用人と共に生活しているー。
報告を受けた時、まさにうってつけな相手だと思った。男である事を許容すれば。
カイラスはすぐに伯爵に連絡を取った。
養子を迎えた後にまさかの諦めていた実子に恵まれ、よほど養子のシエルを持て余していたのか、トントン拍子に話は進み持参金の話になった時、持参金は要らない代わりにシエルとの縁を切らせた。実際には婚姻してからの伯爵家からの除籍にはなるが、伯爵は驚きはしたものの異を唱える事なく受け入れた。そんな条件を付けられれば、子を想う親なら不審がるものだと思うが、躊躇う様子すらない伯爵に、伯爵家でのシエルの立場を知った気がしたカイラスだが、彼自身もまた、知ってもなお何も感じなかった。
ランスター家にやって来たシエルとの初顔合わせの日。執事のダリル以外の使用人、そしてレインには、決して部屋から出て来ないように言い渡した。
シエルを見ての第一印象は『幼い』だった。13歳の筈だが、10歳くらいに見えた。大袈裟ではなく…。だが、幾つか言葉を交わして判ったのは、目の前に座る少年が年齢相応…否、13歳という実年齢以上に聡明であるという事。聡明であるがゆえに自分の立場、置かれた状況を理解し、そして全て受け入れる覚悟をもっていた。
シエルと、彼に同行した使用人を別邸に住まわせてから1年以上、カイラスは一度としてシエルに会うことなく、様子を知ろうともしなかった。決まった生活費は渡しているし、使用人達の給金も滞りなく払っている。会わないのだから、辛く当たったりもしていない。敷地内からは出ないように約束はさせたが、敷地内(別邸の)なら庭に出る事も禁じていないのだから、監禁をしている訳でもない。
そして何事もなく1年が過ぎた頃、シエルに発情期が来たと連絡があった。
連絡を受けた2日後の夜に別邸に行ったカイラスは、食堂で用意させていた酒を軽く酔う程度に飲んでから、トーマに案内させてシエルの部屋に向かった。足を踏み入れた部屋の中には、Ωフェロモンが充満していた。α用の抑制剤を服用しているお陰で理性を失う事はなかったが、体の方は本能に忠実に欲望を主張した。これなら問題なく出来そうだ…と、ベッドの上で自身の体を抱き締めて泣いている、未だに幼さの残るシエルをうつ伏せにして、ただ一方的に、逃げ場のないシエルの体へと自身の欲望を叩きつけた。その後は、泣きじゃくるシエルを放置して本邸に帰り、男を抱いた屈辱を上書きする為に恋人を抱いた。次の日も同様に。
自分が放置した後のシエルがどうだったかなど気にも留めない。発情期が明けた後に高熱が数日続き、一時的に衰弱していた事も知らない。シエルの心と体がどれほど傷付いていたのかも…。
カイラス・ランスターという男は、どこまでも自分と愛する恋人の事しか考えていない、自分勝手な男だったー。
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♢
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