【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

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24. 俺の自惚れであってほしい


〈 玲視点 〉

  インフルエンザから回復した後も、変わらず俺達父子おやこと暁登さんの交流は続いた。
  ……………。
  違う。変わった事はある。
  病気になる前は、暁登さんとの距離に一線を引くために決して自宅には招かなかった。それが、彼が5日間も泊まり込んでくれたから、彼が訪ねてくれば家に上げるようになった。
  毎週末会うのは変わらず。ただ、冬だし日が傾きかけると一気に冷え込むから…と、出掛けるのは近場。夕ご飯は俺達の家で食べる。俺が作る事もあれば、テイクアウトした料理を食べる事もある。それを3回。流石に泊める事は無かったけれど…。
  とっくに距離感がおかしくなっている事には気付いていた。会うごとに加速度的に惹かれていく自分の気持ちにも…。『一目惚れ』から始まった恋心は、彼の優しさと誠実さを知った現在いま、誤魔化したり目を背けたりする事が出来ないところまで来ていた。呼び難いだろうから…と名前の呼び捨てを提案したのも悪かったんだと思う。苗字ではなく名前の呼び捨ては、親しさを強調するものだから…。
  それでも、俺が彼に『想い』を告げる事はない。告げてはいけない。会えば尚更に膨れ上がる『好き』の感情を、決して見抜かれてはいけない…。
  そろそろ潮時離れるべきかも知れない…という気持ちと、3人で過ごす穏やかな時間をもっと続けていたい…という、2つの相反する思いに揺れ動く心は、ある日、唐突に、その『可能性』  を見出してしまう…。

  俺の『片想い』だと思っていた。暁登さんが俺達と過ごすのは、懐いてくれる奏音が可愛いからだと思っていた。彼の、奏音を可愛いと思ってくれる気持ちは本物だと思うし、親としては素直に嬉しい。嬉しいのだけれど、正直、これ以上俺達父子おやこの生活に踏み込んでほしくなかった。
  のに………。
  24日のクリスマスイブを毎年恒例となっている晴香さんの家族と一緒に過ごした翌日、25日のクリスマスの夜。何の連絡も無しに、暁登さんが奏音へのクリスマスプレゼントと、ホールケーキを持って訪ねて来た。24日の予定は話していたから25日にしたんだろうけれど、不意の訪問は戸惑いしか生まない。アポ無し訪問の謝罪をされ、貰ったプレゼントを両腕で抱えて大喜びする奏音を前に彼を追い返す訳にもいかず、料理は無かったけれど一緒にケーキを食べた。その週末も、暁登さんと奏音の中では当たり前になっている『お出掛け』は通常通りだった…。
  毎年、年末年始は奏音と2人で過ごす。「来て良いよ」と言われても、親戚ならいざ知らず、他人の俺達が新年早々訪ねていくような非常識な真似はしない。3日の日に晴香さんの家に挨拶に行くのが恒例だ。その時は佑真先輩が迎えに来てくれる。今回もその予定だったのに…。
  大晦日の朝に掛かってきた暁登さんからの電話。

『今日明日は実家に帰るから、2日に行くよ』

と言われ、「迷惑です」とは言えず…。かといって「お待ちしています」とも言えず…。「はい?」とだけ呟いて二の句を告げられずにいる俺の様子が彼に判る筈もなく、「はい」を肯定と取った彼が電話を切った後、俺はスマホを握り締めたまま立ち尽くす。

  なんで…どうしてこんなことに……。
  2日に来る? 身内じゃないのに? 何故?
  思考がぐるぐる回る。
  暁登さんはどうして俺達に構うの? 
  懐いてくれる奏音が可愛いから? 
  でも、ほぼ毎週末を一緒に…なんておかしくない?
  大人になれば、友達とだって毎週末なんて一緒に過ごさない。
  俺達と暁登さんは家族でななければ親戚でもない。
  幼馴染でもなければ、長年の友人でもない。
  毎週末、クリスマス、正月…。
  出逢って半年足らずの知人との距離じゃない。
  俺が熱を出した時は助けてもらったし感謝はしているけれど…。言い方は悪いけれど、半分は暁登さんから言い出した事だよね?
  貴方は俺達をどうしたいの? 俺達とどうなりたいの?
  家族? それとも、俺と…。

  もしかして貴方は俺の事……。
  そこまで考えが及び、俺は内心で首を振る。  
  流石には自惚れ過ぎだ。そんな事は
  ……………。
  でも……。
  そう考えればんだ。
  現在いまのまるで家族になったように錯覚してしまうような関係も、彼にとっては伏線なのではないか…と。奏音を可愛がり大切にしてくれているのは本当だとしても…。
  
  確認しなければ……。
  
  そう決めた、大晦日の夜ー。


  年が明けた1月2日ー。
  電話越しに宣言した通りに訪ねてきた暁登さんを迎え入れた俺。
  事前に言っていなかったからか、奏音は暁登さんが来てくれた事に大層喜び、嫌な顔一つせずに付き合ってくれる暁登さんにたくさん遊んでもらい、夜8時には疲れて早々に寝てくれた。
  俺は「お疲れ様でした」と、いつも9時頃に帰る暁登さんにいつものようにコーヒー帰りがけの一杯を振る舞い……。
 
「確認したい事があります」

と前置いた後…。

「貴方は俺の事が好きなんですか?」

  そう率直に訊ねた。
  俺の自惚れだといい。そう思いながら、祈る気持ちで返事を待つ。
  けれど……。

「好きだよ」

  期待は裏切られたー。

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