【完結】家族になろうよ 〜パパが『恋』をしてもいいですか?〜

Kanade

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26. 俺は見限られた…


〈 暁登視点 〉

「もう、俺達と貴方の交流は終わりにしましょう」

  何を言われたのか、解らなかった。いや、理解するのを脳が拒否したのか…。
  そして、玲の口から出たその言葉の意味を理解した時、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
  ただ、だと言って訊かれたから「好きだよ」と答えたつもりだった。訊かれるという事は少なからず玲にも俺を想う気持ちがあるのかと思ったし、嘘は吐きたくはなかった。
  それなのに……。
  突然の『絶縁宣言』に頭の中が真っ白になった。
  玲は「同じ気持ちを返せないから」と言った。
  そんな事は望んでない。奏音の存在を知る前は「恋人になりたい」と思っていたけれど、君達と過ごす日々に満たされる現在いまは、このまま現状維持で良いんだ。君達の傍にいられたら…。
  そんな俺の思いも、
 
「俺が駄目なんです!」

と、玲が叫ぶように言った言葉に掻き消された。
  俺の気持ちを知ったからには、何も無かったかのように一緒にはいられない、と。
  玲の言葉が俺を糾弾する。

  距離感がおかしいー。
  奏音を口実にしたー。
  身内でも友人でもないー。
『非常識』ーー。

  俺は返す言葉を失っていた。
  そうか…。
  そんな風に見えたのか……。

  きっと俺はいきなり距離を詰め過ぎたのだろう。2ヶ月もの間、もう一度会いたいと思い続けた相手に再会し、何故か奏音が懐いてくれたのを好機チャンスと捉え、連絡先を交換し、奏音を経由して頻繁に会う口実を作った。奏音が可愛くて、奏音が楽しんでくれるなら…という気持ちは嘘じゃなくても、そこに下心が全く無かったとは言えない。奏音を口実に…というのも確かにその通りだった。
  身内でも友人でもない…は確かにそうだ。どうやら俺は、友人に格上げにはなっていなかったらしい。親しい知人止まりだったのだろう。病気になった玲を看病し、奏音の世話をする為に泊まり込んだ5日間。同じ屋根の下で生活した事で、ぐっと距離が近付いたと思ったのは俺だけ。よくよく思い出してみれば、玲は初めは俺が泊まり込む事を渋っていた。瀬尾くんを巻き込んで、高熱で判断力が鈍っている玲に拒否権を与えず了承させたのだ。
  その後は…。
  遠回しに「貴方は非常識人だ」と言われ、自分が如何に礼儀知らずな事をしたか、自覚させられた。常識のある大人なら緊急時でもない限り、人を訪ねる時は連絡をして相手の都合を訊くものだ。たとえ友人宅であっても。連絡無しで突撃して許されるのは実家くらいだろう。正月早々の訪問にしてもそうだ。家族以外で共に過ごすのは恋人か、特に親しくしている友人くらいだろう。俺は友人くらいには思われていると思っていたが、彼にとっての俺は、親しくしていても『知人』。しかも俺は早合点し、玲の都合を確認せずに…。
  いつ、玲が俺の気持ちに気付いたのかは判らないが、知人だと思っている相手の近過ぎる距離に違和感を覚えたとて不思議ではない。それでも確信が持てないままここまできたが、今回の俺の無遠慮な行動が彼の違和感を膨らませ、俺ので確信に変わり、我慢の限界を超えたのだろう。
  俺は彼に見限られたのだ。

  もう穏やかに笑顔で楽しく過ごしたあの日々には戻れないのだろう。
  戻れないのなら…。

「あと1回…」

  あと1回、既に奏音と交わしている約束だけは果たさせてほしい…とした。次の約束はしないから…と。
  玲は了承してくれた。楽しみにしている奏音をがっかりさせたくないから…というのが彼の理由。
  が終わったら「連絡先は消す」と言われた。もう連絡は取らないという意味だ。「会社で会ってもただの知り合い」とも言われ、もうプライベートでは欠片も関わる気はないのだと…。
  それでも、頷く以外の選択肢は、俺にはないー。

  ーーーーーーーーーーーーーーー

  そして『最後の日』ー。
  いつもは夕食を外食で済ませた後は店の前で別れるのだが、珍しく奏音が寝てしまった為、自宅まで送らせてもらう事にした。最後だからか、いつもは固辞する玲も「お願いします」と言ってくれた。
  自宅近くまで送り、抱っこしていた寝ている奏音を玲の腕に返す。荷物があるから家の前まで送る、と申し出たが、それは却下された。
「今までありがとうございました」と頭を下げてから、落とさないようにしっかりと奏音を抱いたまま去って行く玲の背中が見えなくなるまで…いや、見えなくなってからも、俺はその場に佇んでいたー。


  ~~~~~~~~~~~~~~~

☆補足

 玲も暁登も車を運転出来ますが、お出掛けは常に電車、もしくはバスでした。理由は、奏音が電車とバスが好きだから。玲の自宅の最寄り駅で待ち合わせして出掛けていました。

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