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34. 『家族』の真実、そして…
〈 玲視点 〉
「…奏音は…俺の子供じゃないんです…」
俺の告白に驚いて目を見開く暁登さん。
「俺、同性愛者なんです」
「…っ!!」
今度は分かりやすく動揺するのが見て取れた。
どこから話そうか迷ったけれど、結局はここから話すべきだな、と思った。
暁登さんに話す事を決めたのは、ついさっきだ。佑真先輩に『奏音を悲しませるな』と言われた事。そして、奏音が 1人で家を出た理由…。
『あの日』の俺はあまりにも一方的過ぎた。暁登さんの好意を知っただけで彼を突き放し、奏音から暁登さんと過ごす時間を取り上げた。
そして、俺自身は…。
向き合う事から逃げた。
けれど、もう逃げない。逃げても何も解決しない。
「暁登さん、訊いてもいいですか?」
「何でも」
「貴方は同性愛者ですか?」
「俺は…両性愛者だ」
「………。バイ…。つまり男性も女性も…」
「ああ。どちらも恋愛対象になる。だが、どちらかといえば俺は、男性により強く惹かれる」
「今でも俺を好きですか?」
「好きだよ。初めて会った日、君に一目惚れした」
「…一目惚れ……」
同じ…。
俺も『あの日』、貴方に一目惚れをした…。
「思わず失礼な事を言ってしまったが、君が成人していて良かったと思ったよ。あの日、連絡先を交換しなかった事を後悔して、再会した時は年甲斐もなく小躍りしたくなるほど嬉しかった」
「だったら、子持ちでがっかりしたでしょう?」
少し意地悪な言葉になってしまったけれど…。
「がっかり…はしなかったな。驚きはしたが。
正直、今でも分からない。奏音がどうしてこんなに俺に懐いてくれるのか…。子供は特に好きでも嫌いでもなかった筈なのに、出会った瞬間から奏音が可愛くて仕方ない。好きな相手の子供…というのを差し引いても、奏音が愛しいよ」
「……………」
俺も分からなかった。奏音は人懐こいけれど、決して誰にでも…という訳じゃない。特に初対面の相手には人見知りする素振りすら見せるのに、暁登さんには初めから無条件に懐いていた。けれど、今なら分かるような気がする。暁登さんの為人を先取りしたんじゃないかって。純粋な目と心で感じ取ったんじゃないかって。
実際のところは分からないけれど…。
「奏音は戸籍上は俺の実の子です。桜が妊娠している時に入籍したので。でも、俺と奏音に遺伝子上の繋がりはありません」
暁登さんの気持ちを改めて確認したところで、改めて切り出す。自分の気持ちを伝える前に、話しておきたかったから。俺達家族の事をー。
桜と彼女のお腹の中の赤ちゃんと『家族』になると決めた時の事。闘病の末に余命宣告された桜から、「私が死んだら奏音を施設に預けて、玲は自分の人生を生きて…」と言われて、初めて喧嘩をした事。彼女は俺がゲイだと知っているから、奏音がいたら俺が一生誰とも恋愛が出来ないと思ったんだと思う。彼女の思いは解っていたけれど、それでも俺は「奏音は俺の子だ。絶対に手放さない。奏音は俺が育てる。俺と桜の子供だから…」と言った。そして抱き合って泣いた日の事。彼女が亡くなり奏音と2人きりの生活が始まった日、「これからは奏音の為に…奏音の事を一番に考えて生きていこう」と、奏音が巣立つ日まで恋はしない…と決意した事ー。
けれど……。
貴方と出逢ってしまった…。
俺も貴方に一目惚れしました。
でも、たった一度会っただけ。会わなければすぐ忘れる。そう思った。実際、忙しなく過ぎていく日々の中で忘れた…というより思う間もなくなっていた頃、貴方と再会した。一瞬で一目惚れした瞬間に引き戻された。
それからは奏音と暁登さんに流されるように、一緒に過ごす時間が増え、自らが危惧していた通りに、会う毎に想いは膨らむ。頭の中で警鐘が鳴り響く。これ以上はダメだ。離れなければ……。そう思いながらもずるずると日々は過ぎー。
『あの日』、暁登さんの気持ちを知った俺は……。
「貴方はもしかしたら俺の事が好きなんだろうか…と自惚れた考えが頭に浮かんだ時、俺は怖くなった。俺の自惚れ…気の所為ならいいと思った。だって、俺も失くしたくなかったから。奏音と貴方と過ごす穏やかな時間を。これ以上好きになる前に離れなければ…と思いながら、それでも3人で過ごす時間はとても幸せだったから…。けれど、そこにもし下心や打算があったら…? 考え出したら落ち着かなくなって…。
だからあの日、貴方に確認したんです」
結果は……。
暁登さんは俺の話を最後まで、一言も口を挟まずに聞いてくれた。俺も一目惚れしたんだと言った時に、流石にそれは思ってもみなかったのか、息を飲む気配がしたけれど、それでも言葉を発する事はなかった。
そして………。
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